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「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㊲〜IPビジネス

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㊲〜IPビジネス

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ゲームやアニメ業界で多く活用されてきたIP(知的財産)。最近では業界を問わず、特許やブランド、コンテンツなど様々なシーンで活用されており、うまくIPを使って数億円規模の事業に成長させたケースも珍しくありません。

TOMORUBAの【「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く】第37弾では、この「IPビジネス」を取り上げ、そのメリットや注意点を紹介していきます。IPを使って事業展開を考えている企業はぜひ参考にしてください。

IPビジネスとは

まずはIPビジネスがどのようなものか紹介します。

そもそもIPとは

IP(intellectual property)とは「知的財産」のこと。発明やデザイン、著作物など、人間が創造的活動により生み出したものを指し、楽曲やデザインといった芸術的価値のあるもののほか、顧客リストや社内のノウハウなどの営業秘密も含まれます。

これらの知的財産には、法律によって保護される「知的財産権」が認められます。楽曲や小説などの作者に与えられる「著作権」も知的財産権の一種で、作品を盗作できないのは著作権保護法で守られているからです。

IPを販売・貸与するIPビジネス

一方で、作者は他社から契約のもとライセンス料を受け取って、作品の利用を認めることもできます。このように知的財産権をもつ個人や法人が、知的財産を販売または貸与することで収益を得るモデルを「IPビジネス」と呼びます。

最もイメージしやすいのがアニメキャラクターのIP展開。食品や玩具を扱う会社などが、アニメキャラクターを使用できるのは、IPを保有する企業にライセンス料を支払っているからです。人気のキャラクターを保有していれば、IPだけで大きな収益を得られます。

IPの例

IPはキャラクターや音楽といった著作物(著作権)のほかに、特許(特許権)・商標(商標権)・意匠(意匠権)・肖像(肖像権)などがあります。下記に一例を紹介します。

・自社製品のデザインや仕様

・自社の社員が執筆した記事

・営業秘密

・農畜産物の産地表示

・インターネット上のドメイン名

・文字のフォント

・半導体の回路設計

IPビジネスを展開するメリット

IPビジネスを展開することで、どのようなメリットがあるのか紹介します。

安定した収益の柱になる

最も大きなメリットは、収益の柱を増やせること。たとえば、映画の収益は一般的に興行収入でしか得られませんが、もしも映画のキャラクターをグッズ化すればライセンス使用料が得られます。仮に映画の収益が芳しくなくても、ライセンス使用料で補填できるのです。

また、IPビジネスの収益は長期にわたって得られる可能性もあります。映画は上映期間しか収入を得られませんが、IPビジネスを展開すれば上映期間が終わった後も収益を得られます。ディズニーやジブリなどの人気キャラクターは、数十年前に上映された映画であるにもかかわらず、今でもライセンス料で莫大な利益を作り上げています。


認知度をアップし、本業の利益を増やせる

IPビジネスは第三者にIPを活用してもらうことで、効率的にIPの認知度を上げられます。認知度が上がることでファンが増え、本業の利益に好影響を与えてくれるのです。

たとえば子供にも人気のゲームキャラクター「マリオ」。今や多くのグッズが展開されており、USJのアトラクションにも採用されました。ゲームをする前にマリオのファンになった子供は、ゲームを買う可能性も高まり、結果的に本業の収入アップにも貢献したことになります。

あまりコストをかけなくともよい

もしも自社のキャラクターを自分たちでグッズ化しようとすれば、工場や機器のコストの他、人件費など膨大なコストが発生します。成功するか分からない状態でコストをかけるのは大きなリスクです。

一方で他社にIPを貸与すれば、グッズ制作やイベント運営を自社で行う必要はありません。ライセンスを購入した会社が行なってくれるため、資金や人的リソースを使わずともビジネスを展開できるのです。

IPビジネスの注意点

様々なメリットのあるIPビジネスですが、もちろん注意点もあるので見ていきましょう。

収益を出すのに時間がかかる

一度成功すれば息の長い収益を見込めるIPビジネスですが、そこにたどり着くには長い時間が必要になります。IPビジネスを展開するには、そのもととなるキャラクターに人気があったり、技術優位性があってこそ。それだけの技術を開発したり、キャラクターを作り出すのは一朝一夕でできるものではありません。

また、キャラクターや音楽などは流行にも大きく左右するため、一度成功したからといって、いつまでも収益の柱になるとは限りません。もしも、IPの旬が過ぎたと感じたら、IPそのものを売却することで短期的に利益を生み出したほうが得策とも言えます。

IPの管理に手間がかかる

グッズの製造などには手間がかからないIPビジネスですが、IPそのものを守るための管理に手間を惜しんではいけません。ライセンスの販売先にサービス展開を任せっきりにしてしまうと、ブランドイメージを毀損するリスクがあるからです。

たとえば、本来のデザインとはかけ離れたグッズが販売されてしまうと、既存のファンが離れていってしまう可能性もあるのです。一度離れたファンを取り戻すのは容易ではなく、本来は事業を加速させるためのIPビジネスが、逆に本業の足枷になってしまいます。

地域によっては権利が保証されないことも

IPビジネスの最大の脅威が、知的財産権を無視して作られた「海賊版」です。著作権の保護に関するベルヌ条約の加盟国ではIPは守られているものの、一部の地域ではこれらの権利が無視されることもあるのです。

海外で日本発のキャラクターやアーティストのグッズが売られていることも珍しくありません。そのような海賊版が現れた際の対策も前もって考えておきましょう。


IPビジネスを成功させるポイント

IPビジネスを成功させるために、どのようなポイントを意識すればいいのか紹介します

IPの活用事例が豊富なパートナーを探す

IPビジネスを成功させる上で重要なのがパートナー探し。パートナーがIPを使用したビジネスに失敗した場合、IPのイメージが下がる場合もあり、間接的に被害を被ることもあります。逆にパートナーがIPを使ってビジネスに成功すれば、それを見た別の会社からパートナーの要請が来ることもあり、次のビジネスに繋がっていきます。

たとえば総合エンタテイメント企業のKADOKAWAは、IPを使った数々のプロジェクトを成功させてきました。人気キャラクターをグッズ化させる他、タイアップや舞台化、書籍化など幅広いライセンス事業を手掛けています。それらの取り組みによって新たなファン層を獲得したケースも少なくありません。IPによって知名度アップを考えている企業であれば、KADOKAWAのような実績のある企業を選びましょう。

資本業務提携を絡めれば可能性が倍増

カードゲームなどのコンテンツ製作を手がける「ブシロード」は、2017年には配信プラットフォームをもつシンガポールの企業「MobiClix Pte Ltd」と資本業務提携を結びました。単にIPを提供するだけでなく、資本業務提携を交わすことで海外進出の足がかりを作ったのです。

IT化やグローバル化が進んだ影響で知的財産の活用方法は増えてきているため、IPビジネスの計画を立てる際には、経営戦略とどのように組み合わせるか視野を広げましょう。

編集後記

今はSNSを使って誰もが気軽に自分の作品を発信できる時代。実際にSNSから人気に火がついたキャラクターや音楽も少なくありません。大企業でなくてもIPを使って新しい収益を生み出すことができるため、社内にIPとなるものはないか、新しいIPを作れないか見直してみましょう。

TOMORUBA編集部 鈴木光平)


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