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「世の中の“買えない”をゼロに」――創業312年の“食のインフラ企業“国分グループが、食品アクセス問題をテーマにしたオープンイノベーションプログラムを始動!

「世の中の“買えない”をゼロに」――創業312年の“食のインフラ企業“国分グループが、食品アクセス問題をテーマにしたオープンイノベーションプログラムを始動!

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創業312年の食品卸企業、国分グループ本社。国内外の約1万社から約60万点の商品を仕入れ、約3万5000社の小売・外食事業者に販売し、業界を牽引している。「食のマーケティングカンパニー」として、社外とも枠を超えて連携をしていく同社は、2020年、2022年と過去2回オープンイノベーションプログラムを実施し、スタートアップを含む異業種企業とも共創を進めてきた。

そして2024年、3回目となる「国分グループ オープンイノベーションプログラム2024」を実施する。同社がSDGsステートメントとして掲げる「すべての生活者に食を中心とした快適な買い物の場を届ける」のもと、食品アクセス問題にフォーカス。「世の中の“買えない”をゼロに」をテーマに、未来に向けた斬新な技術やノウハウにもとづくアイデアや実証フィールドを求めている。具体的には、以下の通りだ。

【募集内容A】 協力企業……共に活動するアイデアの募集(企業・団体など)

食品アクセス問題を「楽しさの提供」「不便さの解消」の2軸で捉え、それぞれに対応する機能・サービス、国分グループと共に活動する提案を募集

【募集内容B】 実証フィールド……課題を抱えている地域や企業(企業・地方自治体など)

高齢者や地方に住む方の「食品アクセス問題」や住民や従業員の「健康管理・改善」「インバウンドに対応したサービス」などの課題を抱えている企業・地方自治体を募集

そこで今回TOMORUBAでは、同プログラムの事務局を担う国分グループ本社 イノベーション推進部の目加田氏に取材を実施。3回目となるプログラムを開催する背景や募集テーマ、協業するメリットなどについて、詳しく話を聞いた。

▲国分グループ本社株式会社 サプライチェーン統括部 イノベーション推進部 イノベーション推進課長 兼 マーケティング・商品統括部 事業推進部 地域共創課 基幹 目加田 雄亮 氏

社外パートナーとも連携し、「共創圏」を構築

――まずは、国分グループ本社の事業について教えてください。

目加田氏 : 国分グループ本社は、1712年創業の食品卸会社として、国内外の食品メーカーから商品を仕入れ、全国の小売・外食事業者等に販売をしています。

また、お客様の課題やニーズに合わせて、冷凍技術やデジタル化やサステナビリティといった機能や新しい価値の提供にも近年力を入れています。そして、社内外の人々と枠を超えて連携して共創圏を構築し、食の価値創造No.1企業を目指しています。

――様々なパートナーと共に新たな価値を作る中での課題感や、マーケットからの期待をどのように感じていますか?

目加田氏 : 食のインフラを守ると同時に、流通に新たな価値を提供することが求められる時代だと感じています。昨今の物価高では、卸売業の方でも商品の価格変更をして食品業者を守っています。一方で、世の中の消費行動の変化も顕著です。たとえば高付加価値の商品や、機能が付加された商品、環境に配慮した商品、サステナビリティといったニーズが増加しています。

――これまで、外部共創をどのように進めてきましたか。

目加田氏 : 共創圏の構築、業務DX、異業種や自治体との連携を進めています。メーカー様と小売業様とのビジネスはもちろん中核として進めていくのですが、「地域密着 全国卸」として、地域に入って社会課題の解決に取り組んだり、そこに対して当社が持つリソースを活用したりしています。

ただ、それだけでは足りないため、私たちが持っていない機能を持つパートナー企業と連携しています。スタートアップ連携も積極的に進めており、最近はデータサイエンス系のスタートアップ・DATAFLUCT社との共創も実現しました。

――DATAFLUCT社とは、どのような共創を進めているのですか?

目加田氏 : AI需要予測による食品ロス削減プロジェクトです。当社では、2019年にデジタル化推進プロジェクトを発足しました。そこで掲げたテーマの一つが、AIを活用した需要予測の精度向上です。従来の需要予測は、過去の受注データをもとに行っていたのですが、実際には天候や気温など気象要件も大きく影響を与えます。

そうしたデータも活用して予測精度をあげるべく、DATAFLUCTさんとの共創に取り組み始めました。当社としては初めてに近いプロジェクトでしたが、2021年から実証実験を始め、今ではAI需要予測によって発注業務の効率化につなげています。ただ、これはまだ内部に閉じている取り組みなので、今後はメーカー様や小売様との連携、あるいは他社卸売業様への展開可能性も検討していきたいと考えています。

「世の中の“買えない”をゼロに」をテーマに、楽しさの提供・不便さの解消の2軸で募集

――続いて、今回のプログラムについて伺います。「国分グループ オープンイノベーションプログラム」は今回で3回目ということですが、プログラムの狙いについて教えてください。

目加田氏 : これまで、2020年、2022年にオープンイノベーションプログラムを実施しました。第1回は「食の未来を創る」というテーマで募集し、100件強の応募をいただきました。そこから地方創生、AI活用、マーケティングなどのプロジェクトが生まれました。このプログラムで出会ったmyProduct社との地方創生支援プロジェクトは現在も継続しています。2回目となる2022年は「地域共創」がテーマでした。コロナ禍での開催ではありましたが、こちらも地域共創・創生、デジタルテーマなど複数のプロジェクトが進みました。。

3回目となる今回は、食品アクセス問題に注目し、「世の中の“買えない”をゼロに」を大テーマに据えています。少子高齢化や人口減少が進む日本では、過疎地のみならず食品アクセスは大きな社会課題となってきています。当社は卸売業として小売様に食品を販売していますが、それは最終的に消費者に届くものとなります。食品アクセスに関わる機能提供や、新たな価値の創造を進めていきたいと考えました。

――食品アクセス問題について、もう少し詳しくお話しいただけますか。

目加田氏 : 少子高齢化・人口減少が進むことで、国内の消費市場は縮小していきます。小売業の売上が減少し、地方では店舗の維持が難しくなることが予測されます。そういった厳しい状況の中で食品アクセス問題を考える時、不便さだけに目を向けることが多いのですが、私たちは持続的な食品供給システムの維持とともに、食の楽しさや面白さも追及していきたいと考えています。

そこで、今回は「世の中の“買えない”をゼロに」という大テーマの中で、「楽しさの提供」と「不便さの解消」という2つの軸を設定しました。たとえば、今までは鮮度が保てず、値引きや廃棄になっていた食品が、最近ではフードテックの発展により冷凍技術や保管技術が向上し、以前よりも高付加価値の状態を長く保てるようになっています。

他にも、面白いコミュニティを一緒に作ったり、食育を進めていったり、色々なアプローチの仕方があると思います。このような、私たちが想定していることだけではなく、それを超えた提案を頂くことも期待しています。応募頂いた企業様と提案を一緒にブラッシュアップしていき、社会実装を行い、地域社会への貢献をしていきたいです。もちろん、この2軸のテーマ以外にも、食に関わるテーマで可能性を感じられるアイデアの提案があれば、前向きに検討していきたいと考えています。

▲『国分グループ オープンイノベーションプログラム 2024』のテーマと募集内容。

――目加田さんの所属するイノベーション推進部は、プログラムにおいてどのような役割を担うのでしょうか。

目加田氏 : 本プログラムの推進や全体的な運営を担っています。プログラムスタート時の2020年当時は経営企画部が主導していましたが、その後2021年にイノベーション推進部が発足し、現在に至ります。ただ、当然私たちだけでは実現できません。私たちはパートナー企業と、社内の関連部署や全国の拠点とのハブとして、調整をしていきます。

長期的な関係性を視野に入れた業務提携や出資の可能性も

――今回のプログラムで、どのようなゴールを目指していますか。

目加田氏 : プロジェクトの件数は限定せず、エリアも東京だけではなく全国幅広く考えていきたいです。そして事業化は当然のことながら、社会課題の解決はすぐに実現できるものばかりとは限りません。これは国分グループ300年以上の歴史の中で実感していることです。

良いパートナーとの出会いがあれば、長期的な目線で共創を続け、たとえば出資を検討するなど、より強固な関係性を構築していきたいと考えています。当社はこの数年でスタートアップ出資や業務提携など、以前はなかったような共創の形を実現しているため、このプログラムでも進めていきたいですね。

そしてもう1つ、私たちは卸売業の目線でこのテーマを見ていますが、食の課題はそれだけではなく、まったく異なるアプローチもあるはずですから、そういったアイデアも期待したいですね。

――これまでスタートアップ出資は何件くらいしているのでしょうか。

目加田氏 : まだまだ、数は限られます。当社の考え方としては、出資といってもキャピタルゲインを得るためではなく、より強固に手を携えて事業を一緒に作り、より良い取り組みにしていくことを視野に入れています。

――共創相手として、どのような企業をイメージしていますか。

目加田氏 : テーマの中で2軸あるうち「楽しさの提供」については、健康的な食生活を提供するためのサービスを持つ企業、野菜の保存技術がある企業や、コミュニケーションの場をつくるノウハウのある企業。他にも、VRなど新たな技術を使った買い物の体験など、食の面白さを創出できる技術やアイデアのある企業をイメージしています。

「不便さの解消」では、物流インフラを持つ企業、過疎地の高齢者に機能提供ができる企業などですね。また、インバウンドが増加する中で、食品の説明が日本語表記だけで、日本の食の魅力がなかなか伝わっていないと感じることもあります。そうした課題を解決できるツールを開発している企業も共創の可能性があります。

さらに、実証フィールドを提供いただき、社会課題の解決に一緒に取り組んでいただける自治体や企業も募集しています。

仕入先や販路、商品の目利き、物流といった豊富なリソースを提供

――今回のプログラムに参加するメリット、提供できるリソースについて教えてください。

目加田氏 : 国分グループのリソースとしては、国内外の約1万社という多岐にわたる仕入先、約3万5000社の小売・外食事業者といった販路があります。他にも、お客様に提供する商品の目利きといったマーチャンダイジング、それらを販売促進していくマーケティング、全国326か所、国外約60か所の物流拠点などの活用を検討することが可能です。過去2回のプログラムの経験から、プロジェクトチームをしっかりと組んで、PoCを経て事業化までサイクルをしっかりと回していく体制が整ってきました。

そして、私たちイノベーション推進部だけではなく、当社の経営陣も外部共創に対して意欲的です。オープンイノベーションはこれから不可欠であり、グループ全体の取り組みとして位置付けています。だからこそ、応募いただいた企業の方々にはしっかりと対応し、関連部署と連携をしていきます。

また、当社には7つのエリアカンパニーがあり、それぞれの会社との連携もできます。さらに、機能ごとに低温、野菜、水産を扱う会社がグループ内にあるため、やりたいことが合致すれば、そこに対して私たちイノベーション推進部が調整役となって進めていきます。

――最後に、応募を検討している企業にメッセージをお願いします。

目加田氏 : 食品アクセス問題といった大きな社会課題の中で、今回はお話しした通り2つの軸のテーマを設定しています。それに対する機能やソリューションをぜひお寄せいただきたいと思いますが、「的外れかな」と思っても、まずは手を挙げていただきたいです。また、国分グループという会社をこの機会に知っていただいたうえで、「食」を軸に10年20年と長期にわたって共創していけるパートナー企業と出会いたいです。

私たちのリソースもしっかりと提供しますし、より強固なパートナーシップに向けた出資をする可能性もあります。プロジェクトチームとして一丸となり進めていくことについて、国分グループは強みを持っています。そしてイノベーションは根気強さが必要ですが、私たちは粘り強く泥臭く仕事を進めていきますので、そこを見ていただいたうえで、ぜひご応募を検討してください。

▲「国分グループ オープンイノベーションプログラム2024」の運営を担うメンバーたち。様々なバックグラウンドや知見・スキルを有しており、それらを活かしながらオープンイノベーションを推進していく。

取材後記

日本の「食」の流通の歴史と共に、300年以上も歩んできた国分グループ。少子高齢化や人口減少に伴う食品供給の課題に目を向けた同社が今回のプログラムで掲げるテーマは、食品アクセス問題における楽しさの提供と不便さの解消だ。様々なアイデアや技術を持つ企業や、実証フィールドを提供できる自治体などとパートナーシップを組み、大きな社会課題に対峙しようとしている。老舗企業ではあるが、外部共創やスタートアップ連携の事例を着実に積み重ねている同社。食品流通業界で積み重ねた豊富なリソースも魅力的だ。興味のある企業には、ぜひとも応募をして欲しい。(9/30応募締切)

https://auba.eiicon.net/projects/25392

(編集:眞田幸剛、文:佐藤瑞恵、撮影:加藤武俊)

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  • 谷口靖弥

    谷口靖弥

    • 個人事業主
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