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災害が常態化する日本がリードする「フェーズフリー」の発想。日常と災害時を区別しない商品の設計と国内の事例を解説

災害が常態化する日本がリードする「フェーズフリー」の発想。日常と災害時を区別しない商品の設計と国内の事例を解説

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新規事業やオープンイノベーションのプレイヤー、そしてそれらを実践・検討する企業の経営者は、常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。

今回のテーマは「フェーズフリー」です。普段使いしているモノやサービスを、そのまま非常時・災害時にも使えるように設計するという考え方で、防災の新しいアプローチとして注目を集めています。

フェーズフリー(Phase Free)とは日常の延長線上で災害に備える発想

フェーズフリーとは、平常時と非常時という「フェーズ」を分けずに、日常の延長線上で災害に備えるという発想です。これまでの防災は、非常食や防災グッズのように「いざという時のために特別に備えるもの」が中心でした。一方でフェーズフリーでは、日常的に使っている製品や空間、サービスが、そのまま非常時にも役立つことを重視します。

たとえば、普段はインテリアとして使っている照明が停電時には非常灯になる、日常食として購入している食品が長期保存も可能で災害時の食事になる、といった具合です。平時と非常時を切り替えるのではなく、連続したものとして捉える点が最大の特徴といえます。

この概念は日本で生まれ、現在は一般社団法人フェーズフリー協会を中心に、製品認証や普及活動が進められています。防災を「特別なもの」から「暮らしの一部」へと変えていく思想として、企業や自治体、デザイナーから関心を集めています。

参照ページ:一般社団法人フェーズフリー協会

フェーズフリーが注目される背景にある「災害の常態化」

フェーズフリーが注目される背景には、災害の常態化があります。地震や台風、豪雨、猛暑といった自然災害は、もはや「非日常」とは言えません。いつ起きてもおかしくない状況のなかで、非常時だけを想定した備えには限界が見え始めています。

加えて、防災疲れや備蓄疲れも無視できません。非常食や防災用品を揃えても、使わないまま期限切れになり、結果的に廃棄されるケースは少なくありません。善意で備えたはずの防災が、無駄やストレスにつながってしまうという矛盾が生まれていました。

フェーズフリーは、こうした課題に対する一つの答えです。日常的に使うものだからこそ無駄にならず、非常時にも自然に活用できる。この考え方は、サステナビリティやウェルビーイングといった近年の価値観とも親和性が高く、防災を「我慢」や「負担」ではなく、生活の質を高める取り組みとして再定義しています。

フェーズフリーの具体的な活用領域とローリングストックとの違い

フェーズフリーは、すでにさまざまな分野で形になり始めています。プロダクト領域では、家具や家電、衣類などが代表例です。普段は快適に使え、非常時には避難や生活維持を助ける機能を備えています。見た目や使い勝手が「防災用品らしくない」点も重要なポイントです。

食の分野では、ローリングストックに近い考え方ですが、フェーズフリーはさらに一歩進みます。非常食を定期的に消費するのではなく、最初から「日常食として美味しく、結果として備えにもなる」食品設計を目指します。日々の食卓に自然に溶け込むことで、意識せずとも防災につながる状態を作ります。

出典:農林水産省

住宅や建築、都市空間も重要な領域です。平時は快適な住空間や公共空間として機能しつつ、災害時には避難拠点やインフラの一部として役割を果たす設計が求められています。防災専用施設ではなく、普段から人が集まり、使われている場所であることが、非常時の実効性を高めます。

無印良品やNTTが取り入れるフェーズフリーの事例

事例① 日常の道具が非常時の備えになる──無印良品のフェーズフリー発想

無印良品は、商品の設計にフェーズフリーの考え方を取り入れた「いつものもしも」というラインを展開しています。たとえば、日常的には自宅用として利用できるスリッパが、釘やガラスの踏み抜きを防止する加工が施されているなど、意識せずとも備えが整う点が特徴で、防災を特別な行為にしないフェーズフリーの思想を体現しています。

参照ページ:くらしの備え。いつものもしも。 | 無印良品

事例② 日常のにぎわいが非常時の安心につながる──としまみどりの防災公園(IKE・SUNPARK)

東京都豊島区にて、NTTアーバンソリューションズが整備した「としまみどりの防災公園(IKE・SUNPARK)」は、フェーズフリーの思想を体現する代表例です。この公園は、平時は芝生広場やカフェを備え、親子連れや地域住民が集う憩いの場として機能していますが、災害時には約9,000人が避難可能な一時避難場所となります。

園内には井戸や貯水槽、非常用発電設備なども整備され、最大72時間の電力供給にも対応します。日常的に親しまれているからこそ、「いざという時はあの公園へ」という共通認識が生まれ、非常時の行動につながりやすい点が大きな特徴です。

参照ページ:としまみどりの防災公園|提供価値の取り組み事例|NTTアーバンソリューションズ

企業・自治体にとってのフェーズフリーの意味

企業にとってフェーズフリーは、単なる防災対策ではありません。コストとして扱われがちな防災を、価値創出や差別化の要素に変える可能性を秘めています。日常の利便性やデザイン性を高めた結果として防災にも強い製品やサービスは、生活者から共感を得やすく、ブランド価値の向上にもつながります。

また、フェーズフリーはBtoCだけでなく、BtoBや公共分野でも活用余地があります。オフィスや商業施設、学校、病院といった空間設計に取り入れることで、平時の快適性と非常時の安全性を両立できます。自治体にとっても、防災インフラを単独で整備するのではなく、日常利用と一体化させることで、維持コストや利用率の課題を解消するヒントになります。

編集後記

今後、フェーズフリーは防災の主流概念の一つになっていく可能性があります。スマートシティやサーキュラーエコノミーと結びつくことで、都市全体が「平時にも非常時にも機能するシステム」として設計される未来も考えられます。

災害大国である日本にとって、フェーズフリーは国内課題への対応策であると同時に、世界へ発信できる思想でもあります。気候変動の影響で災害リスクが高まる国や地域に対して、日本発の知見として輸出できる可能性もあります。

フェーズフリーは、防災の話でありながら、私たちの暮らし方やビジネスの在り方そのものを問い直す概念です。「非常時のために我慢する」のではなく、「日常をより良くした結果、非常時にも強くなる」。この逆転の発想こそが、これからの防災とビジネスをつなぐ重要なヒントになるのではないでしょうか。

(TOMORUBA編集部 久野太一)

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  • 眞田幸剛

    眞田幸剛

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