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「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉛~コストリーダーシップ戦略

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉛~コストリーダーシップ戦略

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モノやサービスを売る上で「安さ」は大きな武器になります。しかし、多くの人に手にとってもらいやすくなる一方で、利益率が下がるなどのリスクがあるのも確かです。十分な利益を確保しながら、できるだけ安くお客さんに商品を提供したいという想いは多くの企業がもっていることでしょう。

TOMORUBAの【「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く】第31弾で取り上げる「コストリーダーシップ戦略」は、まさに安さを武器に戦う戦略のこと。ただし、単に「値下げ」をするのではなく、いかに利益を確保するかが重要なポイントです。いかにして健全に価格を下げるのか、その方法を紹介していくので参考にしてください。

コストリーダーシップ戦略とは

コストリーダーシップ戦略とは、競合他社に比べてコストを抑えることで優位性を築く経営戦略のこと。コストとは商品の価格ではなく「原価」のこと。つまり、大事なのは原価を抑えることで、必ずしも値下げをすることではありません。コストを下げて価格を変えなければ利益率アップも見込めます。

「安売り戦略」と混同されることもありますが、安売りは単に価格を下げるだけなので利益率はもちろん低下。セールなどで一時的な集客のために利益度外視で価格を下げるのは、コストを抑えていないのでコストリーダーシップ戦略とは呼べません。

マイケル・ポーターの3つの戦略

コストリーダーシップ戦略は、ハーバード大学教授で世界的に有名な経済学者であるマイケル・ポーター氏が唱えた経営戦略の一つ。ポーター氏は、他に「差別化戦略」「集中戦略」という戦略を提唱しており、3つの戦略のいずれか選択すること他社に対して優位性を確立できると言っています。それぞれの戦略の違いを見ていきましょう。

差別化戦略は、コストリーダーシップ戦略とは真逆の戦略。高価格で質が高い、もしくは希少性の高い商品やサービスを提供することで差別化を図ります。高級ブランドや高級レストランなどがこの戦略をとっていると言えます。

集中戦略とは、小さい市場をターゲットに集中的に商品やサービスを投下する戦略。万人受けするのはでなく、ニッチな需要に対して製品を提供することで、独自の市場を確保していきます。

それぞれの戦略の特徴は次の通りです。


コストを下げるには

一口にコストを抑えると言っても、その方法は様々です。どのような方法があるのか見ていきましょう。

大量生産(ボリュームディスカウント)

一度に大量生産をすることで、商品あたりのコストを下げられます。その理由は「固定費」にあります。例えばケーキを作るのに、材料費などの「変動費」は生産量に比例して増えますが、賃貸料や人件費などの固定費は生産量が増えても変わりません。

生産量が増えると変動費の分、全体のコストは増えますが、商品一個あたりの固定費は下げられるのです。

生産工程の効率化

生産工程を効率化することでも、製品一個あたりのコストを抑えることができます。例えば一人の職人が1時間で10個の商品を作っていたのを、20個作れるようになれば商品一個あたりの人件費は半分になります。

もちろん、人件費だけでなく、機械を新調して同じ時間で生産量を増やすのも結果は同じです。

原材料の低減

原材料を抑えれば、当然商品一個あたりのコストを下げられます。原材料を抑えるにはいくつか方法があり、代表的な方法は「まとめ買い」。一度にたくさんの材料を購入することで、単位あたりのコストを抑えられるでしょう。

他にも同じ材料を安く仕入れられる業者を探したり、質を下げずに安い別の材料を探すのも一つの手段。単純に不要在庫を減らすだけでも、一個あたりの原材料は下げられます。

直接仕入れ

もしも代理店などを通して材料を仕入れている場合、材料の製造業者などから直接仕入れることで原材料を下げられます。代理店を挟むことで中間マージンが発生するため、その分余計なコストがかかるのです。

ただし、代理店を通すことで仕入れの窓口を絞るというメリットもあります。直接仕入れの場合は、それぞれの製造業者とやり取りしなければならず、工数がかかる場合もあるので注意が必要です。工数をかけてでもコストを下げるべきか考えてみましょう。

人件費や固定費の削減

コストを下げるには人件費や固定費の削減も検討しましょう。ただし、無闇な人員削減はサービスの質が低下するリスクもあります。例えば店舗の接客スタッフを減らすことで、客がそれまでと同じようなサービスを受けられなくなれば、客が減って売上が落ちるかもしれません。

単に人材を減らすのではなく、例えば自動のレジを導入するなどして、人材が減ってもサービスの質が落ちない工夫をしましょう。

コストリーダーシップ戦略のメリット

コストリーダーシップ戦略をとることで、どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。

多くの人に手をとってもらいやすくなる

人が商品を選ぶとき「安さ」は大きなポイントになります。安いだけで買ってもらえるわけではありませんが、コストリーダー戦略で価格を下げれば、より多くの人の購入の選択肢に入れてもらえるでしょう。

価格を下げた商品の売上げアップが期待できるのはもちろん、社名などを認知してもらえれば、他の商品の売上げアップも期待できます。

利幅を大きくできる

コストリーダーシップ戦略は、必ずしも価格を下げる必要はありません。コストを下げても同じ価格で販売し続ければ、利益率があがり大きな利益を得られるでしょう。

コストリーダーシップ戦略のデメリット

コストを抑えて価格を下げれば利益率は下がりませんが、必ずしもデメリットがないわけではありません。どのようなリスクがあるのか見ていきましょう。

過度な価格競争が起きる可能性がある

自分たちが価格を下げれば、競合他社も黙って見ているわけにはいきません。中には価格競争を仕掛けてくる可能性もあります。差別化の難しい商品の場合、価格競争が激化して利益を圧迫する恐れがあるのです。

コストを抑えられれば有利に戦えますが、相手が大企業の場合、苦しい戦いを強いられることになります。大手の場合は体力があるため、一時的に赤字覚悟の低価格戦略をとってくる可能性もあるからです。それに対抗すれば赤字になってしまいますし、体力勝負となれば大企業に勝てる道理はありません。

コストを抑えるためにコストがかかる場合も

コストリーダーシップ戦略を実現するためには、時にコストがかかる場合があります。例えば大量生産ができるのは、それだけ多くの商品を売りさばく前提があるからです。多くの商品を売るためには広告など、別のコストがかかることも考えなければいけません。

また、人件費を抑えるためにシステムを導入する場合、一時的なコストがかかります。経営資金に余裕がある場合は、将来を見据えて導入できますが、余裕がなければ難しいでしょう。もちろん、アイディア次第ではコストをかけずともコストを抑える方法もあるため、自分たちに何ができるのか探してみましょう。

コストリーダーシップ戦略の成功事例

実際にコストリーダーシップ戦略で成功した企業を見ていきましょう。

マクドナルド

コストリーダーシップで成功した代表例と言えばマクドナルドでしょう。物流システムや徹底したマニュアル化によるコスト削減は素晴らしいですが、最も注目すべきは大量生産によるコスト削減。価格を下げて大量生産したほうが、一個あたりの利益率が高いというから驚きです。

ただし、過去には過度な低価格戦略により、価格競争が激化して業績が悪化したこともありました。現在はコストリーダーシップ戦略をとりつつも、商品開発やサービスの付加価値向上により、コストと質のバランスを保っています。

ユニクロ

ファッション業界におけるコストリーダーシップ戦略の成功事例といえばユニクロ。その高いコストパフォーマンスの実現の裏にはSPA(製造小売業)という仕組みがあります。

通常、アパレル商品は商品の開発、製造、販売を別の事業者が行うため中間マージンが発生します。ユニクロはそれらの工程を一貫して自社で行うことでマージンを削減するだけでなく、効率的な物流も実現しています。コストを抑えることで、他社にはできない低価格戦略を可能にしているのです。

ニトリ

家具業界で、ユニクロと同じSPAの仕組みをいち早く取り入れてコストリーダーシップ戦略をとっているのがニトリ。商品企画から物流、販売に至るまですべて自社グループでプロディースしています。

「お、ねだん以上。」というキャッチコピーを前面に打ち出し、コストパフォーマンスの良さをアピールすることで集客にも成功しました。

エイチ・アイ・エス

旅行業界でコストリーダーシップ戦略といえばエイチ・アイ・エスが挙げられます。「低コストで旅行にいきたい」というニーズに応えるため、大手が手を出さないような格安チケット販売を行ったことで事業を成長させました。

コストリーダーシップ戦略と集中戦力の組み合わせて、低価格ブランドを確立した好事例と言えるでしょう。

編集後記

貧富の二極化が進む日本において、コストリーダーシップ戦略は重要な役割を担う。しかし、気をつけたいのは多くの業界でコストリーダーシップで成功している企業がいるため、これ以上価格を落としても差別化にはならないことだ。

大事なのはコストを抑えながら品質を保つ、もしくは上げること。決していい原材料でなくとも、商品企画や生産過程のアイディアでコストを下げられるので、様々な事例を見ながら自社に適したコスト削減方法を探してみよう。

TOMORUBA編集部 鈴木光平)


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