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「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㊴〜D2C

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㊴〜D2C

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近年、大きな注目を集めているD2Cブランド。個人や小さなメーカーであっても、独自のアイディアやこだわりを武器に、コアなファンを多く持つブランドも増えています。その流行を受け、最近ではD2Cモデルを展開する大企業も多く見られます。

TOMORUBAの【「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く】第39弾では、この「D2C」を取り上げ、そのメリットや注意点を紹介していきます。D2Cモデルで事業展開を考えている企業はぜひ参考にしてください。

D2Cとは

D2Cとは「Direct to Consumer」の略で、企業や事業者が自ら企画、生産した商品を消費者とダイレクトに取引する販売方法。通常、メーカーが商品を販売する際には、広告代理店などを活用して宣伝し、小売店を通して販売するのが一般的です。

しかし、D2CブランドはSNSなどを活用して自らブランドを宣伝し、ECサイトを使って自ら販売します。近年、多くのアパレルブランドやコスメブランドが採用したことで、若者を中心に社会に浸透しました。


SPAとの違い

企業が企画から販売までを一貫して行うモデルと聞いて「SPA」を連想した方もいるのではないでしょうか。SPAとは「Speciality store retailer of Private label Apparel」の略で、日本ではユニクロが代表例として挙げられます。

D2Cが幅広い業界で用いられる一方で、SPAはアパレル業界に特化した用語です。他にも両者の違いがあるため、紹介していきます。

店舗を持っているか

大きな違いの一つが店舗展開をしているかどうか。SPAを取り入れているZARAにしてもユニクロにしても、SPAブランドは店舗を展開しています。一方でD2Cブランドの販売経路はECです。一部、体験用の店舗を構えているブランドもありますが、それは飽くまでECでの販売をサポートするため。店舗展開がメインとなるSPAとは大きく異なります。

目的が効率性か世界観か

そもそもSPAとD2Cは、取り入れる目的が大きく違います。SPAの最大の目的は「効率化」なため、SPAブランドが武器にしているのがコスパです。一方でD2Cは自分たちのこだわりを表現し、世界観を作り出すこと。結果的にコスパの高い商品もありますが、それを武器にすることはありません。

商品づくりの背景にあるストーリーや、顧客とのコミュニケーションを武器にしているため、仕組みは似ていても両者のとるべき戦略は大きく異なります。

D2Cのメリット

D2Cを採用することで、どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。

収益性を高めやすい

D2Cでは小売店や広告代理店などを通さず、自社で販売や宣伝を行うため中間業者に支払う費用を抑えられます。また、自社でECサイトを構築するため、Amazonや楽天市場といったECモールに高額な手数料を払う必要もありません。

コストを抑えられれば、その分商品の質を高められたり、顧客とのコミュニケーションを充実させるために使えます。高い収益性を期待できることから、リソースが少ないスタートアップにも向いているのです。

顧客データやフィードバックを直接獲得できる

D2Cは自社でECサイトを運営しているため、顧客データやフィードバックを直接獲得できるのも大きなメリットです。小売店やECモールを通してしまうと、自分たちが必要なデータを獲得するのが難しくなりますし、場合によってはタイムラグが発生してしまいます。

自社でECサイトを運営しているからこそ、顧客データをリアルタイムで獲得でき、そのデータをもとに高速でPDCAを回せるのです。それにより、従来のメーカーにはない急成長を実現できます。

顧客とより密な関係を築ける

D2CはSNSを通して顧客との1on1コミュニケーションが可能です。顔の見えない顧客ではなく、一人ひとりの顧客と向き合うことで、それぞれの嗜好や要望に寄り添った商品作りに活きてきます。万人受けよりも、ニッチな客層に刺さる商品を作るためには、このようなコミュニケーションが欠かせません。

また、商品作りのためだけではなく、コミュニケーションをすること自体がファンづくりに繋がります。ユーザーも自分が好きな商品を作っている会社と直接コミュニケーションを採れることで、より親密度が高くなるはずです。

コアなファンを獲得しやすい

ニッチな商品作りと、1on1コミュニケーションにより、D2Cではコアなファンを作りやすいのが大きなメリットです。コアなファンとは、単に商品を使い続けてくれるだけでなく、自発的にSNSなどで発信してくれるようなファンです。

SNSの世界では、一人の発信が数万人を動かすことも珍しくありません。広告代理店に依頼すれば数百万円はする広告効果が、ほとんどゼロコストで実現できるのです。

価格競争に巻き込まれにくい

D2Cブランドは、その世界観で顧客を獲得しているため、価格競争に巻き込まれにくいのも特徴です。D2Cブランドのファンになるユーザーは、価格重視で商品を選んでいないため、市場で価格競争が起きてもユーザーが離れていきません。

価格競争に巻き込まれないことも、高収益な体質を生み出せるポイントになります。


D2Cのデメリット

様々なメリットを得られるD2Cですが、デメリットもあるため注意してください。

サイトや流通に対して初期投資が必要

D2Cは広告代理店や小売店に支払うコストを節約できる分、初期コストが発生しやすい面もあります。特に初期段階でコストがかかるのがECサイトの構築。今は無料でもECサイトを構築できますが、本格的なECサイトを作るとなればノウハウとコストがかかります。

もしも自社でECサイトを構築するノウハウがなければ、他社に外注する必要もあるでしょう。「コストを抑えられるから」と安易にD2Cを始めるのではなく、まずはどれくらいのコストがかかるのか予算を計算してみましょう。

マーケティング力が求められる

広告代理店を使わずにSNSで認知度を高めていくD2Cですが、いい商品さえ作っていれば勝手に話題になるわけではありません。多くの人に商品を認知してもらうには、マーケティングのノウハウが必要になりますし、社内にノウハウがなければ外部に依頼することも考えなければなりません。

また、顧客とのコミュニケーションにも人的コストはかかります。D2Cにおいて顧客とのコミュニケーションは非常に重要な業務。人的リソースが足りなくて対応が雑になれば、ブランドイメージも下がるでしょう。

リアルな情報を伝えにくい

オンラインの力で効果的に商品の魅力を広げられるD2Cですが、一方でリアルな情報を伝えにくいのはデメリットです。たとえば食品なら味が重要になりますし、コスメなら使用感が非常に重要になります。オンラインマーケティングを中心にしながらも、いかにリアルな情報を伝えるかは非常に重要な戦略になります。

最近では「買わない店舗」を持つD2Cブランドも増えてきました。店舗で商品を手に取り、気に入った商品があればネットで注文するといった文化が広がり始めています。工夫次第でリアルとオンラインの両方のメリットを最大限に活かした販売戦略を描けるでしょう。

事業が軌道に乗るまでに時間がかかる

SNSでバズればすぐに売れるようになると考える方もいるかもしれませんが、D2Cは基本的に時間をかけてゆっくりと顧客と関係性を築いていくモデルです。SNSもコツコツ運用しながら認知度やブランド力を積み上げていかなければなりません。

事業が軌道に乗るまでの時間がないと、それだけ運転資金も必要になるため、余裕を持った事業計画が必要になります。個人や小規模事業者でも成功できるため、ハードルが低いように見えますが、しっかりと収益を生み出すには堅実な準備が欠かせません。

注目のD2Cブランド

最後に注目を集めるD2Cブランドを紹介していきます。

BULK HOMME(化粧品)

BULK HOMMEは、主に男性向けの化粧品を販売している化粧品ブランド。2013年から販売を開始し、ECサイトからの定期購入を基本としたことで、D2Cブランドの先駆け的存在とも呼ばれています。

​​​​​​​「世界のメンズビューティーをアップデートする」とのビジョンのもと拡大を続けており、日本だけでなく、ヨーロッパなどの海外進出にも力を入れています。オンラインでの直接販売から徐々に販路を拡大し、2020年の秋には1,000店舗以上の大手ドラッグストアでの取り扱いも始めました。

BASE FOOD(食品)

ベースフード株式会社は、1食のみで必要な栄養素を摂取できるパンなど軽食の販売を行っている会社。完全栄養のパン・麺などを、主に自社のECサイトで販売しています。

過去に完全栄養のパンやパスタを販売している企業はなかったため、商品の特性を伝えるために、消費者の段階ごとのアプローチを実施するなどコミュニケーションを重視しています。現在は海外展開も進めています。

土屋鞄製造所(アパレル)

土屋鞄製造所は、老舗の皮革製品ブランド。ランドセルから仕事鞄まで、数多くの皮革製品を製造・販売しており、高品質な皮革製品の販売で知られています。

2000年代からECによる販売をスタートさせたものの、消費者の声の反映や、新しいツールの導入に時間がかかることに頭を悩ませていました。内製化を進めることで、ブランディングに更に集中できるようになり、顧客層を大幅に広げることに成功しました。

TOMORUBA編集部 鈴木光平)


■連載一覧

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く①〜ポーターの『5フォース分析』

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く②〜ランチェスター戦略

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く③〜アンゾフの成長マトリクス

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く④〜チャンドラーの「組織は戦略に従う」

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑤〜孫子の兵法

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑥〜VRIO分析

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑦〜学習する組織

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑧〜SWOT分析

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑨〜アドバンテージ・マトリクス

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑩〜ビジネスモデルキャンバス(BMC)

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑪〜PEST分析

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑫〜PMF(プロダクト・マーケット・フィット)

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑬〜ブルーオーシャン戦略

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑭〜組織の7S

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑮〜バリューチェーン

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑯〜ゲーム理論

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑰〜イノベーター理論

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑱〜STP分析

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑲〜規模の経済

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑳〜ドミナント戦略

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉑〜LTV

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉒〜IPO

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉓~MVP戦略

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉔〜プラットフォーム戦略

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉕〜ジレットモデル

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉖〜フリーミアムモデル

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉗~フリー戦略

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉘〜ダイナミックプライシング

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉙~ストックオプション

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉚~コア・コンピタンス経営

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉛~コストリーダーシップ戦略

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉜~マーケティング近視眼

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉝~ロングテール戦略

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉞~ファブレス経営

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉟~マーケティングファネル

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㊱〜RFM分析

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㊲〜IPビジネス

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㊳~キャッシュマシン

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