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「早期にコロナ前の水準を上回る」各省庁を横断して策定された『新時代のインバウンド拡大アクションプラン』とは

「早期にコロナ前の水準を上回る」各省庁を横断して策定された『新時代のインバウンド拡大アクションプラン』とは

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新型コロナウイルス感染症は、多くの業界に深刻な影響を与えましたが、その中でも特に観光業界は甚大な打撃を受けました。コロナ禍により一時的に消滅したインバウンド需要ですが、2022年10月の日本の水際措置の大幅緩和以降、訪日外国人旅行者数は堅調に回復してきています。とはいえ、まだコロナ以前の水準には及んでいないのが現状です。

こうした経緯から、政府は今年3月に新たな『観光立国推進基本計画』を策定しました。「持続可能な観光地域づくり」「インバウンドの回復」「国内交流拡大」の3つの戦略で施策を推進することとしたのです。特に、訪日外国人旅行者の旅行消費額については、コロナ前を上回る5兆円の早期達成を目指すこととしています。

そのため政府は今年5月に『新時代のインバウンド拡大アクションプラン』を提案しました。アクションプランの中では訪日外国人旅行者の旅行消費額5兆円という高い目標を達成するために「新たな視点が必要」とも言及されています。従来の観光にとどまらず、ビジネス、教育・研究など、観光の観点からは重視されていなかった分野でも施策の捉え直しを行うことが求められています。

観光需要を効果的・持続的に根付かせ、新たな価値の創造につなげていくことを目指すこの『新時代のインバウンド拡大アクションプラン』について解説していきます。

高い目標を達成するため、「3分野」「16の軸」「78の施策」でインバウンドの拡大を図る

まず、『新時代のインバウンド拡大アクションプラン』の概要から解説していきます。このアクションプランは前述の『観光立国推進基本計画』の中で掲げられている2つの目標を達成するための具体的なプランをまとめたものです。2つの目標は以下の通りです。

1.訪日外国人旅行消費額:早期5兆円達成

2.訪日外国人旅行者数:2025年までに3200万人(2019年水準)超え

この目標を達成するためには、いままでの「外国人観光客を呼び込む」という観点からさらに視野を広げて、インバウンド需要をより大きく効果的に根付かせる方策を検討する必要があります。

出典:新時代のインバウンド拡大アクションプラン 概要

そのためアクションプランでは「ビジネス分野」「教育・研究分野」「文化芸術・スポーツ・自然分野」これら3つの分野でそれぞれ16の軸を定め、78の施策を立案することで国際的な人的交流を伴う取り組みの深化と掘り起こしを狙うとのことです。

では、3つの分野ごとにどのような軸と施策が立案されているのでしょうか。

【ビジネス分野】ビジネスマッチングなどの施策で、日本をネットワークの結節点に

ビジネス分野では、以下の3つの目標を定めています。

1.ビジネス目的での訪日外国人旅行消費額を2割増加

 a.7,200億円 ⇒ 8,600億円

2.国際会議の開催件数

 a.アジア最大の開催国(アジア主要国で3割以上)

 b.アジア No.1の国際会議開催国として不動の地位、世界5位以内

3.展示会・見本市への外国人参加者数を2割増加

 a.139千人⇒ 167千人

これを実現するために、7つの軸でアプローチする計画です。

1.投資拡大の機会を捉えたビジネス交流の促進

2.国際金融センターの我が国における拠点化

3.外国人に対する粒子線治療等の医療の提供

4.ビジネスマッチング等を通じた海外企業関係者等との交流拡大

5.国際会議、国際見本市等の積極的な開催・誘致

6.産業資源の活用による新たなビジネス交流需要の獲得

7.人的交流の促進

さらに、これらの軸から落とし込まれた40の施策が立案されています。例えば、4つ目の軸「ビジネスマッチング等を通じた海外企業関係者等との交流拡大」の中では、日本のスタートアップコミュニティや成長分野の企業をビジネスマッチングを介して交流させる施策があります。

施策には「世界的なVCを招聘してスタートアップイベントを開催する」「海外スタートアップとの連携強化」「中小企業と海外企業のCEOをマッチングする」「万博を契機に地域企業と万博参加企業の交流を拡大する」といった具体的なものが数多く立案されています。

【教育・研究分野】内向き志向から国際頭脳循環の潮流にスイッチ

教育・研究分野では、以下の2つの目標が定められています。

1.海外からの研究者の受入れ数を2割増加

 a.13千人⇒16千人

2.科学技術・自然・医療・社会分野等に係る国際会議への外国人参加者数を2割増加

 a.155千人⇒186千人

この目標を実現するために、4つの軸でアプローチする計画です。

1.グローバル・スタートアップ・キャンパス構想の推進

2.世界トップレベルの研究人材の交流促進

3.留学生などの積極的な受け入れ

4.国際学会の積極的な開催・誘致

アクションプランには、抱える課題として「コロナ禍の中で我が国の研究が内向き志向になっている」と指摘しており、さらに「国際頭脳循環の潮流の中に我が国の大学や研究機関等が確たる存在感を示し続けなければ、日本の将来も危うい」と危惧感をあらわにしています。

プランの中では、4つの軸をもとに、13の施策が打ち出されています。例えば施策のひとつには「ディープテック分野に特化した研究機能と国際標準のインキュベーション機能を兼ね備えた『グローバル・スタートアップ・キャンパス』を創設する」と記載されており、既存の観光の枠を超えてグローバルな拠点を構える構想があります。

【文化芸術・スポーツ・自然分野】海外への発信と国内への呼び込みを一層強化

文化芸術・スポーツ・自然分野では、以下の2つの目標が定められています。

1.世界のアート市場における我が国の売上額シェアを7位に引き上げ

 a.ランク外⇒7位

2.スポーツ目的の訪日外国人旅行者数を2割増加

 a.229万人⇒270万人

これらの目標を達成するために、以下の5つの軸でアプローチします。

1.海外向けコンテンツビジネスの育成・発展

2.スポーツコンテンツビジネスの国際展開・スポーツツーリズムの推進

3.ナイトタイムなどにおけるコンテンツの充実

4.国際会議・国際見本市などの積極的な開催・誘致

5.少数限定の宿泊体験・体験型コンテンツの提供

文化芸術・スポーツ・自然、いずれも海外への発信、そして国内への呼び込みを一層強化する狙いがあります。25の施策が立案されており、中には「近現代建築の維持・活用等を通じたコンテンツ化の促進」と題して、優れた建築や風景を維持・活用するため、対象の台帳化や取引・継承のためのマッチングを促進するとしています。価値の高い日本の文化芸術を国内外のプレイヤーを巻き込んでビジネスマッチングすることによって機能強化するというユニークな取り組みも構想に含まれているようです。

【編集後記】各省庁が横串で観光の枠にとらわれずに施策を立案

アクションプランの施策を読み込むほど、これは観光の施策なのか、経済全体の施策なのか、良い意味で境界線があいまいになっている印象を受けました。各省庁を横断して策定されたこのプランは、日本がこれまでの経済大国路線から、観光大国としても台頭していかねばならないという背水の陣を覚悟している姿勢のあらわれではないでしょうか。

(TOMORUBA編集部 久野太一)

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