1. Tomorubaトップ
  2. ニュース
  3. 小売業者が自らメディアとなって収入を得る「リテールメディア」。近い未来にテレビの広告収入を上回ると予想されるポテンシャルとは?
小売業者が自らメディアとなって収入を得る「リテールメディア」。近い未来にテレビの広告収入を上回ると予想されるポテンシャルとは?

小売業者が自らメディアとなって収入を得る「リテールメディア」。近い未来にテレビの広告収入を上回ると予想されるポテンシャルとは?

  • 12880
1人がチェック!

新規事業やオープンイノベーションのプレイヤーやそれらを実践・検討する企業の経営者はTOMORUBAの主な読者層ですが、こうした人々は常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。

今回の注目トレンドは「リテールメディア」です。消費者が購入決定を下す現場、つまり小売環境での広告やブランドコミュニケーションを指し示すリテールメディアは、小売業界の新たな収益源として近年その重要性を高めています。この記事では、リテールメディアがどのように小売業界のパラダイムを変えているのかを掘り下げていきます。

リテールメディアは小売事業者が自ら展開するマーケティングコミュニケーション

リテールメディアとは、小売業者が自らの販売スペース内やオンラインプラットフォーム上で展開する広告やプロモーションのことを指します。これには、店頭でのデジタルサイネージ、Webサイトでの商品レコメンド、さらにはモバイルアプリを通じてパーソナライズされたクーポン配布なども含まれています。リテールメディアはブランドにとって顧客と直接的にコミュニケーションを取る手段を提供し、顧客の購入経路に沿って適切なタイミングで影響を与えることが可能です。

リテールメディアの起源は、実店舗におけるポイント・オブ・パーチェス(POP)広告にさかのぼりますが、デジタル技術の進化により、その範囲と影響力は大幅に拡大しました。

現代のリテールメディアは、顧客のショッピング体験全体を包括的にデザインすることを可能にし、データドリブンのアプローチを通じて消費者行動の理解を深め、マーケティング効果を最大化しています。

特に、eコマースの台頭に伴い、小売業者はオンラインプラットフォーム上でのリテールメディアを拡張し、個々の消費者に合わせたターゲティング広告やプロモーションを展開するようになりました。この動向は、Amazonや楽天といった大手eコマース企業だけでなく、従来の小売業者にとっても、顧客とのエンゲージメントを深め、収益を向上させる重要な戦略となっています。

国内リテールメディアの市場規模は5年で6倍に成長

CARTA HOLDINGSが公開しているレポートによると、2022年のリテールメディア広告市場は135億円となっており、2026年には約6倍の805億円規模に拡大すると予測されています。

出典:CARTA HOLDINGS、リテールメディア広告市場調査を実施 ~リテールメディア広告市場は2022年に135億円、2026年には805億円と予測

また、英国のメディア企業GroupMによると、リテールメディアの世界広告市場規模は2023年時点で1,257億ドルに達しており、2028年にはテレビテレビの広告収入を上回ると予想されており、そう広告収入の15.4%を占めるとの見立てになるとのことです。

参照ページ:Retail media ad revenue forecast to surpass TV by 2028 | Reuters

ウォルマート、ファミリーマートのリテールメディア活用事例

リテールメディアの活用事例として、特に注目すべきはアメリカの大手小売チェーン、ウォルマートです。ウォルマートは、自社のオンラインプラットフォーム及び物理店舗で「Walmart Media Group」を設立し、広告主に対して独自のリテールメディアソリューション「Walmart Connect」を提供しています。

出典:Walmart Connect

この取り組みにより、ウォルマートは消費者の購買行動データを活用して、ターゲット広告を最適化し、消費者にとってより関連性の高いショッピング体験を提供しています。Webサイトの月間利用者数は1億3000万人で22年度の売上高は27億ドルを超えているとのことで、その規模の大きさがうかがえます。

具体的には、ウォルマートのリテールメディアは、特にeコマースプラットフォーム内でのプロダクトページや検索結果ページにおいて、広告表示を最適化することで顕著な成果を上げています。これにより、広告主はより効果的に消費者にリーチし、ウォルマートは新たな収益源を確立しています。

参照ページ:ウォルマートのリテールメディア急伸の理由 日米市場に7つの違い

出典:FamilyMartVision|店内広告|企業情報|ファミリーマート

国内では、代表的な事例としてファミリーマートのデジタルサイネージ「FamilyMartVision」が挙げられます。店舗内に大画面のデジタルサイネージを設置し、商品・サービスの広告やエンタメ、アート、ニュースなどの情報を映像コンテンツとして配信しています。

FamilyMartVisionは2024年3月までに10,000店舗に導入されており、1週間で約6,400万人に接触可能なメディアとなっています。

編集後記

リテールメディアは、デジタル化と消費者行動の進化に伴い、小売業界に革命をもたらしています。本記事ではリテールメディアがいかにしてブランドと消費者の接点を増やし、同時に小売業者の収益向上に寄与しているかを解説しました。特にウォルマートの事例ではその規模の大きさがよくわかりましたが、同時に国内の取り組みが遅れていることも示唆しています。

リテールメディアの導入は単に新しい広告手法を追加するだけでなく、消費者体験を向上させ、データに基づいた意思決定を強化することができます。これにより、小売業者はより効率的な在庫管理とターゲティング広告を展開し、最終的には顧客満足度を高めることができます。今後もリテールメディアは技術革新の進展と共に進化し続けるでしょう。

(TOMORUBA編集部 久野太一)

■連載一覧

第1回:なぜ価格が高騰し話題となったのか?5分でわかる「NFT」

第2回:話題の「ノーコード」はなぜ、スタートアップや新規事業担当者にとって有力な手段となるのか?

第3回:世界的なトレンドとなっている「ESG投資」が、スタートアップにとってチャンスである理由

第4回:課題山積のマイクロプラスチック。成功事例から読みとくスタートアップの勝ち筋は

第5回:電力自由化でいまだに新規参入が増えるのはなぜ?スタートアップにとってのチャンスとは

第6回:「46%削減」修正で話題の脱炭素。46%という目標が生まれた経緯と、潜むビジネスチャンスとは

第7回:小売大手がこぞって舵を切る店舗決済の省人化。「無人レジ」の社会実装はいつ来るか?

第8回:実は歴史の深い「地域通貨」が、挑戦と反省を経て花ひらこうとしているワケ

第9回:音声配信ビジネスが日本でもブレイクする予兆。世界の動向から見える耳の争奪戦

第10回:FIREブームはなぜ始まった?「利回り4%」「生活費の25倍の元本」など、出回るノウハウと実現可能性は

第11回:若年層は先進層と無関心層が二極化!エシカル消費・サステナブル消費のリアルとは

第12回:「ワーケーション」は全ての在宅勤務社員がターゲットに!5年で5倍に成長する急成長市場の実態

第13回:なぜいま「Z世代」が流行語に?Z世代の基礎知識とブレイクしたきっかけを分析

第14回:量子コンピュータの用途は?「スパコン超え報道」の読み解き方はなど基礎知識を解説

第15回:市場規模1兆ドルも射程の『メタバース』で何が起こる?すでに始まっている仮想空間での経済活動とは

第16回:『TikTok売れ』はなぜ起こった?ビジネスパーソンが知っておきたい国内のTikTok事情

第17回:パンデミックが追い風に。マルチハビテーションが新しいライフスタイルと地方の課題解決を実現できる理由

第18回:Web3(Web3.0)とは何なのか?Web1.0とWeb2.0の振り返り&話題が爆発したきっかけを解説

第19回:フェムテックで先行する欧米と追従する日本。市場が活気づいている背景とは?

第20回:withコロナに「リベンジ消費」は訪れるか?消費者の“意向”と実際の“動向”からわかること

第21回:子供が家族の介護をサポートする「ヤングケアラー」の実態と、その問題とは?

第22回:半導体不足はなぜ起きた?米中貿易摩擦、巣ごもり需要、台湾への依存などを解説

第23回:【ビジネストレンドまとめ】注目を集めた5つの事業ドメインとは?

第24回:長引くコロナ禍で顕著になる“K字経済”とは?格差が拡大する「ヒト」と「企業」

第25回:「パーパス」とはなぜ注目されるのか?誰のためのものか?5分でわかる基礎知識

第26回:NFT・メタバース・Web3はどう違う?注目を集める「新しいエコシステム」5選

第27回:サステナブルのさらに先いく「リジェネラティブ」とは?実践企業や背景を解説

第28回:16年で2倍に膨れ上がった『電子ゴミ』は何が問題なのか。唯一の解決策とは?

第29回:サウナビジネスはグローバルで健全な成長も、国内ではサウナユーザーは激減。サウナビジネスの最新事情

第30回:【ビジネストレンドまとめ】話題となった「社会課題」トレンド6選

第31回:Play to Earn(P2E)はなぜ注目を集めているのか?ビジネストレンドとしての基礎知識

第32回:脅威の市場ポテンシャルが期待されるクラウドゲーム。GAFAMやソニー、任天堂が参入するポイントを解説

第33回:FIRE、マルチハビテーションなど注目を集めるライフスタイルに関連するビジネストレンド4選

第34回:「ロボアドバイザー」はミレニアル・Z世代になぜ人気?コロナ禍で加速する新しい資産運用の形

第35回:加速する人への投資。岸田首相「5年で1兆円」の方針表明で注目集めるリスキリングとは?

第36回:画像生成AIはなぜ「世界を変える」のか?ビッグテックが拒む「一般公開」と「オープンソース」がもたらす影響力とは

第37回:クリエイターの6割が収益化!国内で広がる「クリエイターエコノミー」の実態と事例

第38回:ドローン分野でも特に熱い「空飛ぶクルマ」は加速度的な成長見込み!ユースケースやリードする国内企業とは

第39回:『ChatGPT』の何がすごい?Google一強時代をおびやかすポテンシャルとは

第40回:現実と同等の仮想空間を構築する『デジタルツイン』はなぜ製造業に効果的?東京都のデジタルツイン計画とは?

第41回:小売業に革命を起こす「ダークストア」、激化する大手とスタートアップの覇権争い

第42回:物流の2024年問題とは?人手不足とECの急成長で物流企業とトラックドライバーが受けるリスクとその対策

第43回:各社がこぞってトレンド予測する若者世代の「セルフケア」はなぜ今注目を集めているのか?

第44回:大手SNSが問題を抱えるなか台頭する「次世代SNS」の有望株とは

第45回:介護人材は間も無く32万人不足へ。台頭は必須の『介護ロボット』の現状と先行事例を紹介

第46回:存在感を強める「グローバルサウス」なぜ今注目を集めているのか?定義や背景、直面する課題などを解説

第47回:位置情報を活用する「ジオターゲティング」がマーケティングに新風を巻き起こしている理由とは?市場動向や活用事例を紹介

第48回:「GDPR」はEUだけでなく世界中に影響を与える。国内事業者への影響や改正された個人情報保護法との違いを解説

第49回:驚異的な成長が見込まれる『デジタルヒューマン』の有力なユースケースとは?チャットボットとどう違う?

第50回:Googleの研究で注目される「心理的安全性」とは?リーダー、マネジメント、人事担当者ができることを解説

第51回:ヴィーガン市場が拡大中!ヴィーガンの基礎知識から最新の市場動向、ビジネストレンドを解説

第52回:ビジネスにおける『レジリエンス』の重要性。VUCAの時代を生き抜く、組織と個人のレジリエンスのあるべき姿とは

第53回:『ナイトタイムエコノミー』が観光産業の起爆剤になる理由とは?夜間の観光を活性化させるナレッジと国内事例を紹介

第54回:『プライバシーテック』が注目される背景とは?高まる個人情報リスクと、GDPRなど各国の規制を解説

第55回:『モーダルシフト』が担う3つの重責。環境問題、人手不足、コスト削減をどうやって実現するのか?

第56回:性差をイノベーションに繋げる「ジェンダードイノベーション」に集まる期待と、科学・技術分野の構造が抱える問題

第57回:近年の半導体業界の動向は?台湾ファウンドリが一極集中、米中貿易摩擦によるリスク、日本企業の巻き返しなどを解説

第58回:「SDV」の普及で車両はアップデートする時代に。政府が本腰を入れてシェア3割を目指す「モビリティDX戦略」とは

新規事業創出・オープンイノベーションを実践するならAUBA(アウバ)

AUBA

eiicon companyの保有する日本最大級のオープンイノベーションプラットフォーム「AUBA(アウバ)」では、オープンイノベーション支援のプロフェッショナルが最適なプランをご提案します。

チェックする場合はログインしてください

コメント1件

  • 眞田 幸剛

    眞田 幸剛

    • eiicon company
    0いいね
    チェックしました