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「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉙~ストックオプション

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉙~ストックオプション

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スタートアップの醍醐味「ストックオプション」。企業の成長が直接メンバーのインセンティブとなり、モチベーションを引き出すことになります。高い給与を出せないスタートアップにとっては伝家の宝刀ですが、使い方を間違えると自分たちの首を締めることにも。

TOMORUBAの【「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く】第29弾では、ストックオプションの種類やメリット・デメリットについて紹介していきます。


ストックオプションとは

ストックオプションとはメンバーに対して株を「購入する権利」を与える制度。業界用語で言う「コールオプション」の一種です。これを与えられた場合、一定期間のうちに決まった行使価格で当初定められた株式数を購入できます。

権利を行使(株を買う)したタイミングより、株式を譲渡(株を売る)するタイミングのほうが株価が高ければ、その差額がそのまま利益となります。そのため、一種の給与・賞与の代わりとして付与されるのが一般的ですが、株を売らずに保有して株式投資とすることも可能です。

ストックオプションを付与することで、会社側は現金の支払いの代わりとすることにより人件費を抑えられますし、メンバーにとっても会社を成長させようとモチベーションに繋がります。アメリカでは既に普及している制度で、日本でも一部のスタートアップでは用いられ始めました。

ストックオプションに似た制度は他にもあるので、それらの違いも見ていきましょう。

・従業員持株制度との違い

メンバーに株式を付与する制度として一般的なのが従業員持ち株制度。ストックオプションがオプション付与時にメンバーに負担をかけない一方で、従業員制度は給与の天引きで株式を積み立てます。また、ストックオプションでは一度に決まった株式数の権利を付与しますが、従業員持株制度では毎月定額でその時の株価で買うことになるのも大きな違いです。

そのような違いから、従業員持株制度は「資産形成の選択肢の一つ」という性格が強く、報酬制度よりも福利厚生として位置づけられるのが一般的です。

・新株予約権との違い

新株予約権もストックオプション同様、予め決められた行使期間・行使価格において株式を購入できるオプションです。ただし、こちらは名前どおり「新株」を発行するので、権利行使された場合は、企業は新たに株式を発行する「増資」をすることとなります。ストックオプションも新株を発行する場合もありますが、既に発行した株を付与することも可能です。

また、新株予約権は第三者に販売するのが一般的ですし、購入する際に代金が発生するのもストックオプションとの違いと言えるでしょう。

ストックオプションの方式

ストックオプションもには大きく「自己株方式」と「新株引受権方式」の2つがあります。それぞれの方式について見てみましょう。


・自己株式方式

自己株式方式とは、会社が市場から自社株を調達する方式です。非上場企業の場合は株式を未公開なので、株主が直接自社株を付与することになります。

・新株引受権方式

新株引受権方式は、増資の形で新株を発行します。ストックオプションの対象者が権利行使し、権利行使価格の払い込みによって株式を調達する方法です。自己株式方式との併用不可、行使期間は10年以内、発行済株式総数の10%以内などの制約があります。

ストックオプションの種類

実はストックオプションには様々な種類があります。会社の状況などに合わせて、自社にあったストックオプションを付与できるといいでしょう。

・無償税制非適格ストックオプション

ストックオプション発行時の権利行使価格が無償のパターンです。この場合、権利行使時と株式売却時にそれぞれ課税されます。権利行使時は給与所得として最大55%、株式売却時は譲渡所得として最大20%の課税となります。

・無償税制非適格ストックオプション

特定の要件を満たすことで、権利行使時の給与所得税が免除されるストックオプションのこと(株式売却時の譲渡所得税は同様にかかります)。そのためには次の要件をクリアしなければなりません。

発行形態(無償)

行使価額の制限(年間権利行使は1,200万円未満など)

行使期間の制限(決議から2年後〜10年後まで)

付与対象者の制限(発行会社・その子会社の取締役・使用人など)

新株公開を控えている企業にとっては、行使価格の制限が足かせになることもあります。

・有償ストックオプション

有償ストックオプションとは、メンバーが発行価格を払ってストックオプションを購入し、あらかじめ定めた条件を達成した後に、株に転換できる制度。権利を買っているので給与とみなされず、金融商品とみなされます。そのため、給与所得課税(最大約55%)ではなく、譲渡課税(最大約20%)のみが課され税制的にメリットを得られるのです。

・株式報酬型ストックオプション

無償税制非適格オプションの類型のひとつであり、権利行使価格を1円に設定することから1円ストックオプションとも言われています。会社の役員に対する退職金代わりとして、上場企業で導入されるケースがよく見られます。

そのため。権利行使までは譲渡禁止とされ、退職後10日間など期間を行使できる期間を限定することで退職所得として取り扱われるように設計をするケースがほとんど。退職を起因としていれば退職所得となり、税金上は有利となります。

ストックオプションのメリット

ストックオプションを活用することで、企業にどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。

・資金の負担なく優秀な人材を確保できる可能性

通常、優秀な人材を採用するには、能力に見合った給与を用意しなければなりません。ストックオプションが給与の代わりになるため、高い給与を提示せずとも採用できる可能性があります。

・メンバーのモチベーション向上

ストックオプションは企業の成長なくしては意味がありません。ストックオプションによる経済的リターンが企業を成長させようというモチベーションを変換されれば、メンバーの生産も向上するでしょう。

・人材の流出を防げる

通常、ストックオプションの権利は企業に属している間は有効なものの、退職すると権利が無効になるケースが多いです。そのため、メンバーも「ストックオプションの権利を行使する前に辞めたら損だ」と考えるようになり、人材の流出を防ぎやすくなります。


ストックオプションのデメリット

魅力的なメリットがある一方で、デメリットも存在するため気をつけましょう。

・業績悪化でモチベーションが低下する

どんな成長企業でも、タイミングによっては業績が悪化して株価が下落することはありえます。そのような場合、ストックオプション制度目当てで入社したメンバーや従業員は、働くモチベーションが下がる可能性が考えられます。

・モチベーションの格差が生じる

ストックオプションが付与されているメンバーと、されていないメンバーが混在している場合、社内で不協和音が生じる可能性があります。会社業績への貢献度や勤続年数など、ストックオプションを付与する基準を明確に定めて、不協和音が生じないようにしましょう。

・権利行使後に社員が離れる

ストックオプションの権利行使までは人材の流出は防げるものの、権利を行使して多額の利益を得た後はすぐに会社を辞めてしまうメンバーが続出する可能性があります。最初はストックオプション目当てで入社したメンバーを、いかに他の魅力で繋ぎ止めるかが企業の課題です。

編集後記

ストックオプションは資金の負担なく優秀な人材を確保できたり、メンバーのモチベーションを上げられる一方で、使い方が悪いと様々なデメリットも発生します。ストックオプションばかりを打ち出すとことで、中には「ビジョンへの共感が薄いメンバー」も引き入れてしまうことも。

成功したスタートアップの多くが採用で大事にしてきたのは「ビジョンへの共感」。ストックオプションはあくまでも「オプション」であることを忘れないようしましょう。

TOMORUBA編集部 鈴木光平)


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