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社会課題は事業になるのか――愛知県「A-IDEA」公開討論会で見えた社会実装への条件

社会課題は事業になるのか――愛知県「A-IDEA」公開討論会で見えた社会実装への条件

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愛知県の革新事業創造プラットフォーム「A-IDEA」(アイディア)と、県が推進する5つのイノベーションプロジェクトによる合同イベント『社会課題をめぐる公開討論会―変化する社会、ビジネスの可能性―』が、2026年7月にSTATION Ai(名古屋市)で開催された。

本イベントのテーマは、「社会課題の解決は本当に事業として成立するのか」「事業をどのように社会へ広げていくのか」――。登壇者を参加者が囲む公開討論会形式で、収益性やスケール、行政と民間の役割分担などについて率直な意見が交わされた。

当日は、2つの公開討論に加え、5つの官民連携プロジェクトによる取り組みの紹介や、出展ブースでの交流も行われた。本記事では、当日の議論をもとに、社会課題ビジネスの現在地と事業を次の段階へ進めるために必要な視点を紹介する。

社会課題を事業機会へ――発掘から社会実装までを一貫して支援

本イベントの冒頭では、愛知県経済産業局革新事業創造部イノベーション企画課長の上原智史氏が登壇して挨拶を述べた。気候変動や脱炭素、人口減少、超高齢社会といった深刻化する社会課題を提示した上で、「これは大きな危機であると同時に、新たな事業を生み出すチャンスでもある。課題解決に挑む取り組みが評価され、投資や資金を呼び込むことで大きな事業成長につながる好循環が生まれつつある」と、社会課題ビジネスへの期待を語った。

続いて、上原氏は県が運営する革新事業創造プラットフォーム「A-IDEA」に言及した。企業やアカデミア、自治体、金融機関などが連携し、社会課題解決に向けたプロジェクトの発掘から社会実装までを一貫して支援する枠組みである。また、愛知県では現在、農業、デジタルヘルス、環境、モビリティ、スポーツの5分野で官民連携プロジェクトが進められていると示された。

▲産・学・官・金が連携し、事業を社会実装に導く「A-IDEA」

挨拶の締めくくりとして上原氏は、「なぜ社会課題に取り組むのか、どうすればスケールするのか。第一線で活躍する皆様の率直な議論を、会場で体感してほしい」と参加者に呼びかけた。

【公開討論①】 変化し続ける社会課題に、企業はどう挑むのか――政策と現場、10年の変遷から見えた社会課題ビジネスの現在地

オープニングに続き、最初の公開討論セッションが行われた。登壇したのは、経済産業省で各種のスタートアップ支援施策の立ち上げ等に従事し、現在は中小企業基盤整備機構で成長支援に取り組む石井芳明氏と、ベンチャー支援や自治体とスタートアップの連携機会の創出に携わり、2022年にフォーアイディールジャパンを設立した杉原美智子氏だ。A-IDEAコンシェルジュである篠原豊氏がモデレーターとなり、行政と民間、それぞれの立場から、社会課題ビジネスの現在地とこれからが語られた。

<登壇者>

・石井芳明氏/独立行政法人中小企業基盤整備機構 創業・スタートアップ支援部長

・杉原美智子氏/フォーアイディールジャパン株式会社 代表取締役社長

・モデレーター:篠原豊氏/エバーコネクト株式会社 代表取締役 A-IDEAコンシェルジュ(統括マネージャー)

【議題①|この10年で、社会課題ビジネスは何が変わったのか?】

石井氏は、国によるスタートアップ・社会課題支援の政策的な転換点として2013年と2022年を挙げた。2013年には日本の成長戦略が打ち出され、「行政主導ではなく、民間による新たな事業創出(スタートアップ)がなければ国は豊かにならない」という認識が社会に共有された。さらに2022年には「新しい資本主義」が掲げられ、社会課題の解決そのものを成長のエンジンと捉え、官民連携で成長と分配の好循環を生み出す大きな方針が示され、「社会課題の解決を行政だけに委ねず、民間と連携する、あるいは民間が主軸となる方向へ大きく舵を切った」と振り返る。その後、「J-Startup IMPACT」や「ローカル・ゼブラ事業」など、社会課題の解決と事業成長を後押しする施策が整備されてきた。

▲石井芳明氏(中小企業基盤整備機構)

スタートアップ支援を手掛ける杉原氏は民間側の変化に触れた。2015〜2016年当時は、技術革新と労働人口減少が重なる中で「従来の社会システム自体をアップデートしなければならない」という危機感が顕在化し始めた時期だったが、それから10年が経ち待ったなしの段階に入っていると指摘した。同氏は「あらゆるビジネスは本質的に社会課題の解決である」との考えを示したうえで、社会課題解決型ビジネスもアプローチ次第でスケールする事業になり得ると語った。

▲杉原美智子氏(フォーアイディールジャパン)

【議題②|社会課題解決は本当にビジネスとして成立するのか?】

続いて、石井氏は社会課題ビジネスを3つの型に分類した。実用化までに時間と資金を要するディープテック型、顕在化した課題をDXなどで解決する型、受益者に支払い能力がない型である。

ディープテック型では、補助金からリスクマネー、エクイティファイナンスへと資金をつなぐ設計が欠かせない。DX型では、既存の制度やサービスに参入する際の障壁を取り除く必要がある。受益者に支払い能力がない事業には、通常とは異なる資金調達の仕組みが求められる。子ども食堂のように経済的な負担を直接求めにくい対象に向けた事業を例に挙げながら、経済的なリターンだけではない資金の流れが必要だと指摘した。

杉原氏は、「社会課題は特定の地域に限られたものではなく、全国共通の課題であれば、一つの自治体や地域に閉じずにモデルができたら他の自治体と連携し、オールジャパンで取り組む意識が重要」と強調した。モデレーターである篠原氏も、「A-IDEA」は愛知発の事業を日本や世界へ広げる枠組みであり、支援対象をスタートアップに限定していないと説明した。

▲篠原豊氏(モデレーター/A-IDEAコンシェルジュ)

【議題③|社会課題に取り組む企業や行政は、これから10年で何に挑むべきなのか?】

杉原氏は「一人ひとりが持つ専門性や経験によって見えている課題は異なる」とした上で、「大切なのは、世の中をどうしたいのか、あるべき社会の姿を自分なりに描き、その実現に向けてアクションを起こすことだ」と語った。

社会課題解決の効果については、石井氏が「誰がどれほど深くメリットを受けるか」「対象は何人か」「効果がどれほど続くか」の3点を示した。効果を言語化して仲間を集め、小さくても事業を動かすことが重要だとし、「今こそ行動を起こしてほしい」とエールを送った。

篠原氏は「実証実験のアンケートに協力することも、苦しい時に一杯おごって励ましたり話をしたりすることも、立派な協力になる」と語り、多様な立場の人がチームとなって社会課題に向き合うことの重要性を示した。

【公開討論②】 社会課題ビジネスはどうスケールするのか――社会実装を担うプレイヤーと地域の巻き込み

続く公開討論では、大企業、地域企業、スタートアップという異なる立場から、社会課題ビジネスを社会実装へつなげる条件が議論された。登壇したのは、データ連携基盤「Dot to Dot」を軸に社会課題へ取り組むBIPROGYの内田雅之氏、130社を超える地域企業や8つの自治体と連携し、地域創生に注力する湘南ベルマーレフットサルクラブの佐藤伸也氏、高機能バイオ炭「宙炭」を用いた農業の脱炭素化を進めるTOWINGの西田宏平氏だ。A-IDEAの運営を担うeiiconの伊藤達彰氏がモデレーターとなり、事業を広げる上で直面する課題や地域を巻き込むための方策が語られた。

<登壇者>

・内田雅之氏/BIPROGY株式会社 事業開発本部 事業推進四部 共創プロジェクト長

・佐藤伸也氏/株式会社湘南ベルマーレフットサルクラブ 代表取締役社長

・西田宏平氏/株式会社TOWING 代表取締役

・モデレーター:伊藤達彰氏/株式会社eiicon 執行役員 東海支社長

【議題①|実証から社会実装へ移行する際の壁は何か?】

佐藤氏は、実証が次のステップへ進まない背景に「自治体」「域外企業」「住民・地域企業」の間にある視点の相違を挙げた。「それぞれの理屈が同じ場で可視化されず、本音を交わす前に議論が終わってしまう」と語る。例えば自治体には、単にサービスを導入するだけでなく「なぜその企業を選んだのか」という説明責任が付きまとう。そうした各プレイヤー特有の制約や本音が共有されないまま進むことが、社会実装を阻む一因になっていると語った。

▲佐藤伸也氏(湘南ベルマーレフットサルクラブ)

内田氏も「事業を実装するとは、地域に根付かせること。提供者同士で話すだけでは定着しない」と説いた。サービスの受益者を当初から議論に加え、本音を交わせる体制を築くことが欠かせない。一方、大企業が現地に拠点を置き、担当者を常駐させ続けるのは難しい。地域を束ねるキーパーソンを見つけられるかが鍵となる。

その方法について、内田氏は「最初の4、5年は、その土地に通い続けるしかない」と語った。一つの地域で関係を築けば、人口動態や経済圏が似た地域への横展開も可能になると見解を示した。

▲内田雅之氏(BIPROGY)

西田氏は、リソースの限られたスタートアップには無数の壁が存在するからこそ、「乗り越えられる壁を戦略的に設定することが重要だ」と語った。単に実証実験を行うだけでなく、あらかじめ社会実装後の具体的な姿まで描き切った上で実証に進むべきだと強調する。

しかし、その「構想を描くこと」と「現場で実行すること」を両立させるのは容易ではない。少人数のスタートアップでは構想と実行の役割分担が難しく、その両方を推進できる優秀な人材は大企業に集中しがちだからだ。西田氏は「解くべき課題を設定しようにも、それを担える人材の不足そのものが大きな壁になっている」と現実的な課題について言及した。

▲西田宏平氏(TOWING)

【議題②|企業・スタートアップ・地域、それぞれに求められる役割とは何か?】

内田氏は「事業の担い手を地域側に置くのか、大企業側に置くのか。最初の座組の段階で決める必要がある」との見解を示した。最終的な受益者から逆算し、事業主体を定めるという考え方である。

佐藤氏は「内容よりも手順が重要だ」と中間支援の役割を説いた。地域の警戒を解く一方、大企業からは「なぜその地域を選ぶ必要があるのか」と問われた経験もある。双方の論理を理解して初めて、具体的な議論に進めると振り返った。

西田氏は「大いなる力を使う」必要性を説いた。全国の産地へ一つずつ入り込み、農家ごとに関係を築くのは、スタートアップには現実的ではない。実際、単独では話を聞いてもらえなかった産地でも、作物を大量に調達する大手企業と同行すると、すぐに商談が始まったという。JAや商社など、地域に根差す組織に商材を託すことも、普及を進める有効な方法だと紹介した。

【議題③|社会課題ビジネスを持続的に成長させるために必要な仕組みとは何か?】

佐藤氏は地域行事で築いた信頼関係を「未財務価値」と呼び、「これを財務価値に変え、分配し、使い道をまた皆で考える。いいことをしている人自身が本気で財務と向き合わないと、誰かが疲れてしまう」と述べた。

内田氏は「その見える化こそデジタルの役割だ」と受け、社会構造を変える事業は一気にマネタイズできないと補足した。誰がどう貢献して解決したかをデータで検証し、社会全体の投資価値として資金を呼び込む仕組みを最初から組み込むべきだという。

最後に、西田氏はスタートアップが社会課題解決の手段として世界を目指すとき、地域の課題解決を担うパートナーとの協働を、スケールという括りで捉えるのが適切なのか疑問を投げかけた。その上で「大企業には多様な役割を担える人材が多い。出向など人的リソースの提供も支援手段に選択しやすい仕組みを整えてほしい」と要望した。これを受け、佐藤氏は「挑戦者を増やすことより、応援者が地域にたくさんいることに目を向けたい」と語り、セッションを締めくくった。

【官民連携プロジェクトピッチ】 農業・デジタルヘルス・環境・モビリティ・スポーツ――5分野で進む社会実装

愛知県が推進する5つの官民連携プロジェクトによる取組発表ピッチでは、各分野で実証を社会実装へつなげる取り組みが紹介された。県の担当部署が事業の背景と枠組みを説明し、参画企業が具体的な成果や今後の展開を示した。

■あいち農業イノベーションプロジェクト

県農業総合試験場や大学が持つ技術・実証フィールドと、スタートアップの革新的な技術を組み合わせ、共同研究により、農業分野の課題解決と新規ビジネス創出を目指すプロジェクトである。社会実装に至った成果の一例として、湿害を防ぐ大豆の高速畝立播種機が紹介された。

本年度からの共同研究に採択された株式会社きゅうりトマトなすびは、農場を3Dセンシングして、独自の解析技術により自動生育診断する仕組みにより、実の数や2週間後の収量まで解析し、勘と経験に頼らない栽培管理を実現する技術を持つ。

同社は東京大学発のAIスタートアップで、本プロジェクトでは熟練者が目視で見極めてきた茶葉の摘採適期を、AIで自動判定する技術を開発している。愛知県では茶の生産量の約77%をてん茶(抹茶の原料)が占めるが、生産者の高齢化が進み、茶農家1戸当たりの茶園面積が増えている。海外の抹茶需要の高まりで生産拡大の好機を迎える中、適期作業を支援し、収量・品質の向上につなげたい。同社は3年間での社会実装を目指している。同社は3年間での社会実装を目指している。

■あいちデジタルヘルスプロジェクト

超高齢化社会に伴う専門人材の不足や、家族の負担増に対応するプロジェクトである。医療や介護が必要になる前から健康寿命の延伸を図り、心の健康や社会とのつながりも含めたQOLの向上を目指す。主なターゲットは、50代のシニア層から医療や介護を必要とする前の高齢者だ。2023年9月に発足したコンソーシアムには、企業、行政、医療機関など117団体が参画。年間10件以上の実証活動に加え、健康関連サービスをつなぐポータルアプリを運営している。

本プロジェクトに参画し、高齢者向けAI健康支援サービスを提供する株式会社エクシングは、自治体への導入提案では実績と投資対効果が必ず問われると説明した。今後、ポータルに蓄積された健康データと利用履歴を組み合わせ、サービスの効果を可視化することで、社会実装に必要なエビデンスを積み上げていくことを目指す。

■あいち環境イノベーションプロジェクト

カーボンニュートラルの実現、サーキュラーエコノミーの転換、ネイチャーポジティブの達成実現といった環境課題の解決に向けて、革新的な技術・アイデアを持つスタートアップ等と連携し、愛知発の環境イノベーションの創出・実装を目指すプロジェクトである。これまでに11件の革新的なプロジェクトを採択し、伴走支援するとともに、産学官金で構成される「あいち環境イノベーションコンソーシアム」を連携・協働のプラットフォームとして事業化に取り組んでいる。

名古屋大学発ベンチャーの株式会社フレンドマイクローブは、微生物によって油を分解する装置を紹介。食品工場や飲食店、商業施設で実証を重ね、CO2排出量や悪臭、処理コストの削減を図っている。「油を回収する時代から、分解する時代へ」という将来像も示され、「環境価値」と「経済価値」を両立する新しい排水処理モデルの確立を目指している。

■あいちモビリティイノベーションプロジェクト

産業用ドローン専門メーカーである株式会社Prodroneの提案を受け、2023年5月に始動した革新事業創造戦略の第1号プロジェクトである。名古屋鉄道、ジェイテクトとの共同提案から始まり、現在は42社(7月末現在)が参画している。テーマは「令和の殖産興業」。ドローンやAAM(空飛ぶクルマ)の需要創出にとどまらず、愛知県を製造拠点として育てることを目指す。

機体の製造、修理、解析を担うエンジニアの育成や、整備体制の構築を進めている点が特徴だ。整備や修理、オーバーホールまで担える体制がなければ産業として成り立たないという考えが根底にある。今年度は、ドローンによる離島や住宅地での実証を行うとともに、人の移動や災害対応への展開を目指す構想が示された。

■あいちスポーツイノベーションプロジェクト

製造業を基盤とする愛知県において、地域への誘客力を備えたコンテンツとして「スポーツ」に着目したプロジェクトである。競技の枠を越えて集客力や事業性を高めるため、アクセラレーションプログラムが実施された。

同プログラムの採択企業として登壇した株式会社はこぶんは、顧客の本音を可視化するVOCソリューション「ホンネPOST」を提供している。同社は、無料招待などで観戦経験はあるものの再来場に至っていないライト層に着目。県内で年間21万〜35万人と推計されるこの層を対象に、9チーム・43試合で来場者のリアルな声を収集した。

集まった約8,000件(総量約90万文字)の声を感情分析AIとダッシュボードで整理し、満足度やリピートを阻む要因を可視化。得られたデータは、各チームの集客改善にとどまらず、競技やチームの垣根を越えた相互送客にも活用されている。今後は他地域への横展開も視野に入れているという。

社会課題と向き合う経済活動――STATION Ai設立に込めた狙い

本イベントに登壇した愛知県知事の大村秀章氏は、社会課題への対応を、企業活動の持続的な成長に欠かせないテーマとして位置づけた。「企業や経済活動が社会課題と向き合わなければ、前に進まない時代になった」と語り、AIを例に、技術の進展を促すだけでなく、普及を阻む要因や副次的な効果、負の影響まで多角的に検討する必要があると指摘した。

STATION Ai設立の原点にも、社会課題の解決があった。大村氏は「今ある社会をどう良くしていくかを考えることが、企業の発展にもつながる」と述べた。各プロジェクトの進展に敬意を示し、参加者には一つでも多くの気づきを持ち帰ってほしいと呼びかけた。

実証で終わらせない――継続的な事業化を支える新制度

プログラムの最後には、革新的なプロジェクトを実証で終わらせず、継続的な事業へつなげる「A-IDEAセレクト/アドバンス認定制度」が紹介された。認定プロジェクトには、ビジネスプランの改善や、地域のステークホルダーを巻き込んだ推進体制の構築など、A-IDEAコンシェルジュによる一貫した伴走支援が提供される。

閉幕後の交流会では、5つのプロジェクトのブースに参加者が集まり、実証の進め方や連携の可能性をめぐって意見が活発に交わされた。

取材後記

社会課題は本当にビジネスとして成立するのか――。会場で交わされる議論を聞きながら、この問いに対する一筋縄ではいかない難しさを実感した。むしろ問われているのは、ビジネスとして成り立たせるための条件を見極め、相応の時間を引き受ける覚悟があるかどうかだ。資金の回収期限や大企業が求める短期的な事業規模に対し、地域との信頼関係や新たな文化の定着には長い時間を要する。この時間軸のギャップが、実証から社会実装への移行を難しくしている大きな要因の一つなのだろう。

そうしたなかで印象に残ったのは、誰もがこの課題を単独で解決しようとしていなかった点である。大企業、地域の支援者、専門家、自治体といったプレーヤーが、互いの強みを持ち寄り、不足を補い合いながら事業を推進していた。登壇者をぐるりと囲む円形の会場設計は、まさにその協働の姿勢を体現しているようだった。社会課題を事業化する鍵は、単なるアイデアの良し悪しではない。異なる立場の人々をつなぎ、時間をかけて共創の土壌を育むことにある。

(編集:眞田幸剛、文:中谷藤士、撮影:加藤武俊)

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  • 眞田幸剛

    眞田幸剛

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