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松江市はなぜ30のIT企業を誘致できた?“Ruby”を核としたオープンイノベーション戦略とは

松江市はなぜ30のIT企業を誘致できた?“Ruby”を核としたオープンイノベーション戦略とは

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eiiconがお送りする、全国の自治体が官民で取り組んでいるオープンイノベーションに迫る新シリーズ。第3弾は島根県松江市です。

IT系ベンチャーに携わっている人にとって、松江市が「IT企業の街」であることはここ数年で一気に浸透しました。有望なITベンチャーが次々と松江市に拠点を移していますが、企業が松江市に感じている魅力とはどのようなものでしょうか。

そのきっかけの一因となったのは、プログラミング言語として人気の高い「Ruby(ルビー)」です。Rubyは松江市在住のまつもとゆきひろ氏が開発したプログラミング言語ですが、なぜRubyが現在の松江でオープンイノベーションの核となっているのか、実態に迫っていきます。

松江市の産官学が一体となる「Ruby City MATSUEプロジェクト」

ほとんどの地方都市が苦しむ課題として「人口減少」が挙げられます。松江市も例外ではなく人口減少が課題となっており、十数年前から企業誘致専門の部署が松江市役所内に立ち上がっています。

「企業誘致」と言うとメーカーなどの工場誘致を想起しますが、松江市がユニークなのはプログラミング言語「Ruby」を旗印として企業誘致を推進した点です。2017年時点の数字でIT企業が30社以上誘致されています。

「Ruby」は松江市在住のまつもとゆきひろ氏が開発したもので、世界中で親しまれているプログラミング言語です。このRubyを松江市の貴重な資産と捉えてIT企業の誘致にフォーカスした「Ruby City MATSUEプロジェクト」が立ち上がりました。 

参考ページ:Ruby City MATSUEプロジェクト

松江市在住のまつもとゆきひろ氏がプログラミング言語「Ruby」開発

「Ruby City MATSUEプロジェクト」の核となるのが、前述のプログラミング言語「Ruby」です。一般的に、プログラミング言語にはコミュニティが存在します。プログラミング言語のアップデート情報や、利用者の意見・要望の吸い上げ、利用者同士の交流などがコミュニティ内で行われているのです。

まつもとゆきひろ氏が開発したRubyにもコミュニティがあります。世界中で親しまれている言語なので、コミュニティ参加者は世界中に散らばっています。そんなRubyコミュニティの発信地として、松江市はRubyを利用しているIT企業を積極的に誘致しようとしているのです。

参考記事:”Rubyの街”・松江が、全国から約30のIT企業誘致に成功した理由とは?

「松江オープンソースラボ」を核とするオープンイノベーション推進

Rubyを利用する企業が松江市に集結することで、様々なシナジーが生まれています。それを象徴するのが「Ruby City MATSUEプロジェクト」からRubyの交流コミュニティ「松江オープンソースラボ」です。

松江オープンソースラボはIT企業や技術者、研究者、学生などの交流の場としてスタートしました。今では、定期的な勉強会を開催していた成果が認められ、平成 21 年からは、国内最大規模のRubyに関する国際会議「RubyWorld Conference」が開催されるまでにコミュニティが成長しました。

さらに、松江オープンソースラボに集まった技術力を結集させたビジネスプランコンテストも開催されており、2019年度に第11回を数えます。松江オープンソースラボで公開されているオープンソースを活用したビジネスを応募するもので、様々な分野から参加者が集まっているため、松江市のオープンイノベーションを加速させています。

参考資料:松江市地域再生計画

参考ページ:松江市オープンソース活用ビジネスプランコンテスト

松江市のオープンイノベーション概要

松江市はオープンイノベーションプラットフォームeiiconに登録し、オープンイノベーション推進に向けて提供リソースなどの情報を公開しています。

Rubyコミュニティを軸にしながら、総務省が推進する「お試しサテライトオフィスモデル事業」にも参画していることも松江市の特徴です。詳しくは、eiiconの松江市のページから確認できます。

参考ページ:松江市│eiicon

島根県でのIT活性化の取り組み

松江市に限らず、島根県はIT先進地域としてのブランディングを確立しつつあります。IT企業やITの人材が島根に拠点を作りたくなるきっかけづくりを、様々な角度から提供しています。

島根×ITにフォーカスした転職サイト「IT WORKS@島根」

「IT WORKS@島根」はその名の通り、島根県でのIT関連の仕事に限定した転職支援サイトです。島根県が推進する事業ですが、運営を委託されているのは松江市にオフィスを持つガリレオスコープであることも象徴的ではないでしょうか。

単純に島根でのIT関連の仕事が探せるだけでなく、企業インタビューや転職者インタビューといったコンテンツも豊富です。実際に拠点を変えて仕事をしている人の生の声はリアリティがあります。

参考ページ:IT WORKS@島根

IT分野のオープンイノベーションを加速する「しまねソフト研究開発センター」

IT技術で島根のオープンイノベーションを加速する「しまねソフト研究開発センター」という施設があります。国内外で売れる商品・サービスを創出するための技術的な課題を解決するために、公益財団法人 しまね産業振興財団が平成27年に立ち上げました。

島根県内に研究拠点をもつ企業が利用でき、県の支援を受けながら、オープンイノベーションを軸にした新産業の創出を目指しています。

オープンソースの文化が根強い島根らしく、研究成果は広く公開して、諸機関、技術者・研究者との連携を積極的に進めています。

参考ページ:しまねソフト研究開発センター

参考ページ:公益財団法人 しまね産業振興財団

オープンソースの精神が資産に

ご紹介したように、島根県と松江市はITに振り切ってオープンイノベーションを推進してます。プログラミングの世界ではソースコードは最重要な資産となりますが、島根ではそれらのソースコードを公開する「オープンソース」が盛んです。

重要なソースコードを公開してしまうのはリスクになる懸念もありますが、Googleなども多くのプロジェクトをオープンソースにしています。なぜなら、公開したソースコードをベースにして、第三者のフィードバックを受けれたり、協業のオファーに発展するメリットがあるからです。

ITを軸に発展を続ける島根にはオープンイノベーションを引き起こす要因となるオープンソースの精神が根付いているようです。

さて、地方のオープンイノベーションを紹介する連載「CLOSE UP OI」で次に紹介する地域は茨城県の「つくば市」です。


(eiicon編集部 久野太一)

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シリーズ

CLOSEUP OI ー地方のオープンイノベーション動向ー

全国の自治体が官民で取り組んでいるオープンイノベーションに迫るシリーズ企画。