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企業&消費者との継続的な共創で、次世代の“MADE IN JAPAN”ブランドを発信するMOON-X

企業&消費者との継続的な共創で、次世代の“MADE IN JAPAN”ブランドを発信するMOON-X

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元Facebook Japan代表を務めた長谷川晋氏が、退任後の2019年8月に設立したMOON-X株式会社(以下、MOON-X)。コーポレートミッションに「共創」を掲げ、創業からわずか2年足らずで20社以上と協業を進めている。Head of Corporate 小原修平氏に、創業の経緯と「共創」を掲げた理由、今後の展望について聞いた。

【プロフィール】

Head of Corporate 小原修平氏

大学在学中にスタートアップに入り、2年間新規事業、企画営業を行った後、フリーランスとして独立。2012年CROOZ株式会社へ入社し、責任者として新規のEC事業を立ち上げ、売却。その後、子会社のCROOZ SHOPLISTのECコンサルティングチームのマネージャーを経て、同社のコーポレート部門(経営企画、財務経理、法務、採用、人事、組織開発)を統括。2021年1月にMOON-X株式会社に入社し、コーポレート責任者に就任。

共創とテクノロジーの力で、日本のモノづくりの可能性を広げる


▲CRAFTXのフラッグシップ製品「クリスタルIPA No.003」とブランド初のレモンサワー「PULEMO(ピュレモ)」

──まずは改めて、御社が展開する事業について教えてください。

小原修平氏(以下、小原):MOON-Xは「『作り手』と『お客様』との”共創”を通して、新しいJAPAN BRANDSの発射台となる」ことをミッションに掲げ、2019年に創業しました。日本のモノづくりを体現するブランド群を、テクノロジーを活用して世界中に提供していくことで、たくさんの人々の生活を豊かにすることを目指しています。現在、総合アルコールブランド『CRAFTX』、男性用スキンケア『SKIN X』、女性用スキンケア『BITOKA』の3ブランドを展開し、これまでに20の企業とパートナーシップを結んでいます。

──小原さんご自身のご経歴は?

小原:前職はファッションECを展開するCROOZ SHOPLIST 株式会社にて、新規事業の立ち上げやECのコンサルティング、コーポレートの責任者を務めていました。MOON-Xには今年1月に入社し、Head of Corporateとして事業戦略や財務経理法務などのコーポレート全般を担当しています。

──MOON-Xを知ったきっかけは何だったのでしょうか。

小原:知人の紹介で代表の長谷川と知り合う機会があり、新たなチャレンジの構想を聞きました。「日本のものづくりを世界に広めたい」という熱い想いに共感し、ジョインすることを決めました。現在     は社員数も急速に増えており、体制の構築が急務です。

──御社では「ビール」「化粧品」のように、ジャンルの異なるプロダクトを展開されています。その理由は?

小原:「CRAFTX」の事業は、長谷川がアメリカで飲んだクラフトビールに感動したことがきっかけで立ち上げました。アメリカでは各地にマイクロブルワリーがあり、個性豊かなクラフトビールがたくさんあります。しかし製造量や流通ルートが限られているため、現地でしか飲めないものも数多くあります。これは日本のクラフトビールも同様です。「自分が味わった感動体験を、日本でもたくさんの人に届けたい」というパッション(情熱)から事業がスタートしました。

私たちは、新しいプロダクトを世に出すにあたり、「定量的」「定性的」2つの側面でマーケティングリサーチをします。定量的側面では、市場規模や成長率、広告の費用対効果、プレーヤー、マーケット情報などを調査しますが、同時に「担当者がブランドに対する熱いパッションを持っているか」といった定性的側面も重視しています。

パートナー企業の「モノづくりの技術」とユーザーの「共感」が共創の原動力に


▲Head of Corporateの小原修平氏。


──製造スキームを持たない御社では、どのように事業を形にしていくのでしょうか?

小原:製品開発や製造など技術面に関しては、パートナー企業の力をお借りしながらモノづくりをしています。共創のきっかけは外部の企業からお声がけをいただくことが多いのですが、「こういう製品     を作りたい」というこちら側の構想をもとに、一からパートナーを探す場合もあります。

「常陸野ネストビール」で知られる茨城県の木内酒造さんとは、ご紹介でお会いしました。近年、国内クラフトビール市場も拡大しており、自分たちの想いを伝えたところ意気投合し、オリジナルビールの開発が始まりました。議論と試作を重ね、2020年1月に最初のプロダクトでフラッグシップでもある「クリスタルIPA」を発売し、そののちわずか2年で足らずで10種類の季節限定製品をリリースしました。これは自社だけではなし得ないスピードだと思います。

──お互いの強みを活かして新しい価値を生み出せるのは、オープンイノベーションならではの強みです。

小原:代表の長谷川自身、P&G、楽天、Facebookに携わってきました。P&Gでは人々の暮らしを豊かにする製品づくり、楽天でECの可能性、FBでは情報発信のプラットフォームやコミュニティなどを目の当たりに、モノづくりとテクノロジーの力に大きな可能性を感じたところからスタートしています。

これらの可能性を掛け合わせ、従来の大量生産・大量消費ではなく、パートナー企業と消費者と持続的な関係を構築し、共創しながらよりよい製品づくりを目指したい想いから、現在のこのような共創モデルのビジネスを展開しています。

ユーザーの「共感」が共創のさらなる原動力に


▲男性の肌に徹底的に向き合い、次世代の男の肌をつくる男性用スキンケアブランド「SKIN X」。日本発のテクノロジーと天然素材を掛け合わせている。

──主な販売チャネルは?

小原:主にAmazonや楽天などのECモールで展開しています。ユーザーの購買動向や離脱のポイントなどを分析しながら、アンケートやZoomインタビューも実施します。クラフトビールだったら「日常のどんなシーンでその製品を楽しんでいるか」「どんなニーズがあるか」などリアルな声を収集・分析しながらプロダクトに落とし込んでいきます。

──パートナー企業のみならず、消費者との共創関係も目指すということですね。

小原:世の中にモノがあふれる時代になり、消費者の行動も変化しています。最近では購入に至るプロセスにおいて「共感」を大事にしている傾向がうかがえます。ユーザーが製品を手に取った時に、ストーリーや作り手の顔などから製品に対する共感が生まれ、購入に結びつきます。最近では「SDGs」などのキーワードもよく目にしますが、製品に対する親しみやすさや企業努力なども注目されていくと考えられます。

そのため、ユーザーの意見はパートナー企業とも共有し、次の製品づくりに落とし込みます。味はもちろん、ロゴやパッケージなども短期間でブラッシュアップし、フラッグシップアイテムの「クリスタルIPA」は20年1月の発売時から細かな調整も含めるとすでに5回以上レシピを変更しています。つまり、ユーザーの「共感」が共創のさらなる原動力になるということです。今後もブラッシュアップを繰り返すことでブランドを進化させ、よりたくさんの感動を生んでいきたいと考えています。


▲CRAFTX「クリスタルIPA No.002」。ユーザーの声を踏まえロゴやデザインも大幅にブラッシュアップしている。

──パートナー選びのポイントは?

小原:一つは、私たちのビジョンを説明して共感していただけること。もう一つは、一緒にブランドを作り上げることで両社がハッピーになれることです。いわゆる「OEM」の関係ではなく、一緒にブランドを作っていく関係性を目指しています。

パートナーにも自社の財務状況を公開。情報の垣根を無くし一体感を醸成する


──他社との共創を進めるにあたり、うまく進めるポイントはありますか?

小原:具体的な手法としては、ユーザーの意見をパートナーとこまめに共有することを意識しています。もう一つは双方の企業文化に親和性があることだと思います。オープンイノベーションも同様で、新しいチャレンジに慎重な会社ではイノベーションは生まれません。MOON-X自身も「共創」をミッションに活動していますが、私たちの想いに共感いただくことからスタートしているので、大きな壁にぶつかったことはまだないですね。

──反対に、つまずきやすいポイントがあれば教えてください。

小原:スタートアップ特有の「スピード感」にパートナーが付き合っていただけるかは重要だと思います。一般的なメーカーではわずか数ヶ月で製品を改良することはほとんどありません。ですが、これも製品をよりよくするためのステップだと理解いただくことで、うまく進められているように思います。こういったプロセスを「楽しい」と思ってもらえることも大切かもしれません。

──これまで企業間のコンフリクトがなかったのは、理念の共有が根底にあったからでしょうか。

小原:CRAFTXの「あなたが華やぐ、お酒の体験。」を届けたいという理念は私たちもパートナーも一致していますし、共感の概念があるとプロジェクトもスムーズに進めやすく、継続的にモノづくりできる関係性が広がっています。

──御社はビジョンの共有を前提にしながらも、ステークホルダーが同じ方向を向ける雰囲気づくりを徹底しているように感じます。具体的にどんなことをしていますか?

小原:私たちの会社では情報共有の垣根をとても低くしていて、会社のPL/BSをはじめ財務状況、ユーザーのレビューや製品の販売動向など、ほとんどの情報をパートナー企業や業務委託先に対してリアルタイムで公開しています。

理由としては、情報が分断されてしまうと共創に対する温度感が下がってしまいますし、現在の立ち位置やフェーズがわからないとストレスにつながるからです。これが一体感を醸成している要因だと思います。PRイベントも製品     を問わず一度に開催していて、各ビールブランドの社長が     同席してもらうこともありました。私たちにとってはブランドとモノづくりのパートナーが主役です。

──現在、日本のモノづくりの課題はどこにあるとお考えですか?

小原:日本には優れたプロダクトがたくさんある一方で、モノづくりに集中してきたためマーケティングやDXに手が回っていない課題があります。特に日本のEC化率は世界に比べてもまだ低水準です。パートナーシップを通してECやDXのソリューションも提供していきたいと考えています。

──最後に、今後の展望を教えてください。

小原:ビール、化粧品に次ぐ第3、第4の事業の柱を育てていくとともに、新しい提供手法にもチャレンジしていきたいと考えています。最近では新製品のレモンサワー『PULEMO』の開発時にクラウドファンディングプロジェクトを立ち上げ、目標の120%超の支援をいただくことができました。製品     がまだない段階で、ストーリーとメッセージから共感を生み出すプロセスは、まさにユーザーの声を聞いた製品づくりです。

クラウドファンディングは、マーケットニーズやブランドへの受容度合を把握でき、ブランド・製品のコンセプト段階で、消費者ニーズや反応がダイレクトにわかります。この経験をもとに、他社ブランドのEC支援も開始しています。今年からはクラウドファンディング「CAMPFIRE」と提携し、クラウドファンディングを展開するビジネスにブランディングの支援提供をスタートする予定です(※)。

私たちの強みである製造からマーケティング・物流・EC・ブランディングまで一気通貫した知見を提供することで、継続性のあるブランドづくりに寄与し、JAPAN BRANDSを創出・進化させていきたいと考えています。

※関連記事:MOON-X×CAMPFIRE | クラウドファンディングから始まる永続的ブランディングの共創に向け業務提携契約締結を発表

取材後記

決算書や製品の販売動向など、自社の情報をパートナー企業にも公開しているMOON-X。オープンイノベションでつまずきがちな「情報の非対称性」を解消することで、両社が対等な関係性になり、より強固なブランド構築に寄与している。企業文化は千差万別だからこそ、まずは自分たちを開示することから共創の第一歩が始まるのかもしれない。

(取材・文:星久美子、撮影:山﨑悠次)

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  • 眞田 幸剛

    眞田 幸剛

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