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脱炭素を競争力に変える「GXリーグ」とは?国際ビジネスで勝てる企業群で推進するルールメイキング

脱炭素を競争力に変える「GXリーグ」とは?国際ビジネスで勝てる企業群で推進するルールメイキング

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新規事業やオープンイノベーションのプレイヤーや、それらを実践・検討する企業の経営者はTOMORUBAの主な読者層ですが、こうした人々は常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。

今回取り上げるのは「GXリーグ」です。カーボンニュートラルの実現に向けて、企業が業界や業種の枠を超えて連携し、経済社会全体の変革(=グリーントランスフォーメーション:GX)を牽引するための枠組みとして注目されています。

そもそもGXとは何か?

GXリーグについて解説する前に、そもそもGX(グリーントランスフォーメーション)とは何なのでしょうか。GXとは、化石燃料への依存を減らし、再生可能エネルギーや水素などのクリーンエネルギーを活用することで、温室効果ガスの排出を削減し、経済と環境の両立を目指す構造変革を指します。これは単なる環境対策ではなく、日本が2050年に掲げるカーボンニュートラルという国際公約を達成するための国家的取り組みであり、産業競争力を強化するための経済政策でもあります。

世界中がGXを成長戦略の軸とする中で、日本企業が持つ脱炭素技術や環境投資力を活かし、国際ルールの形成にも積極的に関与することが求められています。GXは政府だけでなく、企業、生活者、地域社会など、あらゆる主体が参画する必要がある取り組みなのです。

参照記事:「GX基本方針」で示されたふたつの目標とは。「GX推進法」「GX推進戦略」との違いなど解説 - TOMORUBA (トモルバ)

参照ページ:知っておきたい経済の基礎知識~GXって何?

GXリーグとは実践・共創・対話・交流からなる官民連携の枠組み

GXリーグは、GXに率先して取り組む企業が参加し、政府とともに脱炭素経済への移行を推進するための官民連携の枠組みです。2024年3月時点で参画企業は747社となっており、日本のCO₂排出量の4割以上を占める企業群によって構成されています。GXリーグの主要な活動は以下の4つの柱からなります。

参照ページ:参画企業一覧 | GXリーグ公式WEBサイト

GXリーグの主要活動(4つの柱)

1.自主的な排出量取引(実践)

参画企業が自主的に温室効果ガス(GHG)の排出枠を設定・取引し合うカーボンクレジット市場を構築。企業間での排出量取引を通じて、削減努力を経済価値に変換し、投資促進を図る。

2.市場創造のためのルール形成(共創)

カーボンニュートラルを前提とする未来市場(製品・サービス・金融など)を想定し、業界横断のワーキンググループで新たなビジネスルールや制度設計に関する提言や実証を進める。

3.ビジネス機会の創発(対話)

異業種間や産官学の交流を通じて、GX分野での新規事業創出・共同開発を促進。GXスタートアップや大企業との連携も含め、オープンイノベーションの場を提供する。

4.GXスタジオ(交流)

企業・自治体・研究機関・生活者など、多様な主体が未来のGX社会を共に描き、行動を起こすための共創プラットフォーム。将来ビジョンの共有や生活者参加型の活動も展開。

また、GXリーグは2050年のカーボンニュートラル社会を「ビジネスチャンス」と捉え、GXを成長戦略として位置づける日本政府の方針に連動しています。たとえば、GX経済移行債や炭素に対する課金(化石燃料賦課金)、排出量取引制度といった政策とも連携しており、制度面でも支援が進んでいます。

参照ページ:GXリーグ活動概要 – ~What is the GX League

GXリーグが注目される背景

背景にあるのは、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた世界的な潮流です。企業活動における温室効果ガスの排出削減は、もはや任意ではなく、事業継続に不可欠な取り組みになりつつあります。EUのCBAM(炭素国境調整措置)やESG投資の拡大といった外圧も、GXの必要性を加速させています。

さらに日本国内では、政府が掲げるグリーントランスフォーメーション戦略の一環として、GX経済移行債の発行や制度的な後押しが進んでいます。GXリーグは、こうした政策の実行主体としての役割も担っており、実効性のあるカーボンニュートラル施策を企業側から提案・実装していく場として期待されています。

参照ページ:CBAM - 炭素国境調整措置 (METI/経済産業省)

参照ページ:GX経済移行債を活用した投資促進策について

投資家からの評価向上、業界への影響など…GXリーグに参加するメリット

GXリーグに参加することは、企業にとってさまざまな戦略的メリットをもたらします。まず、自主的な排出量取引に参加することで、自社の温室効果ガス排出削減の取り組みを定量的に評価・取引可能な価値として可視化でき、脱炭素投資の促進につながります。これはESG投資家からの評価向上や資金調達面での優位性を生む要因となります。

さらに、GXリーグでは新たな市場ルールの形成に参画できるため、将来的に有利なビジネス環境を構築する先導者としての立場を確立できます。ルールメイキングの過程に関与することは、業界全体に影響を及ぼす制度設計に対する発言権を持つことを意味し、他社との差別化にもなるでしょう。

また、異業種やスタートアップとの連携を通じて新たなビジネス機会を模索できるのも大きな魅力です。GXという共通の課題を軸に、多様なプレイヤーとの共創が加速され、イノベーションの土壌が整います。GXスタジオを通じては生活者や自治体との接点も持てるため、社会的共感を得た持続可能な事業づくりに直結します。

GXリーグの今後の展望

GXリーグは今後、カーボンプライシングなどの資金活用や、新たな排出量取引市場の創設といった動きと連動しながら、参加企業同士の連携やイノベーション創出を加速させていくとみられます。

また、GXは単なる環境対策ではなく、ビジネスモデル変革や価値創造の機会でもあります。GXリーグでの議論や実証は、エネルギー転換、循環型経済、サステナブルなサプライチェーンの構築など、さまざまなテーマに広がっています。

参照記事:カーボンプライシングがもたらす行動変容とは?国によってことなるアプローチや大企業の導入事例を紹介 - TOMORUBA (トモルバ) - 事業を活性化するメディア

編集後記

GXリーグは、単に環境配慮の取り組みを促す場ではなく、企業が新たな経済価値を創出するための戦略的なプラットフォームです。ゼロエミッションに向かう世界の中で、日本企業が自ら変革を主導し、グローバル競争を勝ち抜くための「攻めの脱炭素」の場ともいえます。ESGやSDGsを超えて、事業そのものの再設計が求められるいま、GXリーグの動向から目が離せません。

(TOMORUBA編集部 久野太一)

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