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「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㊵〜PPM分析

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㊵〜PPM分析

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市場がグローバル化し、スタートアップが次々と生まれるなど、自社事業の立ち位置は刻々と変化していきます。そこで役立つのが、「PPM分析」です。これは、「市場成長率」と「市場占有率」という2軸からなる座標に事業や製品・サービスを分類し、経営資源の投資配分を判断するための分析手法。自社および競合他社の事業の立ち位置を確認することに効果的です。

TOMORUBAの【「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く】第40弾では、「PPM分析」を取り上げ、そのメリットやデメリット、分析の仕方や事例などを紹介していきます。

1970年代にBCGが提唱した「PPM分析」

“Product Portfolio Management”(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)の略称である、PPM分析。これは、1970年代にボストン・コンサルティング・グループが提唱した分析の手法です。「市場成長率」と「市場占有率」という2つの軸からなる座標上で事業及び製品・サービスを分類。経営資源の投資配分を判断します。

PPM分析では、自社の事業を「花形(Star)」・「金のなる木(Cash Cow)」・「問題児(Problem Child)」・「負け犬(Dog)」という4つのポジションに分類。そうすることで、自社の事業の将来性を把握し、競合企業との売上の格差を”見える化”します。

花形・金のなる木・問題児・負け犬――“4つのポジション”とは?

PPM分析は、自社の事業を4つのポジションに分類すると上記しました。では、この”4つのポジション”とは具体的にどのようなものなのでしょうか?それぞれを解説します。

 


■花形(Star)

図の右上に位置する「花形」。これは、市場成長率と市場占有率が高く、まさに”花形”と呼べる事業を意味します。市場占有率が高いので利益を出しやすい一方、市場成長率も高いために競争が激しくなります。この競争に勝つためには、積極的な投資を続けることが必要でしょう。

■金のなる木(Cash Cow)

図の右下に位置する「金のなる木」。市場成長率が低く新規参入も少なくなっているので、共創は激しくありません。それゆえ、積極的な投資は必要ではないでしょう。また、市場占有率が高いため、安定した利益が出しやすい。金のなる木に分類される事業から得た利益は、その事業へ再投資するのとともに、花形や問題児の事業に振り分けていくことが必要となります。

■問題児(Problem Child)

図の左上に位置する「問題児」。市場成長率が高いため競争が激しく、積極的な投資が必要です。そして、市場占有率が低く、利益が出しにくいと言えます。しかしながら、市場占有率を高めることができれば、花形や金のなる木に転じるポテンシャルがあるでしょう。問題児に分類される事業については、他の事業によって得られた余剰資金を積極的に振り分けていくことが重要となります。

■負け犬(Dog)

図の左下に位置する「負け犬」。市場成長率が低いために投資の必要も少なく、市場占有率も低いので利益も出にくい。今後、事業の成長が見込めないので、事業を整理する必要があるでしょう。そこで余剰となった資金は、花形や負け犬の事業に分配していきます。

「PPM分析」のメリット・デメリット

それでは次に、PPM分析を行うことによるメリットとデメリットを見てみましょう。

■PPM分析における「メリット」

この分析を用いることのメリットは、自社の各事業のポジションや、自社の事業の競合他社とのポジションを確認できること。それによって、経営資源の投資配分の優先順位をつけることができ、事業を維持するのか、整理するのか、強化していくのかといった経営判断がしやすくなるでしょう。

■PPM分析における「デメリット」

この分析を用いることのデメリットは、限られた財務指標のみを使用して分析するために、事業の多様な側面を汲み取ることができない点にあります。一例を挙げると、生産面からの経験曲線などの指標については考慮されておらず、各事業のシナジー効果も含まれていません。さらに、財務指標のみによって分析をするため、新規事業の立ち上げに向いている分析手法とは言えないでしょう。

4つのステップで進めていく「PPM分析」

PPM分析の進め方について紹介していきます。「市場成長率を算出」→「市場占有率を算出」→「自社事業のポジションを確認」→「競合他社と自社のポジションを確認」という4段階で、分析を進めていきます。

【01】市場成長率を算出

まず第1段階では、市場成長率を算出します。本年度の市場規模を昨年度の市場規模で割ることによって、市場成長率を算出することができます。

■市場成長率 = 本年度の市場規模 / 昨年度の市場規模

市場規模は、シンクタンクや公的機関が発表している統計データを活用しましょう。なお、市場規模のデータが入手できない場合は、自社の売上高を市場占有率で割ることにより推定(フェルミ推定)することも可能です。

【02】市場占有率を算出

第2段階では、市場占有率を算出します。売上高を市場規模で割ることによって、市場占有率を算出することができます。

■市場占有率 = 売上高 / 市場規模

この段階で重要となるのは、自社のものだけでなく、競合他社の市場占有率も算出することです。競合他社の売上高は、上場企業であれば有価証券報告書などから確認することができます。

【03】自社事業のポジションを確認

市場成長率と市場占有率を算出したら、最初に自社の各事業についてPPM分析の座標に表示。そうすることによって、自社の事業のポジションを確認することができます。

【04】競合他社と自社のポジションを確認

最後に、事業ごとに自社と競合他社とをPPM分析の座標に表示。これによって、競合他社と自社との市場におけるポジションを確認することが可能です。


「PPM分析」の事例

それでは最後に、PPM分析を導入した2社の事例を紹介していきます。

■キヤノンの事例 〜「負け犬」となったカメラ事業を縮小〜

大手精密機械メーカーであるキヤノン。同社が製造・販売する一眼レフカメラやコンパクトカメラは利益を生み出す「花形」の事業でした。しかしながら、スマートフォンが普及することでカメラの市場規模は縮小。そこでキヤノンは「負け犬」となったカメラ事業を縮小させ、プリンタ事業などの勝てる事業を見定めて投資を行ったのです。現在、キヤノンのプリンタ事業はマーケットで高い占有率を獲得。カメラ事業に変わる事業の柱として利益を上げています。

■サントリーの事例 〜ビール事業が「問題児」から「花形」へ〜

清涼飲料水やアルコール飲料など幅広い事業を展開する大手飲料メーカー、サントリー。同社がビール市場に参入した当初は競合他社のシェア率が高く、PPM分析上「問題児」といえる事業でした。しかし、将来、市場成長率が伸び続けることを考慮し投資を続けた結果、ビール市場で多くのシェアを獲得。「花形」事業へと成長させることに成功しました。

(TOMORUBA編集部)


■連載一覧

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く①〜ポーターの『5フォース分析』

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く②〜ランチェスター戦略

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く③〜アンゾフの成長マトリクス

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く④〜チャンドラーの「組織は戦略に従う」

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑤〜孫子の兵法

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑥〜VRIO分析

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑦〜学習する組織

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