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ディープテックスタートアップが持つ独自技術を、MRI・電通総研の協力を得ながら社会実装へ――プラチナ構想ネットワークが実施するアクセラ『DAP2026』とは?事務局とプログラムOB・tayo熊谷氏に聞く

ディープテックスタートアップが持つ独自技術を、MRI・電通総研の協力を得ながら社会実装へ――プラチナ構想ネットワークが実施するアクセラ『DAP2026』とは?事務局とプログラムOB・tayo熊谷氏に聞く

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『DAP2026』は、地球と人類の持続可能な社会を目指して活動するプラチナ構想ネットワーク(以下、PNW)と、テクノロジーとデータの力でスタートアップエコシステムの発展に取り組んでいるケップルとが共催し、三菱総合研究所(以下、MRI)と電通総研がスタートアップの共創パートナーとなって社会実装を目指すプログラムだ。2026年7月6日から、スタートアップのエントリーを開始している。(※エントリー締切:8月21日)

ICF Deeptech Acceleration Program 2026』(以下、DAP2026)は、MRIがこれまで進めてきたアクセラレーションプログラム『ICF Business Acceleration Program』(以下、BAP)で培ったノウハウを踏襲し、これまでの「社会課題起点」の思想は残しつつ、ロボット・フィジカルAIに解決策の軸足を置いて、新たなスタートを切る。

今回TOMORUBAでは、プログラムの全容を明らかにするべく、PNWの担当者とプログラムOBである株式会社tayo 代表の熊谷洋平氏(『BAP2023』優秀賞受賞)にインタビューを実施。MRIのプログラム『BAP2023』を振り返りつつ、『DAP2026』の展望や参加メリット、そして参加者へのメッセージを伺った。

MRIプログラム『BAP2023』からの伝承

――まずは、MRIが実施したアクセラレーションプログラム『BAP2023』がどのようなものであったか、概要からお聞かせいただけますか?

PNW・中村氏 : MRIが実施した『BAP2023』(2023年7月スタート)は、社会課題解決を提案するスタートアップを募集し、その社会インパクトの大きさを軸にファイナリストを選定するプログラムでした。

『BAP2023』では、7社のファイナリストに加えて、優れた技術や社会課題解決策を持つスタートアップ8社を特別賞として表彰し、合計15社を選定しました。単に優秀な企業を選ぶだけでなく、社会的に価値のある技術やアイデアを持つスタートアップとの連携の可能性を広げたいという思いがありました。そしてファイナリスト7社には1.5カ月間のメンタリング期間を設け、特別賞8社には適宜コミュニケーションを取り、共創の可能性を探りました。

▲一般社団法人プラチナ構想ネットワーク 主任研究員 中村京春氏

――1.5ヶ月間のメンタリングでは、どのようなことに注力されたのでしょうか?

PNW・中村氏 : この期間に最も注力したのは、スタートアップが最終的に目指す社会変革、いわゆる「スーパーゴール」を設定し、そこに至るまでの道筋をバックキャスト的に描く「ロジックモデル」の作成支援でした。

これは、事業の短期的な目標だけでなく、その事業が将来的にどのような社会的な影響をもたらすのかを深く掘り下げ、ビジョンを再構築するプロセスです。スタートアップの皆さんと対話を重ねながら、彼らが本当に成し遂げたい社会変革を言語化し、そこに至る具体的な道筋を描く手助けをしました。

参加したスタートアップからは、「普段は短期中期の視点になりがちだが、BAPでのメンタリングでは長期的な視点から事業を見直すことができた」という声をいただくことができました。1.5か月の短期間ではありましたが、非常に濃密な時間でした。

──『BAP2023』での学びと、それらが『DAP2026』にどのように活かされているか教えてください。

PNW・中村氏 : 先ほども述べたように、最終的に大きな社会変革を達成するためにバックキャストで事業戦略をブラッシュアップし、その中で足元実現できることをスタートアップと共創する動きはとても効果的でした。スタートアップとの共創活動というと曖昧ですが、官民のお客様への共同提案、需要拡大のためのコンソーシアム形成、さらには共同研究を通じた論文執筆など、様々なパターンの共創活動に繋がっています。

一方で、より共創活動のスピードや実現の確度を上げるためには、スタートアップと共創するパートナーを担当者レベルで明確化し、何を解決したいかを事前にある程度クリアにし、スタートアップと共有しておくことも重要です。

そこで『DAP2026』では社会課題解決を目指した「共創活動企画」をメンタリングの主たる実施事項とし、募集開始時点で募集テーマ・受け入れ担当者・応募要件を明確化することで、速やかに共創活動企画の検討に入れるような工夫を施すことにしました。

▲15 チームが受賞した『BAP2023』。最優秀賞(ICF 賞)を受賞したのが、Sustineriとなる。(画像出典:プレスリリース

プログラムOBが語る、大企業との共創で得られた実践的な学び

――次に、『BAP2023』で優秀賞を受賞した株式会社tayoの熊谷さんに伺います。まず、参加を決めた理由についてお聞かせください。

tayo・熊谷氏 : 当社は研究者向けの人材プラットフォーム「tayo」を運営しています。もともとシンクタンクが持つリサーチ案件との事業的なシナジーを感じており、協業の可能性を探りたいと考えていました。そのような中で、MRIさんがオープンイノベーションに取り組んでいることを知り、応募しました。

▲株式会社tayo 代表取締役 熊谷洋平氏 

――実際に『BAP2023』に参加されて、特に価値を感じた点や、ご自身の事業成長に繋がった経験について教えていただけますでしょうか。

tayo・熊谷氏 : 参加して最も価値を感じたのは、大企業であるMRIさんとの本格的な協業をハンズオンで経験できたことです。私自身、スタートアップ畑を歩んできたため、大企業との連携経験がほとんどありませんでした。『BAP』を通じて、MRIさんという大企業の各部署を横断して物事がどのように決まっていくのか、さらにオープンイノベーションの枠組みについて、身をもって学ぶことができました。

――大企業との連携において、どのような難しさや学びがありましたか?

tayo・熊谷氏 : スタートアップの意思決定の速さは、ガバナンスの緩さとトレードオフの関係にあり、大企業に合わせるべき部分と、自社のバリューを守る部分のバランスをどう取るべきか、その方法を学ぶことができました。

――『BAP2023』への参加は、貴社の事業にどのような影響をもたらしましたか?

tayo・熊谷氏 : MRIさんとの共創は、現在も進行中です。私たちは研究者の集客やアカデミックな領域に強く、MRIさんは行政や自治体との連携が強いです。この組み合わせは、現在国策として進められている「研究者をどう世の中に価値提供していくか」というプロジェクトにおいて連携可能性が高いと感じています。

実際に一緒にプロジェクトにアプライしていますが、お互いの得意分野と苦手分野、Win-Winの組み方を具体的にすり合わせできたことが大きな価値でした。

――tayoさんは『BAP2023』において優秀賞を受賞されましたが、どのような点を評価されたのでしょうか?

PNW・水嶋氏 : 私は、『BAP2023』の審査ではMRIの立場でtayoさんのサポートをしていましたが、審査で最も印象深かったのは、MRI小宮山理事長が「アカデミアの人材と企業のマッチングシステムが本当にできれば、素晴らしいことだ」と、tayoさんの発表を非常に高く評価したことです。そういう仕組みはMRIとのシナジーがあると強く感じました。

また、その後のお付き合いの中で感じたのは、単純に研究者の人材紹介だけでなく、スタートアップや大企業の支援も行う専門性の高さです。一方で、スタートアップはリスク管理が不足しがちですが、tayoさんは知財管理や契約書のチェックといった意識が高く、パートナーとして信頼できると評価しています。

▲一般社団法人プラチナ構想ネットワーク 副事務局長 水嶋高正氏 

『DAP2026』は、技術を起点に社会課題解決を目指す

――PNWとケップルが共催する『DAP2026』の特徴について教えてください。

PNW・水嶋氏 : MRIが実施してきた『BAP』は「社会課題起点」でスタートアップを募集していましたが、社会課題だけでは解決策を見つけるのが非常に難しいケースがありました。そこで、今回の『DAP2026』では、ロボットやフィジカルAIといった技術を起点に社会課題解決を目指すアプローチを志向しています。技術から考えることで、解決方法の具体性が増し、より大きな社会インパクトを生み出せると考えています。またケップルにはVCの立場でメンタリングに加わっていただきますので、スタートアップとしては今後の成長に方向性も見いだせると考えています。

――今回のプログラムでは、どのような強みでスタートアップを支援していくのでしょうか?

PNW・岡澤氏 : MRIの強みは、大企業からスタートアップまで600社以上が参加する大規模なオープンイノベーションコミュニティ「ICF」を活用した共創でした。ここでのコミュニティを通じて、大企業から大学、官公庁まで多様なステークホルダーにアクセスできる点が、他のアクセラレーションプログラムとは異なる価値でした。

PNWはもともと自治体や大企業との強いネットワークを持っています。ご認識のとおり、2026年6月にICFとの一体運営を開始し、更に大規模なコミュニティとなりました。DAP2026ではMRIと電通総研が「共創パートナー」という役割でスタートアップの皆さんとの共創活動を伴走させていただきますが、PNWに参画している多種多様なメンバーとの共創も可能となるようなプログラムとしております。

また、募集対象とする社会課題もMRIおよび電通総研の協力を得ながら、テーマを検討しております。MRIによるBAP2023では、社会課題であればどんな内容でも受け付けてきましたが、DAP2026ではよりロボット・フィジカルAIに焦点をあて、これらにより解決可能、かつ解決時の社会的インパクトの大きいテーマを設定しています。

さらに、今回はケップルも主催者として本プログラムを運営します。ケップルはEXITまでの期間が長いディープテックにとって重要なセカンダリー取引を行うファンドを運営しており、上場までを見据えたスタートアップへの経営面・事業面でのアドバイスが得意なVCです。PNWが持つ民間企業や自治体のネットワークと、ケップルが持つビジネス・経営面の専門性も加え、よりリアルに事業創造できることもこのプログラムの強みです。

▲一般社団法人プラチナ構想ネットワーク 研究員 岡澤有実子氏 

――それでは最後に、今年度のプログラムへの応募を検討しているスタートアップの皆様へ、メッセージをお願いします。

PNW・岡澤氏 : 『DAP2026』を運営するチームは非常に自由な雰囲気を持っています。1つでも多くの共創活動を生み出せるよう、参加いただいたスタートアップとPNWメンバーとのコミュニケーションをサポートいたします。様々なバックグラウンドや技術をお持ちの方からの応募を歓迎しています。

PNW・中村氏 : スタートアップの皆さんの「困りごとを解決したい」というのが、私たちの最も強い思いです。共創活動には様々なアプローチがありますが、具体案件の獲得から市場形成コミュニティの組成まで、スタートアップの皆さんとの対話を通じて、PNWという大きな枠組みの中でよい活動につなげられるよう支援をさせていただきます。

PNW・水嶋氏 : 社会は皆さんの技術を求めています。社会との結びつきがまだ見えていないと感じている方も、ぜひ応募して、皆さんの技術が社会貢献に役立つ道を見つけてほしいと願っています。私たちは、その道筋を一緒に見つけるための、最高のパートナーになりたいと思っています。

tayo・熊谷氏 : BAP2023では、単にビジネスを拡大するだけでなく、政府や自治体との連携など、他のアクセラレーションプログラムでは得られない特殊な機会を提供して頂けたと感じています。DAP2026では技術に着目したプログラムになるとのことなので、技術を社会に実装させたいと考えているスタートアップにとっては貴重な機会になるでしょう。

取材後記

これまでMRIが実施してきていたアクセラレーションプログラムのノウハウを継承しつつ、MRI、電通総研を共創パートナーとした今回のプログラムは、スタートアップの社会実装を強力に後押しするユニークな強みであることが強く印象づけられた取材だった。単なる事業支援にとどまらず、スタートアップの技術から新たな社会課題解決の道筋を描く「技術起点」のアプローチは、ディープテック企業にとって大きな魅力となるはずだ。PNWの方々が語っていた「スタートアップの困りごとを解決したい」という熱意、そしてBAP2023のOBである熊谷氏の現実的なアドバイスが、『DAP』の信頼性を高めている。プログラムからどのような成果が生み出されるのか。引き続き、注目していきたい。

※『ICF Deeptech Acceleration Program 2026』(DAP2026)の詳細はこちらをご覧ください。

(編集:眞田幸剛、文:佐藤瑞恵、撮影:齊木恵太)

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