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千葉をフィールドにしたOIプログラム『PORT』が始動――「ふぐの日常食化」「日常接点ヘルスケア」「培養・発酵技術の開放」「産業横断の現場DX」。ホスト企業4社が描く事業構想とは?

千葉をフィールドにしたOIプログラム『PORT』が始動――「ふぐの日常食化」「日常接点ヘルスケア」「培養・発酵技術の開放」「産業横断の現場DX」。ホスト企業4社が描く事業構想とは?

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首都圏に隣接し、成田国際空港と東京湾の二つの玄関口を擁する千葉県。京葉臨海コンビナート地域を中心とする素材・エネルギー産業から、内陸部のものづくり企業やR&D拠点、全国有数の農林水産業まで、多様な産業が集積している。一方、県内では南北の地域間格差に加え、労働力不足、デジタル化、脱炭素化など、企業単独では対応が難しい課題も顕在化している。

こうした中、千葉県は2026年度(令和8年度)、新たなオープンイノベーションプログラム『CHIBA OPEN INNOVATION PROGRAM「PORT」』を始動させた。千葉県内に拠点を置き、事業を展開するホスト企業4社――国分首都圏、千葉薬品、野田食菌工業、Liberaware――が以下のような共創テーマを掲げ、9月1日から全国の企業などを対象に事業共創パートナーを募集している。

●国分首都圏(食品卸売業)

「温暖化で変わる千葉の海。増え続けるふぐを"日常の食"に変える水産ビジネスを共創したい」

●千葉薬品(ドラッグストア・介護事業運営)

「地域の日常接点から、暮らしと健康を育むウェルビーイング共創」

●野田食菌工業(バイオ・食品素材製造業)

「50年の培養・発酵技術をひらき、次の健康とバイオものづくりを共創する」

●Liberaware(ロボティクス・現場DXソリューション)

「ロボット・AI・IoTをつなぐ次世代現場DXサービスの創出」

本記事の前半では、本プログラムが生まれた背景や狙いを紹介。記事後半では、ホスト企業4社へのインタビューを通じて、外部との共創によって何を実現しようとしているのか、どのようなパートナーを求めているのかを明らかにする。

交流・マッチングから、その先の「共創」へ――『CHIBA OPEN INNOVATION PROGRAM「PORT」』の狙い

多様な産業をつなぎ、一社では届かない課題へ

千葉県には、素材・エネルギー、ものづくり、観光業、農林水産業など、幅広い産業が集積している。その多様性を生かし、企業同士の強みを掛け合わせて事業創出につなげる。本プログラムは、こうした共創を後押しする個別伴走型の支援として設計された。

背景にあるのは企業や地域の構造課題だ。労働力不足やデジタル化、脱炭素化への対応に加え、都市機能が集積する北西部と豊かな地域資源を持つ南部といった、地域特性に応じた最適化も求められている。そうした中で千葉県は、多様な産業や技術をつなぐことで、新たな解決策を生み出そうとしている。

プログラム名の「PORT」は、文字通り「港」を意味する。成田国際空港を擁し、東京湾に面し、三方を海に囲まれた千葉県らしい名称だが、意味するのは地理的な特徴だけではない。多様な産業、企業、技術が集まる千葉県を一つの「港」に見立て、人や技術が集まり、つながり、そこから事業が広がっていく。名称には、共創の起点となる場をつくるという思いが込められている。

「原石」が眠る千葉。開拓の余地が残る共創フィールド

産業の裾野が広いことは、共創相手を探す上でも強みになる。県内には、まだ広く知られていない技術や事業を持つ企業もあり、分野を越えた連携の余地は大きい。県は、こうした企業を「原石」と捉えている。

研究開発や実証につながる環境にも恵まれている。県内には千葉大学、東京理科大学、東京大学柏キャンパスなどがあり、インキュベーション施設の整備も進んでいる。今回のホスト企業であるLiberawareは県内の大学発のベンチャーであり、産学連携から事業が生まれる可能性もある。一方で、オープンイノベーションの分野における「千葉発の象徴的な成功モデル」はまさにこれから築かれる段階にある。

短期は「看板になる共創事例」、長期は「一期生」が次の共創を生む循環へ

今年度の設計には、これまでの取り組みで得た経験が反映されている。千葉県のオープンイノベーション施策は、交流会による接点作りから、個別のマッチング支援へと発展してきた。一方、限られた支援期間では、協業まで十分に伴走できないケースもあった。これを受け、今年度は支援期間を2027年3月まで確保し、昨年度8社だった支援先を4社に絞った。一社あたりの支援を厚くし、マッチングの先にある協業までつなげる狙いだ。

本プログラム自体は補助金を交付する仕組みではないが、庁内の他部署とも連携する。実証補助金への橋渡しや企業立地の相談、他事業でのピッチ登壇機会など、各社の状況に応じて県の施策へと結びつける。目指す成果には二つの時間軸がある。短期的には、今年度中に「看板」となる共創事例を生み出すこと。長期的には、参加企業がプログラム終了後も自らオープンイノベーションを継続することだ。

今年度のホスト企業4社は、いわば「一期生」。将来はアドバイザーのような立場で、次の参加企業に経験を還元する。県はこうした循環まで見据えている。

▲2026年7月には千葉市内でワークショップが開催され、ホスト企業となる4社が参加。メンターと共に募集テーマのブラッシュアップが行われた。

…………………………

ここからは、『CHIBA OPEN INNOVATION PROGRAM「PORT」』に参画するホスト企業4社(国分首都圏、千葉薬品、野田食菌工業、Liberaware)の担当者にインタビューした内容をお届けする。各社が掲げる共創テーマと求めるパートナー像とは――。

【国分首都圏】(食品卸売業)

獲れるのに食べられない――増え続ける千葉のふぐを、首都圏の日常食へ

【左→右】

・国分首都圏株式会社 未来事業推進部 副部長 兼 まちづくり推進課長 邑橋英一郎氏

・国分首都圏株式会社 未来事業推進部 まちづくり推進課 マーケティング担当 主任補 佐藤凌成氏

・国分首都圏株式会社 未来事業推進部 まちづくり推進課 グループ長 及川潤氏

・国分首都圏株式会社 執行役員 マーケティング部長 兼 未来事業推進部長 久松紀仁氏

※本インタビューは、邑橋氏・佐藤氏・及川氏の3名に実施した。

――まずは、御社の事業概要と強みからお聞かせください。

国分首都圏・及川氏 : 当社は、食品・酒類の流通を中心に幅広い事業を展開する国分グループのエリアカンパニーです。千葉、東京、神奈川、埼玉、山梨を中心に食品卸売事業を展開し、全国約3万5000社と取引しています。スーパー、コンビニ、ドラッグストア、外食、ECなど幅広い販売チャネルを持ち、仕入れ先は約1万社、取扱アイテムは約60万点に上ります。「K&K」ブランドの商品開発も手がけています。

2026年に始まった長期経営計画では、”未来事業推進部まちづくり推進課”を新設しました。「地域密着全国卸」を掲げ、自治体や地域事業者と地域課題を事業機会へ変える地域共創を本格化しています。外部企業の技術やアイデアと当社の強みを掛け合わせた事業創出を進めています。

――ホスト企業として参画された背景には、どのような考えがあったのでしょうか。

国分首都圏・邑橋氏 : 海水温の上昇で、従来獲れていた魚が減る一方、地域に流通基盤や食文化のない魚が獲れるようになっています。千葉県では、とらふぐの漁獲量がここ10年ほどで大きく増え、いすみ市の「大原産天然とらふぐ」は千葉ブランド水産物にも認定されています。

しかし、ふぐは高価で日常的に食べる機会が少なく、県内では十分に加工できないため、加工体制が整う山口県などへ流れています。こうした状況を変え、首都圏に新たなふぐの食文化を作ると共に、千葉県内で完結するサプライチェーンを構築したいと考えました。

――共創テーマでは3つの方向性を掲げています。優先順位と、求める企業像をお聞かせください。

国分首都圏・及川氏 : 最優先は一次加工です。原料として流通させ、商品開発につなげるには、ふぐの毒処理に加えて一定の品質水準と製造能力が必要です。安心・安全を担保できる企業との連携が前提になります。

2つ目は加工食品の共同開発です。取引先メーカーを含めた連携も想定しており、「アイデアはあるが技術がない」など、部分的な協業も歓迎します。出汁、スープの素、缶詰などの加工食品の開発やスーパーの総菜メニューの開発、外食チェーン向けの商材開発を目指します。また冷凍商品については輸出も視野に入れています。

3つ目は食文化の創出です。成田空港を訪れる訪日客にも千葉に滞在してもらい、とらふぐを味わう体験を通じて、地域の食文化として認知を広げたいと考えています。

▲ふぐの加工技術・資格者ネットワークを有するパートナー企業と連携し、一次加工体制の構築を目指す。

国分首都圏・邑橋氏 : 既に千葉県水産課、いすみ市、夷隅東部漁業協同組合、千葉県ふぐ連盟などにも協力いただいています。地域側との連携基盤は整いつつあり、加工を担う企業が加われば、具体的な取り組みに移せる段階にあります。

――パートナー企業が活用できるリソースについても伺います。

国分首都圏・邑橋氏 : 私たちは国内328拠点の物流センターを運営しており、冷凍・チルド・常温の三温度帯に対応する大型センターも18カ所あります。商品化後は、品質を保ちながら各地へ供給できます。また、グループには輸出事業部と海外事業部があり、アジアを中心に海外展開しています。香港、台湾、シンガポールなど、海外市場への展開も見込めます。

――最後に、応募を検討する企業へのメッセージをお願いします。

国分首都圏・及川氏 : この取り組みは単年度で終わらせず、商品開発から事業の自走まで、パートナーと共に進めたいと考えています。十分に価値化されてこなかった地域資源を新たな商品や市場につなげ、循環するビジネスを作りたいです。

国分首都圏・佐藤氏 : 現地の漁師の方から、「命がけで食べてきたからこそ、今も食べ続けられている。それだけ人を引きつける魅力がふぐにはある」と伺ったことが印象に残っています。長く漁を続け、丁寧に処理・出荷してきた方々の思いを大切にしながら、獲れたものを新たな価値として市場に届け、生産者への還元につなげたい。その考えに共感いただける企業と、長期的に取り組んでいきたいです。

【千葉薬品】(ドラッグストア・介護事業運営)

健康を意識していない人にこそ届けたい――117店舗と自治体ネットワークから生む、新たな健康サービス

【右】株式会社千葉薬品 新規事業開発室 室長 宮下隆氏

【左】株式会社千葉薬品 新規事業開発室 エクスペリエンスデザインチーム UXデザイナー 高橋未来氏

――まずは、御社の事業概要と強みからお聞かせください。

千葉薬品・宮下氏 : 当社は1960年に千葉市で創業し、ドラッグストア「ヤックスドラッグ」、スーパーマーケット、介護事業を展開してきました。地域の生活圏に店舗を構え、買い物から健康相談、処方箋の受け渡し、介護相談までを身近な場所で提供しています。

強みは、店舗を起点に地域住民と継続的な接点を持ち、医療・介護まで含めた幅広いサービスを提供できることです。3年前には『全ては、喜びのために。社会を支える事業を新化させる』というミッションを掲げました。既存のドラッグストア事業だけでは担えない領域の開拓に取り組むのが、私たち新規事業開発室の役割です。

――ホスト企業として参画された背景には、どのような考えがあったのでしょうか。

千葉薬品・宮下氏 : 社内だけでは、発想も事業化の手段も限られます。自社の事業にすぐ結びつかなくても、何か可能性を感じる。そうした外部との出会いから、新しい事業を生み出したいと考えています。

既に複数のベンチャー企業と連携し、3件ほどのサービス開発が進んでいます。健康分野のガジェットなど、技術単体ではサービス化が難しいものに、当社の店舗や顧客接点を組み合わせる取り組みが中心です。

――本プログラムにおける共創テーマとして3つの方向性を掲げています。それぞれの狙いをお聞かせください。

千葉薬品・宮下氏 : 1つ目は当社のヴィジョンである「ドラッグストアから健康ストアへ」です。心身の健康を支えるサービスから、健康・生活を測定するガジェットまで、健康に関わる幅広い提案を求めています。

2つ目は子育て世代向けサービスです。当社にとって手薄だった領域であり、地域を多世代で支える上でも重要です。外部の知見を取り入れ、新たなサービスを形にしたいと考えています。

3つ目は「千葉発のアクティブヘルス」です。海、山、湖に恵まれた千葉の自然を生かし、楽しみながら健康につながる事業を生み出したいと考えています。アウトドア事業「アタック5」も、創業者が人々の余暇活動を豊かにするために立ち上げたものでした。原点に立ち返る取り組みでもあります。特に、自治体との協定が多く自然豊かな県南部で、地域資源を活用した展開を想定しています。

▲千葉県・茨城県を中心に展開する「ヤックスドラッグ」。

――パートナー企業が活用できるリソースについてはいかがでしょう?

千葉薬品・宮下氏 : 活用いただけるリソースは主に5つあります。117店舗のドラッグストア、医療・介護の専門職、介護事業所や地域コミュニティスペース「夢サロン」、メーカーとのネットワーク、県内約半数の自治体と結ぶ協定です。自治体をフィールドとする企画も、実証につなげられます。

千葉薬品・高橋氏 : 新規事業開発室にはUXデザイナー2人のほか、管理栄養士や理学療法士などの専門職がいます。専門知識とUXデザインを掛け合わせ、生活者に届くサービスへ落とし込めることも強みです。

――最後に、応募を検討する企業へのメッセージをお願いします。

千葉薬品・高橋氏 : 私は最近、千葉薬品に入社しました。入社後に実感したのは、新しいアイデアを面白がり、実際に試せる会社だということです。店舗や地域との接点もあり、パートナー企業にとっても事業を形にできるフィールドがあると思います。

千葉薬品・宮下氏 : 人がどうすれば喜び、健やかに暮らせるのか。その問いを一緒に考えられる企業と、新しい取り組みを生み出したいと思っています。完成された提案でなくても構いません。可能性を感じるアイデアがあれば、ぜひ応募いただきたいです。

【野田食菌工業】(バイオ・食品素材製造業)

クローズからオープンへ――50年の培養・発酵技術と製造ラインを開く

【左】野田食菌工業株式会社 R&D生産技術本部 本部長 近芳勝氏

【右】野田食菌工業株式会社 常務取締役CFO兼総務部長 勝倉剛氏

※本インタビューは勝倉氏に実施した。

――まずは、御社の事業概要と強みからお聞かせください。

野田食菌工業・勝倉氏 : 当社は50年以上にわたり、シイタケの菌糸体培養技術を培ってきました。中核となるのが、1971年に開発した菌糸体培養培地抽出物「LEM」です。キノコが生える前の菌糸体から成分を液体抽出している点に特徴があります。工場は国際規格FSSC22000、健康食品GMPの認証を取得しており、研究、試作、量産、包装・製品化、配送まで一気通貫で対応できます。

一方、現在は自社主力の製造ラインに供給余力があり、これを新たなパートナーへ開放できる環境が整っています。高度な品質管理を備えた食品工場で、即座に活用できるラインの余力があるケースは非常に貴重といえるでしょう。設備を外部に開き、新たな事業につなげたいと考えたことが今回の出発点です。

――ホスト企業として参画された背景には、どのような考えがあったのでしょうか。

野田食菌工業・勝倉氏 : 当社は長く、売上の8〜9割をOEMが占めるクローズな事業を続けてきました。表に出る機会も少なく、地域とのつながりも十分ではありませんでした。

そこで、この1年は千葉県や野田市との関係作りを進めています。千葉県には発酵に関わる企業が多くあります。当社も発酵技術を持つ企業として地域と成功事例を作り、新たな成長につなげたいと考えています。

――本プログラムにおける共創テーマとして3つの方向性を掲げています。それぞれの狙いをお聞かせください。

野田食菌工業・勝倉氏 : 1つ目は、LEMやMAK(マンネンタケ菌糸体培養培地抽出物)をはじめとする、キノコ由来の機能性素材を活用した商品開発です。これまでは対面で説明しながら販売する相談薬局を中心に販売してきましたが、今後は予防領域へ広げ、若い世代にも手に取りやすい商品へ展開していきたいです。

当社はこれまで、プロダクトアウトの商品開発でトライ&エラーを繰り返してきました。エンドユーザー様の健康食品に係るニーズを直に捉えきれてないことが課題です。販売チャネルや商品企画に強みを持つ企業と組み、新たな商品作りにつなげたいです。

2つ目は、培養、発酵、液体抽出、粉化まで対応できる設備と人材を活用した新素材・新製品の量産化です。LEMに限らず、この設備を使って製品化したいアイデアを求めています。

3つ目は製造・管理のDXです。当社ではペーパーレス化を含め、工場のDXが十分に進んでいません。工場そのものを実証フィールドとして提供し、新たなモデルを一緒に作りたいと考えています。

――パートナー企業が活用できるリソースは?

野田食菌工業・勝倉氏 : 機能性素材のLEMに加え、試作から量産まで対応できる設備が大きな強みです。配合や分量の検討から実機での製造まで、当社内で進められます。アイデアがあっても、量産段階で工場探しに苦労するケースは少なくありません。当社は東京駅から約1時間とアクセスしやすく、工場現地での打ち合わせもしやすく、移動に係る負担が少なく、量産化を進めやすい恵まれた環境です。

▲菌糸培養・抽出・粉体化・パッケージングまで一貫した生産体制に加え、大手製薬メーカーへのOEM出荷に対応する品質管理体制も有している。

――最後に、応募を検討する企業へのメッセージをお願いします。

野田食菌工業・勝倉氏 : 当社の商品は、まだ限られた領域でしか展開されておらず、非常に大きな潜在可能性を秘めています。今回のプログラムを機に、これまでのクローズな体制から外部との連携へと広げ、当社の素材や技術をより多くの方に届けたいと考えています。3年後には、当社の素材を使った商品がコンビニやドラッグストア、量販店等に並び、若い方にも気軽に手に取ってもらえる状態を目指します。

当社の名前が表に出る必要はありません。パートナー企業の商品に当社の素材や技術が生かされれば十分です。味、パッケージ、価格など、共に磨き上げていきたい要素が多くあります。そうしたステップも含めて、一緒に事業をつくっていただける企業との出会いを期待しています。

【Liberaware】(ロボティクス・現場DXソリューション)

実証実験で終わらせない――空間iPaaS「LAPIS」でつなぐ、産業横断の現場DX

▲株式会社Liberaware 共同創業者 小川祐司氏

――まずは、御社の事業概要と強みからお聞かせください。

Liberaware・小川氏 : 当社は「誰もが安全な社会を作る」を掲げ、ロボット工学を学んだ創業メンバーが立ち上げたテック企業です。人が立ち入れない狭く、暗く、危険な場所を点検する小型ドローンの開発と、取得データを三次元化・解析して管理するソフトウェア事業を展開しています。

新たな事業の柱が、空間iPaaS「LAPIS」です。ドローン、ロボット、デジタルツイン、AIなどをつなぎ、一連の業務を自動化する。これまで点で存在していた技術やサービスを線でつなぎ、エコシステムへ広げることを目指しています。

――ホスト企業として参画された背景には、どのような考えがあったのでしょうか。

Liberaware・小川氏 : 当社は千葉で創業し、現在も本社を置くなど、地域に根付いて事業を展開してきました。千葉を舞台に新たな事業を生み出したいという思いがあります。

これまではマッチングされる側として、大企業や自治体との共創を通じて技術や事業を成長させてきました。今回はホスト側に立ち、その経験とLAPISを生かして事業創出につなげたいと考えています。千葉県には臨海部の工場や物流施設、農業、商業施設など多様な現場があり、LAPISの活用領域を広げるフィールドとしても可能性を感じています。

――共創テーマとして3つの方向性を掲げています。それぞれの狙いをお聞かせください。

Liberaware・小川氏 : 共通するのは、現場の人手不足を解消し、業務を徹底して効率化することです。ロボットで設備を撮影しても、その後の報告書作成や設備管理システムへの登録を人が担っているケースは少なくありません。こうした一連の業務をLAPISで自動化する方針です。

1つ目は、点検領域で培った技術を新たな産業へと広げる「現場DX」の展開です。農業、畜産、食品製造に加え、商業施設、公共施設、ゴルフ場、レジャー施設など、千葉県の多様な現場を生かしたサービス開発に取り組みます。

2つ目は防災・災害対応です。災害時には大量の情報が発生し、自治体、消防、警察、自衛隊、民間事業者など多くの組織が関わります。そこで、情報を一元的に扱い、活用する仕組みにLAPISを生かします。当社は埼玉県八潮市の道路陥没事故や、福島第一原発の格納容器内部調査など、厳しい環境での実績も積んできました。

3つ目は、産業横断のエコシステム構築です。個別の実証で終わらせず、継続的に新しいユースケースを生み出していきます。特に期待しているのがAIベンダーとの連携です。農業であれば生育や害虫など、領域ごとに特化したAIが必要になります。専門性を持つ企業と組み、LAPISの活用領域を広げたいです。

――パートナー企業が活用できるリソースについても伺います。

Liberaware・小川氏 : ロボティクスや現場データ活用の技術的知見に加え、LAPISを通じて機器やサービスをつなぎ、現場に合わせた仕組みを構築できます。また、ゼロから事業を立ち上げ、実証から事業化まで進めてきた経験もあります。一つの業界にとどまらず、生まれた仕組みを他業界へ展開できることもLAPISの特徴です。共創の進め方そのものも提供できます。数多くのプログラムに参加してきたため、初期の課題整理からロードマップづくりまで、事業化を見据えた進め方を共有できます。

▲映像、画像、音声、位置、温度、3Dモデル等の現場データを収集し、解析技術や業務システムへつなぐ基盤「LAPIS」を提供可能。(画像はイメージです)

――最後に、応募を検討する企業へのメッセージをお願いします。

Liberaware・小川氏 : 実証実験だけで終わらせるつもりはありません。2027年3月の成果発表までに、現場課題やユースケースを技術面だけでなく事業面からも掘り下げ、どのようなビジネスにするのかを明確にしたいと考えています。その後1〜2年以内の共同サービスのローンチを目指し、将来的には資本提携も視野に入れています。技術やアイデアに加え、事業化への意志を持つ企業と出会いたいです。

取材後記

ホスト企業4社への取材で印象的だったのは、「自社だけでは届かない領域」を率直に示していたことだ。各社が外部に求める力は明確で、共創相手にとっても参画の余地が見えやすいといえるだろう。千葉県としても、オープンイノベーションを象徴する成功事例はまだ生まれていないと捉えている。今年度は支援期間を延ばし、対象を4社に絞って事業化を目指す。多様な産業が集まる千葉を、新たな共創が生まれる「PORT」にできるか。事業共創パートナーの募集は2026年9月1日から30日まで。9月9日にはオンライン説明会も開催される。

※『CHIBA OPEN INNOVATION PROGRAM「PORT」』の詳細はこちらをご覧ください。

(編集:眞田幸剛、文:中谷藤士、撮影:齊木恵太)

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  • 眞田幸剛

    眞田幸剛

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