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「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑬〜ブルーオーシャン戦略

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑬〜ブルーオーシャン戦略

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ビジネスでは競合と差別化することが重要ですが、それ以上に重要なのが「競合がいない、もしくは少ない市場」を選んで戦うこと。どんな優れたビジネスも、競合が多ければ競争が激化し、コストが膨れ上がることで利益は圧迫されてしまいます。逆に競合が少なければ、小さなコストでも売上を伸ばすことができ、成長の可能性を飛躍的に高めてくれるのです。

TOMORUBAの【「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く】第13弾で取り上げる「ブルーオーシャン戦略」は、まさに競合の少ない市場で選んで戦う重要性を説いたビジネス理論。今回はメリット・デメリットと共に、具体的にどのようなアクションが必要なのか紹介することでブルーオーシャン戦略を紐解いていきます。

ブルーオーシャン戦略とは

ブルーオーシャン戦略とは、競争のない市場を創造して新しい事業を投入するという事業戦略。フランスの世界的なビジネススクールINSEADの教授であるW・チャン・キムとレネ・モボルニュが著書『ブルーオーシャン戦略』の中で提唱しました。

ブルーオーシャンとは反対に、限られたパイを巡って企業が競いあっている既存市場のことを「レッドオーシャン」と言います。競争相手が増えるほど利益は得にくくなり、その様子は「赤い血潮に染まっていく」と表現されました。


ブルーオーシャンでは競争相手もいなければルールもなく、企業にとって大変魅力的な市場です。ただし、ブルーオーシャンは既存市場の遠い場所に存在するわけではありません。むしろ、既存市場の中にブルーオーシャンのヒントが隠されていると言えるでしょう。

書籍の中で紹介されているオーストラリアのワインブランド「イエローテイル」は、「気軽に楽しく飲むワイン」というコンセプトでブルーオーシャンを創り出しました。それまでワインを飲むのは上流層に限られていましたが、ビールやカクテルを飲む層にワインを提案したのです。

ぶどうの品種や熟成にこだわらず、広告宣伝も明るくポップなイメージに徹し、気軽に手に取れるというコンセプトを一貫した結果、アメリカで販売を開始した年に100万ケースを売る大ヒットとなりました。

このように、ブルーオーシャンは決して最新の技術や巨大な資本を必要とはしません。誰でもアイディア一つで実現可能な戦略と言えるでしょう。

ブルーオーシャン戦略のメリット

ブルーオーシャン戦略を成功させることで、どのようなメリットが得られるのか、具体的に見ていきましょう。


コストをかけずに差別化できる

ブルーオーシャン戦略では、低いコストで差別化することを重視しています。差別化をするとなると、つい他社よりもコストをかけなければいけないと考えてしまいますが、必ずしもコストをかける必要はありません。あえて価値を取り除くことで、差別化するのも一つの戦略なのです。イエローテイルは「ぶどう園の格や伝統、コクや味わい深さ」という価値を取り除くことで、コストを下げながら差別化に成功しました。


シェアが獲得しやすい

ブルーオーシャン戦略では、競争相手が一切いない市場で戦えるため、一般的な市場に比べて圧倒的にシェアが獲得しやすくなります。レッドオーシャンはシェアを伸ばすのが難しいどころか、常に競合にシェアを奪われるリスクすら孕んでいます。ブルーオーシャン戦略で一定以上のシェアを獲得できれば、利益の地盤を固めることもでき、新たな戦略にも投資しやすくなるでしょう。

ブルーオーシャン戦略の注意点

成功すれば大きなメリットを得られるブルーオーシャンですが、実現する前はもちろん、実現した後も注意すべきことがあります。


市場を作り出す力が必要

「新しい市場を作り出す」というのは、一見魅力的に聞こえるかもしれませんが、既存の市場に商品を投入するより難しい場合もあります。普段使い慣れている商品・サービスというのはそれだけでも「安心感」という価値があるものです。そこに対して新しいコンセプトを認知し、手にとってもらうには適切なマーケティング戦略が必要です。どんなに優れた商品・サービスであっても、「新しいコンセプトだから売れるだろう」と甘く見ていては市場を作り出すことなく終わってしまうでしょう。


これまでブルーオーシャンだった理由を探る

ブルーオーシャンを見つけた時は、思わずガッツポーズを取りたくなるかもしれませんが、「なぜこれまでブルーオーシャンだったのか」を考えましょう。多くの企業が躍起になってブルーオーシャンを探している中で、自分だけが見つけたという可能性はそう高くありません。既に誰か見つけたものの、法規制があって実現が難しかったり、市場が小さくて魅力的ではなかったり、実は意外な競合がいたりする可能性もあります。過去に同じようなサービスが存在しなかったか、利益を見込めるだけの市場規模があるかどうか調べてみましょう。


模倣リスクに対策する

新しい市場を開拓できたからといって安心してはいけません。新しいブルーオーシャンはすぐに赤い血潮で染まっていきます。特に大企業による模倣ビジネスには要注意です。真っ向から「ミート戦略」に出られれば、資本の弱い企業に太刀打ちする術はありません。模倣ビジネスが現れる前にシェアを固める、模倣されない工夫をするなどの対策をすぐに取りましょう。

ブルーオーシャン戦略の実践

ブルーオーシャンは闇雲に探しても見つかるものではありません。どのようにしてブルーオーシャンを見つけるのか、その方法を見ていきましょう。

バリューイノベーション

ブルーオーシャン戦略を手がけようと思った際に、前提となる考え方が「バリューイノベーション(価値革新)」です。バリューイノベーションとは、「低コスト化」と「差別化」を同時に行うことを指します。書籍『ブルーオーシャン戦略』の中では「コストを押し下げながら、書い手にとっての価値を高めること」だと紹介されています。

戦略キャンバス

バリューイノベーションを起こすには、「戦略キャンバス」というチャートを用います。戦略キャンバスとは、既存の市場の現状を折れ線グラフで表したもので、競合や業界平均と比べてどのような差別化をするのか考えやすくなります。

戦略キャンバスを作るにはまず、お客さんが商品・サービスを選ぶ代表的な指標を7つほど挙げます。例えばイエローテイル以前のワイン市場を例に例えると、「価格・ぶどうの品種・伝統や格式・香りや味わい・ヴィンテージ」などが挙げられます。

次にそれらの指標を横軸に、縦軸には競合や業界平均がそれらの要素をどれだけ提供できているかを5段階ほどの評価で表します。業界をひとまとめにするのは難しいので、「高級ワイン」と「デイリーワイン」など、いくつかのカテゴリーに分けると作りやすいでしょう。

4アクション(ERRCグリッド)

完成した戦略キャンバスをもとに、今度は「4アクション」と呼ばれる操作を行っていきます。4アクションとは、次の4つのアクションのことを指します。

■Eliminete:取り除く

■Reduce:大胆に減らす

■Raise:大胆に増やす

■Create:付け加える

それぞれの頭文字をとって「ERRCグリッド」と呼ばれることもあります。バリューイノベーションの「低コスト化」を実現するには、今の業界で常識となっている要素を大胆に取り除く、もしくは業界の基準を大胆に下回ることで達成できます。

一方で差別化を実現するには、今まで業界にはなかった価値を付け加えるか、業界の基準を大胆に上回る要素を作ることが必要です。4アクションを行うことで、論理的にバリューイノベーションを引き起こすことが可能になります。

イエローテイルの4アクション

実際にイエローテイルの戦略キャンバスと4アクションを見ていきましょう。以下は「高級ワイン」と「デイリーワイン」、そして「イエローテイル」を戦略キャンバスに表したものです。


図を見れば分かる通り、イエローテイルは「ワインづくりの極意や誘い文句~品種」までの要素を、全て取り除くか大幅に基準を下回ることで低コスト化を実現しています。その一方で、それまでのワイン市場にはなかった「飲みやすさ、選びやすさ、楽しさや意外性」という要素を創り出し、価値を高めています。

戦略キャンバスを使うことで、その業界で新しい価値を作るために必要な要素が見えてくるはずです。ぜひ自分の業界でも戦略キャンバスを使って分析してみましょう。

ブルーオーシャン戦略の成功事例

最後にブルーオーシャン戦略によって成長した企業の事例を見ていきましょう。

イケア

今では当たり前の「家で組み立てる家具」は、イケアのブルーオーシャン戦略によって生み出されたアイディアです。それまで家具は、「完成品」を選んで買うのが常識でした。イケアはコスト低下を実現するため、「完成品を売る」という要素を取り除き、「自分たちで組み立てる」という要素を創造したのです。

さらにイケアは、実際に自分たちが使っているイメージが湧くモデルルームを作って、お客さんに体験してもらうという価値も付け加えました。「家具を買う場所」から「家具のある生活を体験する場所」にシフトすることで、他社との差別化を図ったのです。

吉野家

今でこそレッドオーシャンと言ってもいい「牛丼チェーン市場」も、かつては吉野家が切り開いたブルーオーシャンでした。それまで「高くてゆっくり」食べるものであった牛丼を、ファストフードとして初めて売り出したのが吉野家です。「落ち着いた空間でゆっくり食べる」という価値をなくし、「早くて安い」という新たな価値を創り出しました。

任天堂

任天堂が2006年に発売した「Wii」は、開発者が書籍『ブルーオーシャン戦略』を読んで完成させた商品だと言われています。当時の任天堂は、ソニーの「PlayStation」をはじめとした家庭用ゲーム機との激しい競争に巻き込まれていました。そこでブルーオーシャン戦略を学んだ開発者が「子供だけでなく、様々な世代にハマるゲーム機」というアイディアにたどり着いたのです。その結果、操作しやすいWiiリモコンの開発に至り、気軽に遊べるテニスやゴルフなどのソフトが大ヒットしました。

編集後記

ブルーオーシャンを見つけるために、市場の外に答えを探しに行く方がいますが、戦略キャンバスを見て分かる通り、答えは全て市場の中にあります。ブルーオーシャンを探している方は、深く深く市場を分析してみましょう。

そして、今レッドオーシャンと言われる市場の多くも、かつては誰かが切り開いたブルーオーシャンでした。ブルーオーシャンがブルーオーシャンであり続けることはほとんどありません。ブルーオーシャンを探すことも重要ですが、赤い血潮に染まっていく中でどう利益を守り続けていくのかも同時に考えましょう。

TOMORUBA編集部 鈴木光平)


■連載一覧

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「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く②〜ランチェスター戦略

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く③〜アンゾフの成長マトリクス

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