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「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉕〜ジレットモデル

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉕〜ジレットモデル

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消耗品を販売するビジネスで重要なのは、いかに消費者にリピートしてもらうか。一度は商品を買ってもらっても、いつ競合商品に浮気されるか分かりません。他社より優れた商品を開発するのはもちろんのこと、重要なのはリピートし続ける仕組みを作ること。

TOMORUBAの【「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く】第25弾で取り上げる「ジレットモデル」は、まさにリピートを生み出すための戦略。商品には自信があるのにリピートが続かないと悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

ジレットモデルとは

ジレットモデルとは製品の本体を無料、または低価格で提供し、消耗品の付属品を継続的に販売して利益を維持するビジネスモデル。名前の由来となったのは、アメリカの髭剃用カミソリ「ジレット」。そのためジレットモデルは別名「Razor and blades(替刃)モデル」とも呼ばれています。他にも「繰り返す」や「循環する」といった意味をもつ「リカーリング」と表されることもあります。


ジレットモデルが生まれた背景

ジレットモデルを生み出したのは、その名も「キング・ジレット」。発明一家で育ったジレットは行商人として働きながらも様々な工夫をして特許をとるような人物でした。王冠メーカーで営業をしていた彼は、「使い捨てだからこそ、顧客はまた買ってくれる」と思い、一度使ったら捨てられてしまう商品を考え続けました。

そこで思い立ったのがカミソリ。当時のカミソリは刃が厚く、刃がなまってきたら研いで使い続けるもの。何度も研げるように、刃は厚くなければいけなかったのです。「刃を薄くして安くすれば、使い捨てにできる」と考えた40歳のジレットは、すぐに薄い刃の開発に乗り出しました。

ジレットのアイディアが実現したのは6年後。鋼鉄を薄く延ばす技術は当時はなく、専門家を探して試行錯誤を繰り返しました。その結果、生まれた商品が「替え刃式T型剃刀」。最初こそ認知度の低さから売れなかったものの、度重なるプロモーションによりT型カミソリは徐々に市場を拡大していきます。

ヒットの引き金となったのは髭剃そのものの無料配布。大きな費用がかかった代わりに、その名前を世界に大きく知らしめ、継続的に刃を購入してもらうことで利益を得たのです。ジレットの替刃は他の替刃よりも高価だったものの、本体を使わずにいるのはもったいないと思う気持ちが、ジレットの替刃を購入を続けさせたのです。


ジレットモデルのメリット

これまで多くの企業がジレットモデルを採用してきましたが、どのようなメリットが有るのか見ていきましょう。

顧客の囲い込みができる

本体に対して、自社の付属品しか利用できないようにすることで、自社の付属品を書い続けてもらう、いわゆる「顧客の囲い込み」ができます。顧客の囲い込みができれば、価格が高くても顧客に買い続けてもらえるのです。

付属品自体は他社の方が安くても、本体を買い換えるとなると安くはすみません。それがスイッチングコストとなり、多少高くても自社の商品を買い続けてくれるのです。

プロモーションにコストをかけられる

ジレットモデルにすることにより長期的に利益を得られるので、プロモーションにもコストをかけられるようになります。例えば刃と本体が一体になっているカミソリを1,000円で売る場合、一人の顧客を獲得するのに1,000円以上のコストをかけては赤字です。

しかし、ジレットモデルの場合は違います。もし1,000円の本体と100円の替刃を売る場合、一人の顧客を獲得するのに1,000円以上かけても、長く替刃を買ってくれれば利益を出せます。プロモーションにお金をかけられれば、それだけ戦略の幅も広がりますし、何より知名度が上がって「カミソリならジレット」というポジションを確立しやすくなります。

ジレットモデルのカギは特許にある

優秀なビジネスモデルのジレットモデルですが、実はそれを支えているのは特許。なぜなら、自社商品の本体に使える付属品を他社が開発して安く売れば、自社の付属品が売れなくなるからです。

実際にカミソリで成功したジレットも特許紛争を余儀なくされた時代もありました。ジレットは辛抱強く戦い、もしくは相手企業を買収するなどして対抗したのです。同時に「2枚刃」「3枚刃」「5枚刃」といった発明を続けて特許申請を続けました。特許こそが共総力を維持する道だと信じていたのです。

様々な業界で使われるジレットモデル

今ではジレットモデルは様々な業界で採用されています。みなさんが普段使っている商品の中にもジレットモデルはたくさんあるので見ていきましょう。

ゼロックス

オフィスで使われているコピー機にジレットモデルを取り入れたのはアメリカのゼロックス。それまでのコピー機は本体も高額な上に、9割のコピー機は月に100枚もコピーしていませんでした。そんな中、ゼロックスが1959年に発売したXerox914は、高性能かつ高価な製品。

当時マーケット分析をしたコンサル会社は「月に100枚もコピーしないのに、そんな高い費用をかけるはずはない」と、事業の失敗を予想しました。しかし、ゼロックスが始めたのが業界初となるコピー機の「リース」。月額95ドルと月2,000枚を超えた場合のみ1枚あたりの費用がかかるというビジネスモデル。

結果的にXerox914を導入した企業は平均1日2,000枚以上のコピーをするようになり、リースから2日目で利益を挙げるようになりました。今では当たり前となっているコピー機のリースの始まりでした。

ネスレ

日本では「ネスカフェ」で知られる、スイスの世界最大の食品飲料会社ネスレもまた、ジレットモデルを採用して成功を収めました。ネスレが開発したのは、専用カプセル方式を採用した一杯抽出タイプのエスプレッソ・マシーン「ネスプレッソ」。

当時のインスタントコーヒーと言えば、コーヒー粉末をお湯で溶かして飲むか、コーヒーメーカーに市販のコーヒー豆を入れて、都度豆を炒って注ぐ方式のいずれか。いずれも利用者の囲い込みができないため、簡単に価格競争に陥ってしまい、ネスレは強さを発揮できていませんでした。

そこで開発したのが専用カプセルのみが使えるネスプレッソ。さらにネスレのマーケティングが秀逸だったのが、ターゲット層を法人から個人、特に高所得者世帯へシフトチェンジしたこと。利益率の高い専用カプセルを、メール注文で顧客へ直接届けるシステムを採用したのです。

さらに日本のネスレが独自に考案したのが「ネスカフェアンバサダー」というシステム。ネスプレッソ本体を無料でオフィスにレンタルし、カプセルを継続的に購入してもらう仕組みです。このビジネスモデルはネスレ本社からも高く評価され、ゆくゆくは世界中で展開されると期待されています。

編集後記

ジレットモデルで成功した事例を挙げればキリがありません。他社が模倣品を作れないように特許をとるのは大変ですが、一度ビジネスモデルを確立すれば、高い収益率を実現できるからです。周りにジレットモデルの商品がないか探してみて、なぜそのモデルが成立しているのか考えてみましょう。自社商品にジレットモデルを取り入れるヒントが隠されているかもしれません。

TOMORUBA編集部 鈴木光平)


■連載一覧

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「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く②〜ランチェスター戦略

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く③〜アンゾフの成長マトリクス

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く④〜チャンドラーの「組織は戦略に従う」

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑤〜孫子の兵法

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑥〜VRIO分析

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑦〜学習する組織

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑧〜SWOT分析

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑨〜アドバンテージ・マトリクス

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑩〜ビジネスモデルキャンバス(BMC)

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「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑬〜ブルーオーシャン戦略

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑭〜組織の7S

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