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「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉖〜フリーミアムモデル

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉖〜フリーミアムモデル

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世の中には無料で使えるサービスというものがいくつも存在します。みなさんも使いながら「これはどうやって収益化しているんだろう」と考えたことはないでしょうか。最もシンプルなのが、テレビに代表されるような「広告モデル」。ユーザーは無料で利用でき、企業から収益を上げるモデルです。

もう一つ有名なのが、「フリーミアムモデル」。TOMORUBAの【「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く】第26弾では、このフリーミアムモデルのメリット・デメリットに加え、様々な事例を紹介していきます。


フリーミアムモデルとは

フリーミアムモデルとは、基本サービスを無料で提供し、有料プランや有料オプションを設けることで課金ユーザーから利益を得るビジネスモデル。「Free(無料)」と「Premium(割増金)」を組み合わせて、名前がつけられました。

2006年頃に米国のベンチャー投資家フレッド・ウィルソンがジャリド・ルーキンの発案をもとに提唱。世間に広く認知されるようになったのは、2009年にクリス・アンダーソン著の「Free: The Future of a Radical Price(フリー<無料>からお金を生みだす新戦略)」のヒットがきっかけです。

ビジネスモデルとしては古くから存在しますが、近代になって注目されるようになったのはWebとの相性がいいから。アナログのビジネスの場合、試供品などを無料で配るにしても、配布する量に比例してコストがかさみます。そのコストが結果的に利益を圧迫することになりかねません。

一方でデジタルコンテンツの場合、基本サービスさえ完成すれば、その提供コストを低く抑えられるのです。95%が無料ユーザーであっても5%が有料ユーザーにさえなってくれればビジネスが成立すると言われ「5%ルール」と呼ばれています。

フリーミアムモデルのメリット

フリーミアムモデルにどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。

多くのユーザーに体験してもらえる

無料ということは、それだけユーザーが利用するハードルが低いということ。興味・関心さえ持ってもらえれば「無料だし一回試してみよう」と思ってもらえるのです。新しいサービスを拡大していくには、より多くのユーザーを獲得することが欠かせませんが、フリーミアムなら比較的容易に達成できるでしょう。

口コミ効果が期待できる

ユーザーに利用してもらい、満足度が高ければSNSなどでポジティブな口コミを起こせます。口コミやレビューを見た人も、無料であれば自分も試してみようと思うでしょう。有料サービスでは、評価が高くても値段がハードルになることもありますが、フリーミアムだからこそ口コミ効果が一層効きやすいのです。

フィードバックが得やすい

フリーミアムモデルは、無料ユーザーも大事な資産です。なぜならフィードバックをもらいサービスの開発や改善に役立たせられるから。サービスの質が上がれば、無料ユーザーとともに有料プランに移る人も増えるでしょう。


フリーミアムモデルのデメリット・課題

フリーミアムモデルでどのような点を注意しなければいけないか見ていきましょう。

黒字化まで時間がかかる

フリーミアムは基本プランを無料で提供しているため、事業の初期段階から黒字化するのは困難です。基本プランを体験してもらい、価値を感じて有料プランに移ってもらうことで初めて売上に繋がります。それまでの期間も、サービスの質を上げるためのカスタマーサポートや改善作業が必要なためのコストは発生します。

基本プランのリリースまでは至ったものの、利益を出すまでの体力がもたないケースも少なくありません。フリーミアムを導入するなら、黒字化までのプランを余裕を持って立てましょう。

有料プランの差別化が難しい

フリーミアムの難しいところは「無料ユーザーを有料プランに移行させること」。サービス初期は無料ユーザーの獲得が目的になりますが、どこかのタイミングで有料プランに移行させなければなりません。

その際に有料プランをいかに、無料プランから差別化させるかが難しいポイント。無料プランが魅力的でなければ、そもそも無料ユーザーが増えませんし、無料プランが充実しすぎていると有料プランに移る意味が薄まります。「無料プランでも十分だけど、より便利するには有料プランに入らないと」というバランスが重要なのです。

フリーミアムの収益モデル

フリーミアムには6つの代表的な収益モデルがあります。ここでは各モデルについて解説していきます。


①機能追加型

基本プランでは利用できない機能が、有料プランになると利用できるモデルです。フリーミアムの中でも最もスタンダードな収益モデルとなります。

②限定機能型

基本プランでは「1日3回まで」など、機能を限定するモデルです。有料プランにすることで緩和されていきます。有料プランを複数容易しておけば「1日10回まで」「使い放題」など段階的に緩和していくこともできます。

③容量追加型

クラウドサービスによく見られるモデルで、無料では「○GBまで」と容量が決まっていて、課金することで容量を追加できます。長く利用してもらいすれば、いずれは無料プランの限界に達するので、その後課金してでも使う必要性を感じてもらうかがカギになります。

④会員限定型

会員になることで、コンテンツの閲覧制限が解除されるモデル。音楽や動画サービスで用いられ、無料会員では視聴・閲覧できないコンテンツ、もしくは途中までしか見られないようにしています。

⑤会員特典型

有料会員になることで、様々な特典を付与するモデルです。例えばAmazonでは、Premium会員になることで、無料で日時指定できたり「お急ぎ便」にできます。お金を払うことで、有料オプションを無料にできるため、「年に○回以上利用するユーザー」にはお得感を与えられます。

⑥都度課金型

有料会員に移行させるのではなく、必要に応じて都度課金させるタイプの収益モデルです。ソーシャルゲームの多くは無料でプレイできますが、より強いキャラやアイテムをゲットするには課金して「ガチャ」をします。また、メッセージアプリの「LINE」も、無料で利用できますが、お気に入りのスタンプを購入させています。

フリーミアムモデルの成功事例

どのようなサービスがフリーミアムモデルで成功したのか見ていきましょう。

ピッコマ

ピッコマはフリーミアムモデルを利用したマンガアプリ。「待てば¥0」という1話読み終えると24時間後に次の話も無料で読めるサービスが有名で、数々の人気漫画が無料で読めます。

しかし、全てのマンガが無料で読めるわけではありません。話題の新作マンガは「待てば¥0」が適用されていなかったり、話の途中から有料のコインが必要な作品もあります。最初は「無料でマンガが読みたい」と思っていたユーザーも、話題の有料マンガや、課金してでも続きが読みたいマンガがあった時に都度コインを購入します。

YouTube

絶大な人気を誇る動画共有サービスも、月額制有料サービス「YouTubeプレミアム」を始めました。月額1,180円を払うことで、広告の非表示や、動画のダウンロードの他、バックグラウンド再生やYouTube Musicプレミアムが利用できます。

有料プランは一つですが、機能の追加や限定機能(広告非表示)、会員得点(YouTube Musicプレミアム)など、複数のメリットが組み合わされていることがわかります。特にYouTubeは、無料会員が増えれば広告で法人から収益を得て、有料会員からも収益を得るという2つの収益モデルを組み合わせているのです。

クックパッド

誰でも無料で、一般投稿された料理レシピを閲覧できるクックパッドも、フリーミアムを利用した秀逸なサービスです。月額280円のプレミアム会員になれば、レシピの人気検索や、旬の人気ランキンが閲覧できるようになるほか、管理栄養士が監修した献立やプロのレシピも見られます。

無料でもレシピを閲覧できるのに、わざわざお金を払ってまで見たいレシピがあるのが不思議に思うかもしれませんが、その本質は時間にあります。クックパッドのプレミアム会員は、「検索機能が使えることで、レシピを使う時間を買っている」と考えているよう。毎日する料理だからこそ、ものの数分の時間を節約できるメリットが大きな価値になるのです。

編集後記

今やフリーミアムモデルはWebサービスの基本戦略と言っても過言ではありません。無料で利用できるサービスが乱立している中で、無料プランがないサービスは体験すらしてもらえないからです。これからWebサービスを立ち上げる方は、ぜひフリーミアムモデルを視野に入れて戦略を組み立ててください。

TOMORUBA編集部 鈴木光平)


■連載一覧

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く①〜ポーターの『5フォース分析』

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く②〜ランチェスター戦略

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く③〜アンゾフの成長マトリクス

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く④〜チャンドラーの「組織は戦略に従う」

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑤〜孫子の兵法

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑥〜VRIO分析

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑦〜学習する組織

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑧〜SWOT分析

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑨〜アドバンテージ・マトリクス

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑩〜ビジネスモデルキャンバス(BMC)

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑪〜PEST分析

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑫〜PMF(プロダクト・マーケット・フィット)

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑬〜ブルーオーシャン戦略

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑭〜組織の7S

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑮〜バリューチェーン

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑯〜ゲーム理論

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑰〜イノベーター理論

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑱〜STP分析

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑲〜規模の経済

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑳〜ドミナント戦略

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉑〜LTV

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉒〜IPO

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉓~MVP戦略

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉔〜プラットフォーム戦略

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  • 奥田文祥

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