
次世代型の太陽電池を開発するスタートアップ・PXP×名古屋電機工業が白馬村で「曲がる太陽電池」の実証開始。雪国特有の課題と可能性を同時検証。
次世代型の太陽電池を開発するスタートアップ・株式会社PXP(神奈川県相模原市)は、名古屋電機工業株式会社(愛知県あま市)との共同プロジェクトとして、長野県白馬村にて、可搬型の「トレーラーハウス」に超軽量かつ曲がる太陽電池を搭載し、キロワット級の実証実験を開始した。これにより、従来型太陽光発電設備が設置困難な地域や用途における新たなエネルギー供給の可能性を探る。
設置面積の限界に挑む“曲がる”太陽電池
国内の太陽光発電は、設置可能な平地や住宅屋根が飽和状態にある。PXPはこの現状を打破すべく、壁面や車両、道路インフラなど既存の“未利用空間”に簡便に設置できる、曲がる軽量太陽電池を開発してきた。今回の実証では、移動可能なトレーラーハウスの屋根と壁面に太陽電池を設置し、実際の発電量や耐久性を1キロワット単位で測定する。
また、実証実験の舞台となる白馬村は、積雪量が多いことで知られる。本実証では、屋根と壁面の異なる設置角度による発電効率の差を測定するほか、雪による発電障害、雪面反射による散乱光の利用可能性など、雪国特有の課題と利点を同時に検証する。また、走行時の安全性やパネルの耐久性といった長期運用面での評価も行う予定だ。
発電電力でCO₂を資源化する仕組みも
発電された電力は、トレーラーハウス内に設置された「金属有機構造体(MOF)」を活用する装置に使用される。このシステムは大気中の二酸化炭素を回収し、メタンガスなどのエネルギー源へと変換するもので、脱炭素社会を目指す次世代技術の中核ともいえる存在だ。実証実験は、名古屋大学未来社会創造機構と白馬村によるCOI-NEXT変環共創拠点の取り組み「未利用資源からエネルギーを生み出す実証事業」と連携して進められている。
インフラの“面”を使い尽くす未来へ
PXPと名古屋電機工業は、道路インフラ分野への応用も視野に入れており、標識や防音壁など既存構造物を太陽光発電の「設置面」として活用する計画だ。再生可能エネルギーの導入余地が限られる日本において、“使える面”をいかに発掘し、エネルギーに変えるかが今後のカギとなる。
PXPは2020年設立の若い企業ながら、柔軟な発想と高い技術力で、エネルギーの未来を切り拓こうとしている。今後の展開に注目が集まる。
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(TOMORUBA編集部)