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「ゼロパーティデータ」はなぜ信頼できる?消費者自ら企業に情報提供する次世代マーケティングを解説

「ゼロパーティデータ」はなぜ信頼できる?消費者自ら企業に情報提供する次世代マーケティングを解説

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新規事業やオープンイノベーションのプレイヤーや、それらを実践・検討する企業の経営者はTOMORUBAの主な読者層ですが、こうした人々は常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。

今回取り上げるのは「ゼロパーティデータ(Zero-Party Data)」です。デジタル広告規制の強化や個人情報保護の観点から、サードパーティデータやクッキーに依存したマーケティングが難しくなる中で、消費者自らが企業に提供する「ゼロパーティデータ」が注目を集めています。

ゼロパーティデータとは消費者が自発的に

ゼロパーティデータとは、消費者が自発的に企業に提供するデータのことを指し、アメリカの調査会社Forrester Researchが提唱したとされています。

参照ページ:Q&A: What Marketers Need To Know About Zero-Party Data | Forrester

ゼロパーティデータは例えば、消費者が企業のアンケートに回答した内容、会員登録時の趣味嗜好、カスタマイズ設定、商品に関するフィードバックなどが含まれます。これは企業が推測して得たデータ(サードパーティデータやセカンドパーティデータ)とは異なり、ユーザー本人の意思で開示されるため、正確性や信頼性が高い点が特長です。

ゼロパーティデータとサードパーティデータの違い

ここで、特に重要なのがサードパーティデータとの違いです。サードパーティデータとは、ユーザーが直接関与していない第三者(たとえば広告配信ネットワークなど)が収集したデータのことを指し、多くの場合、Webの閲覧履歴やクッキーを通じて間接的に収集されます。企業にとっては利便性が高いものの、個人の同意が不明確であることが多く、プライバシーへの配慮が不十分になりやすいという課題があります。一方、ゼロパーティデータは、ユーザー自身が提供を決めたデータであるため、利用に対する透明性と信頼性が担保されやすく、これが企業と顧客のより良い関係性の構築につながるとされています。

各種データの定義比較(参考)

・ファーストパーティデータ:企業が自社サイトやアプリの利用を通じて直接収集するデータ(購買履歴、アクセス情報、会員情報など)。

・セカンドパーティデータ:他社のファーストパーティデータを共有・提供してもらったデータ(提携企業との連携で取得するユーザー情報など)。

・サードパーティデータ:第三者によって収集・販売されるデータ(広告ネットワークによる閲覧履歴など)。

ゼロパーティデータが注目される背景には個人情報保護の規制強化が

背景には、GDPR(EU一般データ保護規則)やCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)など、個人情報保護に関する規制強化の流れがあります。これらの規制では、個人を特定できる情報の収集や利用に厳格なルールが設けられており、サードパーティクッキーの利用も順次制限されつつあります。

日本国内でも、2022年に改正された個人情報保護法により、個人データの取り扱いに関する企業の責任はより明確になりました。特に、利用目的の明示や第三者提供に関する本人同意の取得が重視されるようになったことで、企業は従来のようにクッキーなどを通じて得られた情報を自由に活用することが難しくなっています。そのため、ユーザーが自らの意思で情報を提供するゼロパーティデータは、法的リスクを低減しながらも、質の高いマーケティング施策を可能にする手段として注目されています。

こうした中で、企業が信頼関係を築きながらユーザーと直接つながる手段として、ゼロパーティデータの重要性が増しているのです。ユーザーが進んで提供したデータであれば、プライバシー面でのリスクが比較的低く、パーソナライズの質も向上します。

参照ページ:EU(外国制度) GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)

参照ページ:California Consumer Privacy Act (CCPA) | State of California - Department of Justice - Office of the Attorney General

参照ページ:「個人情報保護法」を分かりやすく解説。個人情報の取扱いルールとは? | 政府広報オンライン

ゼロパーティデータの活用アイデア

パーソナライズされた商品提案の実現

アンケートやプロフィール登録などを通じて得た情報をもとに、ユーザーに最適な商品を提案することができます。たとえば化粧品ブランドでは、肌質や悩みを事前に入力してもらうことで、ユーザーに合ったスキンケア商品を自然な形でレコメンドできます。

メールマーケティングや通知の最適化

興味・関心ジャンルを事前に取得しておけば、ユーザーにとって関連性の高いコンテンツだけをメールやプッシュ通知で届けることができます。これにより開封率やクリック率の向上が期待され、エンゲージメントの強化につながります。

長期的な関係性構築とLTV向上

定期購入型サービスなどでは、初回アンケートやユーザー選択を通じて好みを把握することで、継続利用につながる商品・コンテンツを提供できます。これにより、解約率の抑制や顧客生涯価値(LTV)の最大化が可能になります。

ブランド体験の設計

ゼロパーティデータは単なるマーケティング活用にとどまらず、店舗やアプリでの体験設計にも応用できます。たとえば来店時のオススメ案内や店員の対応など、リアルな顧客体験の最適化にも寄与します。

ゼロパーティデータ活用の注意点

ゼロパーティデータは自発的に提供されるとはいえ、企業側に誠実な姿勢が求められます。たとえば、取得目的の明示や、利用範囲の透明性、データ保管の安全性が問われます。万が一、意図しない用途に使われたとユーザーに感じさせてしまうと、ブランドへの信頼は大きく損なわれます。

また、GDPRなどの法規制においても、同意の取得と利用目的の明確化は必須とされており、ゼロパーティデータであっても適切な管理が求められます。

編集後記

ゼロパーティデータは、プライバシー保護とパーソナライズの両立を図るための鍵といえる存在です。規制が強化される中で、顧客の信頼を獲得しながらマーケティング精度を高めていくには、双方向の関係性を大切にする発想が欠かせません。企業が一方的にデータを「取得」する時代は終わり、今後はユーザーと「共有」する関係が新しい標準になっていくでしょう。

(TOMORUBA編集部 久野太一)

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  • 眞田幸剛

    眞田幸剛

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