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拡大する「日本版ライドシェア」と世界のライドシェアの違いは?GOやUberなど国内での事例とともに解説

拡大する「日本版ライドシェア」と世界のライドシェアの違いは?GOやUberなど国内での事例とともに解説

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新規事業やオープンイノベーションのプレイヤーや、それらを実践・検討する企業の経営者はTOMORUBAの主な読者層ですが、こうした人々は常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。

今回のテーマは「日本版ライドシェア」です。世界的に普及しているライドシェアサービスは、個人間での車両の共有を可能にし、交通の利便性向上や環境負荷軽減を実現しています。一方、日本では既存のタクシー業界との共存や法整備の課題から、海外のようなライドシェアモデルが十分に普及していない状況です。

しかし近年、地域交通や観光分野での新たな取り組みが進んでおり、日本版ライドシェアの可能性が広がりつつあります。本記事では、その現状と課題、そして未来への展望を詳しく解説します。

日本版ライドシェアとは?世界のライドシェアとの違い

日本版ライドシェアは、交通空白地やタクシー不足に対応するため、国土交通省の主導で導入された新しい運送サービスの仕組みです。この制度は、地域のタクシー事業者の管理下で自家用車や一般ドライバーを活用し、移動手段が不足する地域や時間帯に対して柔軟に輸送を提供することを目的としています。具体的には、配車アプリを活用して、乗車地や降車地を指定した事前確定運賃でのサービスを提供します。

都市部でもタクシーの車両不足が深刻化しており、日本版ライドシェアの対象となっています。国交省の資料によると、大都市圏では特定の時間帯におけるタクシー不足が顕著です。

例えば、大阪市では深夜0時から午前3時の間に75%のマッチング率しか達成されておらず、必要な車両数を大幅に下回っています。また、札幌市では深夜帯に73%のマッチング率となっており、広島市や福岡市でも夕方から深夜にかけて供給不足が見られます。

参照ページ:自動車:日本版ライドシェア(自家用車活用事業)関係情報 - 国土交通省

これらの課題に対応するため、都市部においてもライドシェアを活用した補完的な輸送サービスが注目されています。日本版ライドシェアでは、特にタクシー供給が不十分な時間帯や繁忙期に焦点を当て、都市部での移動ニーズに柔軟に対応することが期待されています。都市部の交通課題を解決することで、観光需要の取り込みやビジネスの効率化にも貢献できる可能性があります。

都市部以外でも導入の背景として、地方や過疎地での移動手段の不足、高齢化社会の進行、観光地におけるタクシー供給の課題があります。

特に、地域交通の担い手不足が深刻な問題となっており、この制度はその解決を目指しています。導入地域には、タクシー不足が顕著な地域や、公共交通の利用が困難な地域が優先されており、タクシー台数の5%を不足分と見なして補う仕組みです。

事業者の参入には条件が設定されており、運送事業者は運輸局の許可を受ける必要があります。事業の実施に際しては、自治体や地域の交通事業者と協議し、地域の実情に応じた運行エリアや運行時間帯が設定されます。この仕組みにより、既存のタクシー事業を補完しつつ、安全性と利便性を確保しています。

出典:日本版ライドシェア、公共ライドシェア等について

世界のライドシェアとの違い

一般的なライドシェア、例えばUberやLyftのようなサービスは、アプリを通じて利用者と運転手をマッチングし、個人が自家用車を使って運送する仕組みが主流です。これらのサービスは、都市部を中心に広がり、タクシーよりも手頃な価格や利便性が支持されています。また、柔軟な勤務時間が可能なため、運転手側にも経済的なメリットがあります。

一方、日本では、道路運送法によって、自家用車を利用した有償運送は原則として禁止されています。この規制は、既存のタクシー事業者を保護するために設けられており、結果的にライドシェアの普及を妨げる要因となっています。

そのため、日本版ライドシェアは、前述のとおり地域の交通課題に対応する形で限定的な運用が進んでいて、タクシー業界との連携するなど、既存業界との共存を図る取り組みになっているのが特徴です。

日本版ライドシェアに参入している事業者の事例

ここまで説明してきたように、日本版ライドシェアには過疎などの社会課題解決の側面と既存業界との折り合いがあるため、新規事業者の参入には低くないハードルがあります。では、参入している事業者はどのようなサービスを提供しているのでしょうか。いくつか事例を紹介します。

【GO】タクシー会社所属の一般ドライバーが運転

タクシーアプリ『GO』は、タクシー会社に所属する一般ドライバーが運転する車両を活用し、効率的な配車サービスを提供しています。この取り組みは、既存のタクシー事業者と連携し、ドライバーがアプリを通じて乗客を効率的に獲得できる仕組みを構築するものです。

具体的には、ドライバーは『GO』アプリを活用して乗客からの配車依頼を受け取り、ナビゲーションに従って目的地まで案内します。これにより、ドライバーは自ら乗客を探す手間を省き、効率的な運行が可能となります。また、乗客はアプリ上で決済を完了できるため、降車時の現金のやり取りが不要となり、安全性と利便性が向上します。

さらに、『GO』はタクシー業界の人手不足解消にも貢献しています。同社が運営する『GOジョブ』では、正社員のタクシー乗務員に加え、パートタイム乗務員など、全国のGO加盟タクシー事業者の求人情報を一元化し、求職者に紹介しています。これにより、これまでタクシー業界に関心がなかった求職者にも新たな就業機会を提供し、業界全体の活性化を図っています。

参照ページ:ライドシェア車両について – GOアプリ

【Uber×タイムズ×ロイヤルリムジン】自家用車を所有していないドライバーも参画可能な取り組み

Uber Japanは、日本で初めてライドシェアドライバー向けのカーシェアプログラムを提供する取り組みを開始しています。このプログラムは、タイムズモビリティやロイヤルリムジンとの協業により実現したものです。ライドシェアドライバーがタイムズモビリティのカーシェアリングサービスを活用して車両を借り受け、ライドシェアサービスを提供できる仕組みです。

この取り組みにより、個人で車両を保有していない人でも、Uberのドライバーとして働くことが可能となり、新たな収入機会が提供されます。

また、タイムズモビリティとの連携で、車両の使用効率が向上し、環境負荷の軽減にも寄与すると期待されています。このプログラムは、柔軟な働き方を求める人々に新しい選択肢を提供するとともに、ライドシェアの普及促進にも寄与する革新的な取り組みです。

参照ページ:Uber Japan、日本初『ライドシェア × カーシェア』 ライドシェアドライバー向けのカーシェアプログラムの提供開始 タイムズモビリティ、ロイヤルリムジンと協業発表

【博報堂】交通空白を埋めるマイカー乗り合いサービス『ノッカル』

『ノッカル』は、博報堂が提供するマイカー乗り合い公共交通サービスで、地域住民同士の助け合いを基盤とした新しい移動手段です。このサービスでは、地域のドライバーが自身の予定に合わせて自家用車で移動し、その際に近隣の利用者を目的地まで送迎します。利用者は、ドライバーの予定を確認し、事前に予約を行うことで、安心して移動が可能となります。

ノッカルは、地域の移動課題を解決するために開発され、既存の公共交通機関ではカバーしきれないエリアや時間帯の移動手段として機能します。また、地域住民が主体となって運営することで、コミュニティの活性化や住民同士の交流促進にも寄与しています。

この取り組みは、富山県朝日町での「ノッカルあさひまち」や、富山県高岡市中田地区での「ノッカル中田」など、各地で実証実験や本格運用が進められています。

さらに、博報堂は「ノッカル」を通じて、地域の社会課題解決を目指す共助・共創モデルの開発にも取り組んでおり、地域の生活者や交通事業者と連携しながら、持続可能な移動サービスの提供を推進しています。

参照ページ:【プロジェクト】マイカー乗り合い交通 「ノッカル」のご案内 |お知らせ|博報堂 HAKUHODO Inc.

編集後記

今回の記事では、「日本版ライドシェア」の特徴や世界のライドシェアとの違いを背景に、GO、Uber、博報堂の「ノッカル」といった注目の取り組みを紹介しました。日本では、法制度や交通インフラの違いから、一般的なライドシェアは普及していないものの、既存のタクシー事業や地域密着型のサービスを活用する形で独自の進化を遂げています。

ライドシェアの未来は、日本特有の課題やニーズに応じて、さらなる発展が期待される分野です。今後、テクノロジーと規制の両面での進化が進む中で、どのように新しい移動体験が形作られていくのか、引き続き注目していきたいテーマです。

(TOMORUBA編集部 久野太一)

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