塗装代替フィルム・伸縮ポリマー・キッチン新市場・高速解析──旭化成の技術アセット×パートナーの強みで挑む。共創プログラム『Value Co-Creation Table』第5期始動
ヘルスケア、住宅、マテリアルの3領域でグローバルに事業を展開する旭化成グループ。100年を超える歴史の中で築き上げた、屈指の技術基盤と多様な研究アセットを活かし、持続可能な社会の実現に向けた挑戦を続けている。
同社が2022年度より始動させたのが、オープンイノベーションプログラム『Value Co-Creation Table』だ。旭化成の技術とパートナー企業のサービスやプロダクトなど双方のリソースを活用し、サステナブルな社会の実現に向けてオープンにディスカッションすることにより、共に未来の可能性を見出していくことを目的としている。
第5期を迎えた今年度、さらなる共同研究開発や協業を通じた新規事業創出を目指し、以下4つのテーマを掲げ、パートナー企業の公募を開始した。
【テーマ1】 塗装を置き換える!次世代樹脂エマルジョン・フィルム
【テーマ2】 高機能伸縮性ポリマーが生み出す、次世代ソリューション
【テーマ3】 旭化成ホームプロダクツとパートナーの技術で、新市場を創出
【テーマ4】 高速解析ツールで設計初期の判断を加速し、樹脂部品の手戻りを削減!
TOMORUBAでは、募集テーマを提示した旭化成グループ4部門の担当者とプログラム事務局にインタビューを実施。各部門が抱く熱い想いや技術アセットの強み、求めるパートナー像を紐解き、旭化成と切り拓く共創の可能性を明らかにする。
【テーマ1】 塗装を置き換える!次世代樹脂エマルジョン・フィルム
――まずは、今回の樹脂エマルジョン・フィルムの開発に着手された背景から伺えますか。
船津氏:背景にあるのは、自動車分野などで高まる「塗装レス」へのニーズです。現行の塗装は高い意匠性や耐久性を実現できる反面、塗装設備の負荷が大きく、塗装工程・乾燥工程でのエネルギー消費やCO2・VOC(揮発性有機化合物)排出といった環境課題を抱えています。そこで材料メーカーの立場から、従来の塗装の代わりとなる新たなソリューションを提供できないかと考えたことが、この開発のスタートラインになっています。
▲旭化成株式会社 研究・開発本部 先端技術研究所 機能性ナノ構造材料開発部 船津貴洋 氏
――現行の塗装の代替として、具体的にどのようなアプローチでその課題解決に挑まれているのですか。
高野橋氏:一般的な塗装は、スプレーなどを使って何層にも塗り重ねていきます。それに対し、今回の技術はあらかじめ着色や加飾をしたフィルム等を作っておき、現場ではそれを貼るだけにするアプローチです。こうすれば、製造工程を大幅に短縮できますし、VOCの大気放出を抑えられるほか、乾燥にかかる膨大なエネルギー消費も削減できます。
このテーマは数年前から注目されていましたが、現行の塗装を代替できる性能には、まだ至っていませんでした。そこで、私たちが培ってきた微粒子設計技術で、完成度を高められないかと考え、研究開発を行っているのが今回の取り組みです。
▲旭化成株式会社 研究・開発本部 先端技術研究所 機能性ナノ構造材料開発部 リードエキスパート 高野橋寛朗 氏
――加飾フィルムは、すでに身近な製品でも実用化が進んでいるのでしょうか。
船津氏:当社の事例ではありませんが、フィルム加飾で言えば自動車の内装パーツが代表的で、インパネやドアトリムの木目などの意匠を施した部分に使われています。また、パソコンや家電製品などにも採用されており、意外と身近なところで利用されています。
――今回のテーマである樹脂エマルジョン・フィルムの強みや特徴について教えてください。
船津氏:自動車の内装などで実用化が進んでいるとお話ししましたが、屋外用途への適用は、要求されるフィルム性能の高さから、まだ開発段階にあります。屋外用途では過酷な環境に耐える高い耐候性が求められる一方、複雑な立体形状に追従する成形性も欠かせません。
しかし従来技術では、耐候性と成形性はトレードオフの関係にあり、両立が非常に困難でした。その壁を打ち破る可能性を秘めているのが、私たちが開発を進めている技術です。
高野橋氏:私たちは微粒子の構造を制御して、それを用いたコーティングや膜、フィルムといった材料を作っています。例えば、一般的な溶剤系と呼ばれるものだと、材料の組成自体は制御できても、それを使った構造設計まではなかなか難しい。
一方、私たちは原料の段階で微粒子の構造を精密に制御することで、それを用いた塗膜の物性をコントロールしています。それによって、先ほど船津が申し上げたようなトレードオフの関係にある物性を両立することに成功しているのです。こうした微粒子設計技術こそが、私たちの技術の大きな特徴だと考えています。
▲樹脂エマルジョン・フィルム
▲樹脂エマルジョン・フィルムで加飾した自動車モデル
――今回のプログラムでは、どのような共同研究や開発を目指していますか。
船津氏:このテーマでは特定の用途を限定していません。私たちが持つ高い耐候性と高い成形性という特徴を最大限に活かし、新たな用途や市場を探ることを目的としています。私たちは材料技術を持っていますが、市場にどのような課題やニーズがあるのかは、それぞれの業界の皆さまが熟知されていると思います。「こんな要求がある」「こんなことに挑戦したい」という声をお聞かせいただき、私たちの技術でどう解決し、価値提供できるかを一緒に考えていきたいです。
高野橋氏:今までの加飾フィルムは、耐候性の問題から屋内用途が中心でした。しかし、今回の技術を適用することで耐候性と成形性の両立が可能となります。屋外でも使えるようになったことで、用途は一気に広がるはずです。「使いたかったけれど耐候性の面で難しかった」といった声をお伺いし、ニーズに合ったものを原料の微粒子設計から行っていきたいと思っています。
――本テーマにおいて御社から提供できるアセットには、どのようなものがありますか。
船津氏:まずは、材料性能を左右する微粒子を一から設計・合成できる技術です。また、コーティング材料やフィルムといった用途に応じた配合技術に加え、様々な不具合に対する分析・解析の技術も持っています。加えて、私たちは材料技術の専門家として、現場の困りごとを伺いながら、具体的な材料の物性や技術仕様へと落とし込み、課題解決まで一貫して伴走支援をしていきたいと思っています。
――応募を検討している企業に向けてメッセージをお願いします。
船津氏:完成された事業アイデアというよりは、「現場のこの課題を解決したい」「もっと良い製品やプロセスを検討したい」といった考えをお持ちの皆さまと意見交換ができればと思っています。小さなアイデアでも歓迎しているので、ぜひ気軽にお声がけください。
高野橋氏:例えば、新車の塗装をフィルムに置き換えるとなると、世界を大きく変える事業になります。「どうすれば、新しい市場を立ち上げられるか」といったことも一緒に考えていける方々と議論していきたいですね。新市場の立ち上げは、私たち材料メーカーだけでは困難です。ユーザー企業と連携して初めて、バリューチェーンが出来上がっていくものだと思います。そんな夢のある挑戦を一緒に手がけましょう。
【テーマ2】 高機能伸縮性ポリマーが生み出す、次世代ソリューション
▲旭化成株式会社 マテリアル(コンフォートライフ) 和田佳祐 氏
――募集テーマとなっている「高機能伸縮性ポリマー」の特徴について教えてください。
和田氏:当社の「高機能伸縮性ポリマー」は、旭化成が長年培ってきた物理特性と機能性を両立する分子設計技術を体現した素材です。最大の特徴は、単に「伸びる材料」というだけでなく、ポリマーの設計段階からお客様の求める用途や性能に合わせてカスタマイズができる点です。
伸縮性に加えて、耐久性や加工性など様々な機能を付与したり、多様な特性を組み合わせた設計も可能です。また、糸状やフィルム状をはじめとする多様な形態へと展開できるポテンシャルも備えています。
――今回、どのような理由から本プログラムへの参加を決められたのですか。
和田氏:「高機能伸縮性ポリマー」は繊維分野で培ってきた技術ですが、繊維という枠にとらわれず、活用領域を限定しない形で展開したいと考えたからです。私たちはこの素材を、幅広い分野への展開可能性を有するコア技術素材と捉えています。そのため、異なる業界の皆さまとの対話を通じて、まだ見えていない用途や市場を発掘したいと考え、本プログラムに参加しました。
――どのようなパートナーとの対話や共創を希望されていますか。
和田氏:今回のプログラムで期待しているのは、既存部材に伸縮性を持たせたい企業はもちろん、既存の伸縮素材を「さらに薄く・細く・軽く」といった改善要望を持つ企業との対話です。あるいは、伸縮性は一度脇に置いて「部材にプラスアルファの機能を付与したい」というニーズも歓迎しています。「こんなことを実現したい」というアイデアベースの段階からでも構いませんので、ぜひ一緒に議論させていただければと思っています。
――具体的には、どのような産業や領域を想定されていますか。
和田氏:例えば、ロボティクスやモビリティ、ウェアラブル、ヘルスケア、家電、産業資材などの領域で、新たな製品開発に挑戦している企業を想定しています。あるいは、当社が従来から取り組んできた繊維分野においても、最先端の研究開発に挑んでいる方々とはぜひ意見を交わしてみたいですね。「新素材による製品差別化を図りたいものの、既存材料では実現できない」といった課題をお持ちであれば、解決の糸口が見つかるかもしれません。
お客様のニーズや用途に応じて、将来的にはフィルム、ゴム、樹脂などへの展開可能性も視野に入れていますので、「まずは意見交換から」というスタンスで多様な業界の皆さまと気軽にお話しできれば嬉しいです。
――応募を検討している企業に向けてメッセージをお願いします。
和田氏:当社は素材メーカーですから、ポリマーの設計から成型、分析・解析、物性評価まで一貫して行える技術基盤を有しています。これは大きな強みですが、一方で素材の知見だけで新しい価値を社会に届けることは困難です。やはり、市場やユーザーのニーズ・課題を深く理解されているパートナー企業との対話があってこそ、初めて新しいサービスや製品が実現できると思っています。
私たちがこれまで思いつかなかった用途や可能性が、他業界の視点から見ればまだまだ眠っているはずです。私たちの持つ「伸縮性+他機能」という素材技術と、パートナー企業がお持ちのアイデアや課題を掛け合わせ、これまで辿り着けなかった新しい価値を創出していきましょう。皆さまとの出会いを楽しみにしています。
【テーマ3】 旭化成ホームプロダクツとパートナーの技術で、新市場を創出
▲旭化成ホームプロダクツ株式会社 マーケティング部 新事業アクセラレーショングループ 高橋貴子 氏
――今回は御社の顧客基盤・販路を活かし、新たな商品開発を目指していると伺っています。詳しくお聞かせください。
高橋氏:当社(旭化成ホームプロダクツ)は、「サランラップ®」や「ジップロック®」「リード®」などを中心に、食品保存や調理補助、清掃用品といった幅広いジャンルの商品を手がけています。中でもラップ・ホイルのカテゴリーでは高いシェアを誇ります。
今回の取り組みで目指すのは、これまで築いてきた顧客基盤と販路を活かした新たな商品開発です。従来のような商品起点の発想から、生活者の行動や困りごとを起点とした発想へと転換し、これまでにない新たな価値創出に挑みたいと思っています。
――特に、どのような領域に注力したいとお考えですか。
高橋氏:重点を置いているのは、「食品保存・作り置き」「調理補助」「キッチンの清掃」という3つの領域で、日々の生活で使われる消耗品を中心に考えています。すでに表面化している困りごとを解決するだけでなく、生活者の日々の行動を丁寧に捉えることで、まだ言葉になっていない不満や潜在的なニーズを見つけ出し、新たな商品価値へつなげていきたい。そうすることで、既存のカテゴリーにとどまらず「こんな商品が欲しかった」と思っていただける新たな需要を生み出し、市場そのものを広げていくことを目指しています。
また、私たちがお客様に提供したいのは、単なる時間短縮(時短)ではありません。家事の負担を減らしながらも「きれいに仕上がる」「失敗しにくい」「安心して使える」といった確かな機能に裏付けられた価値をお届けしたいのです。特に、子育て世帯や共働き世帯など、限られた時間の中でも家族の健康や安全を大切にしたいと願う生活者の豊かな暮らしを支えていきたいと思っています。
――パートナー企業との共創は、どのように進めていくイメージでしょうか。
高橋氏:2つのパターンを想定しています。1つは、パートナー企業がすでにお持ちの完成品や既存技術に、当社のブランド力と販路を組み合わせることで、スピーディーな事業化と全国展開を目指すパターンです。
もう1つは、新たな商品を一緒に創り上げる共同開発型です。当社は生活者調査を数多く実施していますが、そこから見えてきたニーズや商品コンセプトを起点に、パートナー企業の素材や技術と、当社の商品設計力や品質保証、生産管理などのノウハウを掛け合わせ、新たな商品を生み出していく流れを描いています。
――共創を進めるにあたって、提供できるアセットを教えてください。
高橋氏:大きく3つあります。1つ目が、流通と社会実装力です。ラップ・ホイルカテゴリーで培ってきた卸様や小売業様との強固なネットワークがあり、家庭用のみならず業務用も含めた幅広い販路へ新商品を展開できます。
2つ目は、ブランド力とマーケティング力です。「サランラップ®」「ジップロック®」「リード®」「クックパー®」「ズビズバ®」などのブランド群を通じ、キッチン領域で生活者と多くの接点を持っています。
3つ目は、生活者を深く理解するための調査基盤です。グループインタビューや購買パネルデータ、VOC(顧客の声)分析システムなど、様々なツールを駆使して定性と定量の両面から生活者のニーズを探っています。そのため、当社からニーズ仮説や商品コンセプトをご提示することも可能です。
――すでに強力なブランドと開発力を持つ御社が今回、社外との共創に踏み出した理由も教えていただけますか。
高橋氏:生活者の声やニーズをどれほど深く把握できていても、自社だけで対応しようとするとどうしても限界があったり、商品化までに多くの時間を要してしまったりします。そこで、パートナー企業が持つ製品や素材、技術に、当社の生活者の理解やブランド力、商品化ノウハウ、販路を融合させることで、商品化のスピードを大幅に引き上げると同時に、継続的に新商品を生み出せるサイクルを築きたいと考え、今回の共創に踏み切りました。
――応募を検討している企業に向けてメッセージをお願いします。
高橋氏:世の中には素晴らしい技術や商品があるのに、販路が限られ、必要とする生活者に届ききっていないケースが少なくありません。そうした課題を、当社の全国的な流通網やブランド力を使って一緒に解決したいと思っています。
今回は完成品の導入や共同開発など、パートナーの状況に応じた共創の形をご用意しています。完成品はもちろん、試作段階の技術や他用途向けに開発された素材でも構いません。まずは皆さまの技術や製品をキッチン領域でどう活かせるか――その可能性を一緒に探っていけたらと思います。
【テーマ4】 高速解析ツールで設計初期の判断を加速し、樹脂部品の手戻りを削減!
――今回のテーマである「樹脂部品設計向け高速解析ツール」は、どのような背景から開発されたのですか。
田中氏:製造業の課題を解決に貢献する新たな事業につなげられないかと考えたのが出発点です。業界全体が抱える様々な課題の中で着目したのが、「製品開発の効率化」でした。例えば、樹脂製品の開発では、設計者が形状や材料、成形プロセスを検討し、詳細設計や試作を経て量産へと進みます。しかし実際には、後工程で次々と不具合が発覚し、設計のやり直しが何度も繰り返されているのが実情なのです。
この手戻りは設計者の業務増加を招くだけでなく、開発プロセス全体の遅延や、新製品創出の機会損失につながる大きな課題となっています。こうした現状を打開すべく、設計者があらかじめ後工程で起こるリスクを想定し、「これならいける」と自信を持って次に進められるようにする――その実現を目指して開発したのが、今回の「設計高速解析ツール」です。開発中のツールは、「AIが設計をしてくれる魔法のツール」ではありません。より多くの設計者が今まで時間が掛かって諦めていたシミュレーションを設計業務に取り入れやすくすることで、より考え抜かれた高品質な設計案を次の担当に渡せる状態を目指しています。
▲旭化成株式会社 研究・開発本部 イノベーション戦略総部 事業創造推進部 事業開発第二グループ グループ長 田中常治 氏
――その「樹脂部品設計向け高速解析ツール」は、どのような特徴を持ったシステムなのでしょうか。
貫井氏:このツールは、設計者の試行錯誤をサポートするというコンセプトで開発を進めており、特にこだわった点が「レスポンスの速さ」です。従来のシミュレーション(有限要素法を用いたCAE解析)を行う場合、設計者は専門のオペレーターに依頼し、メッシュを作成して解析をするなど、非常に多くの時間を費やす必要がありました。
それに対して本ツールは、Web上でCADデータ(形状データ)を読み込み、荷重箇所などを画面上でクリックするだけで結果を出すことができます。ただ、新しすぎる技術だけだと現場に取り入れるのが難しい側面もあります。そこで、裏側では従来のCAE解析が全自動で動くようにし、導入のハードルを感じないように工夫しています。さらに、シミュレーション結果を高速に予測するAI技術であるサロゲートモデルを活用し、解析時間の大幅な短縮を実現しました。
▲樹脂部品設計向け高速解析ツール
もう一つの強みが、旭化成の材料情報です。いわゆるマテリアルズ・インフォマティクスによって材料データを機械学習し、未取得の温度帯や湿度でも物性を予測できるようにしています。このマテリアルズ・インフォマティクスと、CAE解析側のAIであるサロゲートモデル。この2つのAIを組み合わせることで、指定した温度や材料における解析結果を1秒足らずで出力できる――そんなシステムになっています。
▲旭化成株式会社 研究・開発本部 基盤技術研究所 デジタル革新技術部 データ駆動設計グループ エキスパート 貫井隆行 氏
――今回はこのツールを、社外に展開していかれるそうですね。
竹原氏:はい。社外展開に向けて、まずは「どのフェーズの設計者を対象にし、そこにどんな課題があるのか」を掘り下げることに注力しました。ターゲットをどこに絞り、現場で何が求められているのか。それに応えるサービスアプリはどうあるべきか――。ヒアリングをもとに試行錯誤を重ねた結果、作業工数を大幅に削減し、利用者に「これは楽だな」と実感していただけるツールに仕上がったと考えています。
▲旭化成株式会社 研究・開発本部 基盤技術研究所 デジタル革新技術部 データ駆動設計グループ 竹原悠人 氏
――現在、「樹脂部品設計向け高速解析ツール」のプロトタイプが完成した段階だと伺っています。今回のプログラムでは、どのようなパートナーとどう共創していきたいとお考えですか。
池田氏:自動車部品や産業機械など、実際に樹脂部品の設計を手がけている企業とご一緒したいです。設計初期の検討を大幅に短縮できるツールなので、「開発期間を短縮したい」「設計後のエラーを事前に把握したい」といった課題をお持ちの設計者の方に、このツールのプロトタイプをお試しいただき、ご意見をいただければと思います。
▲旭化成株式会社 研究・開発本部 イノベーション戦略総部 事業創造推進部 事業開発第二グループ 池田彬 氏
――本テーマの共創を進めるにあたって、御社から提供できるアセットを教えてください。
池田氏:私たちは材料屋なので、独自の材料データベースはもちろん、樹脂部品に関する高度な解析ノウハウも豊富に持っています。蓄積してきたデータやノウハウ、技術をパートナー企業にも提供しながら、価値のあるソリューションを一緒に作り上げていきたいです。
――最後に一言ずつメッセージをお願いします。
貫井氏:私の所属するAI関連の開発チームは、「良いものをもっと速く」というモットーを掲げています。設計の試行錯誤で困っている人たちの力になれると思うので、ぜひ一緒に課題をクリアしていきましょう。
竹原氏:使い勝手には強いこだわりを持って開発をしていますが、実際の現場で使い込んでいただき、より使いやすくするための率直なご要望をいただきたいです。一緒により良いプロダクトへとブラッシュアップしていければと思います。
池田氏:このソリューションは、実証・現場実装を進めていくステップにあります。今回、共創していただくパートナーの方々の現場の声や具体的な意見をいただき、反映させることで、より実践的なものへと進化させたいと考えています。皆さまからの、忌憚のないご意見をお待ちしています。
田中氏:DX推進に悩むご担当者、業務効率化を目指す経営層、そして何より手戻りを減らしたい設計者の皆さまと共に、製造業を強くするソリューションを創り出し、現場の課題を一緒に解決していきたいと思っています。ご応募をお待ちしています。
【プログラム事務局】 研究開発を事業化につなぐ――過去4期で掴んだ手応えと新たな価値創出へ
▲旭化成株式会社 研究・開発本部 イノベーション戦略総部 事業共創推進部 オープンイノベーション推進グループ 永瀬裕康 氏
――『Value Co-Creation Table』は5期目を迎えます。ここまで継続して取り組んできた背景を教えてください。
永瀬氏:近年、社会課題や市場環境が急速に変化する中で、将来予測がより困難になっています。社会実装のスピード向上と高付加価値な事業創出の両立が求められる環境下、旭化成グループ単独では得られない社外の技術や知見、新たな視点を取り込むことの重要性は高まる一方でした。そうした危機感や課題意識から、これまでにない新たな価値創出を目指す場として『Value Co-Creation Table』を立ち上げ、今日まで継続して取り組んできています。
――過去4期の実績を重ねる中で、どのような社内の変化がありましたか。
永瀬氏:過去4期で扱ったテーマは16件になります。他部署の事例が口コミで伝わったり、全社への周知が進んだりしたことで、「このプログラムならテーマを出してみたい」と様々な部署から自発的に手が挙がるようになっています。毎回テーマがすべて刷新されている点からも、本プログラムが社内に着実に浸透してきた実感がありますし、研究・開発本部全体が以前にも増してオープンになってきた手応えも持っています。
――これまでに生まれた成果や、共創の手応えについてはいかがでしょうか。
永瀬氏:本プログラムでは、既存の事業や研究開発を起点に、用途探索やパートナー探索、アイデアの創出、新規事業の検討を進めています。そうした中、単独では接点を持てなかったスタートアップや異業種企業とつながり、共創を経て資本提携に至った事例や、共同サービスの開発に至った事例など、具体的な成果が生まれてきています。
さらに、これまでハードルが高かった研究フェーズから事業化への移行においても、社外との共創をきっかけに事業化へと前進できたテーマが複数あります。研究・開発本部に身を置く私にとっても本当に喜ばしい成果ですし、こうした成功事例が本プログラムを継続させる最大の原動力にもなっています。
――回を重ねてきた『Value Co-Creation Table』ですが、本プログラムが見据えるゴールとは?
永瀬氏:旭化成グループには創業以来100年以上にわたり、外部技術を積極的に取り入れながら社会課題の解決に取り組んできた歴史があります。現在は、ヘルスケア・住宅・マテリアルの3つを事業領域とし、人びとの”いのち”と”くらし”に貢献することを目指していますが、よりスピーディーに大きな価値を生み出すためには、社外のパートナーとの共創が不可欠だと考えています。
そのため、当社が培ってきた材料技術や研究開発力、国内外の顧客ネットワークを活用し、単なる技術連携を超え、事業構想から一緒に考えられるパートナー企業と新たな事業・サービスを形にしていく――これこそが、本プログラムが目指すゴールだと考えています。
――最後に、応募を検討中の企業に向けてメッセージをお願いします。
永瀬氏:各テーマで具体的な募集内容を提示していますが、まずはオープンなディスカッションを通じて、共創の可能性を一緒に探っていければと思っています。ご提案内容によっては、今回参加している部署に限らず、より親和性の高い別部署との打ち合わせを設定することも可能です。「まずは話してみよう」というスタンスで構いませんので、多様な技術やアイデアをお持ちの皆さまからのご応募をお待ちしています。
取材後記
今回で5期目を迎える『Value Co-Creation Table』。継続の裏には、外部との共創から確かな成果を生み出してきた手応えがある。今回提示された4つのテーマも同社の技術的強みが色濃く反映され、いずれもユニークで興味深いものばかりだ。構想段階の対話から始められる柔軟な間口の広さも、共創パートナーにとって心強いだろう。同社のアセットを味方に事業を飛躍させるチャンス、ぜひ迷わずエントリーしてほしい。
(編集:眞田幸剛、文:林綾、撮影:佐々木智雅)