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分岐点をむかえるアルツハイマー治療 これまでの治療とどう違うのか、新薬がなぜ期待されているのかを解説

分岐点をむかえるアルツハイマー治療 これまでの治療とどう違うのか、新薬がなぜ期待されているのかを解説

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新規事業やオープンイノベーションのプレイヤーやそれらを実践・検討する企業の経営者はTOMORUBAの主な読者層ですが、こうした人々は常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。

今回のテーマは「アルツハイマー治療」です。高齢化社会が進む中で、アルツハイマー病の治療法は医療業界のみならず社会全体にとって重要な課題となっています。この記事では、最新の治療法や研究の進展について詳しく解説し、未来への展望を探ります。

アルツハイマー病とその治療について

アルツハイマー病は、記憶喪失や認知機能の低下を引き起こす進行性の神経変性疾患です。主に高齢者に発症し、最終的には日常生活に大きな支障をきたします。治療には、症状の進行を遅らせるための薬物療法や、非薬物療法として認知リハビリテーション、環境調整などが含まれます。

アルツハイマー病の原因は完全には解明されていませんが、いくつかの要因が関与しています。

●遺伝的要因:一部のアルツハイマー病は遺伝によるものです。家族性アルツハイマー病は特定の遺伝子変異が原因とされています。

●脳内の変化:アルツハイマー病患者の脳にはアミロイドベータとタウタンパク質の異常な蓄積が見られます。これらが神経細胞の機能障害を引き起こし、最終的に神経細胞の死に至ります。

●その他の要因:加齢、高血圧、糖尿病、喫煙などの生活習慣もアルツハイマー病のリスクを高めると考えられています。また、頭部外傷や教育水準の低さも関連があるとされています。

●環境要因:生活環境や食生活も影響を及ぼす可能性があり、特に食事の質、運動習慣、社会的活動の有無がリスクに関連しています。

これらの要因が複雑に絡み合い、アルツハイマー病の発症に至ると考えられています。

アルツハイマー病の治療は、高齢化社会の進展に伴い、ますます重要性を増しています。高齢化により、アルツハイマー病を含む認知症の患者数は増加傾向にあり、これに対処することが社会全体の課題となっています。現在の治療法は、症状の進行を遅らせることが主な目的であることがほとんどです。しかし、適切な治療とケアを行うことで、患者の生活の質を向上させることができます。

アルツハイマー病患者数は2050年までに3倍、診断・治療の市場規模も拡大中

WHOが2023年3月に発表している数字として、世界ではアルツハイマーを含む認知症患者数は5500万人とされています。そして、2050年には3倍の1億5300万人がアルツハイマー病を患うと予測されています。

国内でもこの傾向は顕著で、認知症の人の人数は右肩上がりに増えていく予測です。さらに、65歳以上の高齢者のうち認知症を発症している人の割合は2012年では15%だったのに対して、2030年には23%、2060年には34%と、その比率が増えていく見込みとなっています。

出典:認知症の現状と将来推計

また、調査会社のグローバルインフォメーションが公開しているレポートによると、アルツハイマー病の診断と治療市場規模は、2024年に76億5,000万米ドルと推定され、2029年までに97億8,000万米ドルに達すると予測されており、予測期間(2024年から2029年)中に5.06%のCAGRで成長する見込みです。

参照ページ:アルツハイマー病の診断と治療市場| 業界シェア 市場規模 成長性 2024 - 2029年

アルツハイマー治療の新薬が次々と承認

これまで、アルツハイマー治療は症状を緩和させる対症療法的な薬が一般的でしたが2023年、そして2024年と相次いで画期的な新薬が承認され始めています。アルツハイマー病の原因とされているのは「タウ」や「アミロイドβ」と呼ばれる異常なタンパク質でした。

2023年9月にエーザイと米バイオジェンが共同開発した新薬「レカネマブ」はこの原因物質アミロイドβを取り除くことで、認知症の進行を2~3年遅らせることができると推測されています。

参照ページ:認知症の一因 アルツハイマー病新薬「レカネマブ」厚労省が正式承認 | NHK | 医療・健康

また、2024年3月からは新潟大学と東京大学などのグループが原因物質タウを取り除く特殊な抗体の効果や安全性を調べる治験を開始しています。

参照ページ:遺伝性のアルツハイマー病 国内で新薬の治験始まる | NHK | 医療・健康

さらに、米国では2024年7月、イーライリリーが開発した新薬「ドナネマブ」がFDA(アメリカ食品医薬品局)にて承認されています。ドナネマブも原因物質アミロイドβを取り除くことで症状の進行を遅らせる効果が確認されています。

参照ページ:米FDA アルツハイマー病の新薬「ドナネマブ」の承認を発表 | NHK | アメリカ

アルツハイマー治療の今後の展望

アルツハイマー病の治療における今後の展望には、いくつかの重要な方向性が見られます。

●新薬の開発:前章で紹介したとおり、アミロイドベータやタウタンパク質をターゲットにした新薬の開発が進んでいます。これにより、病気の進行を遅らせるだけでなく、発症を予防する可能性があります。

●早期診断技術の向上:血液検査やイメージング技術の進展により、アルツハイマー病の早期発見が可能になりつつあります。早期診断により、より効果的な治療介入が期待されます。

●ライフスタイルの改善:運動、食事、社会的活動などのライフスタイル要因がアルツハイマー病のリスクに影響することが明らかになっており、予防的な取り組みが強化されています。

●パーソナライズドメディスン:個々の患者に最適化された治療法の開発が進んでおり、遺伝情報やバイオマーカーを活用した個別化医療が期待されています。

これらの進展により、アルツハイマー病の治療と予防が大きく前進し、患者の生活の質が向上することが期待されます。

編集後記

アルツハイマー病の治療と予防における進展は、医学界と社会全体にとって大きな希望をもたらしています。本記事では、治療法の進展や市場規模、新薬の開発の重要性について詳述しました。アルツハイマー病は未だ完全に治癒することは難しいものの、科学技術の進歩により患者の生活の質を向上させる可能性が広がっています。今後も最新の研究成果や治療法に注目し、情報を共有していくことが重要です。

(TOMORUBA編集部 久野太一)

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