TOMORUBA

事業を活性化させる情報を共有する
コミュニティに参加しませんか?

AUBA
  1. Tomorubaトップ
  2. ニュース
  3. 『プライバシーテック』が注目される背景とは?高まる個人情報リスクと、GDPRなど各国の規制を解説
『プライバシーテック』が注目される背景とは?高まる個人情報リスクと、GDPRなど各国の規制を解説

『プライバシーテック』が注目される背景とは?高まる個人情報リスクと、GDPRなど各国の規制を解説

  • 11754
  • 11700
  • 11604
10人がチェック!

新規事業やオープンイノベーションのプレイヤーやそれらを実践・検討する企業の経営者はTOMORUBAの主な読者層ですが、こうした人々は常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。

今回のテーマは『プライバシーテック』です。現代社会では、デジタル化が急速に進展しています。インターネットの普及、スマートフォンの使用の増加、IoTデバイスの拡散などが原因で、個人情報が以前にも増してオンラインで流通しているのが現状です。

これに伴い、個人のプライバシーが侵害されるリスクも高まっています。こうした動きを受けて、各国でプライバシー保護にむけた規制の整備が進んでいることからも、プライバシーテックの重要度がうかがえます。プライバシーテックの動向をキャッチアップするための情報を紹介していきます。

プライバシーテックが注目を集めている背景

プライバシーテックとは、企業や行政機関などが、消費者や従業員のプライバシーを保護するために利用するソリューションサービスのことを指します。野村総合研究所のレポートでは、ソリューションの具体例として、①利用者から取得した同意の管理、②利用者からの開示など請求への対応、③社内で保有するデータの可視化、④インシデント発生時の対応、といった4つを挙げています。同レポートではプライバシーテックの定義を「法令の遵守や利用者のプライバシー保護のために利用されるソリューションサービスは全てプライバシーテックに含まれる」としています。

参照ページ:「ITナビゲーター2022年版」

冒頭でも述べた通り、デジタル化の進化によってオンラインで流通する個人情報の量は飛躍的に増加していますし、取得した個人情報の利用用途が高度化しています。プライバシーテックが注目されている理由を端的に言えば、個人情報の流通量が増えたことによるプライバシーのリスク増加と言えるでしょう。

個人情報を大量に、かつ高度に活用する代表例としてマーケティングが挙げられます。ウェブサイトの閲覧履歴やECサイトでの購買行動などはCookieと呼ばれる技術で管理され、パーソナライズされた広告配信などに活用されています。

欧州の『GDPR』や日本の『改正個人情報保護法』など、規制強化が進んでいる

プライバシーの取り扱いの重要度が増すなかで、各国はプライバシーに関する規制の整備を進めています。

代表的なのはEUが2018年に定めた『GDPRGeneral Data Protection Regulation、一般データ保護規則』です。GDPRはEUの市民全てを対象にしたプライバシー保護を目指すもので、個人のデータがどのように収集、使用、保存されるかについての透明性を高めることが主要な目的です。GDPRが世界的に話題になっている要因として、EUの圏外であってもEU市民のデータを処理する企業や団体にも“適用される”ことが挙げられます。要するに、EUを対象にビジネスを展開している世界中の企業がGDPRを遵守することが求められることになります。

同様の目的で、日本でも2022年4月に個人情報保護法が改正され、デジタル時代にあわせたデータの取り扱いが求められるようになりました。具体的には、個人情報を扱う事業者を対象に氏名、生年月日、マイナンバーカードなど個人を識別できるものが個人情報として扱われます。また、GDPRと同様にサードパーティのCookieも個人情報として扱われ規制の対象になりました。

参照記事:「GDPR」はEUだけでなく世界中に影響を与える。国内事業者への影響や改正された個人情報保護法との違いを解説

目下、こうした規制の影響を大きく受けているのが前述のマーケティング分野です。Cookieが個人情報とみなされると、Cookieから得た情報をもとにマーケティング施策を打てなくなる場合があります。

こうした背景から、Cookieに代わる技術を模索する動きが活発化しています。日経クロストレンドの発表した「今後伸びるビジネス」の2023年上半期ランキングではマーケティング分野の第1位が『Cookie代替技術』となっているなど、プライバシーテックへの注目は一層高まっていることがわかります。

出典:日経クロストレンド「今後伸びるビジネス」2023年上半期ランキングを発表

プライバシーテックで伸びるベンチャー事例

プライバシーテックは既存の強みを持つ大手企業も手堅く事業を展開していますが、近年の需要の高まりを受けて成長するベンチャー企業が増えています。

プライバシー保護と規制対応を両立するデータコラボレーションソリューション『Auto Privacy』を開発するAcompanyは2023年4月、シリーズA資金調達のセカンドクローズにおいて、1.5億円の資金調達を実施し、累計資金調達額は約10.2億円に達しています。Auto Privacyはまさに前述したマーケティング分野でのCookie代替技術として期待されており、複数のデータを暗号化しながら分析し、個人を特定することなくパーソナルデータを活用する支援が可能とされています。

参照記事:プライバシーテックスタートアップ Acompany、累計資金調達額10億円を突破

また、プライバシーを守る防犯・見守りAIカメラ『JUSTY』を提供するJUSTICEYEは2022年4月、プレステージAで約8億円の資金調達を実施しています。同社は防犯カメラが日本で普及しない理由のひとつにプライバシー保護のハードルがあると課題視しており、JUSTYはこの問題をAIによるモザイク処理などで解決する防犯カメラとして期待が寄せられています。

参照記事:プライバシーを守るAIカメラ「JUSTICEYE」を提供する千里眼、約1.3億円の資金調達を実施

編集後記

デジタル化の拡大によってプライバシーテックの需要が急激に高まっていて、市場規模は2027年に2023年比で2倍以上の1,073億円に成長する見込みです。個人情報の安全抜きでは技術の進歩は滞ってしまいますから、プライバシーテックは今後、必須の技術としてより一層の注目を浴びることになるでしょう。

(TOMORUBA編集部 久野太一)

■連載一覧

第1回:なぜ価格が高騰し話題となったのか?5分でわかる「NFT」

第2回:話題の「ノーコード」はなぜ、スタートアップや新規事業担当者にとって有力な手段となるのか?

第3回:世界的なトレンドとなっている「ESG投資」が、スタートアップにとってチャンスである理由

第4回:課題山積のマイクロプラスチック。成功事例から読みとくスタートアップの勝ち筋は

第5回:電力自由化でいまだに新規参入が増えるのはなぜ?スタートアップにとってのチャンスとは

第6回:「46%削減」修正で話題の脱炭素。46%という目標が生まれた経緯と、潜むビジネスチャンスとは

第7回:小売大手がこぞって舵を切る店舗決済の省人化。「無人レジ」の社会実装はいつ来るか?

第8回:実は歴史の深い「地域通貨」が、挑戦と反省を経て花ひらこうとしているワケ

第9回:音声配信ビジネスが日本でもブレイクする予兆。世界の動向から見える耳の争奪戦

第10回:FIREブームはなぜ始まった?「利回り4%」「生活費の25倍の元本」など、出回るノウハウと実現可能性は

第11回:若年層は先進層と無関心層が二極化!エシカル消費・サステナブル消費のリアルとは

第12回:「ワーケーション」は全ての在宅勤務社員がターゲットに!5年で5倍に成長する急成長市場の実態

第13回:なぜいま「Z世代」が流行語に?Z世代の基礎知識とブレイクしたきっかけを分析

第14回:量子コンピュータの用途は?「スパコン超え報道」の読み解き方はなど基礎知識を解説

第15回:市場規模1兆ドルも射程の『メタバース』で何が起こる?すでに始まっている仮想空間での経済活動とは

第16回:『TikTok売れ』はなぜ起こった?ビジネスパーソンが知っておきたい国内のTikTok事情

第17回:パンデミックが追い風に。マルチハビテーションが新しいライフスタイルと地方の課題解決を実現できる理由

第18回:Web3(Web3.0)とは何なのか?Web1.0とWeb2.0の振り返り&話題が爆発したきっかけを解説

第19回:フェムテックで先行する欧米と追従する日本。市場が活気づいている背景とは?

第20回:withコロナに「リベンジ消費」は訪れるか?消費者の“意向”と実際の“動向”からわかること

第21回:子供が家族の介護をサポートする「ヤングケアラー」の実態と、その問題とは?

第22回:半導体不足はなぜ起きた?米中貿易摩擦、巣ごもり需要、台湾への依存などを解説

第23回:【ビジネストレンドまとめ】注目を集めた5つの事業ドメインとは?

第24回:長引くコロナ禍で顕著になる“K字経済”とは?格差が拡大する「ヒト」と「企業」

第25回:「パーパス」とはなぜ注目されるのか?誰のためのものか?5分でわかる基礎知識

第26回:NFT・メタバース・Web3はどう違う?注目を集める「新しいエコシステム」5選

第27回:サステナブルのさらに先いく「リジェネラティブ」とは?実践企業や背景を解説

第28回:16年で2倍に膨れ上がった『電子ゴミ』は何が問題なのか。唯一の解決策とは?

第29回:サウナビジネスはグローバルで健全な成長も、国内ではサウナユーザーは激減。サウナビジネスの最新事情

第30回:【ビジネストレンドまとめ】話題となった「社会課題」トレンド6選

第31回:Play to Earn(P2E)はなぜ注目を集めているのか?ビジネストレンドとしての基礎知識

第32回:脅威の市場ポテンシャルが期待されるクラウドゲーム。GAFAMやソニー、任天堂が参入するポイントを解説

第33回:FIRE、マルチハビテーションなど注目を集めるライフスタイルに関連するビジネストレンド4選

第34回:「ロボアドバイザー」はミレニアル・Z世代になぜ人気?コロナ禍で加速する新しい資産運用の形

第35回:加速する人への投資。岸田首相「5年で1兆円」の方針表明で注目集めるリスキリングとは?

第36回:画像生成AIはなぜ「世界を変える」のか?ビッグテックが拒む「一般公開」と「オープンソース」がもたらす影響力とは

第37回:クリエイターの6割が収益化!国内で広がる「クリエイターエコノミー」の実態と事例

第38回:ドローン分野でも特に熱い「空飛ぶクルマ」は加速度的な成長見込み!ユースケースやリードする国内企業とは

第39回:『ChatGPT』の何がすごい?Google一強時代をおびやかすポテンシャルとは

第40回:現実と同等の仮想空間を構築する『デジタルツイン』はなぜ製造業に効果的?東京都のデジタルツイン計画とは?

第41回:小売業に革命を起こす「ダークストア」、激化する大手とスタートアップの覇権争い

第42回:物流の2024年問題とは?人手不足とECの急成長で物流企業とトラックドライバーが受けるリスクとその対策

第43回:各社がこぞってトレンド予測する若者世代の「セルフケア」はなぜ今注目を集めているのか?

第44回:大手SNSが問題を抱えるなか台頭する「次世代SNS」の有望株とは

第45回:介護人材は間も無く32万人不足へ。台頭は必須の『介護ロボット』の現状と先行事例を紹介

第46回:存在感を強める「グローバルサウス」なぜ今注目を集めているのか?定義や背景、直面する課題などを解説

第47回:位置情報を活用する「ジオターゲティング」がマーケティングに新風を巻き起こしている理由とは?市場動向や活用事例を紹介

第48回:「GDPR」はEUだけでなく世界中に影響を与える。国内事業者への影響や改正された個人情報保護法との違いを解説

第49回:驚異的な成長が見込まれる『デジタルヒューマン』の有力なユースケースとは?チャットボットとどう違う?

第50回:Googleの研究で注目される「心理的安全性」とは?リーダー、マネジメント、人事担当者ができることを解説

第51回:ヴィーガン市場が拡大中!ヴィーガンの基礎知識から最新の市場動向、ビジネストレンドを解説

第52回:ビジネスにおける『レジリエンス』の重要性。VUCAの時代を生き抜く、組織と個人のレジリエンスのあるべき姿とは

第53回:『ナイトタイムエコノミー』が観光産業の起爆剤になる理由とは?夜間の観光を活性化させるナレッジと国内事例を紹介