1. Tomorubaトップ
  2. ニュース
  3. 【OI SUMMIT 2026】共創を成功に導く「組織と制度」とは――みずほFG中馬氏・セイノーHD河合氏・TOUCH TO GO阿久津氏が語る
【OI SUMMIT 2026】共創を成功に導く「組織と制度」とは――みずほFG中馬氏・セイノーHD河合氏・TOUCH TO GO阿久津氏が語る

【OI SUMMIT 2026】共創を成功に導く「組織と制度」とは――みずほFG中馬氏・セイノーHD河合氏・TOUCH TO GO阿久津氏が語る

  • 17200
1人がチェック!

株式会社eiiconが主催する、オープンイノベーションの最前線を発信するイベント「OI SUMMIT 2026」。さまざまなテーマのセッションを通じて、日本の産業やイノベーションの現在地と、これから進むべき方向について議論が交わされた。

「成功する共創は“組織と制度”と経営のコミット」と題したセッションには、みずほフィナンシャルグループで新規事業やスタートアップ投資を推進する執行役員CBDOの中馬和彦氏、セイノーホールディングスで新規事業やM&A、CVCなどを通じた事業創出に取り組む専務執行役員の河合秀治氏、JR東日本グループで新規事業に携わり、その後CVCやスタートアップとの共創を推進。現在は無人決済店舗システムなどを手掛けるTOUCH TO GOの代表取締役を務める阿久津智紀氏が登壇。株式会社eiicon Consulting事業本部 Consultantの服部絹世氏がモデレーターを務めた。

大企業におけるオープンイノベーションやスタートアップとの共創は、この10年で大きく広がってきた。一方で、個々のプロジェクトを生み出すだけでなく、そこから継続的に成果を生み出していくためには何が必要なのか。経営はどこまでコミットし、挑戦する人材にどのように権限を委ね、それを組織として支える仕組みをどうつくるべきなのか。

長年にわたり大企業の新規事業やオープンイノベーションに向き合い、異なる立場から事業創出を実践してきた3氏の議論から、共創を一過性のプロジェクトで終わらせず、企業の持続的な成長につなげるための条件を探る。

【登壇者】(左→右)

・阿久津 智紀 氏(株式会社TOUCH TO GO 代表取締役/JR東日本スタートアップ株式会社 Senior Manager)

・河合 秀治 氏(セイノーホールディングス株式会社 専務執行役員 ラストワンマイル推進チーム担当)

・中馬 和彦 氏(株式会社みずほフィナンシャルグループ 執行役員CBDO)

・服部 絹世 氏(株式会社eiicon Consulting事業本部 Consultant)

成功する共創の条件とは――「経営のコミット」と「権限委譲」

セッションではまず、「オープンイノベーションがうまくいく企業には、どのような共通点があるのか」というテーマから議論が始まった。

中馬氏が最初に投げかけたのは、「そもそもオープンイノベーションは何のために行うのか」という問いだ。スタートアップと連携することや新規事業を立ち上げること自体が目的なのではない。企業が持続的に成長していくために、未来の成長を支える事業をつくる。そのための手段として、オープンイノベーションがあるという考え方だ。

そのうえで中馬氏は、共創や新規事業を継続的な成果につなげるために必要な要素を、大きく3つに整理した。

一つ目は、経営が「どの領域で、何のために新規事業やオープンイノベーションに取り組むのか」という方向性を明確にすること。二つ目は、その方向性を実行できる人材に権限を委譲すること。そして三つ目が、そうした取り組みを一部の担当者だけの活動にせず、全社として受け入れ、支えられる仕組みをつくることだ。

特に重要なのが、その「順番」だという。

「仕組みは最後だと思っています。みんな仕組みから先に行きたがるけれど、まず一番大事なのは上からの順番です」

制度や組織を先につくるのではなく、まず経営が新規事業やオープンイノベーションに取り組む意味と方向性を示す。そのうえで、実行する人材に必要な権限とリソースを与える。中馬氏は、経営のコミットメントと権限委譲があれば、仕組みが十分に整っていない段階でも、新しい取り組みを始めることはできると語った。

一方で、一つのプロジェクトを成功させることと、新しい事業を継続的に生み出すことは異なる。M&Aや新規事業を複数進めていけば、事業部門だけでなく、法務や財務、人事をはじめとするさまざまな部門との連携が必要になる。個人の力量や人間関係だけに頼っていては、取り組みが増えるほど組織のどこかで行き詰まりかねない。

だからこそ、複数の挑戦を継続的に生み出す段階では、それを支える組織の仕組みが必要になる。

経営が方向性を示し、挑戦する人材に権限を委ね、組織全体で支える――。共創を一部の担当者による特別な活動から、企業の成長を支える継続的な取り組みへと変えていくためには、この3つをつなげていくことが重要だという。

共創を「再現可能」にする――事業を生み出す人をどう増やすか

経営が方向性を示し、実行する人材に権限を委ねる。では、その権限を託し、新しい事業を動かしていく人材を、企業はどのように生み出していけばよいのか。

この問いを考えるうえで象徴的なのが、阿久津氏自身のキャリアだ。

阿久津氏はJR東日本でグループ内のさまざまな新規事業に携わってきた。その後、スタートアップとの事業創出プログラムやCVCの立ち上げに関わり、オープンイノベーションを推進。さらにカーブアウトによってTOUCH TO GOを立ち上げ、自ら経営を担う立場へと移っていった。

大企業の中で新規事業をつくる立場から、外部のスタートアップと共創する立場へ。そして、自らスタートアップを経営する立場へ――。複数の立場で事業創出に携わってきた阿久津氏が、共創を継続させるうえで重要な要素として挙げたのが「人」だ。

新しい事業を立ち上げても、それを継続して動かし、意思を周囲に伝えながら、多くの人を巻き込んでいかなければ成長にはつながらない。だからこそ、そうした役割を担える人材をいかに集め、増やしていくかが、共創に「再現性」を持たせるための重要なポイントになるという。

同様の課題意識から、人材づくりに取り組んでいるのがセイノーホールディングスだ。

河合氏は2011年に社内起業を経験し、その後もM&AやCVCなどを通じて、新たな事業創出に取り組んできた。同社が「オープンイノベーション」という言葉を掲げて取り組み始めたのは2016年。約10年にわたる活動を経て、現在は「次の10年」を見据え、人づくりに力を入れている。

その一つが、社内から新たな事業を担うイントレプレナーを生み出す取り組みだ。河合氏は、グループの多くの従業員の中には、既存事業で経験や知見を蓄積しながらも、新たな事業に挑戦する機会を持てていない人材もいると指摘する。そうした人材にも機会を広げ、新しい事業の責任者を担える人材の層を厚くしていこうとしている。

一方、事業を生み出す人材は、必ずしも社内だけで育てる必要はない。河合氏は、外部から人材を迎え、グループの中で経営を担ってもらう方法にも触れた。社内のイントレプレナーを育てることと、外部から経験を持つ人材を迎え入れること。その両方を通じて、新しい事業を担える人材を増やすことが、継続的な事業創出につながっていく。

目指すのは、特定の部署や一部のキーパーソンだけが新規事業を生み出す状態ではない。挑戦する人材が次々と生まれ、社内外の人材がそれぞれの強みを生かしながら、新しい事業を担っていく状態をつくることだ。

共創を一度の成功で終わらせず、次の挑戦へとつなげていく。そのためには、制度を整えるだけではなく、実際に事業を動かせる「人」を増やしていくことが欠かせない。

「決め打ち」しない組織へ――変化を捉え、次の事業を探す

経営のコミットメントがあり、事業を動かす人材と、それを支える仕組みがある。しかし、それだけで新しい事業を継続的に生み出せるとは限らない。議論の後半では、変化の激しい時代に企業がどのように次の事業機会を捉えるべきかというテーマへと話が広がった。

中馬氏が強調したのは、経営のコミットメントは重要である一方、未来を一つに「決め打ち」することには慎重であるべきだという点だ。

AIをはじめとするテクノロジーの進化や社会環境の変化によって、これまで安定していた事業の前提も変わりつつある。あらかじめ一つの未来を描き、その計画だけを長期的に進めるのではなく、変化の兆しを捉えたときに素早く動ける組織へ変わる必要があると中馬氏は指摘した。

その変化は、単純に「人の仕事がテクノロジーに置き換わる」という方向だけに進むわけでもない。

無人決済店舗システムを手掛けるTOUCH TO GOの阿久津氏は、省人化の必要性そのものは今後も変わらないとしながらも、自動化が進むことで、むしろ人の価値が高まる領域も生まれていると語った。

例えば物流では、輸送そのものを自動化できたとしても、荷下ろしや検品、その先の作業まで、すべてを機械に置き換えることは容易ではない。無人店舗でも、商品を店頭に並べる作業など、人が担う業務は残る。テクノロジーによって人を単純に減らすのではなく、自動化すべき領域と、人がより価値を発揮できる領域を組み合わせることで、新たな事業機会が生まれる可能性がある。

重要なのは、当初描いた事業の形に固執するのではなく、社会や技術の変化から生まれる新たな課題を捉え続けることだ。

河合氏も、将来の変化に備えるうえでCVCを活用していると語った。さまざまな技術や事業の可能性に触れ、それぞれをプロジェクトとして捉えながら、複数の選択肢を持っておく。未来を一つに絞り込むのではなく、変化が起きたときに動ける状態をつくることが、事業環境の不確実性が高まるなかでは重要になる。

セッションの最後、中馬氏は参加者に向けて「新規事業を考えるのはもうやめよう。新規事業は探しましょう」と呼びかけた。

その言葉が意味するのは、机上で未来を予測し、正解となる事業を考え抜くことではない。世の中がどこへ向かい、どこに変化の兆しが生まれているのかを見極め、機会を捉えたときに動くことだ。

経営が方向性を示し、挑戦する人材に権限を委ね、それを組織として支える。そして、社内外にアンテナを張りながら変化を捉え、次の事業機会を探し続ける。共創を一過性の取り組みではなく、企業の持続的な成長につなげていくためには、こうした「変化に反応できる組織」をつくることが求められている。

――――

▼本セッションの模様は以下より動画でもご覧いただくことができます。

取材後記

オープンイノベーションが多くの企業に広がった今、問われているのは「共創に取り組むかどうか」ではなく、それをいかに継続的な事業創出につなげていくかだろう。

今回の議論から見えてきたのは、経営のコミットメントや制度だけでなく、挑戦する人に権限を委ね、その人材を増やし、組織全体で支えていくことの重要性だ。さらに、変化の激しい時代には、あらかじめ描いた正解に固執せず、新たな機会を捉えて動く力も求められる。

共創が一部の担当者による特別な活動ではなく、企業が変化し続けるための「組織能力」になる。その状態をどうつくるかが、これからのオープンイノベーションの重要なテーマになりそうだ。

※TOMORUBAでは「OI SUMMIT 2026」のセッションレポートを順次公開しています。記事一覧はこちら。

(文:TOMORUBA編集部、撮影:加藤武俊)

新規事業創出・オープンイノベーションを実践するならAUBA(アウバ)

eiicon companyの保有する日本最大級のオープンイノベーションプラットフォーム「AUBA(アウバ)」では、オープンイノベーション支援のプロフェッショナルが最適なプランをご提案します。

チェックする場合はログインしてください

コメント1件

  • 眞田幸剛

    眞田幸剛

    • 株式会社eiicon
    0いいね
    チェックしました