「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉟~マーケティングファネル
マーケティングにおいて重要なのは、ユーザーがどのような心理状況を経て購入に至るか考えること。商品を知ったからと言ってすぐに購入してくれることはほとんどないため、段階的に購入したくなる仕掛けを作らなければいけません。
TOMORUBAの【「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く】第35弾でとりあげる「マーケティングファネル」は、ユーザーの心理状態の推移を表したフレームワーク。うまく活用することで課題の解像度を上げ、適切なマーケティング施策を行えるでしょう。
事業に伸び悩んでいるものの、どこに課題があるか把握できていない方は参考にしてください。
マーケティングファネルとは
マーケティングファネルのファネルとは、英語で「漏斗」(ロート)のこと。口の小さな容器などに液体を注ぐ時に使う円錐状の器具のことです。
マーケティングファネルは、ユーザーの心理状態が移り変わっていく様を図で表したもの。例えば商品を認知した人が興味を持って購入していくという流れを、逆三角形の図で表したモデルが有名です(パーチェスファネル)。大勢の人が商品を認知するものの、興味、そして購入と進む中でどんどん人数が減っていく様が、大量のムズが出口に向かって絞られていく漏斗に似ていることから名付けられました。
ポイントはプロセスを経る中で、自然と顧客が減っていくということ。顧客を選別したり、ふるいにかけるのが目的のモデルではないことに注意してください。
マーケティングファネルを使ってどのように分析するのか見ていきましょう。
フェーズごとの顧客数を把握する
まずはそれぞれのフェーズに、どれほどの顧客がいるのか把握します。そのためにはそれぞれのフェーズの定義を決めなければいけません。例えば何を持って「認知」とするのか「興味・関心」とするのか、ということです。
例えば「サイトのPV数」などは認知と捉えられますし、そこから「商品紹介ページ」をみれば興味・関心を持っていると言えるかもしれません。ビジネスモデルによって定義の仕方が変わってくるため、自分たちのビジネスに合った定義を考えて顧客の流れを把握しましょう。
フェーズごとの問題点を分析にする
それぞれのフェーズの数を把握したら、どこに問題があるのか分析していきます。例えばサイトへのPV数が少ないのであれば、広告を打つなどして露出を増やさないといけないかもしれません。
逆にPV数は十分にあるのに、商品ページまで見る人が少ないのであれば、サイトの誘導の仕方が悪いのかもしれません。「売上が伸びない」という曖昧な問題も、フェーズごとに分析していくと適切な解決策が見えてきます。
アプローチを考える
フェーズごとの問題点を分析したら、ボトルネックになっているフェーズをいかにして解決するか考えます。この時に重要なのは、カスタマージャーニーを作成してストーリーを重視しながアプローチを考えること。
例えばPVが少ないからといって、PVを増やせばどんな方法でもいいわけではありません。認知をした人が、その後自然に興味・関心を抱くストーリーを考えながらも、効果的に露出できる方法を考えましょう。
マーケティングファネルを活用するメリット
マーケティングファネルを活用することで、どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
課題の解像度が上がる
各フェーズの状況をそれぞれ分析することで、より深く課題が浮き彫りになります。例えば「サイトの訪問数は多いのに、商品ページへの移行率が低い場合」は「ターゲットとなる人をサイトに誘導できていない」「商品との関連性をうまく伝えられていない」などの課題が考えられます。
どこに問題があるかで、ユーザーが購入に至るまでにどこに問題があるかより細かく考えられるでしょう。
フェーズごとに適したコミュニケーションができる
ユーザーをフェーズごとに分けて考えれば、より効果的なコミュニケーションができます。例えば「サイトに訪れたこともない人」と「サイトに訪れたことはあるけど商品ページを見たことのない人」「商品ページをはみたけど購入してない人」では適切なコミュニケーションは違います。それぞれのフェーズに適したコミュニケーションをすることで、より売上アップを期待できるでしょう。
3種類のマーケティングファネル
一口にマーケティングファネルといっても、いくつか種類があるので、状況によって使い分けましょう。
パーチェスファネル
マーケティングファネルを代表するフレームワークであり、マーケティングファネルと聞いたらこれをイメージする人も多いはず。パーチェスとは「購入」のことであり、その名の通り購入までのユーザーの心理状態を表したもの。「認知」「興味・関心」「比較・検討」「購入」の4つプロセスで構成されていますが、次の3段階で分けられることもあります。
・TOFU(Top of the Funnel):認知+興味・関心
・MOFU(Middle of the Funnel):比較・検討
・BOFU(Bottom of the Funnel):購入
マーケティングに知見のある方なら、パーチェスファネルと似たフレームワークがあることに気付いた方もいるかもしれません。その推察通り、パーチェスファネルは有名なAISAS(アイサス)をベースに考えられました。
・Attention:注意
・Interest:興味関心
・Search:検索・情報収集
・Action:購入
・Share:共有
パーチェスモデルでは、購入に至るプロセスのなかで、どこでユーザーが離脱してしまうのかを分析して、いかに多くの方にファネルの最下部まで到達してもらうかを考えます。
インフルエンスファネル
パーチェスモデルが購入「まで」の心理を表しているのに対し、インフルエンスファネルは購入「してから」の心理を表しています。そのため、バーチェスファネルが逆三角なのに対し、ファネルは三角形で「継続」「紹介」「発信」の3つの段階で構成されます。
商品は買って終わりではなく、しっかり使ってもらわなければいけません。家電などであれば使い続けてもらうことが重要ですし、消費財であれば継続購入してもらう必要があります。継続して購入されれば商品に愛着が湧き、周りの人に紹介するようになるでしょう。
その延長線にはSNSでの投稿や口コミサイトでのレビューなど「発信」があります。最近では消費者の口コミが購買行動に与える影響は大きくなるばかり。インフルエンスファネルは、購入後のコミュニケーションが重要であることを示していると言えるでしょう。
ダブルファネル
ダブルという名の通り、パーチェスファネルとインフルエンスファネルを組み合わせたモデルです。逆三角形と三角形が合体して、砂時計のような形で表されます。
パーチェスファネルでは購入がゴールでしたが、ダブルファネルはその後の発信をゴールにして認知のフェーズから設計することが求められます。そして、発信までうまく誘導できれば、新たな人の認知が生まれ次のループが生まれるはずです。
マーケティングファネルの注意点
これまでマーケティングファネルのメリットを紹介してきましたが、最近では「マーケティングは古い」という意見を持っている方もいます。なぜそのように言われるのか、理由を見ていきましょう。
購買行動の変化
ビジネスモデルの変遷により、人々の購買行動は変わっていきます。例えば、今は「検索して比較検討する」のは当たり前ですが、インターネット前の時代はそもそも検索のしようがありません。雑誌などで調べることはあったとしても、今ほど比較検討するのは容易ではなく、ほとんど比較せずに買っていた方も少ないでしょう。
また、かつては買った商品を発信することはできなかったのに対し、今はいかにSNSなどで発信してもらうかが成功の鍵。このように購買前後の行動は時代によって変わるので、基本的な考え方は変わらなくとも、ユーザーの行動変化には常に目を光らせておかなければなりません。
脱落顧客に焦点が当たってない
マーケティングファネルは、認知から購買、もしくはファンになってくれる人を増やすのが目的ですが、ファネルから離脱した顧客には焦点を当てていません。しかし、一度ファネルから離脱したからといって、一生顧客になる可能性がないわけではないのです。
例えば、比較検討されて「安さ」を重視した競合商品を買った顧客が、数年後に「品質」を重視して自分たちの商品を買ってくれることは往々にあるでしょう。大事なのは、ファネルから離脱した方ともコミュニケーションを取り続けること。
例えば「商品は買わなかったけど、有益な情報をくれるからメルマガは続けよう」と思ってもらえれば、いつかは自分たちの顧客になってくれるかもしれません。マーケティングファネルで考えるのも重要ですが、そこから離脱した人々をいかに拾っていくかも考えましょう。
編集後記
最近はネットで買い物をする機会が増えましたが、早い段階からファンづくり、発信を目的とした施策がとても増えたように感じます。「SNSに投稿したら○%OFF」「お友達を紹介したら商品が無料に」などもそれらの一つ。
これまで成功してきたビジネスの多くは、そのように「ビジネスが勝手に成長する仕組み」がいくつも施されています。単にいい商品をつくる、多くの人に買ってもらうだけではなく、どうすればお客さんがお客さんを呼ぶのか、その仕組みづくりがこれからのビジネスの鍵と言えるかもしれません。
(TOMORUBA編集部 鈴木光平)
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