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「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉚~コア・コンピタンス経営

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉚~コア・コンピタンス経営

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自分たちの強みを活かしてビジネスを展開していくのは経営の王道です。しかし、自分たちの強みを明確に把握できている企業、もしくは自信を持って強みを打ち出せる企業はどれほどいるでしょうか。

TOMORUBAの【「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く】第30弾で取り上げる「コア・コンピタンス経営」とは、まさに自社の強みを軸にビジネスを展開していく戦略。どのような強みがコア・コンピタンスと呼べるのか、その条件も紹介しているので、強みが分からずに迷っている方は参考にしてください。

コア・コンピタンス経営とは

コア・コンピタンス経営とは、「コア・コンピタンス=中核(コア)となる能力(技術)」を活かした経営のこと。会社には様々なコンピタンスがありますが、その中でも「コア製品」を生み出す主要な技術を軸にした戦略のことを言います。

この概念は1990年に、ゲイリー・ハメル氏とC.K.プラハラード氏が『ハーバード・ビジネスレビュー』に寄稿した記事の中で提唱しました。日本では「コア・コンピタンス経営」とタイトルが付けられ、次のような冒頭で始まります。

“企業の成長を可能にする「コア・コンピタンス」を特定し、それらを育て上げ、開拓していく能力に基づいて評価されることになる。

戦略論 1957-1993 (HARVARD BUSINESS PRESS)  第8章 より”

つまり、コア・コンピタンス経営とは自社のコア・コンピタンスを理解し、強化しながら新しいコア・コンピタンスを生み出していく経営手法だと言えるでしょう。

ケイパビリティとの違い

コンピタンスの類似用語に「ケイパビリティ」があります。ケイパビリティとは「企業がもつ組織的な能力」「その企業固有の強み」のこと。どちらも競合に対する優位性を指し示す言葉ですが、コア・コンピタンスは特に技術にフォーカスしているのが特徴です。

ケイパビリティが組織的な強み故に社内で完結するのに対し、コア・コンピタンスは技術的な強みのため、場合によっては他社との連携も可能です。むしろ、コア・コンピタンスがあれば他社との共創がしやすくなり、効率的にアドバンテージを作り出せるでしょう。

コア・コンピタンスの必要条件

企業には様々な技術がありますが、どのようなものがコア・コンピタンスと呼べるのでしょうか。その必要条件となる5つの要素を紹介します。


①模倣可能性

どんなに優れた技術であっても、それが簡単に真似できるものであっては競合優位性になりません。コア・コンピタンスと呼ぶには「模倣自体が困難」もしくは「仮に模倣されても、自社と同じクオリティーに至るのが困難」であることが求められます。

模倣するのが難しければ難しいほど、独自性が強く他社に対する強みとなります。

②代替可能性

どんなに模倣するのが難しくても、他の技術や製品で代用できるのであれば、決定的な強みにするのは難しいでしょう。方法は違っても結果が同じであれば、自社の強みとは言えなくなります。

逆に代替が難しい技術があれば、その技術を利用したい企業は自分たちに商談を持ちかけるしかなくなります。代えが効かない独自の技術を開発することで、共同開発がしやすくなるだけでなく、パートナー企業と優位な関係性を築きやすくなるのです。

③移動可能性

コア・コンピタンスは、幅広く応用可能であることも重要です。ここで言う「移動」とは、他の分野にも応用・転用できるかということ。新しい技術を開発しても、それが一つの製品もしくは一部の分野にしか応用できなければ、自社のビジネスにもすぐに限界がきてしまいます。

もしも幅広く応用できるのであれば、コア・コンピタンスを軸に様々な事業を展開したり、他社との共同開発も見込めるでしょう。新しい技術を開発するには、どれくらい応用の余地があるのか事前に想定しておくことが技術の価値を高めることに繋がります。

④希少性

希少とは「数が少なくて珍しいこと」を指しますが、コア・コンピタンスにおける希少性とは「技術や特性が珍しい」「技術の特性自体に希少価値がある」という視点を指します。

一般的に模倣が困難で代替がきかない技術であれば、自然と希少性も高まるでしょう。

⑤耐久性

どんな技術も開発された瞬間から陳腐化され、10年、20年と立つうちにその独自性や希少価値を失っていきます。特に次々に最新技術が生まれるIT分野などでは、技術の寿命も短い傾向があります。

どんなに独自性のある技術を開発しても、わずか数年で独自性を失うようではコア・コンピタンスとは呼べません。時代の変化に耐えられるかどうかも、コア・コンピタンスと呼べるかどうかの大きな判断材料となります。

コア・コンピタンスと呼ぶための5つの要素を紹介しましたが、必ずしも完璧に全ての要素を満たしている必要ありません。ただし、強弱はあれど全ての要素をもっていることがコア・コンピタンスの条件となります。

重要なのは自社のコア・コンピタンスはどの要素が強く、どの要素が弱いのか把握しておくこと。それによりコア・コンピタンスを活かして企業の利益を最大化できるでしょう。

コア・コンピタンス経営のメリット

自社のコア・コンピタンスを把握し、それを経営戦略に活かすことでどのようなメリットを得られるのか見ていきましょう。

・市場の変化に対応しやすい

コア・コンピタンスとは特定の商品ではなく、それを生み出す技術。そのため、時代が変わってコア商品の需要がなくなったとしても、コア・コンピタンスがあることで新たなコア商品を生み出せるのです。

市場のニーズに応じて技術の使い方やシステムの適用方法などを柔軟に対応させ、急な変化が起きても業績が急に悪化する可能性を下げられます。

・他社と共創しやすい

一般的に技術というのは、特定の分野だけに絞られるものではありません。工業の分野で生み出された技術が、医療や福祉の分野で活躍するケースも十分に考えられます。

つまり、コア・コンピタンスがあれば、全くの異業界の企業に技術提供をすることで、新たなビジネスチャンスを生み出せるのです。変化の激しい時代では、自社だけでビジネスチャンスを創るのは難しいので、共創の大きなカードを持てるのは十分な強みとなるでしょう。

・突如として消えることがない

もしも、会社の強みが特定の人(例えば熟練の職人など)だった場合、その方が転職などで急遽いなくなれば強みがなくなってしまいます。一方で技術は急に消えたりすることはありません。時代の変化によって徐々に価値を失うこともありますが、それは十分に対策できるので経営リスクを抑えられるでしょう。

ただし、自社のコア・コンピタンスが特定の人で独占されていたり、特定の環境に依存している場合はその限りではありません。コア・コンピタンスが急に消失するようなリスクがないか確認し、事前に対策をとっておきましょう。

コア・コンピタンス経営のデメリット

メリットばかりだと思われがちなコア・コンピタンス経営にもデメリットはあります。どのようなデメリットがあるのか把握して対策を立てましょう。

・柔軟性を失う可能性がある

コア・コンピタンスを持つことで時代のニーズに対して柔軟に対応できるようになりますが、それにも限界があります。どんな技術も徐々に陳腐化し、いずれは時代の大きな変化に対応できなくなります。

コア・コンピタンス経営をしている企業ほど、コア・コンピタンス頼りになってしまい、時代が大きく変わった時に対応できなく可能性があるのです。コア・コンピタンスで時代の変化に対応しながらも、常に広い視野を持って大きな変化があった時に乗り越えられるようにしましょう。

・技術者離れの影響を受けやすい

優れた技術は、優れた技術者がいて初めて活きるもの。そのため、コア・コンピタンスに関わる人材は企業の生命線になります。もしも優秀な技術者たちがヘッドハンティングなどで奪われると、それは会社の大きな損失に繋がります。

コア・コンピタンスを維持するためにも、企業は技術者たちがモチベーション高く働き続けられるような環境作りや関係作りが求められます。

コア・コンピタンスを確立させるステップ

変化の激しい時代を生き抜くためにどのようにコア・コンピタンスを確立させればよいのか、そのステップを見ていきましょう。

・会社の強みを洗い出す

コア・コンピタンスを確立させるには、まずは会社にどんな強みがあるのか洗い出しましょう。技術はもちろんのこと、人材や能力、理念、会社の歴史や文化、サービスなど強みは多岐にわたります。

すでに強みとしてもっているものの他、将来持つことができそうな強みも洗い出してリストアップしていきましょう。経営陣など一部の人間だけで行うのではなく、できるだけ多種多様な人間に聞いて広い視野で抽出するのがおすすめです。

・会社の強みを判定する

洗い出した強みを、上記で紹介したコア・コンピタンスとしての条件に当てはめて判定しましょう。模倣されにくいか、幅広く応用できるのか、長期に渡って活用できるのか。それぞれの条件を兼ね備えているかチェックしてください。

・会社の強みを絞り込む

コア・コンピタンスとしての条件をクリアする強みが複数ある場合は、特に自社の利益につながる強みに絞り込みましょう。あまり多くの強みに力を割いても分散してしまうので、一つもしくは二つに絞り込むのがおすすめです。

絞り込んだコア・コンピタンスを有効活用して、新規参入や他社との共創を実現できないか検証してみてください。

コア・コンピタンス経営の成功事例

コア・コンピタンス経営を活用して成功した企業をいくつか見ていきましょう。

・シャープ株式会社

大手電機メーカーのシャープのコア・コンピタンスは液晶技術。もともとシャープペンシルの発明から始まったシャープは、電卓などを製造する中小企業でした。電卓の液晶パネルからヒントを得たシャープは、その技術をテレビに転用して液晶パネルを開発しコア・コンピタンスを確立したのです。

自ら光を発しない液晶パネル技術は携帯電話や時計、携帯型ゲームなど様々な電子機器に利用されています。他社に真似できない技術を研究し続けることによって、確固たる地位を築いた成功事例と言えるでしょう。

・本田技研

本田技研のコア・コンピタンスは高性能エンジン。かつて自動車の排気ガスが問題になっていた1970年代に、ホンダはその優れた技術で環境に負担の少ないエンジンの開発に乗り出しました。

そのエンジンは汎用性が高く、車やオートバイなどの大型の商品をはじめ、除雪機や芝刈り機など小型商品にまで応用されています。優れた技術を幅広い商品に応用して成功した事例と言えるでしょう。

編集後記

自社の強みを軸に事業を展開していくのは多くの人が知っていることだと思いますが、「強み」の条件に「他の領域にも転用しやすい」「時代の変化に耐えられる」という観点を含めている方は多くないのではないでしょうか。

自社のコア・コンピタンスを探す、もしくは作り出すのは決して簡単なことではありませんが、だからこそコア・コンピタンスは軸にしている企業は強いです。特に変化の激しい時代を生き抜くためには、コア・コンピタンスを企業の生命線にもなるかもしれません。

TOMORUBA編集部 鈴木光平)


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