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「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑥〜VRIO分析

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑥〜VRIO分析

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事業を成長させていく上では、競争優位性を明確にし、強化していくことは避けられません。しかし、せっかく作った競争優位性もそのままでは他社にマネされ、優位性になるなくケースもよく見られます。持続的に成長していくには、競争優位性を作りながらもマネされず、自社で活用される組織体制を作ることが必要不可欠です。

TOMORUBAの【「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く】第六弾で取り上げる「VRIO分析」は、戦略的に持続可能な競争優位性を作り出すためのフレームワーク。分析方法はもちろん、日本を代表する企業をVRIO分析した事例も紹介するので参考にしてください。

VRIO分析とは

VRIO分析とは、アメリカの経営学者ジェイ・B・バーニーが提唱したフレームワークです。企業の経営資源を分析し、競争優位性を発見することで市場の拡大やイノベーションを図ることができます。VRIOとは、経済価値(Value)・希少性(Rarity)・模倣困難性(Imitability)・組織(Organization)の4つ頭文字のことで、それぞれを分析することで自社の強みと弱みを浮き彫りにします。

それぞれの意味についてみていきましょう。

●経済価値(Value)

自社の経営資源が市場で経済的な価値があると認識されていることを指します。マンパワーや建築物、機器類などを含めたリソースが、ビジネス環境で価値を発揮できているか考えましょう。この時、いかにコストをかけているかは関係ありません。「機会をうまくとらえることができる経営資源」や「脅威を無力化することができる経営資源」のことを、「経済価値のある経営資源」と呼びます。

●希少性(Rarity)

自社の経営資源が希少かどうかを評価します。いかに経営資源に価値があっても、競合も容易に持てるようでは競合優位性になりませんし、参入障壁が低いために競争が激化しやすくなります。逆に他社にない経営資源を持っていれば、それが強みとなって競合優位性に繋がるでしょう。

●模倣困難性(Imitability)

自社の持つ経営資源が他社にとって模倣しやすいかどうか分析します。今は希少性のある経営資源でも、模倣しやすければ将来的な希少性が減り、競合優位性が薄れていくことを意味します。模倣困難性の要因となるのは次の5つです。

・時間圧縮の不経済:模倣するのに長い年月がかかる

・経路依存性:過去の出来事の順序が経営資源の形成に影響している

・因果関係不明性:どの経営資源の影響なのか、外から見てわからない

・社会的複雑性:影響している要素が複雑すぎて模倣できない

・特許:法律によって守らているため模倣できない

●組織(Organization)

自社が持っている経営資源を有効活用できる組織体制かどうかを評価します。経済価値があり、希少性が高く、模倣も困難な経営資源を持っていても、それをうまく使いこなせる組織になっていなければ、競合優位性を脅かす要因となります。具体的には、経営資源を活用するための組織的なルールが整備されているかどうか、独自の企業文化を有しているかどうかが評価の対象になります。

VRIO分析のビジネスフレーム

VRIO分析とは、上記の4つの項目について評価するだけに留まりません。バーニーは4つの項目に順に質問することで、競合優位性を図るフレームをまとめています。


1つ目の質問から答えていき、「NO」であれば右側を見て、「YES」なら下に進みます。全てにYESと答えられれば、持続可能な強みがあるといえるでしょう。ただし、4つ目の質問だけは特殊で、ここが「NO」の場合は無条件で「競争劣位」になる可能性があります。どれだけ立派な経営資源を持っていても、それを使いこなせなければ持っていないのと同じだからです。

上記の表を使って、VRIO分析をするための4つのステップを見ていきましょう。

バリューチェーンを洗い出す

VRIO分析をするにあたって、まずは自社のバリューチェーンを抽出していきましょう。バリューチェーンとは、自社の事業構造やプロセスを分解して、自社の活動のどの部分が顧客に対する提供価値になっているか判断するフレームワークです。

それぞれの業界に一定の型があるので、それを参考にして抽出していみてください。例えばメーカーであれば、どのような商品を作るか考える「商品企画」、製造のために原料を仕入れる「調達」、原材料から製品を作る「製造」、作った製品を倉庫や顧客に届ける「物流・流通」、顧客に売る「販売」、販売後のフォローをする「カスタマーサポート」があります。

自社の経営資源の特徴を洗い出す

ステップ1で洗い出したバリューチェーンに対して、自社の特徴を書き込んでいきます。この時、ポイントは他社と比較した際に強みとなるような要素を探すことです。例えば「顧客アンケートを反映させた商品企画」「AIを取り入れた製造体制」「業界一の流通網」といった特徴が当てはまります。

VRIOの各項目で評価

ステップ2で洗い出した特徴を、上記の質問に照らし合わせて評価していきます。「YES or NO」で判断できれば分かりやすいですが、5段階評価して3ないしは4を及第点にしてもいいでしょう。それぞれの質問に対して、どのように考えればいいかも解説していきましょう。

●経済価値があるか?

VRIO分析での価値は「それを失ったら、経営コストや売上に影響が出るかどうか」を基準にすると考えやすくなります。価値が高い経営資源は競争において武器になります。この時に気をつけるべきは、貸借対照表(BS)に記載されているものが価値があるとは限らないことです。不動産を所有していたとしても、競争に影響しなければ価値はありませんし、「特定の業界への太いパイプ」などは、BSには記載されませんが価値になります。

●希少性があるか?

自分たちの特徴を他社が持っているかどうか考えましょう。業界の半数以上の企業が同じような特徴を持っているような経営資源では、競合優位性があるとは言えません。経営資源を強みとするには、他社が持っていない希少な特徴を作り出しましょう。

●模倣が困難か?

希少な経営資源であっても、他社が簡単にマネできるようであれば希少でなくなるのは時間の問題です。どんなに斬新なアイディアも、アイディアだけでは時間とともに陳腐化されてしまいます。先に紹介した5つの要因を参考に、希少な経営資源が模倣されないようにして、競合優位性を持続させましょう。

●組織体制は適切か?

企業活動は大きく「戦略立案」と「実行」に分かれ、後者は意外に軽視されがちです。しかし、どんなに優れた立案も、それを忠実に実行できる組織でなければ意味がなく、企業によって差の出やすいポイントでもあります。組織が一体となって動けるための文化の情勢やマインドセット、命令指揮系統ができているかチェックしましょう。ここが「NO」だと、どんなに素晴らしい経営資源があっても劣勢になってしまうでしょう。

競争状態を判断する

洗い出した自社の特徴をそれぞれVRIO分析したら、「強み」となる経営資源とならない資源に分けます。その結果を用いて、どの経営資源にリソースを優先的に投入すべきか判断しましょう。全ての質問に「YES」と答えられる経営資源に投資するのはもちろんですが、今は強みになっていない経営資源に投資して、新たな強みを作り出すのも一つの戦略です。

VRIO分析事例

具体例を見ながら、VRIO分析をどのように活用するか見ていきましょう。

●ユニクロ:「低価格で質が高い製品開発」という価値(Value)

ユニクロのバリューは、高品質の商品を低価格で提供していこと。生産から販売までを自社で一貫して行う「SPA方式」を採用しているため、ピンチのときには生産数を減らすなど、柔軟な調整もスピーディに行えます。

●トヨタ:「ロボット共存型工場」という希少性(Rarity)

世界最大級の自動車メーカーであるトヨタの強みとして、工場が挙げられます。自動車メーカーが工場を持つのは珍しいことではありませんが、「ロボット共存型工場」を持っているメーカーは多くないでしょう。

●オリックス:複雑な事業ポートフォリオという模倣困難性(Imitability)

オリックスは国内最大手の総合リースの会社と知られていますが、それ以外にも保険、信託、ホテル、レンタカー、金融サービス全般、不動産、事業投資、球団保有と、BtoB、BtoCを問わず事業を多角化しています。事業を多角化することで、全体としての収益変動リスクを抑えるとともに、顧客が複数のサービスを利用することで囲い込みにもつながります。一つの事業を展開している企業にはマネできない強みになるほか、企業の本質的な価値が外部から見えにくくする効果もあります。

●リクルート:新規事業が生まれる組織(Organization)

飲食や婚活、中古車、教育と幅広い業界で新しいビジネスを生み出しているリクルート。新しい事業を生み出し拡大できる人材が育つ組織は、リクルートの大きな強みと言えるでしょう。単に優秀な人材を採用するだけでなく、新規事業提案制度「Ring」を運営するなど、企業が培ってきた文化や制度の賜物と言えるでしょう。

編集後記

同じ市場でビジネスを展開する場合、リソースの大きい大企業に軍配が上がるのは世の常です。業界でNo1でない企業は、必然的に確固たる競合優位性を作り出し、かつマネされない工夫をしなければなりません。多くの企業が斬新なアイディアで一度は急成長しながらも、業界上位の会社にマネされて成長を止めてきました。持続的な成長を考えるなら、マネされない工夫と、自分たちの強みが生かされる組織体制も一緒に考えましょう。

TOMORUBA編集部 鈴木光平)


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