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いま「ソロ経済」が熱い 一人旅同士のマッチングにペットシェアまで 世界の画期的な事業モデル

いま「ソロ経済」が熱い 一人旅同士のマッチングにペットシェアまで 世界の画期的な事業モデル

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「2026年以降の7つの文化トレンド」の一つに、Forbesが「ソロ経済」をあげた。単身世帯は、世界で最も急速に増加している世帯形式であり、米国では成人の半数以上が未婚。Z世代の3人に1人は生涯未婚と予測されている。中国でも、2025年の出生率(人口1000人当たりの出生数)が5.63と、統計開始以降で最低を記録。「非婚主義」を支持する高学歴の女性が増加しているという。そんななか、“ソロ”をコアターゲットにしたビジネスモデルが支持を集めている。

世界のスタートアップが取り組むイノベーションの"タネ"を紹介する連載企画【Global Innovation Seeds】第74弾は、急拡大する「ソロ経済」に注目。画期的な事業モデルで反響を得ている3社のスタートアップを紹介したい。

サムネイル写真:Photo by Unsplash Ibrahim Rifath

一人旅の旅行者をマッチング イギリス「Flash Pack

2014年にイギリス・ロンドンで創業した「Flash Pack(フラッシュパック)」は、一人旅の旅行者同士をマッチングさせることで、“コミュニティ”の構築を支援している。同社の使命は、志を同じくする旅行者たちの間にすばらしいグループの結束を生み出すこと。結果として、15ヵ国以上で15万人以上のコミュニティを築き上げてきたという。

▲一人旅同士をマッチングさせ、コミュニティを形成する(フラッシュパックの公式ホームページより)

フラッシュパックで販売するのは、「ひとりでは実現できない体験」で構成された各国のツアーだ。期間は約4〜15日間と比較的長く、売れ筋を見ると「南アフリカ」「ギリシャ」「日本」「エジプト」「ペルー」などが並び、価格帯は20万円台〜。50万円を超える高額商品も多く、15日間で約342万の南極ツアーも販売されている。

▲訪日外国人にも人気の広島県・宮島の風景(提供:Unsplash Nicki Eliza Schinow

例えば、奈良、京都、広島、箱根、東京をめぐる12日間の日本のツアーは、5,365ポンド(約114万円)〜とかなり高額だ。料金には、飛行機を除く新幹線やバスなどの移動と相撲鑑賞に寿司・ラーメン作り、茶道、会席料理などの充実した体験、宿泊料と一部の食事が含まれる。宿泊は厳選された3〜4つ星ホテルや伝統的な旅館で、最大参加者は16名だ。

フラッシュパックでは、参加者同士のコミュニティを通じて、旅行前から交流を深められる。利用手順は以下のとおりだ。

1、ツアーを見つける

旅行検索機能などを利用して、理想の日程、目的地、旅行スタイル、予算に合ったツアーを選択する。

2、席を確保する

予約・支払いを行い、座席を確保する。年齢層は「30~49歳」「45~59歳」の2つから選択可能。部屋は、「相部屋」か「シングルルーム」を選ぶ。

3、グループとのミーティング

旅行まで4週間のタイミングになると、参加者と交流するためのWhatsAppグループに招待される。出発前には、グループのまとめ役として、知識豊富な地元の「パックリーダー」が加わる。

同社によれば、90%は1人で参加し、80%は参加者と友だちになるという。また、75%が「ルームシェア」を選択しているとのこと。口コミによれば、利用者は女性のほうが多いようだ。

▲フラッシュパックは、旅行好きな夫婦によって設立された(フラッシュパックの公式ホームページより)

フラッシュパックは、旅行好きな夫婦によって2014年に設立された。ターゲットはアクティブな旅を好む30〜40代で、「同年代の人たちと刺激的な冒険旅行を楽しみつつ、ブティックホテルに泊まりたい」という創業者の思想が反映されている。20代向けの型にはまった低価格ツアーでも、50代以上に向けた至れり尽くせりの高額ツアーでもなく、旅行市場の空白を埋める立ち位置を狙っている。

実は同社には、コロナ禍の渡航制限により経営破綻し、そこから投資を受けて復活した経緯がある。2023年10月の報道では、売上高は2,000万ポンド(約42億円)を記録し、新たに580万ユーロ(約10億円)の資金調達に成功した。特に米国での成長が顕著で、売上の60%を米国が占めている。同社は、2030年までに100万人の新たな友情を育むことを目標に掲げている。

▲世界の一人旅市場は右肩上がりに増加すると予測されている(出典:Grand View Research

世界の一人旅の市場規模を見てみると、 2025年には5,497億8,000万ドル(約87兆円)と評価され、2033年には1兆6,242億3,000万ドル(約259兆円)に達すると予測されている。欧州や米国で一人旅の需要が急拡大しており、柔軟性やパーソナライズされた体験が好まれているという。セルフケアやメンタルヘルスを優先し、あえて一人旅を選ぶ女性も多いそうだ。

世界50都市で展開する単身向けコリビング ドイツ「Habyt

2017年にドイツ・ベルリンで創業した「Habyt(ハビット)」は、米国・欧州・アジアの世界50都市で約3万戸の単身者向けのコリビング(共有居住空間)を提供している。最大の特徴は、「家具付き×中長期滞在」だ。単身のデジタルノマドなど、身軽にさまざまな土地に移り住みたい人々のニーズを満たすサービスとして人気を得ているという。

▲「家具付き×中長期滞在」の利便性のいい住居を提供(出典:ハビットのプレスリリース)

同社が提供する住まいは、家具付きのアパートの一室を個室として利用し、キッチン、リビングルーム、バスルームなどの共有スペースを共有する住宅形態が中心だ。物件によってはジムやプールなども使える。プライベートは維持しつつ、共有スペースではさまざまなバックグラウンドを持つ人々との出会いを提供している。

賃料には、清掃サービスや光熱費なども含まれるオールインクルーシブを採用。多くの物件で短期、または柔軟な契約期間が可能だ。デジタルファーストのアプローチも特徴で、各種手続きはオンライン上で完結する。入居後も住まいの不具合等に関する連絡、衣服のクリーニングや部屋の清掃といった生活サービスをワンクリックでオーダーでき、賃料の支払いはクレジットカードの利用が可能だという。

同社がターゲットにするのは若年層の単身者で、報道によれば、ハビットの顧客の70%は留学や仕事のために移住する外国人、30%は地元住民だという。

▲戦略的なM&Aや各社との協業によって、ハビットはスピーディーに成長(出典:ハビットのプレスリリース)

ハビットが短期間で成長した背景には、戦略的なM&Aがある。ヨーロッパ内での基盤を固めた後、2022年にはアジア大手の「Hmlet(ハムレット)」を、2023年には北米大手の「Common Living(コモンリビング)」を買収。ただ、コモンリビングは厳しい財務状況を乗り切ることができず、2024年6月に「破産手続きのために事業を停止した」と発表された。

この買収により、ハビットは日本進出も実現している。買収した一社であるハムレットは、2019年に三菱地所と合弁会社「Hmlet Japan(ハムレット ジャパン)」を創業しており、東京と大阪で1,500以上の部屋を運営している。

▲ハムレット ジャパンで扱っている「Hmlet Premium 麻布台」(出典:ハムレット ジャパンのプレスリリース)

ハムレット ジャパンでも、手続きの自動化や人々との交流、駅近のモダンアパートメント、最短1ヵ月〜の滞在といったHabytと同等のサービスを展開。ハビットとの相互送客やブランド利用などグローバルプラットフォームとの連携をより深めていくとしている。

捕捉情報として、三菱地所ではギリシャ発のプロップテック・Blueground(ブルーグラウンド)ブランドとも2024年に提携した。現在、米国・ニューヨークに本社を構えるブルーグラウンドは、世界約100都市で家具付き・月単位契約の高級賃貸を4万戸以上扱っており、出張者やデジタルノマドに好評なのだという。

三菱地所では、子会社としてFL Japan Holdingsを設立し、既存のハムレット ジャパン、ならびに新設されたブルーグラウンド・ジャパンの100%株式をそれぞれ保有し、事業を展開している。同社のプレスリリースでは、「今後は、グループ3社にて相互に連携し、本事業の効率的な運営を通じて2030年には10,000室以上のフレキシブルな住まい方を日本全国に広げていく予定」と展望が示されている。

ハビットの最新展開としては、2025年9月に新ブランド「Atipico」を2025年9月に発表している。多様化する旅行者をターゲットにする同ブランドでは、都市中心部に近い中規模ホテルを短期、または中期で貸し出すという。利便性と手頃な価格を備え、さまざまな客室タイプを用意、コワーキングなどの共有スペースも取り入れる。まずはスペインで開業し、今後数年間で複数の市場への展開を計画しているそうだ。

犬の「飼い主」と「借り手」をマッチング イギリス「BorrowMyDoggy

2012年にイギリス・ロンドンで創業した「BorrowMyDoggy」は、犬の飼い主と、犬の世話を喜んで引き受けてくれる地元の人をマッチングするプラットフォームを提供している。

▲犬の「飼い主」と世話を体験したい「借り手」をマッチングさせる(BorrowMyDoggyの公式ホームページより)

創業のきっかけは、創業者のRikke Rosenlund氏が近所の犬を預かったことだった。飼い主の代わりに公園で散歩したり、ガーデンパーティーに一緒に参加したりした彼女は、多くの犬の飼い主が支援を必要としていること、そして、犬が好きだからという理由だけで無料で世話をしたいと思っている人が大勢いることに気づいたという。

イギリスでは、850万匹以上の犬が飼われている。転職や出産、引っ越しなど生活の変化によって支援が必要になる人もいる。また、世話を引き受ける側も「飼うことは難しいけれど、犬との時間を過ごしたい」「実際に犬を飼う前に、さまざまな犬種の世話を楽してみたい」という人もいるとして、開業を決めたそうだ。

▲犬の「飼い主」と「借り手」どちらのニーズも満たせるとして創業(出典:Pixabay Szabolcs Molnar

同プラットフォームを利用する場合、犬の「飼い主」と「お世話をしたい人」がそれぞれ有料会員になる必要がある。価格は、飼い主が年間48.99ポンド(約1万円)、借り手が同12.99ポンド(約3,000円)だ。有料会員向けには、「保険」や「24時間年中無休の獣医相談窓口」も提供している。

借り手側にも利用料を貸している理由について、「コミュニティの安全性と信頼性を最大限に高めるための安全チェック費用をまかなうため」と同社は回答している。犬を借りること自体に料金がかかるのではなく、犬好きの安全なコミュニティに参加するための料金なのだという。また、借り手が飼い主に料金を請求することは明確に禁じている。

飼い主にとっては、ペットホテルよりも手頃に預けられること、借り手にとっては、手軽に犬と触れ合えることや世話の体験ができることが最大のメリットとなる。近所に済む信頼できる人との出会いにもつながり、まさに単身世帯が増加している現代にマッチするサービスかもしれない。

▲BorrowMyDoggyを創業したRikke Rosenlund氏のLinkedInページ(出典:LinkedIn

創業者は、2025年2月のLinkedInの投稿にこうつづっている。「創業当初は、ロンドンの駅前に立ち、チラシを配り、一人ひとりに声をかけながら必死に登録を呼びかける日々を送っていました。ほとんどの人は素通りしていきましたが、それでも私たちは、その場に立ち続けました。時は流れ、BorrowMyDoggyの登録会員数は100万人を越えました。特に、起業の初期段階にいるみなさんへのメッセージとして、実践しながら学び、自分が信じていることをあきらめないでほしい」

泥臭い活動を経て、BorrowMyDoggyは、今やイギリス最大級のペット・コミュニティとして確固たる地位を築いているという。

編集後記

国内でも「少子化」が叫ばれているが、欧米などの先進諸国でも同様の傾向だ。高福祉と言われるフランスや北欧でも、出生率が低下している。そんななか、人々のニーズを満たす“ソロ経済”が拡大しているのはうなづける。紹介したいずれの事業も、単身ならではの気軽さは維持しつつ、人との出会いや新たな体験を提供することで人気を得ている。そのほか、デンマークでは、プライベートな生活空間と共有スペースを融合させた高齢者向けの「コ・ハウジング」も広がっているという。ソロ経済は、ますます発展していきそうだ。

(取材・文:小林香織) 

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