
三菱HCキャピタル×エネコートテクノロジーズ×北海道電力、ペロブスカイト太陽電池の共同実証実験を開始――積雪寒冷地での耐久性を検証、脱炭素社会に向けた技術開発を加速
三菱HCキャピタル株式会社、株式会社エネコートテクノロジーズ、北海道電力株式会社の3社は、次世代太陽電池として注目される「ペロブスカイト太陽電池」を活用した共同実証契約を締結し、2025年8月より実証実験を開始する。これまで研究事例が少ない低温・積雪環境下における耐久性や発電性能を検証し、寒冷地でも利用可能な施工・管理方法の確立を目指す。
実証内容
本実証実験は2段階で実施される。まず2025年8月から11月にかけて、北海道電力が保有する恒温恒湿室を利用し、約マイナス25℃の低温環境下における発電特性を分析する。その後、2025年11月から翌年10月にかけて、北海道電力の実験住宅に窓や外壁面へ太陽電池を設置し、1年間にわたり実際の気象条件に近い環境でフィールド試験を行う。これにより、発電特性の把握だけでなく、施工方法や維持管理のノウハウを蓄積し、寒冷地での普及に向けた課題解決を図る。
各社の役割
本実証における役割分担は明確だ。三菱HCキャピタルは実証全体のとりまとめを担い、ペロブスカイト太陽電池や蓄電池の調達・保有、経済性の分析を実施。エネコートテクノロジーズは太陽電池の製造を担当する。そして北海道電力は研究所内の実証施設を提供し、設置工事やデータ取得・分析を担う。なお、三菱HCキャピタルとエネコートテクノロジーズにとっては、2024年の資本業務提携発表後、初の共同実証事業となる。
三菱HCキャピタルは環境エネルギー事業を成長の柱と位置付け、国内外で1.2GW超の再エネ発電事業を保有。今回の実証で得られる知見を活かし、今後の電源拡大を狙う。
エネコートテクノロジーズは京都大学発のスタートアップで、屋内外で高効率を発揮するペロブスカイト太陽電池の量産化を推進中。「どこでも電源®」の実現を掲げ、IoT機器から建築物まで幅広い応用を目指す。
北海道電力は「ゼロカーボン北海道」の実現に向け、2035年度までに再エネ電源を300万kW以上拡大する方針を示しており、寒冷地での実用化検証はその取り組みの一環となる。
ペロブスカイト太陽電池の特徴と市場性
ペロブスカイト太陽電池は、結晶構造を活用した発電層により、軽量・薄型で柔軟性を備えることが特徴だ。ガラスや外壁、窓などへの設置が可能で、既存のシリコン型太陽電池では困難だった場所でも発電が期待できる。
政府は2050年のカーボンニュートラルの実現に向け再生可能エネルギー導入を推進しており、特にペロブスカイト技術の普及に力を入れている。市場規模は2035年に1兆円に達すると予測され、産学官を巻き込んだ開発競争が加速している。

▲ペロブスカイト太陽電池
脱炭素社会への布石
今回の実証は、ペロブスカイト太陽電池の寒冷地適応を検証する国内初の大規模プロジェクトの一つだ。3社は発電特性や施工ノウハウを共有し、社会実装を加速することで脱炭素社会の実現に貢献していく構えだ。
豪雪地帯を抱える北海道での成果は、日本全国、さらには世界の寒冷地における再エネ普及の重要な布石となる可能性を秘めている。
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(TOMORUBA編集部)