Z世代はなぜ「クワイエット化」するのか?ーークワイエットアゲ・クワイエットラグジュアリー・クワイエットクイッティング、"静かな自己表現"が広がる背景を解説
新規事業やオープンイノベーションのプレイヤー、そしてそれらを実践・検討する企業の経営者は、常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。
今回のテーマはZ世代に広がる「クワイエット◯◯」のトレンドです。SNSの発達とともに、これまでの消費行動や働き方は大きく変化しましたが、その中でも特にZ世代に顕著なのが「静かさ」をキーワードにした価値観です。
過度に主張したり、見せつけたりするのではなく、控えめで自分らしさを大切にするスタイルがさまざまな領域で表れています。本記事では、特に注目されている3つのキーワード「クワイエットアゲ」「クワイエットラグジュアリー」「クワイエットクイッティング」を取り上げ、Z世代の価値観をビジネスの視点で読み解きます。
なぜクワイエット化するのか。Z世代に“静かな自己表現”が広がる背景
Z世代の特徴として、「自己表現を重視するが、過度に目立つことは避ける」という傾向があります。これはSNSが中心の環境で育った世代ならではの価値観が影響しています。
派手な行動で注目を集めるより、“自分が心から心地よいと思えるもの”を丁寧に選ぶスタイルが支持され始めました。他人の視線を強く意識するより、自分の価値観とつながる静かな満足感に投資する動きともいえます。
背景には、以下のような変化があります。
・SNS疲れによる「過剰な自己演出」からの離脱
・他者評価より「自分の軸」を大切にする価値観の台頭
・必要以上に頑張りすぎない“自分への思いやり”の拡大
・物質より体験、体験より“気分”や“心地よさ”を重視する傾向
この「静かで控えめだが、本質的な価値を求める姿勢」は、ファッションから働き方まで、幅広い領域に広がっています。
【クワイエットアゲ】静かに気分を上げるファッション/自己表現
クワイエットアゲとは、全身で主張するのではなく、あまり目立たない場所に派手めの要素を忍ばせることで、静かに気分を高める自己表現スタイルを指します。周囲との調和を崩さずに“自分だけが分かるアガりポイント”を持つことが特徴です。
例えば、「SHIBUYA109 lab. トレンド予測2025」のファッション・コスメ部門には、耳に小さなジュエリーやチャームを貼り付ける「耳つぼジュエリー」が選ばれています。派手なビジュアルとツボ押しという機能性を兼ね備えていますが、正面からは気づかれにくく、「自分だけが楽しむギラギラ感」を演出できます。髪で隠れることも多く、クワイエットアゲの象徴的存在といえます。
▲出典:SHIBUYA109 lab. MATEが選ぶSHIBUYA109 lab.トレンド予測2025
同じように、一定期間で消えるエフェメラルタトゥーや、歯の一部に小さなジュエリーを施すティースジュエリーもクワイエットアゲに該当するアイテムといえます。
普段はほとんど目立たないものの、笑った瞬間やふとした仕草でだけキラリと存在感を放つ。常に視線を集めるわけではない点が、Z世代の価値観と強く重なっています。
【クワイエットラグジュアリー】ロゴを見せない“静かな上質”志向
クワイエットラグジュアリーは、ロゴや装飾で「高級品であることを示す」のではなく、素材や仕立ての良さから伝わる上質感を重視するスタイルです。
この価値観はHBOドラマ『サクセッション』で注目され、海外セレブの間でも「ノーロゴのハイブランド」が支持されています。「見せつけるためのブランド志向」や「ステータスを誇示する所有欲」といった価値観から距離を置くZ世代らしい消費行動といえます。
Z世代はむしろ、「長く使える上質なもの」「素材・製造の背景が誠実であること」「自分の生活リズムに馴染むこと」など、本質的でサステナブルな選択基準が重視されています。
この傾向はアパレルに限らず、飲食、雑貨、ホテル、ライフスタイル産業全体に広がっています。「無理な高級感」より「自然体の上質」に価値が宿るという流れは、企業にとってブランド再設計のヒントになり得ます。
【クワイエットクイッティング】静かな退職ーー声を荒げずに距離を置く働き方
クワイエットクイッティング(Quiet Quitting)は直訳すると「静かな退職」ですが、実際に退職するわけではありません。必要以上に会社へ献身しすぎず、心身のバランスを保つために“距離感を調整する働き方”を指します。
Z世代は仕事に対して冷めているわけではなく、「割り切り」や「過剰な同調を避ける姿勢」「仕事外の時間を大切にする」といった価値観が強いことが特徴です。
働き方改革の流れもあり、「会社のために自己犠牲を払うことが当たり前」という価値観はもはや主流ではありません。Z世代はむしろ、心理的負担は避けながら、無理のないタスク設計を優先する仕事のスタイルを好みます。
企業側は、従来の“熱意で引っ張るマネジメント”ではなく、役割と期待値の明確化しつつ、フラットなコミュニケーションを心がけ、自律した働き方を支える仕組み作りが求められることになるでしょう。
クワイエットクイッティングは、Z世代が怠惰なのではなく、健全な働き方を模索した結果生まれた価値観 と捉えるべきかもしれません。
なぜZ世代は“クワイエット化”するのかーー3つの価値観
3つのクワイエット◯◯に共通しているのは、「声を上げないけれど、自分の軸は失わない」という姿勢です。この背景には、次の3つの価値観があります。
・自己主張より“自己調整”
派手な表現や強い主張は、SNS上での反応や摩擦を生む可能性があります。Z世代はそれを避け、自分が無理なく存在できる場所を選びます。
・物質より“気分の整い”
所有する価値ではなく、その時の感情や心地よさを重視する傾向があります。クワイエットアゲはその象徴です。
・関係性の“適切な距離”
他人や組織に踏み込みすぎず、依存しすぎないことに重きをおきます。クワイエットクイッティングはこの価値観の最もわかりやすい表れです。
クワイエット化するZ世代をどうビジネスチャンスにつなげるか
Z世代の価値観は、企業にさまざまな示唆をもたらします。まず、“声の大きいニーズ”だけを追う商品開発では届かない層 が生まれている点です。マーケティングにおいても、「過度な演出」や「強いメッセージ」を嫌うZ世代に対しては、誠実で控えめなコミュニケーションが有効です。
また、働き方においては、エンゲージメントの取り方を刷新し、個々が自律的に動ける環境を整える必要があります。強制的に盛り上げるのではなく、余白のある組織デザイン が求められます。
クワイエットアゲ、クワイエットラグジュアリー、クワイエットクイッティングはいずれも、Z世代の価値観の一側面にすぎません。しかし、「静かで控えめな自己表現」「自分の心地よさの優先」「無理をしない働き方」という根幹の思想は、今後の市場や組織づくりに大きく影響するでしょう。
編集後記
クワイエット化するZ世代の「クワイエットアゲ」「クワイエットラグジュアリー」「クワイエットクイッティング」について解説してきました。消費・働き方・ライフスタイルが過度に競争的だった時代は、今まさに転換期を迎えています。“静かなイノベーション”こそが、次の世代に支持される価値の源泉となるのかもしれません。
(TOMORUBA編集部 久野太一)
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