1. Tomorubaトップ
  2. ニュース
  3. 200万人を超えた外国人労働者。急増するその背景と課題、日本特有の特徴などを解説
200万人を超えた外国人労働者。急増するその背景と課題、日本特有の特徴などを解説

200万人を超えた外国人労働者。急増するその背景と課題、日本特有の特徴などを解説

  • 14466
  • 14462
  • 14461
3人がチェック!

新規事業やオープンイノベーションのプレイヤーや、それらを実践・検討する企業の経営者はTOMORUBAの主な読者層ですが、こうした人々は常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。

今回のテーマは「外国人労働者」です。近年、日本における外国人労働者の数は急速に拡大しており、10年間で4倍以上に達しました。この背景には、少子高齢化による労働力不足や、グローバル化の進展が影響しています。本記事では、日本の外国人労働者の現状や急増の要因を解説し、その影響や課題について考察します。

日本における外国人労働者のあり方

日本は少子高齢化が進む中、深刻な労働力不足に直面しています。この課題に対処するため、外国人労働者が不可欠な存在となりつつありますが、その受け入れ状況や働くための制度には他国と比べて独特の特徴や課題が存在します。

日本の外国人労働者受け入れの状況

他国と比べて、日本の外国人労働者受け入れ政策は長らく慎重でした。欧米諸国では、移民としての外国人労働者が社会や経済に根付いている一方で、日本では移民を積極的に受け入れる姿勢をとらず、代わりに技能実習制度や特定技能制度を通じて特定の職種に外国人労働者を導入してきました。このため、日本における外国人労働者の多くは、一定期間の就労を前提とした滞在が主流であり、永住や家族の帯同が制限されるケースが多いです。

参照ページ:外国人技能実習制度について |厚生労働省

参照ページ:特定技能制度 | 出入国在留管理庁

外国人労働者に対する依存

特に建設業、農業、介護などの分野では、外国人労働者への依存度が年々高まっています。これらの分野は国内で人手不足が顕著なため、外国人労働者なしには事業が成り立たない状況に陥るケースも増加しています。また、飲食業や小売業でも、外国人労働者が重要な役割を果たしています。多様な文化背景を持つ労働者が加わることで、サービスの質の向上や新しい価値観の導入が期待されています。

外国人が日本で働くためのハードル

一方で、ビザの取得要件が厳しいことや、労働条件が不明確でトラブルにつながるケースもあり、日本で働きたい外国人にとってハードルとなっています。特に技能実習制度においては、低賃金や長時間労働、職場での不当な扱いといった問題が指摘されています。外国人労働者が安心して働ける環境を整備することが日本社会にとって課題となっています。

外国人労働者は200万人超え

厚生労働省の公開している資料「外国人雇用状況」の届出状況まとめによると、2023年10月末時点で、日本の外国人労働者の数は約204万人に達し、過去最高を更新しました。前年同期比で約12.4%増加しており、外国人労働者数は急速に拡大しています。さらに、外国人労働者を雇用する事業所数も約32万件に上り、こちらも増加傾向が続いています。

業種別ではサービス、卸売・小売が多い傾向

産業別では、製造業が外国人労働者の約27%を占め、最も多い割合を示しています。そのほか、サービス業(15.7%)、卸売業・小売業(12.9%)と続きます。特に建設業では、前年同期比24.1%増と、需要が急増しています。

国籍別ではアジアが大多数

外国人労働者の国籍別では、ベトナムが最多の約52万人(全体の25.3%)を占め、中国(約40万人)、フィリピン(約23万人)がこれに続いています。また、インドネシアやミャンマーといった国からの労働者も増加しており、労働力の多国籍化が進んでいます。

在留資格別の特徴

在留資格別に見ると、「身分に基づく在留資格(永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者が含まれる)」が約30.1%を占め最多であり、「専門的・技術的分野の在留資格」も29.1%と高い割合を示しています。また、「特定技能」による就労者は前年比で75.2%増加しており、こうした制度の利用が拡大していることがわかります。

外国人労働者が急激に増えることで発生する課題

日本における外国人労働者の急増は、労働力不足を補うために必要不可欠な動きである一方で、さまざまな課題を引き起こしています。主な課題をいくつか紹介します。

労働環境の整備不足

外国人労働者の急増に対し、労働環境の整備が追いついていない現状があります。特に前述したとおり、技能実習制度を通じて来日した労働者においては、低賃金や長時間労働、不当な扱いといった問題が報告されています。また、労働条件の不明確さや、日本の労働法制に対する理解不足が、トラブルを生む一因となっています。

日本人労働者への影響

外国人労働者が増加することで、日本人労働者への影響も無視できません。特に、外国人労働者が主に低賃金の職種で働く場合、その業界全体の賃金水準が抑えられる傾向があります。結果として、日本人労働者の賃金上昇が停滞する可能性があり、労働市場の競争環境に影響を与えることが懸念されています。また、外国人労働者の受け入れが進む職場では、日本人従業員にとって、文化的多様性への対応や新たな労働環境への適応が求められるため、負担やストレスが増加する場合もあります。

地域社会の受け入れ体制の課題

外国人労働者の増加は、地域社会にも課題をもたらします。特に、住居の確保、医療サービスへのアクセス、子どもの教育環境の整備など、外国人住民が生活基盤を確立できる仕組みが整っていない地域も多く、外国人住民が孤立するリスクが高まっています。

編集後記

外国人労働者の急増は、日本社会にとって避けられない現実となっています。本記事では、その背景や課題について掘り下げましたが、少子高齢化が進む日本では、外国人労働者が経済や社会を支える重要な役割を果たす一方で、労働環境の整備や日本人労働者への影響、地域社会の受け入れ体制など、多くの課題があることわかりました。

企業や自治体にとっても、外国人労働者をただの労働力としてではなく、新しい価値観や多様性をもたらすパートナーとして位置づける姿勢が求められます。そのためには、制度や環境の改善に加え、日本人との共生を意識した取り組みが欠かせないでしょう。

(TOMORUBA編集部 久野太一)

■連載一覧

第1回:なぜ価格が高騰し話題となったのか?5分でわかる「NFT」

第2回:話題の「ノーコード」はなぜ、スタートアップや新規事業担当者にとって有力な手段となるのか?

第3回:世界的なトレンドとなっている「ESG投資」が、スタートアップにとってチャンスである理由

第4回:課題山積のマイクロプラスチック。成功事例から読みとくスタートアップの勝ち筋は

第5回:電力自由化でいまだに新規参入が増えるのはなぜ?スタートアップにとってのチャンスとは

第6回:「46%削減」修正で話題の脱炭素。46%という目標が生まれた経緯と、潜むビジネスチャンスとは

第7回:小売大手がこぞって舵を切る店舗決済の省人化。「無人レジ」の社会実装はいつ来るか?

第8回:実は歴史の深い「地域通貨」が、挑戦と反省を経て花ひらこうとしているワケ

第9回:音声配信ビジネスが日本でもブレイクする予兆。世界の動向から見える耳の争奪戦

第10回:FIREブームはなぜ始まった?「利回り4%」「生活費の25倍の元本」など、出回るノウハウと実現可能性は

第11回:若年層は先進層と無関心層が二極化!エシカル消費・サステナブル消費のリアルとは

第12回:「ワーケーション」は全ての在宅勤務社員がターゲットに!5年で5倍に成長する急成長市場の実態

第13回:なぜいま「Z世代」が流行語に?Z世代の基礎知識とブレイクしたきっかけを分析

第14回:量子コンピュータの用途は?「スパコン超え報道」の読み解き方はなど基礎知識を解説

第15回:市場規模1兆ドルも射程の『メタバース』で何が起こる?すでに始まっている仮想空間での経済活動とは

第16回:『TikTok売れ』はなぜ起こった?ビジネスパーソンが知っておきたい国内のTikTok事情

第17回:パンデミックが追い風に。マルチハビテーションが新しいライフスタイルと地方の課題解決を実現できる理由

第18回:Web3(Web3.0)とは何なのか?Web1.0とWeb2.0の振り返り&話題が爆発したきっかけを解説

第19回:フェムテックで先行する欧米と追従する日本。市場が活気づいている背景とは?

第20回:withコロナに「リベンジ消費」は訪れるか?消費者の“意向”と実際の“動向”からわかること

第21回:子供が家族の介護をサポートする「ヤングケアラー」の実態と、その問題とは?

第22回:半導体不足はなぜ起きた?米中貿易摩擦、巣ごもり需要、台湾への依存などを解説

第23回:【ビジネストレンドまとめ】注目を集めた5つの事業ドメインとは?

第24回:長引くコロナ禍で顕著になる“K字経済”とは?格差が拡大する「ヒト」と「企業」

第25回:「パーパス」とはなぜ注目されるのか?誰のためのものか?5分でわかる基礎知識

第26回:NFT・メタバース・Web3はどう違う?注目を集める「新しいエコシステム」5選

第27回:サステナブルのさらに先いく「リジェネラティブ」とは?実践企業や背景を解説

第28回:16年で2倍に膨れ上がった『電子ゴミ』は何が問題なのか。唯一の解決策とは?

第29回:サウナビジネスはグローバルで健全な成長も、国内ではサウナユーザーは激減。サウナビジネスの最新事情

第30回:【ビジネストレンドまとめ】話題となった「社会課題」トレンド6選

第31回:Play to Earn(P2E)はなぜ注目を集めているのか?ビジネストレンドとしての基礎知識

第32回:脅威の市場ポテンシャルが期待されるクラウドゲーム。GAFAMやソニー、任天堂が参入するポイントを解説

第33回:FIRE、マルチハビテーションなど注目を集めるライフスタイルに関連するビジネストレンド4選

第34回:「ロボアドバイザー」はミレニアル・Z世代になぜ人気?コロナ禍で加速する新しい資産運用の形

第35回:加速する人への投資。岸田首相「5年で1兆円」の方針表明で注目集めるリスキリングとは?

第36回:画像生成AIはなぜ「世界を変える」のか?ビッグテックが拒む「一般公開」と「オープンソース」がもたらす影響力とは

第37回:クリエイターの6割が収益化!国内で広がる「クリエイターエコノミー」の実態と事例

第38回:ドローン分野でも特に熱い「空飛ぶクルマ」は加速度的な成長見込み!ユースケースやリードする国内企業とは

第39回:『ChatGPT』の何がすごい?Google一強時代をおびやかすポテンシャルとは

第40回:現実と同等の仮想空間を構築する『デジタルツイン』はなぜ製造業に効果的?東京都のデジタルツイン計画とは?

第41回:小売業に革命を起こす「ダークストア」、激化する大手とスタートアップの覇権争い

第42回:物流の2024年問題とは?人手不足とECの急成長で物流企業とトラックドライバーが受けるリスクとその対策

第43回:各社がこぞってトレンド予測する若者世代の「セルフケア」はなぜ今注目を集めているのか?

第44回:大手SNSが問題を抱えるなか台頭する「次世代SNS」の有望株とは

第45回:介護人材は間も無く32万人不足へ。台頭は必須の『介護ロボット』の現状と先行事例を紹介

第46回:存在感を強める「グローバルサウス」なぜ今注目を集めているのか?定義や背景、直面する課題などを解説

第47回:位置情報を活用する「ジオターゲティング」がマーケティングに新風を巻き起こしている理由とは?市場動向や活用事例を紹介

第48回:「GDPR」はEUだけでなく世界中に影響を与える。国内事業者への影響や改正された個人情報保護法との違いを解説

第49回:驚異的な成長が見込まれる『デジタルヒューマン』の有力なユースケースとは?チャットボットとどう違う?

第50回:Googleの研究で注目される「心理的安全性」とは?リーダー、マネジメント、人事担当者ができることを解説

第51回:ヴィーガン市場が拡大中!ヴィーガンの基礎知識から最新の市場動向、ビジネストレンドを解説

第52回:ビジネスにおける『レジリエンス』の重要性。VUCAの時代を生き抜く、組織と個人のレジリエンスのあるべき姿とは

第53回:『ナイトタイムエコノミー』が観光産業の起爆剤になる理由とは?夜間の観光を活性化させるナレッジと国内事例を紹介

第54回:『プライバシーテック』が注目される背景とは?高まる個人情報リスクと、GDPRなど各国の規制を解説

第55回:『モーダルシフト』が担う3つの重責。環境問題、人手不足、コスト削減をどうやって実現するのか?

第56回:性差をイノベーションに繋げる「ジェンダードイノベーション」に集まる期待と、科学・技術分野の構造が抱える問題

第57回:近年の半導体業界の動向は?台湾ファウンドリが一極集中、米中貿易摩擦によるリスク、日本企業の巻き返しなどを解説

第58回:「SDV」の普及で車両はアップデートする時代に。政府が本腰を入れてシェア3割を目指す「モビリティDX戦略」とは

第59回:小売業者が自らメディアとなって収入を得る「リテールメディア」。近い未来にテレビの広告収入を上回ると予想されるポテンシャルとは?

第60回:時間効率にお金を払うタイパ消費。Z世代が課金するグルメ、エンタメ、ECの特徴とは

第61回:フィッシング、マルウェアなどの脅威に立ち向かうサイバーセキュリティ。政府も予算を投じるディープフェイクの近年の状況などを解説

第62回:分岐点をむかえるアルツハイマー治療 これまでの治療とどう違うのか、新薬がなぜ期待されているのかを解説

第63回:伝統と科学が融合する「デトックス消費」 現代社会にあわせたアプローチで成長を続ける新たなデトックスビジネスとは

第64回:「α世代」の特徴はデジタルネイティブだけじゃない?この世代の基礎知識とマーケティング目線でのポイントを解説

第65回:2024年問題の解決策として期待される「共同配送」が担う役割とは?背景や事例などを紹介

第66回:導入企業が増える「週4日勤務」にはどのようなメリットが?導入事例から見える生産性、ワークライフバランスなどの変化を紹介

第67回:リアルとオンラインを組み合わせた「フィジタル」とは?マーケティング手法としての特徴やインストアプロモーション、リテールメディアとの違いを解説

第68回:医療の課題を解決する「バーチャルホスピタル」医師不足、日本特有の課題、フィンランドでの成功事例などを紹介

第69回:国交省が本腰入れる自動物流道路とは?物流の効率化や脱炭素にも寄与するとしてスイスやイギリスなどでもプロジェクトが進行中

第70回:拡大する「日本版ライドシェア」と世界のライドシェアの違いは?GOやUberなど国内での事例とともに解説

第71回:「医療の2025年・2040年問題」とは?超高齢化、労働力不足、社会保障制度の持続可能性、地域格差など山積する課題を解説

第72回:台頭する次世代のサブスク形態「サブスクリプションコマース」とは?事例を交えて支持される理由を解説

第73回:活気づく越境EC市場。急成長の背景や日本の圧倒的な購入先とは?事例を交えて解説

第74回:VUI(音声インターフェース)がスマートスピーカー以外で躍進している分野とは?急激に成長する市場とその要因を解説

新規事業創出・オープンイノベーションを実践するならAUBA(アウバ)

AUBA

eiicon companyの保有する日本最大級のオープンイノベーションプラットフォーム「AUBA(アウバ)」では、オープンイノベーション支援のプロフェッショナルが最適なプランをご提案します。

チェックする場合はログインしてください

コメント3件

  • 荻野 章子

    荻野 章子

    • Lattice Design
    0いいね
    チェックしました
  • 福住祐一

    福住祐一

    • シンカクスタジオ
    0いいね
    チェックしました
  • 眞田幸剛

    眞田幸剛

    • eiicon company
    0いいね
    チェックしました