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”Rubyの街”・松江が、全国から約30のIT企業誘致に成功した理由とは?

”Rubyの街”・松江が、全国から約30のIT企業誘致に成功した理由とは?

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島根県松江市。日本海に面した人口約20万人の都市であり、国宝である松江城を擁する歴史ある城下町でもある。長い歴史がある一方で、実は世界的に知られるプログラミング言語「Ruby(ルビー)」発祥の街としても知られている。「Ruby」をキーワードに企業誘致を行う松江市には大手IT企業のサテライトオフィスが設置されたりと、ITによる産業活性化が徐々に具現化している。松江市は、さらにどのような戦略で企業誘致や産業振興を進めていくのか。島根県東京事務所・土江氏、松江市定住企業立地推進課・玉木氏、両氏に話をうかがった。

【▲写真左】島根県東京事務所 産業振興部 主任 土江健二氏

島根県出雲市出身。地元金融機関から松江市役所に転職。現在は、島根県の東京事務所に籍を置き、都内を中心とした企業に対し、島根県への誘致活動等を行う。

【▲写真右】松江市産業経済部 定住企業立地推進課 企業立地係 係長 玉木一男氏

島根県松江市出身。県外からの企業誘致を推進する「定住企業立地推進課」に所属し、各企業が働きやすい環境づくりや制度づくりを手がけている。

「Ruby」を旗印に、企業誘致を実践。

――松江市は、総務省から「お試しサテライトオフィス」モデル事業(※)の採択を受けました。まず、松江市がこの事業を推進しようと考えた背景を教えてください。
※地方での民間企業等のサテライトオフィス開設を進めることにより、地方で仕事や新しい働き方を生み出すことを目指すというもの。

玉木:背景としてあるのは、松江市が抱える「人口減少」という社会課題です。この社会課題に大きな危機感を抱く中で、およそ10年前に企業誘致専門の部署が松江市役所内に立ち上がりました。一般的に、企業誘致というと「メーカーなどの工場誘致」が想起されますが、松江市にはプログラミング言語「Ruby」という大変貴重な資産があります。

そこで、松江市ではこの「Ruby」を旗印にIT企業の誘致を実践してきました。そうした企業誘致戦略の一環として、今回、「お試しサテライトオフィス」モデル事業に取り組むことになったのです。

——なるほど。

玉木:「お試しサテライトオフィス」モデル事業では、3種類あるオフィスの提供はもちろん、お試し勤務に参加される方の松江市への交通費(往復)、オフィス利用料、光熱水道費、オフィスのインターネット利用料、オフィス家具類、Web会議用機器、市内移動用車両(リース・レンタル)も全て松江市が負担しています。

土江:ちなみに、「Ruby」というのは、松江市在住の「まつもとゆきひろ」さんが開発したプログラミング言語です。まつもとさんは松江市名誉市民にもなっています。松江市の駅前にある「松江オープンソースラボ」などで開催される勉強会にもふらっと顔を出されることもあったりして、IT業界のスーパースターであるまつもとさんと身近に接することができるチャンスもあるかもしれません。

「働き方改革」の影響もあり、引き合いは強い。

——現状の企業誘致活動はどのような状況でしょうか?

土江:現在までに30社ほどのIT企業の誘致が実現しています。アプリ開発から金融系のシステム開発など、手がけるサービスはさまざまですが、共有しているのはやはり「Ruby」です。「Ruby」でサービスを開発している企業が「Ruby」で受けた恩を返すためにも、まつもとさんがいる松江でサービスを拡充していきたいと来られるケースが多くありますね。

——やはり、「Ruby」の効果は大きいんですね。2017年4月にスタートした「お試しサテライトオフィスモデル事業」の現状はいかがでしょうか?

玉木:お試しサテライトオフィスは、4月に2社、5月に2社と、東京の大手IT企業やスタートアップに利用していただきました。羽田から松江市内まではおよそ3時間。「島根=遠い」というイメージを持たれる方もいらっしゃいますが、想像以上に移動時間は少ないと感じていただいたようです。さらに、ネットも速くて、食べるものも美味しく、景観も良いという感想をいただきました。

土江:私は現在、島根県の東京事務所に在籍しており、東京を中心とした各企業へと誘致活動を行っていますが、昨今の「働き方改革」の影響もあり、引き合いは強いと感じます。私自身、今は単身赴任で東京に来ていますが、やはり東京は通勤時に感じるストレスは大きいですね…(笑)。オフィスに辿り着くまでにかなり疲労感を感じることもしばしばあります。しかし、松江ではまず満員電車ということはありませんし、通勤時間は「自分の時間」としてリラックスして過ごすことができます。

▲「秘密結社 鷹の爪」の作者FROGMANが島根に住んでいたこともあり、「Ruby City MATUE」のステッカーなどのノベルティに”吉田くん”が採用されている。

地元企業とのコラボレーションに期待。

——最後になりますが、どのような企業に来てほしいでしょうか?

玉木:「Ruby」を軸にサービスを展開している企業はもちろん、何か独自の「強み」を持った企業に来ていただき、ぜひ松江に根付いてもらいたいと思います。そうすることで、地元の学生たちが地元で働きたいと思ってもらったり、東京から松江に戻ってきたいという魅力ある街づくりをしていきたいと思います。

土江:AI、ビッグデータ、IoTなど、最先端の技術を持った企業に来ていただき、松江の企業とコラボレーションしてほしいと思います。実際に、地元の酒蔵と協業して、湿度管理などができる「酒造りのIoTサービス」を開発したIT企業も存在しています。地元企業と共に、地域社会の課題解決となるような新しいサービスを生み出してほしいですね。


<松江市が注目する地場企業>

●馬潟(まかた)工業有限会社 https://www.makatakg.com/

…普通鋼、特殊鋼(耐熱鋼、超耐熱鋼等)の機械加工・旋盤加工・フライス加工・平面研削加工、特殊鋼の黒皮素材からの荒削りを手がける

●株式会社コダマ http://k-kodama.co.jp/

…鋳造、プラントエンジニアリング、溶射の各分野でものづくりを手がける

●菱農エンジニアリング株式会社 http://www.reng.co.jp/

…農業関連商品を中心に、各種機能の開発・設計・制作を行うエンジニアリング企業

(構成・取材・文:眞田幸剛、撮影:加藤武俊)

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