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【OI SUMMIT 2026】日本企業は何で勝つのか――Space BD永崎氏・セールスフォース安田氏・Acompany五十嵐氏が語る「成長の再定義」

【OI SUMMIT 2026】日本企業は何で勝つのか――Space BD永崎氏・セールスフォース安田氏・Acompany五十嵐氏が語る「成長の再定義」

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株式会社eiiconが主催する、オープンイノベーションの最前線を発信するイベント「OI SUMMIT 2026」。さまざまなテーマのセッションを通じて、日本の産業やイノベーションの現在地と、これから進むべき方向について議論が交わされた。

「成長の再定義 日本企業は何で勝つのか」と題したセッションには、宇宙への輸送サービスを中心に、宇宙産業の事業開発に取り組むSpace BD株式会社 代表取締役社長の永崎将利氏、CRM(顧客関係管理)プラットフォームを提供し、日本・韓国・台湾の中堅中小企業やスタートアップなどを担当する株式会社セールスフォース・ジャパン 専務執行役員 コマーシャル営業統括の安田大佑氏、コンフィデンシャルコンピューティングを軸に、安全なデータ・AI活用を支える株式会社Acompany 執行役員VP of Business Developmentの五十嵐修平氏が登壇。株式会社IZMiN 代表取締役/キャスターの田中泉氏がモデレーターを務めた。

テクノロジーによって世界の産業構造が大きく変化するなか、日本企業にはどのような成長機会があるのか。そして、技術やデータ、人材、信頼といった、すでに持っているアセットを、いかに事業や市場の成長へとつなげていくのか。それぞれ異なる立場から事業成長に向き合う3氏の議論から、日本企業のこれからの「勝ち筋」を探る。

【登壇者】(左→右)

・五十嵐 修平 氏(株式会社Acompany 執行役員VP of Business Development)

・安田 大佑 氏(株式会社セールスフォース・ジャパン 専務執行役員 コマーシャル営業統括)

・永崎 将利 氏(Space BD株式会社 代表取締役社長)

・田中 泉 氏(株式会社IZMiN 代表取締役/キャスター)

日本企業がすでに持つ強みとは――技術・データ・信頼を競争力に

セッションの冒頭で議論されたのは、日本企業がこれから成長していくうえで、どのような強みを生かしていけるのかというテーマだ。

安田氏が挙げたのは、日本企業が培ってきた「勤勉さ」や「真面目さ」である。一つのものを精緻で信頼できるものへと仕上げていく力は、日本企業が持つ強みの一つだという。

こうした特性は、AIをはじめとする新たなテクノロジーの活用においても生かせる可能性がある。AIを活用するうえでは、単にツールを導入するだけでなく、適切なデータを整備し、業務のなかでどのように使うのかを設計していくことが欠かせない。安田氏は、正しいデータを適切に扱う運用や環境、マネジメントの仕組みを構築できることも、日本企業の競争力につながり得るとの考えを示した。

一方、宇宙産業に携わる永崎氏は、日本が持つ技術力に目を向けた。日本にはロケットをはじめ、宇宙産業を支えるサプライチェーンや技術が蓄積されている。世界の宇宙ビジネスが拡大するなか、日本の技術やサービスには、単純な価格競争とは異なる価値を発揮できる可能性があるという。

永崎氏がその一つとして挙げたのが、「信頼」である。宇宙ビジネスでは、技術や品質だけでなく、サービスの持続性・継続性も重要になる。技術力に加え、継続性やコミュニケーション、経営における意思決定の安定性などを含めた信頼性が、日本企業の価値の一つになり得ると語った。

五十嵐氏は、企業が持つ「データ」に着目する。企業には、これまでの事業活動を通じて蓄積してきたデータや知識、経験がある。AIの進化によって、それらを新たな価値へと変えられる可能性はさらに広がっているという。

その一方で、企業が持つ重要なデータを活用するには、安全性や信頼性を確保することも欠かせない。五十嵐氏は、データを適切に保護しながらAIなどに活用できる環境を整えることで、これまで十分に生かしきれなかった企業の知見や情報を、新たな事業価値につなげられる可能性を示した。

技術、データ、長年培ってきた知見、そして信頼――。3氏の議論から見えてきたのは、日本企業には成長につながるさまざまなアセットがすでに存在しているということだ。新しいものを外から取り入れるだけでなく、自分たちが持つ価値を改めて捉え直し、それを次の競争力へと変えていく。そこに、日本企業の新たな成長を考える出発点がありそうだ。

強みを成長へ変える――技術と顧客課題をどうつなぐか

日本企業が持つ技術やデータ、信頼といった強みを、実際の事業成長へどうつなげていくのか。議論は、技術とビジネスを結びつける方法へと進んだ。

永崎氏がSpace BDを立ち上げた背景には、宇宙産業において技術開発だけでなく、ビジネスの視点から市場を広げていくプレイヤーが必要だという問題意識があったという。同社は「宇宙商社」というコンセプトを掲げて事業をスタートし、人工衛星などを宇宙へ運ぶための輸送サービスを中心に事業を展開してきた。

ただ、事業を進めるなかで見えてきたのは、顧客とロケット事業者などを単につなぐだけでは、価値を提供しきれないということだった。人工衛星をロケットに搭載するためには、さまざまな技術要件を満たす必要がある。そこでSpace BDでは、エンジニアも組織に加え、技術面を理解したうえで顧客と向き合える体制を整えていった。

さらに、顧客とのやり取りを重ねることで、新たな事業機会も見えてきたという。永崎氏はその一例として、人工衛星を輸送するためのコンテナを挙げた。必ずしも最先端の技術でなくても、顧客が実際に感じている不便や課題を捉え、それを解決する製品やサービスに変えていくことができる。技術そのものを起点にするのではなく、顧客の課題から必要な価値を考えることが、新たな事業につながっていく。

五十嵐氏も、技術を顧客価値へと「翻訳」することの重要性に触れた。Acompanyが取り組むコンフィデンシャルコンピューティングは、データを安全に扱いながら活用するための技術だが、顧客にとって重要なのは技術の仕組みそのものではない。その技術によって「何ができるようになるのか」を伝えることが重要だという。

たとえば、これまで機密性の高さから扱いにくかったデータも、安全性を確保した環境でAIなどに活用できれば、これまで難しかったデータ活用の可能性が広がる。顧客との対話を通じてニーズを捉え、技術を具体的なユースケースへ落とし込んでいく。そこから新たな事業のアイデアも生まれてくると五十嵐氏は語った。

高い技術力を持つことと、それを事業として成長させることは必ずしも同じではない。顧客が抱える課題を捉え、自社の技術や知見を「何を実現できるのか」という価値へ変換していく。Space BDとAcompanyの取り組みからは、日本企業が持つ強みを次の成長につなげるための一つの道筋が見えてくる。

テクノロジーを成長につなげる組織とは――多様な意見と挑戦を力に

技術やデータを顧客価値へと変換できたとしても、それを継続的な成長につなげるためには、組織のあり方も重要になる。

安田氏は、テクノロジーを活用して変革や成長につなげられる企業の特徴として、「異質なものを受け入れる柔軟性」を挙げた。若手や社外の人材、異なる領域で経験を積んできた人など、多様な立場から生まれる意見を組織に取り込むことが、新たな可能性を広げるという。

そのために重要なのが、立場にかかわらず意見を出せる環境をつくることだ。経営層や管理職がさまざまな意見を拾い上げ、それらを判断材料として生かしていく。多様な声を受け止める姿勢が、組織として新しいことに取り組む土台になると安田氏は語った。

一方で、組織を変えるためには、理念や掛け声だけではなく、日々の行動まで具体化する必要がある。安田氏は、会議の進め方を例に挙げ、どのようなアジェンダを設定するのか、モデレーターがどのように問いかけるのか、参加者からどう意見を引き出すのかといった具体的な設計が重要だと説明した。

これは人材育成でも同様だという。たとえば営業であれば、表情や目線、顧客への問いかけ方など、実際の行動にまで落とし込むことで、初めて実践につなげやすくなる。大きな変革を掲げるだけでなく、一人ひとりが「まず何をすればいいのか」を理解できる状態をつくることが、組織を動かす第一歩となる。

セッションの最後には、3氏から日本企業の成長に向けたメッセージが語られた。

永崎氏は、日本が持つ価値を世界の多様性を構成する一つとして捉え、日本が大切にしてきた本質的、普遍的な価値を世界へ提供していくことの重要性を語った。五十嵐氏は、日本企業が蓄積してきた知識や経験、信頼を、AIを安全に活用できる基盤によって新たな力へ変えていく可能性を示した。そして安田氏は、新しい挑戦を生み出すためには、失敗を許容できる環境をつくることが重要だと強調した。

日本企業が持つ技術、データ、知見、信頼を見つめ直し、それらを顧客にとっての価値へと変え、さらに挑戦できる組織によって成長へつなげていく。3氏の議論からは、日本企業がこれからの「勝ち筋」を描くための一つの方向性が浮かび上がった。

――――

▼本セッションの模様は以下より動画でもご覧いただくことができます。

取材後記

今回のセッションで印象的だったのは、日本企業の成長を考えるうえで、必ずしも新しい強みをゼロから生み出す必要はないということだ。技術やデータ、知見、信頼など、企業の中にはすでに多くの価値が蓄積されている。

重要なのは、それらを改めて見つめ直し、顧客が求める価値へと変換し、事業として成長させていくことだろう。そのためには、テクノロジーだけでなく、多様な意見を受け入れ、新たな挑戦を後押しする組織づくりも欠かせない。

「日本企業は何で勝つのか」という問いに対し、自社がすでに持っているものに目を向けることも、その答えを見つける一つの出発点なのかもしれない。

※TOMORUBAでは「OI SUMMIT 2026」のセッションレポートを順次公開しています。記事一覧はこちら。

(文:TOMORUBA編集部、撮影:加藤武俊)

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  • 眞田幸剛

    眞田幸剛

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「OI SUMMIT 2026」セッションレポート

2026年9月に開催された「OI SUMMIT 2026」。企業やスタートアップ、行政など、多様な立場からイノベーションに向き合う登壇者が集い、新規事業や共創、AI、地域、グローバルなどをテーマに議論を交わしました。本シリーズでは、各セッションで語られた議論や示唆をレポートします。