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「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑭〜組織の7S

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑭〜組織の7S

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企業を成長させるにあたり、欠かせないのが「組織改革」。しかし、様々な要素で構成される「組織」を改善するには、どこをどのようにテコ入れするのか戸惑うもの。数値では表せられない要素が多いのも、多くのマネージャーを困らせる要因の一つでしょう。

TOMORUBAの【「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く】第14弾で取り上げる「組織の7S」は、そんな組織を構成する要素を7つに分け、それぞれの関連性を表したもの。今回は7Sをもとに、組織を改革する上で気をつけるべき点を紹介していきます。

組織の7Sとは

「組織の7S」とは、アメリカのコンサルティング会社「マッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱した「組織をうまく機能させる上で大切な7つの要素」をまとめた理論です。同社の調査によれば、優良企業と呼ばれる組織は、例外なく7つの要素がバランスよく存在しており、それぞれの要素がお互いに補完・補強し合う環境になっているといいます。

7Sで示される7つの要素は、さらに「3つのハードのS」と「4つのソフトのS」に分けられます。ハードとは施設や設備など、目に見える形があるもの、ソフトとは人材や技術、意識など目に見えない無形のものを指します。

3つのハードのS

ハードのSは目に見えやすく、短期間で変化できる上に、経営者の意向だけで変更を実施できるので、企業の変革の際にはこちらから着手されることが多いです。次の3つのことを指します。


①Structure(組織構造)

企業がどのように組織されているのか表す構造を指します。部署の構成(職能別、製品別、市場別)や上下関係、命令系統などが当てはまります。


②Strategy(戦略)

市場で行く抜くための計画のことを指します。社内だけでなく、競合他社の動きを視野に入れつつ、いかにして市場での優位性を確保していくのかの試みです。

③System(システム)

組織を管理・運営する手法のことを指します。経営管理や情報管理をするためのシステムや制度が含まれます。

4つのソフトのS

ソフトのSは人に関わる要素が多いため、目に見えにくいのが特徴です。価値観の変化やスキルの向上は、一朝一夕で成し得るものではないため、長期的な計画で取り組む必要があります。次の4つのことを指します。

①Style(スタイル)

企業の社風や文化、組織の雰囲気、その企業独自の経営スタイルなどを指します。

②Staff(人材)

人材の採用、評価、育成などを指します。社員それぞれのモラルや勤務態度、モチベーションなども含みます。

③Skill(スキル)

社員一人ひとりのもしくは企業全体のスキルや能力、技術のことを指します。企業としての特徴が他社と差別化されていれば、小さな組織でも競争に勝ち残る可能性が高くなります。

④Shared value(共通の価値観)

企業全体で共有している価値観や基本理念、ミッション、ビジョン、企業目標のことを指します。全員が当たり前としている価値観とも言えるでしょう。

7つの要素の関係性

7Sで表される要素は、それぞれ独立してあるわけではありません。7Sは下図のようにダイヤグラムの形で表されており、その重要性や関連性が示唆されています。


図の中で特に注目したいのが、中心に「Shared value(共通の価値観)」があること。ハードにしてもソフトにしても、すべての要素は共通の価値観から生まれ、そこに共感した人材が集まり、必要なスキルやシステムも定まっていきます。戦略や組織構造もスキルやシステムに合わせて決まっていくので、共通の価値観からすべてが始まっていくと言ってもいいでしょう。

逆に、それぞれの項目を独立させて考えてしまうと、チグハグな組織が出来上がってしまいます。戦略を実行するスキルが伴っていなかったり、組織構造にマッチしないシステムを導入して非効率が生まれてしまう可能性もゼロではありません。7Sを考える時は、組織全体俯瞰しながらテコ入れをしていきましょう。

7Sの使い方

7Sによって組織を構成する要素が整理されることで、組織改革が格段にしやすくなるはずです。ただし、闇雲に7つの要素を分析しても、改善できるとは限りません。

ここでは7Sを活用して組織を改善するためのフローを紹介するので参考にしてください。

目的を明確にする

7Sのフレームワークに目を向ける前に、まずはなぜ組織改革が必要なのか目的を明確にしましょう。目的によって理想の組織も変わってくるため、目的もなく分析を始めるのはゴールのないマラソンを始めるのと同じようなものです。

「新規事業を成功させたい」なのか「既存事業を効率化させたい」なのかで、求められる改善策が異なります。明確な答えを出すためにも、まずは明確な目的を定めましょう。

現状を分析して問題点を洗い出す

目的を明確にしたら、7Sのフレームワークに則り現状を分析します。7つの要素について、一つずつ今の状況を書き出していきます。一通り現状を洗い出したら、一つ前で明確にした目的と見比べて問題点がどこにあるのか探りましょう。

改革案を作る

問題点を絞り込んだら、改革案を作っていきます。この時に注意したいのが優先順位です。改革案を考えるときは、ついつい「ハードの3S」に目がいきがちです。短期的に改革できて、経営陣の意向だけで進められるので一見効率的に見えます。

しかし、ハードのSだけ変更しても、一時的に改革できたように見えて、すぐにまた問題が起きてしまうもの。戦略やシステムを実行するのも人なので、結局ソフトのSを改革しなければなりません。

優先順位としては、ソフトのSの改革案を考えてから、それに合わせたハードのSを考えていくのがおすすめです。ソフトのSは簡単に改革できませんが、逆に一度改革すれば組織の基盤が固まります。改革の難しいソフトSだからこそ、優先的に改革案を考えましょう。

PDCAを回す

一度改革案を作ったからと言って安心してはいられません。本当に改革案が実施され、組織の改革が進んでいるのか、定期的にチェックしましょう。改革案が徹底されていない、もしくは徹底されていても効果が薄いようであれば、徹底するための施策や別の改革案が必要になります。

特にソフトのSは目に見えにくいため、改革案を実施する前との比較がしにくいのが特徴です。改革案を実施する前に、何をもって改革がなされたのか、定量的な目標を定めておくといいでしょう。ただし、組織の雰囲気などは必ずしも定量的に測れるものではないため、細かい変化にも気付けるように気を配って置く必要があります。

7Sの重要性を明らかにしたHONDA

アメリカで7Sが注目されるようになった背景には、1970~80年代における日本企業の世界的な躍進があったと言われています。科学的かつ合理的なマネジメントを行ってきた欧米企業には、日本企業の躍進が理解できなかったようです。

その日本企業の強さを明らかにしたのが、マッキンゼーが編み出した7Sです。日本企業は組織構造や戦略といったハードのSは曖昧でしたが、ソフトのSに関しては欧米企業よりも秀でていました。

特に共有価値の重要性を示したのがHONDAです。1959年にアメリカのバイク市場に進出し成功を収め、その勢いにのって1970年には自動車の販売にも乗り出します。現地生産を成功させるために掲げたのが「HONDA WAY」という共通の価値観をまとめたもの。

創業者の本田宗一郎氏らが生み出した、HONDAの企業哲学や凄惨理念をアメリカ人に理解してもらるために、それは必要不可欠なものでした。1年の月日をかけて構築した「HONDA WAY」は、当時HONDAを遥かに凌ぐ売上を誇っていたフォード、クライスラーといったアメリカの自動車メーカーに勝ち抜く原動力になったのです。

編集後記

多くの投資家が企業を判断するのに、一番注目するのが「組織」だといいます。どんなに優れたビジネスアイディアも、それを実現する組織が整っていなければ企業は成長しません。事業の成長を考えるなら、まずは組織を整えることから始めましょう。

特に7Sの「ソフトのS」は改善が容易ではありません。人々のエンゲージメントやモチベーションは一朝一夕で変わるものではないため、経営者には粘り強さが求められます。一見、事業の成長に遠く、成果も見えづらい「ソフトのS」ですが、そこを改善することが長期的な成功の近道になるはずです。

TOMORUBA編集部 鈴木光平)


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