コンソーシアムを形成し、スタートアップを支援。イノベーション創出のために茨城県が取り組む施策とは?
オープンイノベーションを実践する地域の取り組みを紹介する企画「CLOSEUP OI」。今回は、東京の北東100km程度に位置し、約300万人の人口を有する茨城県を取り上げます。
日本最大の研究学園都市であるつくば市には、国の研究機関の1/3が集積しており、国内随一の研究学園都市を形成。また、日立製作所の創業の地であり、同社の関連施設が集積する日立市や、石油化学など素材産業が集積する鹿島臨海工業地帯(鹿島コンビナート)などを有する全国有数の産業集積地である茨城県。
――このような産業の特色を持つ同県では、どのようにオープンイノベーションに取り組んでいるのでしょうか?茨城県が打ち出している『第2次茨城県総合計画~「新しい茨城」への挑戦~』を紐解きながら、オープンイノベーションやスタートアップ支援の取り組みを解説していきます。
茨城県が取り組む4つのチャレンジ
人口減少・超高齢化をはじめ、新たな感染症の世界的な拡大、気候変動に伴う災害の激甚化など、予測困難な「非連続の時代」を迎えている中、「活力があり、県民が日本一幸せな県」の実現に取り組んでいくため、茨城県では令和4年度(2022年度)からの県政運営の基本方針となる『第2次茨城県総合計画~「新しい茨城」への挑戦~』を策定しています。
『第2次茨城県総合計画』では、「Ⅰ.新しい豊かさ」、「Ⅱ.新しい安心安全」、「Ⅲ.新しい人財育成」、「Ⅳ.新しい夢・希望」という4つのチャレンジを柱とした政策・施策を展開。この中で、”成長分野等の企業の誘致”や”先端技術を取り入れた新産業の育成と新しい産業集積づくり”、”世界に挑戦するベンチャー企業の創出(茨城シリコンバレー構想)”に取り組むことを明示しており、イノベーションの創出やそれを担うスタートアップ支援に注力をしています。
▲『第2次茨城県総合計画~「新しい茨城」への挑戦~』(画像出典:茨城県ホームページ)
では、茨城県内で推進されている施策は、具体的にどのようなものなのでしょうか。以下に紹介していきます。
コンソーシアムを形成し、スタートアップを支援
イノベーション創出やオープンイノベーションを推進するために、重要な役割を担うスタートアップ。このようなスタートアップを支援するために様々な取り組みが実施されています。
その一つが、「つくばスタートアップ・エコシステム・コンソーシアム」の設立。これは、つくば市、茨城県、大学、研究機関、民間企業等が協力し、つくばを中心としたスタートアップ・エコシステムを形成するために立ち上がったコンソーシアムです。ディープテック・スタートアップの世界的拠点都市の実現に向けて活動しており、具体的には以下4点に取り組んでいます。
・つくば市におけるスタートアップ・エコシステムの形成促進に関すること
・産学官金の連携によるスタートアップの創出支援及び成長促進に関すること
・スタートアップへの実証フィールドの提供及び社会実装の推進に関すること
・つくば市外からの人材・資金・企業等の獲得に関すること
また、2020年7月には、つくば市が参画する「スタートアップ・エコシステム 東京コンソーシアム」は、国の「世界に伍するスタートアップ・エコシステム拠点形成戦略」における「グローバル拠点都市」に選定されています。(参画自治体:東京都、茨城県、つくば市、川崎市、横浜市、和光市等)
さらに茨城県では、グローバル市場での資金調達や海外展開を検討しているベンチャー企業を支援するため、アメリカニューヨークを拠点に活動する世界的アクセラレーター「Entrepreneurs Roundtable Accelerator(ERA)」(※)のメンターによるアクセラレーションプログラムを実施。世界トップレベルのメンターによる1on1ミーティングやワークショップを経て、最終日には海外投資家等に対するピッチイベントを開催しています。
※主要業種の300以上の専門投資家、製品スペシャリスト、マーケティング担当者、顧客獲得ストラテジストなど、強力なメンター・ネットワークを有し、ニューヨークを拠点に活動するアクセラレーター。
約8,000名が参加したプログラム「TSUKUBA CONNECT」
スタートアップの世界的拠点形成に向けた交流プログラム「TSUKUBA CONNECT」も特徴的だ。これは、国内外の起業家や投資家、研究者など、様々な分野の方が集い、新事業展開や新たな投資呼び込みなどを目指す交流プログラム。2020年8月からこれまで計 54 回開催し、延べ7,841名(※)以上が参加している。(2023年9月末時点)
個別マッチング件数は217件、都内等で活動するベンチャーキャピタルが、つくば市内に拠点を設置、プログラムに参加した大学生が、新たにベンチャー企業を設立といった成果を生み出している。
※約150名/回、内訳:起業家16%、研究者・学生19%、大企業16%、投資家3%
筑波大学で推進されるオープンイノベーションの取り組み
最後に、茨城県内の大学におけるオープンイノベーションの取り組みについて紹介します。
筑波大学に設置されている「オープンイノベーション国際戦略機構」は、同大学の研究能力を企業のニーズにマッチングさせることによって産学連携を進め、イノベーションを創出し、社会実装することを目指しています。それを実現させるために、分野別に経験のある人材(クリエイティブマネージャー)を配置。「①組織対組織の大型の共同研究の立ち上げ」、「②オープンイノベーションの国際展開」、「③ベンチャーエコシステムの強化」という3つの活動に継続的に取り組んでいます。
現在は、以下6つの研究分野においてプロジェクトを推進。一例として、「医療・介護の質の評価PJ」では、筑波大学ヘルスサービス開発研究センターと、医療プラットフォームを展開するスタートアップ・ファストドクターとの複数年に渡る大型共同研究が進められています。
・〈農業分野〉 アグリフードピアPJ
・〈ライフサイエンス分野〉 精密医療事業化PJ
・〈バイオテクノロジー分野〉 健康長寿機能性環境研究PJ
・〈サービス分野〉 医療・介護の質の評価PJ
・〈環境エネルギー分野〉 藻類バイオエネルギーPJ
・〈スマートシティ分野〉 つくば未来都市PJ
・〈環境エネルギー分野〉 未来環境材料PJ
※参考ページ:筑波大学 オープンイノベーション国際戦略機構
(TOMORUBA編集部)