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『プライバシーテック』が注目される背景とは?高まる個人情報リスクと、GDPRなど各国の規制を解説

『プライバシーテック』が注目される背景とは?高まる個人情報リスクと、GDPRなど各国の規制を解説

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新規事業やオープンイノベーションのプレイヤーやそれらを実践・検討する企業の経営者はTOMORUBAの主な読者層ですが、こうした人々は常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。

今回のテーマは『プライバシーテック』です。現代社会では、デジタル化が急速に進展しています。インターネットの普及、スマートフォンの使用の増加、IoTデバイスの拡散などが原因で、個人情報が以前にも増してオンラインで流通しているのが現状です。

これに伴い、個人のプライバシーが侵害されるリスクも高まっています。こうした動きを受けて、各国でプライバシー保護にむけた規制の整備が進んでいることからも、プライバシーテックの重要度がうかがえます。プライバシーテックの動向をキャッチアップするための情報を紹介していきます。

プライバシーテックが注目を集めている背景

プライバシーテックとは、企業や行政機関などが、消費者や従業員のプライバシーを保護するために利用するソリューションサービスのことを指します。野村総合研究所のレポートでは、ソリューションの具体例として、①利用者から取得した同意の管理、②利用者からの開示など請求への対応、③社内で保有するデータの可視化、④インシデント発生時の対応、といった4つを挙げています。同レポートではプライバシーテックの定義を「法令の遵守や利用者のプライバシー保護のために利用されるソリューションサービスは全てプライバシーテックに含まれる」としています。

参照ページ:「ITナビゲーター2022年版」

冒頭でも述べた通り、デジタル化の進化によってオンラインで流通する個人情報の量は飛躍的に増加していますし、取得した個人情報の利用用途が高度化しています。プライバシーテックが注目されている理由を端的に言えば、個人情報の流通量が増えたことによるプライバシーのリスク増加と言えるでしょう。

個人情報を大量に、かつ高度に活用する代表例としてマーケティングが挙げられます。ウェブサイトの閲覧履歴やECサイトでの購買行動などはCookieと呼ばれる技術で管理され、パーソナライズされた広告配信などに活用されています。

欧州の『GDPR』や日本の『改正個人情報保護法』など、規制強化が進んでいる

プライバシーの取り扱いの重要度が増すなかで、各国はプライバシーに関する規制の整備を進めています。

代表的なのはEUが2018年に定めた『GDPRGeneral Data Protection Regulation、一般データ保護規則』です。GDPRはEUの市民全てを対象にしたプライバシー保護を目指すもので、個人のデータがどのように収集、使用、保存されるかについての透明性を高めることが主要な目的です。GDPRが世界的に話題になっている要因として、EUの圏外であってもEU市民のデータを処理する企業や団体にも“適用される”ことが挙げられます。要するに、EUを対象にビジネスを展開している世界中の企業がGDPRを遵守することが求められることになります。

同様の目的で、日本でも2022年4月に個人情報保護法が改正され、デジタル時代にあわせたデータの取り扱いが求められるようになりました。具体的には、個人情報を扱う事業者を対象に氏名、生年月日、マイナンバーカードなど個人を識別できるものが個人情報として扱われます。また、GDPRと同様にサードパーティのCookieも個人情報として扱われ規制の対象になりました。

参照記事:「GDPR」はEUだけでなく世界中に影響を与える。国内事業者への影響や改正された個人情報保護法との違いを解説

目下、こうした規制の影響を大きく受けているのが前述のマーケティング分野です。Cookieが個人情報とみなされると、Cookieから得た情報をもとにマーケティング施策を打てなくなる場合があります。

こうした背景から、Cookieに代わる技術を模索する動きが活発化しています。日経クロストレンドの発表した「今後伸びるビジネス」の2023年上半期ランキングではマーケティング分野の第1位が『Cookie代替技術』となっているなど、プライバシーテックへの注目は一層高まっていることがわかります。

出典:日経クロストレンド「今後伸びるビジネス」2023年上半期ランキングを発表

プライバシーテックで伸びるベンチャー事例

プライバシーテックは既存の強みを持つ大手企業も手堅く事業を展開していますが、近年の需要の高まりを受けて成長するベンチャー企業が増えています。

プライバシー保護と規制対応を両立するデータコラボレーションソリューション『Auto Privacy』を開発するAcompanyは2023年4月、シリーズA資金調達のセカンドクローズにおいて、1.5億円の資金調達を実施し、累計資金調達額は約10.2億円に達しています。Auto Privacyはまさに前述したマーケティング分野でのCookie代替技術として期待されており、複数のデータを暗号化しながら分析し、個人を特定することなくパーソナルデータを活用する支援が可能とされています。

参照記事:プライバシーテックスタートアップ Acompany、累計資金調達額10億円を突破

また、プライバシーを守る防犯・見守りAIカメラ『JUSTY』を提供するJUSTICEYEは2022年4月、プレステージAで約8億円の資金調達を実施しています。同社は防犯カメラが日本で普及しない理由のひとつにプライバシー保護のハードルがあると課題視しており、JUSTYはこの問題をAIによるモザイク処理などで解決する防犯カメラとして期待が寄せられています。

参照記事:プライバシーを守るAIカメラ「JUSTICEYE」を提供する千里眼、約1.3億円の資金調達を実施

編集後記

デジタル化の拡大によってプライバシーテックの需要が急激に高まっていて、市場規模は2027年に2023年比で2倍以上の1,073億円に成長する見込みです。個人情報の安全抜きでは技術の進歩は滞ってしまいますから、プライバシーテックは今後、必須の技術としてより一層の注目を浴びることになるでしょう。

(TOMORUBA編集部 久野太一)

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