TOMORUBA

事業を活性化させる情報を共有する
コミュニティに参加しませんか?

AUBA
  1. Tomorubaトップ
  2. ニュース
  3. 「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑤〜孫子の兵法
「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑤〜孫子の兵法

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑤〜孫子の兵法

  • 11856
  • 11825
  • 1813
4人がチェック!

経営戦略の中には、実際の戦争で用いられた戦略がもとになっているものも少なくありません。その中でも、最も有名なものが「孫子の兵法」ではないでしょうか。経営戦略に詳しくない方でも、名前くらいは聞いたことがある方も多いはずです。中国の春秋時代、今から約2500年も前に書かれた兵法書ですが、歴史上の偉人達をはじめ、今でも多くの経営者たちが愛読書にしているというから驚きです。

TOMORUBAの【「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く】第五弾は、この「孫子の兵法」を取り上げます。遥か昔、中国で書かれた兵法書が、なぜ2000年経った今でも多くのビジネスパーソンの心を掴んで離さないのか、その秘密を読み解いていきましょう。

孫子の兵法とは

孫子の兵法が書かれたのは、人気マンガ「キングダム」の舞台でもある中国春秋時代。マンガを読んだことのある方であれば、数々の計略に興奮したことだと思いますが、実は「孫子の兵法」が書かれる前は、戦争の勝敗は天運に決定されると考えられていました。それに異を唱えたのが孫子の兵法を書いたとされる孫武。戦争の勝敗には合理的な理由であることを主張し、勝つための方式をまとめたのが「孫子の兵法」です。(諸説あり)

孫武は斉という国に生まれ、新興国の呉の王様に使えた軍事戦略家と言われています。彼が仕えたことで、呉は地方の小国から覇権争いに絡む強国にまで成長します。今風に言えば、孫武はスタートアップを上場まで成長させたCOOといったところでしょうか。

そんな孫子の兵法は、古今東西多くのファンがいます。三国志では強大な敵として描かれることの多い魏の王、曹操をはじめ、日本でも「風林火山」で知られる武田信玄や、戦国の世を終わらせた徳川家康も愛読書にしていたと言われています。ちなみに「風林火山」は孫子の兵法の一節です。アジアだけでなく、フランスの革命家・ナポレオンも孫子の兵法を学んで戦に活かしていたと言います。

孫子の兵法を学んで名を挙げたのは歴史上の武将ばかりではありません。世界一の大富豪にまで上り詰めたマイクロソフトの創業者・ビルゲイツや、日本を代表する経営者の一人、孫正義も愛読していると言います。他にも孫子の兵法を活用してきた人たちを挙げればキリがありませんが、それだけ価値のある教えが盛り込まれていることが分かるでしょう。

孫子の兵法が戦争以外のシーンでも愛される理由

内容について触れる前に、まずは孫子の兵法の大きな特徴について見ていきましょう。戦略について書かれていると聞くと、いかに相手を蹴散らすのかが書かれている好戦的な内容に思うかも知れません。しかし、実際は簡単に戦争を起こすことを避けたり、戦いを長期化させて国力を弱めることを避けるなど、非好戦的な面が見て取れます。それは序盤に書かれている、次の記述からも伺い知れます。

「兵は国の大事にして、死生の地、存亡の地なり。察せざるべからず」

戦争は国家の大事であって、国民の生死、国家の存亡がかかっている。よく考えねばならない

戦争という一事象だけにとらわれるのではなく、あくまで国家運営と戦争との関係を俯瞰する政略・戦略を重視しているのです。孫子の兵法が単なる兵法者の地位を脱して、様々なシーンに活用されるのは、目先の戦闘に勝つことだけに終始せず、国家のあり方から戦争を論じているからとも言えます。

全13編からなる孫子の兵法

孫子の兵法は次の13編から構成されています。


13編を見て分かる通り、孫子の兵法では実際に戦闘が始まってからの戦略と同じか、それ以上に戦争をする前の準備について書かれていることが分かります。戦争に勝つものは、戦争が始まる前に勝つべき態勢を整えていますし、勝てないと分かったら戦争はしません。つまり、勝つための戦略というよりも「負けない戦略」とも言えるでしょう。

ビジネスで活かせる孫子の兵法の名言

孫子の兵法の概略について紹介してきましたが、実際にビジネスシーンで使える言葉を抜粋して紹介していきます。

「敵を知り己を知れば百戦してあやうからず」

いくら自分たちの戦力を把握しても、敵のことを知らなければ勝てる見込みは五分。敵と味方、どちらの実情も把握していれば、百回戦っても危険はないと言っています。今の時代で考えるなら、何を敵とするかで考える範囲も変わってきます。「競合」と捉えるのは分かりやすいですが、それだけに留まらず参入しようとしている業界や市場について、ユーザーについても知らなければいけません。

VCが出資をするかどうか判断するときに「どんな質問にも答えられるか」というポイントがあります。キャピタリストの質問に即座に答えられるくらい、業界について詳しく調べていない経営者が成功するはずがないからです。実際のビジネスでは、どんなに入念に調べても想定外のことが起きるもの。どんなに準備しすぎても準備しすぎということはありません。

「善く兵を用うる者は、道を修めて法を保つ」

戦いの上手な人は、人の心をひとつにまとめ、隊の規律を守らせます。だから軍の統制ができ、勝敗を思うままにできるのです。上に立つものの統率力が大切であると言っています。企業で言えば、どんなに斬新なビジネスアイディアを考え、秀逸な戦略を立て、優秀な人材を集めたとしても、規律がなく統率されていなければパフォーマンスは発揮されません。

10人ほどの小さな組織であるうちは、規律やルールがなくても会社は回りますが、組織が大きくなるにつれ規律が必要になってきます。理にかなった規律を作り、その規律を公正に運用することで、メンバーそれぞれのベクトルを合わせることができるのです。会社が小さなうちは、マネジメントしなくても事業が成長していきますが、会社が成長するについて、組織の規律を作っていかなければなりません。

「善く戦う者は、人に致して人に致されず」

「人に致す」とは「自分の思うように動かす」という意味。戦上手は自分が戦いの主導権を握り、相手に主導権を握らせません。ビジネスでも競合が新しいサービスを始めたが故に、後手に回ってマネするしかなくなるケースが見られます。そして、多くの場合は主導権を握られた企業が負けるのです。

主導権を握る方法として、孫子では相手よりも先に戦場に着くことをよしとしています。先に戦場について、自分たちの有利な場所に兵を配置すれば、おのずと主導権が握れます。ビジネスでも、常に先を読んで準備をしていれば、仮に競合が先にサービスを始めても後手に回ることなく、自分たちが主導権を握っていられるでしょう。

「善く戦う者は、先ず勝つべからざるを為して、以て敵の勝つべきを待つ」

まず先に敵から攻められてもいいように守りを固めた上で、敵が弱みを露呈し、攻めれば勝てるような状況になるのを待て、という意味です。負けないように守りを固めることは自分たち次第だが、勝つかどうかは敵次第の面があるというのです。

ビジネスでも、儲かるかどうかは自社だけではどうにもならず、景気に左右されたり、顧客次第だったり、競合とのあ兼ね合いで影響を受けることもあります。しかし、会社が潰れないようにしたり、赤字にならないように備えるという守りの面では自社の努力次第でどうになかなると考えられるでしょう。

どんなに景気が悪くなっても、すべての会社が潰れるわけではありません。その差は景気のいい時にどれだけ備えてきたかということではないでしょうか。景気が悪くなっても大丈夫なように経営基盤を強化して、チャンスが訪れた時に攻めれるように準備しておくことが重要です。

編集後記

今回は孫子の兵法のわずか一部しか紹介できませんでしたが、他にもビジネスで活かせる金言が散りばめられています。孫子の兵法については様々な書籍が出版されていますし、原文もさほど長くないので、興味のある方は目を通してみてはいかがでしょうか。

また、孫子の兵法はビジネスのために書かれた書物ではないので、書かれた内容を自分なりに解釈する必要があります。今回は私の個人的な解釈で紹介しましたが、読んだ人の数だけ解釈があってもいいのが、孫子の兵法のいいところだと思います。様々な人の解釈に触れながら、自分にしっくりくる使い方を考えてみてはいかがでしょうか。

TOMORUBA編集部 鈴木光平)


■連載一覧

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く①〜ポーターの『5フォース分析』

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く②〜ランチェスター戦略

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く③〜アンゾフの成長マトリクス

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く④〜チャンドラーの「組織は戦略に従う」



新規事業創出・オープンイノベーションを実践するならAUBA(アウバ)

AUBA

eiicon companyの保有する日本最大級のオープンイノベーションプラットフォーム「AUBA(アウバ)」では、オープンイノベーション支援のプロフェッショナルが最適なプランをご提案します。

チェックする場合はログインしてください

コメント4件