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人口減少時代の「スマートシュリンク」という考え方。“賢い縮小”がつくる新しいまちのかたちとは?

人口減少時代の「スマートシュリンク」という考え方。“賢い縮小”がつくる新しいまちのかたちとは?

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新規事業やオープンイノベーションのプレイヤーや、それらを実践・検討する企業の経営者はTOMORUBAの主な読者層ですが、こうした人々は常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。

今回のテーマは、人口減少社会における都市・地域戦略「スマートシュリンク」です。

スマートシュリンクとは、人口減少社会の“現実”を前提とした発想

日本の人口は2008年をピークに減少局面へ入りました。特に地方では、過疎化や高齢化、税収減少が重なり、これまでの「拡大」や「成長」を前提とした都市運営が難しくなっています。

そうした現実を前提に、「いかに成長を取り戻すか」ではなく、「いかに賢く縮むか」という新しい発想が求められています。この考え方を象徴するキーワードがスマートシュリンク(Smart Shrink)です。

スマートシュリンクとは、人口減少を前提に、公共サービスや都市機能を賢く集約・効率化し、限られた財源の中でも住民の生活の質(QOL)を維持・向上させる都市・地域戦略です。

この概念を日本で体系的に提唱したのは、大正大学の小峰隆夫氏です。同氏は「人口減少を否定的に捉えるのではなく、縮小を前提としたまちの再設計を進めるべき」と訴え、単なる衰退管理ではなく“持続可能な縮小”を掲げています。

参照ページ:スマートシュリンクへの道|大正大学 地域構想研究所

こうした理念はすでに行政にも浸透しています。国土交通省の都市政策検討会では、「人口減少や高齢化に対応したコミュニティ・生活機能の維持(スマートシュリンク)」を都市再生・市街地整備の方向性のひとつとして明記しています。

スマートシュリンクが必要になる3つの社会的背景

前述の小峰氏がスマートシュリンクを主張する根拠は、次の3点に整理されます 。

1点目のポイントは、人口減少は避けがたい現実であることです。出生率は長期的に下がり続けています。仮に「すべての人が結婚し、望む数の子どもを持つ」理想的な状況を想定しても、現在の希望出生率は1.6程度にとどまるとされているのです。これは人口を維持するために必要な置き換え水準である出生率2.07には遠く及ばず、「人口減少を止める」という目標自体が非現実的になりつつあるのです。

2つ目に、少子化対策への過度な資源投入は慎重であるべきという論点があります。一見すると出生率の上昇を図る施策は重要に見えますが、現実には自治体間の“子育て世帯の奪い合い”に陥っているケースも少なくありません。優遇策で一時的に人口が増えても、周辺地域では逆に減少してしまいます。小峰氏は「限られた政策資源を『拡大のため』に投じるよりも、『縮小を前提に質を高める方向』へと再配分すべき」と指摘します。

3つ目のポイントは、人口が減っても人々のウェル・ビーイング(幸福度)を高めることは可能だということです。実際、日本全体の人口は2010年以降減少していますが、一人当たり所得や県民所得は上昇を続けています。つまり、「規模の縮小=幸福度の低下」ではないということです。小峰氏は「経済や生活の質を支える仕組みを再構築すれば、縮小下でも豊かに暮らせる」と述べています。

参照ページ:スマートシュリンク論の変遷|大正大学 地域構想研究所

スマートシュリンク事例① 高知県:「4Sプロジェクト」で“賢く縮む”県政へ

高知県では、全国に先駆けて人口減少社会に適応する「4Sプロジェクト(Smart Shrink for Sustainable Society)」を推進しています 。

このプロジェクトは、人口減少を前提とした持続可能な社会づくりを目的とし、4つのSを指針としています。

1.Scale(スケール)──複数事業体を束ね、スケールメリットを追求

2.Stretch(伸ばす)──真に必要なサービスを充実

3.Shrink(縮める)──重複サービスを効率化し、賢く縮小

4.Shift(転換)──前例にとらわれず新たな挑戦へ

具体的には、消防本部を全県1本部に統合し、消火・救助体制を強化する一方で、管理部門をスリム化。

また、出生数や医師数の減少を踏まえ、周産期医療の再編や遠隔教育の拡充、路線バスの再構築など、複数分野で「賢い縮小」を進めています。

高知県は「全国に先駆けて人口減少が進む県だからこそ、縮小への適応策に挑む」と明言し、縮小をネガティブではなく“未来への再設計”と捉えています。

参照ページ:人口減少社会に適応し「賢く縮む」4Sプロジェクトの推進について | 高知県

スマートシュリンク事例② 北海道松前町:「スマート・シュリンクSXビジョン」で地域を再生

北海道松前町では、「スマート・シュリンクSXビジョン」を策定し、官民連携による包括的まちづくりを展開しています 。

このビジョンでは、「賢く縮む」まちづくりを軸に、デジタル変革(DX)と持続可能性(SX)を融合させ、地域産業と生活基盤を再構築しています。

主な取り組みは次の通りです。

・「松前SX推進共創会議」を設置し、行政・企業・教育機関が一体となって地域課題に取り組む

・観光、漁業、畜産の再構築により、再エネを活用した植物工場やブルーカーボン事業を推進

・風力発電による地域エネルギー会社の設立や、水素活用の検討を進め、地産地消エネルギーを実現

・地域おこし協力隊の受け入れやSDGs教育の実施により、次世代人材を育成

これらは「縮小を恐れず、より豊かに生きるための転換」として位置づけられ、地方創生の新たなモデルケースとして注目を集めています。

参照ページ:松前町スマート・シュリンクSXビジョン

編集後記

スマートシュリンクの本質は「衰退」ではなく「再設計」です。拡大の時代が終わった今こそ、私たちは“縮む勇気”を持たなければならないのかもしれません。人口減少という現実を前提に、限られた資源でどう暮らしを豊かにできるかを考えること。そこに、次の日本の成長戦略が隠れていそうです。

(TOMORUBA編集部 久野太一)

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  • 眞田幸剛

    眞田幸剛

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