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「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑳〜ドミナント戦略

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑳〜ドミナント戦略

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新規参入者が参考にすべき戦略として、「弱者の戦略」として知られる「ランチェスター戦略」が有名です。弱者が強者と戦うには、「一点集中主義」で限られた市場でのNo1を狙うというもの。

TOMORUBAの【「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く】第20弾で取り上げる「ドミナント戦略」はランチェスター戦略の基本というべき戦略。今でこそ業界を代表する企業の中にも、この戦略を活用して成長してきた企業は少なくありません。

店舗ビジネスはもちろん、他の業態にも応用が可能な戦略なので、弱者の立場にある方はぜひ参考にしてください。

ドミナント戦略とは

ドミナント戦略とは、特定の地域に絞って集中的に店舗展開する手法のこと。主にフランチャイズやチェーンストアの経営戦略として用いられます。

ドミナント(dominant)は日本語に訳すと「支配的な」、「独占的な」といった意味があります。小売店や飲食店のような実店舗を伴うビジネスの場合、地理的な商圏が限定されているため、特定の地域における競合とのシェア争いが割けられません。

ドミナント戦略はその争いに終止符を打ち、特定のエリアを支配する戦略といっても過言ではありません。特定の地域において集中出店することにより、限られた経営資源を集中的に配分・投下し、競合からのシェアを獲得していきます。

日本においてはセブンイレブンが創業当初から行っている他、イトーヨーカードやユニー、イズミヤといったチェーンストアも採用してきました。


ドミナント戦略のメリット

限られた地域に何店舗も集中出店するのは、一見非効率に見えるかもしれません。しかし、ドミナント戦略には経営効率や認知度拡大など、さまざまなメリットが存在します。一つずつ見ていきましょう。

店舗経営の効率化

店舗経営をするにあたって、物流は無視できない問題です。それぞれの店舗に商品は配送しなければいけませんが、店舗が離れていればそれだけ配送に時間と手間がかかります。

ドミナント戦略で店舗間の距離が近ければ、仕入れや配送を効率化し物流にかかる時間も節約可能です。配送だけでなく、店舗間でスタッフや在庫を融通することもできるため、人材やモノを効果的に配置することもできます。

また、店舗ビジネスの場合「スーパーバイザー」が各店舗の経営状況を見て回りますが、その際も店舗が固まっていれば効率よく巡回できるでしょう。

特定地域における認知度向上

集中出店することで、その地域における認知度向上が狙えます。チラシやテレビCM、SNSなどを集中的に行うことで、その地域の消費者が自社ブランドに触れる頻度を飛躍的に増やすことができます。

広告効果だけでなく、実際に店舗を目にする機会が増えるので認知度が高まるのは当然のことでしょう。全国的には知名度の低いチェーンストアでも、ドミナント戦略を活用すれば特定の地域における認知度をあげて、競争力を高めることも難しくありません。

エリアマーケティングの最適化

エリアマーケティングとは、特定のエリアに特化したマーケティングを行うこと。ターゲットとなるエリアを分析し、消費者の年齢層や地理的な事情、そのエリアに応じた最適なマーケティングを行います。

ドミナント戦略では、特定エリアに絞った市場調査ができるため、そのエリアに済む消費者に合わせたマーケティングが可能になります。商品開発やサービス展開、プロモーション戦略など、細かなデータをもとに行えるため、消費者に受け入れやすい施策を行えるでしょう。

参入障壁を高めて競争優位性を確立

ドミナント戦略を成功すれば、その地域における圧倒的な知名度を獲得することができます。「〇〇と言ったら〇〇」という定番のブランドになれば、仮に新規参入者が現れてもシェアを奪われにくくなります。

また、その地域における好立地を抑えておくことで、物理的に新規参入のハードルをあげることも可能です。圧倒的なシェアを獲得できれば、競合との争いにコストを割く必要もないため、より効率的な経営が可能になるでしょう。



ドミナント戦略のデメリット

効率的な店舗経営が可能になる一方で、ドミナント戦略には見逃せないデメリットも存在します。ドミナント戦略を採用するには、事前に対策を練っておきましょう。

カニバリズムが生じる

ドミナント戦略では、狭いエリアに集中出店するため、商圏が被ることも珍しくありません。同じブランドでありながら、店舗間で顧客を奪い合うことになります。

競争意識が健全に働けば、新しいアイディアの源泉にもなりますが、時にノウハウやナレッジを他の店舗に知られたくないという状況もありえます。ノウハウが属人化されれば、戦略におけるメリットも半減してしまいます。

健全な競争をしてもらうためにも、スーパーバイザーやエリア統括責任者を設置し、それぞれの店舗のノウハウが共有される仕組みを作りましょう。

1店舗あたりの売上は減少する

ドミナント戦略が順調に推進できたとしても、1店舗あたりの売上が減少するのは避けられません。同じエリアに店舗が増えれば増えるほど、その傾向は強くなります。

そのため、ドミナント戦略を行う際には、1店舗あたりの売上に固執するのではなく、エリア全体の利益に目を向けましょう。ただし、店舗を増やしていけば、ある時点から利益の限界が訪れるはずです。

そのエリアにおける店舗数の上限を見極めて、次のエリアに進出するタイミングを見計らいましょう。

地域環境に依存するため、リスクヘッジが難しい

ドミナント戦略では特定のエリアに依存するため、地域環境の変化に大きく影響されます。例えば災害により、そのエリアが被害を被った場合、売上に大きな打撃を受けます。

広範囲に店舗展開していれば、他のエリアの店舗で売上が賄えるものの、集中出店していればそのダメージは致命傷にもなりかねません。また、店舗が復旧しても配送ルートが途絶えたままでは、売上を戻すには時間がかかります。

他にも、長期的に見れば人口減少なども大きなリスクになります。ドミナント戦略においてエリアの選出は重要なポイントとなるため、様々なリスクを想定してエリアを絞りましょう。

エリア選定における3つのポイント

ドミナント戦略を成功させるには、エリアの選定は慎重に行わなければなりません。エリアを選ぶ際にチェックすべきポイントを紹介していきます。

①人口成長、将来性

ドミナント戦略を成功させるには、人口が増加する成長性のあるエリアに出店することです。人口が減少傾向にあるエリアに絞って出店しても、中長期的には売上が下がっていくのが目に見えています。ただし、人口が減少している地域でも、観光客などで市場を確保できる場合もあります。

将来性があるエリアかどうか判断するには、周辺エリアの調査も欠かさずに行いましょう。道路や鉄道など交通機関が多い地域や、大型の商業施設の建設が予定されている地域は将来的に市場の増加を見込めるでしょう。

②競合の出店状況や競争の激しさ

魅力的なエリアを探すことは重要ですが、自社にとって魅力的なエリアは競合にとっても魅力的なエリアです。既に競合店舗が集中しているような状況では、シェアを獲得するハードルが高くなります。

特に競合が既にドミナント戦略に成功し、そのエリアで圧倒的なブランドを築いている場合は、それを覆すのに時間とコストがかかります。

競合とされる企業や店舗が存在しない、もしくはそのエリアにおける勝者が決まっていないかどうかも、エリアを選ぶ上で重要なポイントとなります。

③地域特性や文化

数字で表されるデータだけではなく、そのエリアにおける特性や文化にも目を光らせておかなければなりません。需要は必ずしも人口と比例するとは限らないからです。極端な例で言えば、どんなに人口がいても雪が降らない地域では、除雪スコップの需要は見込めません。

自社の商品やサービスが、そのエリアで需要があるのか細かく分析しましょう。いきなり店舗を構えるのではなく、ポップアップショップなどを使って反応をテストしてみるのもおすすめです。

ドミナント戦略の成功事例

ドミナント戦略によって成功した企業の事例を見ていきましょう。

セイコーマート

北海道で有名なコンビニ「セイコーマート」はドミナント戦略で成功した企業の一つ。全道179市町村のうち173市町村に出店しており、人口カバー率は99.8%は異例の高さを誇ります。

業界最大手のセブンイレブンの道内出店数が1,002店なのに対し、セイコーマートは1,079店。(2020年12月末時点)。地域住民の買い物ニーズに応えるための豊富な品ぞろえに加え、自社開発商品(PB)の開発にも力を入れています。

徹底的な地元密着戦略をとることで地元民からの厚い支持を獲得するのと同時に、「北海道」ブランドを最大限活用することで全国的な知名度を上げることにも成功していると言えるでしょう。北海道以外では極端な店舗拡大戦略をとらないことで、希少価値を生み出すことも成功の要因の一つです。

ラッキーピエロ

続いても北海道の事例となりますが、ハンバーガーショップの「ラッキーピエロ」を紹介します。セイコーマートと異なるのは、北海道ではなく「函館」に絞って店舗展開をしているところ。

人口27万人の小さな商圏に17店舗を展開しており、他店が入り込む余地はなく地域ダントツNo1の地位を築いています。小さな市場と思うかも知れませんが、全国からの観光客を含め年間200万人が訪れるため、人口が減少する函館において成長曲線を描いていてるのです。

17店舗でそれぞれメニューや内装を変えたり、メール会員組織の仕組みを作るなど、徹底した地域密着の経営が愛されています。

編集後記

インターネットで何でも変える時代だからこそ、人は「どこで」「誰から」買うかにもこだわるようになってきました。地域に密着し、消費者の細かなニーズに対応できるドミナント戦略は、今の時代だからこそ学ぶことも多いかもしれません。

基本的にドミナント戦略は店舗ビジネスの中で使われますが、応用して考えれば様々なシーンに利用可能です。特定の領域に特化して圧倒的なNo.1を目指すランチェスター戦略の基本にもなるので、自分のビジネスでどのように使えるか考えてみましょう。

TOMORUBA編集部 鈴木光平)


■連載一覧

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く①〜ポーターの『5フォース分析』

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く②〜ランチェスター戦略

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く③〜アンゾフの成長マトリクス

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く④〜チャンドラーの「組織は戦略に従う」

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑤〜孫子の兵法

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑥〜VRIO分析

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑦〜学習する組織

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑧〜SWOT分析

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑨〜アドバンテージ・マトリクス

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑩〜ビジネスモデルキャンバス(BMC)

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑪〜PEST分析

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑫〜PMF(プロダクト・マーケット・フィット)

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑬〜ブルーオーシャン戦略

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑭〜組織の7S

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑮〜バリューチェーン

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑯〜ゲーム理論

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑰〜イノベーター理論

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑱〜STP分析

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑲〜規模の経済

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