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「医療の2025年・2040年問題」とは?超高齢化、労働力不足、社会保障制度の持続可能性、地域格差など山積する課題を解説

「医療の2025年・2040年問題」とは?超高齢化、労働力不足、社会保障制度の持続可能性、地域格差など山積する課題を解説

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新規事業やオープンイノベーションのプレイヤーや、それらを実践・検討する企業の経営者はTOMORUBAの主な読者層ですが、こうした人々は常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。

今回のテーマは「医療の2025年・2040年問題」です。2025年には団塊世代がすべて75歳以上となり、日本は超高齢社会に突入します。そして2040年には、さらなる人口減少と高齢化が進み、医療・介護需要の増大が予測されています。これらの年次は、医療・介護システムが直面する転換点として注目されています。本記事では、医療の2025年・2040年問題とは何か、その背景と課題、そしてこれから求められる解決策について詳しく解説します。

高齢化が進む日本の社会課題とリンクする「医療の2025年・2040年問題」の概要

日本は、超高齢社会のさらなる進展に伴い、医療・介護体制の維持が困難になると予測されています。その転換点として注目されているのが、団塊世代が後期高齢者となる2025年と、人口動態の大きな変化が進む2040年です。それぞれの年次は、医療制度や介護体制の大きな課題を示す重要な節目となっています。

参照ページ:我が国の人口について|厚生労働省 

団塊世代が後期高齢者となる「医療の2025年問題」

2025年には、団塊世代が全員75歳以上となり、後期高齢者人口が急増します。この影響で、医療・介護サービスの需要が飛躍的に高まり、慢性的な医師不足や病床数の逼迫が予測されています。さらに、医療費や介護費の増大が財政を圧迫し、地域ごとの医療格差が深刻化する可能性があります。

これに対し、政府は地域包括ケアシステムの整備を進めています。これは、高齢者が住み慣れた地域で必要な医療や介護を受けられるようにする仕組みですが、医療資源の偏在や自治体間の対応能力の差といった課題が依然として残っています。

高齢者人口がピークに達する「医療の2040年問題」

2040年には、団塊ジュニア世代が65歳以上となり、高齢者人口がピークに達します。同時に、生産年齢人口の減少が加速し、医療・介護従事者の不足が一層深刻化します。これにより、医療・介護サービスの提供体制が大きな危機に直面すると考えられています。

また、財政面では、医療費の増加がさらに進み、国の社会保障費全体の負担が大きく膨らむことが懸念されています。特に地方では、人口減少と過疎化による医療アクセスの悪化が顕著になると予測され、都市部との格差が広がる可能性があります。

医療の2025年・2040年問題が抱える課題

日本が直面する医療の2025年・2040年問題は、高齢化社会がもたらす多岐にわたる課題を浮き彫りにしています。医療・介護の持続可能性を維持するために、以下の観点から特に深刻な問題が挙げられます。

医療費・介護費の急増

厚生労働省が公表している資料によると、日本の医療費は2023年度で47.3兆円となり、前年度から約1.3兆円増加するなど、長期的に上昇傾向が続いています。特に高齢化の進行により、75歳以上の後期高齢者層に対する医療費が急増しており、この傾向は今後も加速すると見込まれています。

出典:「令和5年度 医療費の動向」を公表します 

同様に、介護サービスの需要も急増しています。同じく厚生労働省の資料によれば、2022年3月末時点で65歳以上の要介護認定者数は約690万人となり、2000年からの22年間で約3.2倍に増加しています。また、在宅サービスの利用者数は97万人から407万人へと約4.2倍、施設サービス利用者数も52万人から96万人に増えています​給付費も年々増加しており、令和3年度には約10.8兆円に達しました。

出典:介護分野の最近の動向について

この急激な需要の増加は、団塊の世代が75歳以上となる2025年以降さらに加速すると予測され、2040年には介護サービス利用者数が現在よりも大幅に増加する見込みです。これらの動向は、医療と介護費用のさらなる拡大を招き、持続可能な社会保障制度の確立が求められる背景となっています。

労働力の不足

医療・介護分野の労働力不足は、特に2040年問題の深刻な側面です。生産年齢人口の減少により、医師や看護師、介護士といった専門職の確保が難しくなります。

例えば、日本は国際的にも医師が不足しています。日医総研がOECDのデータをもとに作成・公表した資料では、日本の人口当たりの臨床医指数は2.4人となっており、OECD加盟国の平均値3.5人を下回っています。

介護分野においても、介護職員の必要数は2040年には272万人にのぼる見込みで、現状のまま介護職員数が推移すれば約57万人が不足すると予測されています。

出典:介護人材確保に向けた取組について | 厚生労働省 

参照ページ:医療関連データの国際比較-OECD Health Statistics 2019- 

社会保障制度の持続可能性

少子高齢化が進む中で、社会保障制度の持続可能性が問われています。現役世代や企業が負担する社会保険料は賃金を上回るペースで増加しており、2018年時点で約120兆円だった社会保障給付は経済成長を上回るペースで今後も増大すると見込まれています。2025年には、医療・介護・年金を合わせた社会保険料率が31%に達する可能性が指摘されており、この負担増は限界に近づいています​。

出典:持続可能な社会保障制度の構築に向けた意見 

また、社会保障給付の増大は、個人消費の低迷や企業の投資意欲減退といった経済への負の影響を引き起こしており、さらには少子化の一因ともなっています。さらに、社会保障費の増加は財政赤字を拡大させ、赤字国債の累積額は約900兆円にも上っています。このままでは将来世代が社会保障制度を維持することが難しくなるため、抜本的な制度改革が求められています。

制度の持続可能性を高めるためには、高齢者医療費の窓口負担割合の引き上げや、所得に応じた給付の見直しが必要です。また、健康経営の普及やICTを活用した効率化、国民全体での「自助」意識の醸成など、多面的な取り組みが求められています。社会保障の持続可能性は、全世代が安心して暮らせる社会を築くために避けて通れない課題です。

参照ページ:持続可能な社会保障制度の構築に向けた意見 

地域格差の拡大

日本の医療システムにおける地域格差は、医師の地域間での偏在によってさらに深刻化しています。都市部には医師が集中する一方、地方では医師不足が顕著であり、適切な医療を受けることが困難な地域が増加しています。厚生労働省のデータによれば、医師多数都道府県と医師少数都道府県では、若手医師(35歳未満)の数の伸び率に格差があり、医師多数都道府県では約14.7%の増加であるのに対し、医師少数都道府県では27.8%の増加が見られますが、それでも依然として地域間の医師数に大きな差が存在します。

出典:今後の医師偏在対策について 

医師の偏在により、地方では診療科の選択肢が限られ、患者は専門的な診療を求めて長距離を移動しなければならない状況が多く見受けられます。また、医師の生活環境や教育環境への配慮が十分でないことも、地方への定着率の低下を招く要因となっています。こうした背景から、医療アクセスの不平等が拡大。地域住民の健康状態への影響が懸念されています。

対策として、医師少数区域への医師派遣や、地域医療を担う医師の育成に向けた「地域枠」の活用が進められています。また、若手医師が地方での診療を経験できるようにする広域連携型プログラムの導入など、医師不足を解消するための多角的な取り組みが模索されています。こうした努力が進む中でも、医療の質を維持しながら地域格差を縮小するには、制度のさらなる改善と長期的な取り組みが求められています。

編集後記

医療の2025年・2040年問題は、超高齢社会に突入する日本において、医療・介護分野が抱える深刻な課題を浮き彫りにしています。医療費・介護費の増大、労働力不足、社会保障制度の持続可能性、そして地域格差の拡大といった問題は、医療提供体制だけでなく、日本社会全体に大きな影響を及ぼします。

これらの課題に対して、企業やビジネスパーソンが果たせる役割も少なくありません。例えば、医療分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)は、業務効率化やリソースの最適配分に寄与するだけでなく、新しい事業機会を生み出す可能性を秘めています。遠隔医療の推進、AIやロボットを活用した効率化、地域包括ケアシステムを支援するソリューションの開発など、多くの分野で民間企業が活躍できる余地があるでしょう。今後の動向にも注目しながら、持続可能な医療・介護体制の構築に向けた新しいビジネスモデルの誕生を期待したいところです。

(TOMORUBA編集部 久野太一)

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