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沖縄をフィールドとしたOIプログラム『OKINAWA Co-Creation Lab.2024』始動!――県内企業5社がデジタルとの融合で実現したい共創事業とは?ホスト企業5社に聞く【前編】

沖縄をフィールドとしたOIプログラム『OKINAWA Co-Creation Lab.2024』始動!――県内企業5社がデジタルとの融合で実現したい共創事業とは?ホスト企業5社に聞く【前編】

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2023年度に853万人を超える観光客を迎えた世界有数の観光地である沖縄県。この観光産業に加えて、新たな主要産業を育成するべく、1990年代後半よりIT関連産業の誘致、育成に取り組み、成功を収めてきた。しかし、島しょ部という特有なビジネス環境にある沖縄県では、労働生産性はまだ低く、経営力の強化や高付加価値ビジネスの創出が課題となっている。

そこで、新たな施策としてスタートさせたのが、沖縄県内企業と全国のデジタル技術・サービスを持つ企業等を結びつけ、共創ビジネスの創出を支援するオープンイノベーションプログラム『OKINAWA Co-Creation Lab.2024』だ。

今年度は、沖縄県内の5社(沖縄タイムス社/SOONESS/トータルライフサポート研究所/福地組/琉球朝日放送)が新規事業創出を目指して全国からデジタル技術・サービスを持つ共創パートナーを募集。共に新たなビジネスを生み出すことで、社会課題の解決や県内企業の高度化につなげることを目指す。

TOMORUBAでは、本プログラムの主催者である沖縄県庁、およびホスト企業となる県内企業5社に、プログラムにかける想いをインタビュー。その内容を、【前編】【後編】に分けてお届けする。前編となる本記事では、沖縄県・宮国氏と、共創ビジネスの創出を目指す県内企業2社(沖縄タイムス社/SOONESS)に話を聞いた。

【沖縄県庁】 島しょ部の課題をデジタル技術で克服し、県内企業の生産性と付加価値の向上へ

――まず、『OKINAWA Co-Creation Lab.2024』を牽引する宮国さんのバックグラウンドからお伺いしたいと思います。

沖縄県庁・宮国氏: 沖縄県庁に入庁してから25年以上になりますが、そのうち約15年間は産業振興に携わってきました。入庁後4年目に経済産業省に出向し、そこで様々な産業振興や経済振興の業務を担当したことで、この分野に興味を持ちました。

これまで、沖縄の地理的特性を活かしたアジア経済戦略構想の策定や、企業の稼ぐ力強化のための考え方の整理、産業間で連携したブランド戦略の策定、それらを実現するための事業や新たな税制、認証制度等の仕組みづくりなどに取り組んできました。

▲沖縄県 商工労働部 ITイノベーション推進課 課長 宮国順英氏

――宮国さんの所属組織「商工労働部ITイノベーション推進課」は、どのようなミッションを持ったチームなのでしょうか。

沖縄県庁・宮国氏: チームのミッションには、大きく分けて3つの柱があります。1つ目は、IT関連産業の高度化と高付加価値化を推進し、稼ぐ力を高めていくこと。2つ目は、その集積したIT関連産業を活かして、観光業や製造業など県内の他産業のDX推進をサポートし、牽引することで県全体の産業成長を図ること。3つ目は、様々なイノベーションを生み出していくことです。

――「IT関連産業」に焦点を当てているのですね。

沖縄県庁・宮国氏: はい。その背景を説明すると、沖縄県は全域がビジネスにとっては課題が多い島しょ地域にある中で、「何で稼ぐか」を考えた際、まずは地域資源を活かした観光業が挙げられます。次にどのような産業を振興すべきかと考えた時、島しょ地域の不利性の影響が少ないIT関連産業に可能性を見出し、1990年代後半よりインフラ整備などを進め、IT関連産業の集積を図ってきました。

現在では900社を超えるIT企業が県内に立地し、多くの雇用も生み出しています。当初はコールセンターやBPOなど労働集約型の産業が中心でしたが、最近では付加価値の高いIT業種へとシフトしてきました。今後、さらに収益性の高い業態への転換や他産業への波及効果を目指し、先ほど紹介した3つのミッションに取り組んでいるところです。

――沖縄県は『おきなわSmart産業ビジョン』を策定し、産業DXにも注力されています。その背景を教えていただけますか。

沖縄県庁・宮国氏: 沖縄県は所得水準の低さが課題ですが、その理由として企業の労働生産性の低さが挙げられます。例えば、製造業が県外に販売しようとすると、高額な物流費が上乗せされるため、コスト競争力が弱くなってしまいます。そのため、県外の競合他社と同価格で競争しようとすると、利益率を下げざるを得なくなり、設備や人材への成長投資が困難になってしまいます。

こうした状況を打破するには、デジタル技術を活用して生産性を向上させることが一つの解決策になると考えています。加えて、他県と異なり規模の拡大が難しいので、カイゼンや効率化だけでは本土大手に勝てません。やはり、新しい価値やビジネスモデルを生み出すイノベーション型の経済成長が、沖縄には適していると思っています。

――そうした中、今回は初めてオープンイノベーションプログラム『OKINAWA Co–Creation Lab.2024』を開始されます。その狙いについて教えてください。

沖縄県庁・宮国氏: 本プログラムを開始した理由は、県内事業者にオープンイノベーションのノウハウや事例が不足しており、県外企業と連携、交流できる機会も他県と比べて少ない環境にあることが課題だと考えたためです。本プログラムを通じて、県内企業をサポートし、沖縄県でのオープンイノベーション創出を目指していきたいと思っています。

――沖縄県としては、どのようなバックアップができるのでしょうか。

沖縄県庁・宮国氏: 沖縄県では、今回のオープンイノベーション創出支援以外にも、様々なイノベーション創出支援に取り組んでいます。例えば、スタートアップエコシステムの構築に向けたコンソーシアムを設け、現在、経済団体や学術団体、金融、行政などを含めた約66団体が参加しています。

また、イノベーション創出に取り組む際に直面する規制の問題や実証実験の場所選びなどの課題に対応するため、県や国が連携してサポートやアドバイスを行える相談窓口を設けています。さらに、補助金の支給も行っていますし、様々な専門的サポートを受けられる体制も整えています。ぜひ、これらをご活用いただきたいと思います。

▲沖縄県では、実証実験プラットフォームを設置し、スタートアップエコシステムと連携を図っている。共創プロジェクトの事業化に向け、テストベッドを用意するなど、多様な支援メニューを用意している。

――今年度は、沖縄県内5社がホスト企業として参加され、県内外のパートナー企業と共創に取り組まれます。沖縄県としては、どのような期待をお持ちですか。

沖縄県庁・宮国氏: 今年度は、建設業、マスコミ関連、介護・福祉事業など、多様な業界からご参加いただきました。この5社がオープンイノベーションを成功させることで、沖縄県でもオープンイノベーションが実現できることが周囲に示せると思っています。先行モデルとして成功させることで、オープンイノベーションに取り組む県内企業の数を増やしていきたいと考えています。

――最後に、応募企業に向けてメッセージをお願いします。

沖縄県庁・宮国氏: 沖縄県は、イノベーションの創出が経済成長にとって非常に重要なファクターだと認識しており、イノベーション創出支援に本気で力を入れています。全国や海外の企業に、沖縄県をイノベーション創出の場として活用していただきたいと思っています。ぜひ本プログラムに挑戦していただき、一緒に新しいものを生み出していければと思います。

【沖縄タイムス社】 「メディアの発信力を生かし、女性が安心して働ける環境づくりの共同推進」

――まず、御社の事業概要や沿革、特徴についてお聞かせください。

沖縄タイムス社・佐渡山氏: 当社は1948年に創刊した沖縄の新聞社で、約13万部を発行しています。地域に根差した情報や国内外のニュースを、紙面、自社サイト、主要ポータルサイト、SNSを通じて配信しているほか、紙とデジタルの広告事業も展開中です。

また、沖縄戦直後の荒廃の中から立ち上がった歴史を持つ当社は、沖縄の文化復興にも注力しており、総合美術工芸展『沖展』の開催や、琉球舞踊、三線などの伝統文化継承活動も行っています。昨今は、スポーツイベントの開催、展示会の招致などのイベント運営、印刷・出版、コワーキングスペース運営など、多岐にわたる事業を展開しており、本社ビルでも様々なイベントを開催しています。

▲株式会社沖縄タイムス社 営業局営業部課長 佐渡山倫子 氏

――『OKINAWA Co-Creation Lab』に参画した理由と、「女性が安心して働ける環境づくり」を募集テーマに掲げた背景をお伺いしたいです。

沖縄タイムス社・佐渡山氏: 2019年頃から、弊社は社会課題に本気で取り組み始め、SDGsの項目に関連する新聞特集やイベント開催を行ってきました。その中で、私個人の問題意識から、2022年より女性特有の健康課題に焦点を当て、新聞での啓蒙活動や県内企業との勉強会、イベントなどを実施しています。女性個人に対しては、自分の体調やリズムを知ることで、日々の生活が楽になることを伝えてきました。

一方、企業に対しては、女性の健康課題が仕事に影響を与えることを認識してもらい、それをサポートすることで多様な人材の確保につながることを訴えてきました。こうした共通理解を生み出す社会づくりに取り組んできましたが、企業への提案時には「プライベートな問題だ」「男性社員もいるから」と返されることも多く、経営層まで届かないもどかしさを感じてきました。

そこで今回、他社の強みと当社の強みを組み合わせ、この問題により深く取り組んでいきたいと考え、本プログラムに参加することにしたのです。プログラムを通じて、新たな一手を一緒に考え、活動を発展させていきたいと思っています。

▲佐渡山氏が手がけた沖縄タイムスの企画「Step with You〜女性の健康支援と健康経営〜」。

――佐渡山さんの「個人の問題意識から」とのことですが、具体的にどのような課題感をお持ちだったのですか。

沖縄タイムス社・佐渡山氏: 私自身、結婚・出産を経て仕事と家庭の両立に苦労するようになりました。そんな時、自分で変えられるものは何かを考え、自身の体調管理の重要性に気づいたのです。女性特有の不快感も「仕方ない」と諦めるのではなく、フェムテック製品などを取り入れることで軽減できることを知り、自己管理を続けるうちに仕事のパフォーマンスも高められました。

この経験から、自分のやりたいことを実現するためには自分自身を大切にすることが重要だと実感し、この気づきを多くの人たちに共有したいと考え、今の活動に取り組んでいます。

――今回のプログラムでは、どのような強みを持った企業と、どのような共創を実現したいとお考えですか。

沖縄タイムス社・佐渡山氏: 私たち新聞社は、社会課題の掘り起こしや意識啓発が得意です。しかし、専門的な知見やデータ分析を通さなければ、実効性のある活動には結びつきません。そこで、データ収集や分析が得意な企業とともに、私たちの活動の実効性を高めていきたいと思っています。また、女性のセルフケアを後押しするようなソリューションやサービスの共同開発も目指しています。

――パートナー企業と共創ビジネスを立ち上げるにあたり、御社から提供できるリソースやアセットについてお聞かせください。

沖縄タイムス社・佐渡山氏: まず、メディアとしての情報発信力があります。約13万部の新聞紙面とニュースサイト、広告企画を通じて、幅広い層にPR活動を行うことができます。

また、講演会、展示会などを多数開催してきたので、イベントの企画・運営ノウハウも持っています。さらに、県内の多様な企業とネットワークもありますし、離島を含めた県内全域において、営業網と配達網を持っています。営業網については、広告やイベントの協賛企業の発掘に活用できます。配達網については、約340社の販売店と連携しており、発送体制が整っています。自社ビル内のイベント・ギャラリースペースも様々な用途で使えるでしょう。

▲フェムテック商品紹介など、展示会の企画・運営の実績も多数。

――最後に、応募企業に向けてメッセージをお願いします。

沖縄タイムス社・佐渡山氏: これまでも女性の健康課題に関する企画に携わってきましたが、その過程で私自身も多くの力をもらい、ワクワクしながら進めることができました。今後もこの活動を県全域へと積極的に広げたいと思っています。企業には「この活動に取り組んでよかった」と感じてもらうと同時に、女性個人には「やりたいことを諦めなくていいんだ」と実感してもらいたい。それが当たり前になる社会を一緒に構築していきたいと思っています。

【SOONESS】 「沖縄から取り組む過疎地域・離島でも実装可能な、障がい者向け新サービスの開発」

――まず、御社の事業概要や特徴についてお聞かせください。

SOONESS・銘苅氏: 当社は、障がいをお持ちの方々を対象に就労機会の提供や訓練を実施する継続支援A型の事業を運営しています。社名のSOONESS(ソーネス)は、Social(社会)とFullness(満ちた、充実)をかけあわせた造語で、「満ち足りた社会を実現する」というビジョンのもと運営しています。現在、35人の障がい手帳を持った方々が当社に通っていて、就労支援を行っています。

私自身が元々、IT企業を経営してきたため、IT領域から先行して事業を構築しています。具体的には、LINE予約システムの開発、ホームページ制作、データ入力、3Dデザインなどで事業構築を進めているところです。個々の特性に合わせた事業を作ることを目指しており、IT領域に限らず沖縄工芸品の制作や清掃などにも取り組んでいます。

▲株式会社SOONESS 代表取締役 銘苅誠也 氏

――本プログラム『OKINAWA Co-Creation Lab.2024』に参画しようと思った理由は?

SOONESS・銘苅氏: SOONESSは2021年に立ち上げた会社で、これまで下準備に時間をかけてきました。「私たちの活動を周知して、広げていきたい」と考えていたタイミングで、このプログラムのことを知り、参画することに決めたのです。今回のプログラムでは、沖縄という離島から都市部の業務を担うような活動を実現できたらと考えています。

▲福祉、不動産、事業開発など、幅広い事業を手掛けているSOONESS。

――今回、「沖縄から取り組む過疎地域・離島でも実装可能な、障がい者向け新サービスの開発」を募集テーマに設定されました。具体的にどのような共創に取り組んでいきたいとお考えですか。

SOONESS・銘苅氏: 例えば、遠隔操作のできるロボットを沖縄から操作して、都市部にあるカフェの受付やコンビニの在庫補充を行うような共創をイメージしています。これにより、沖縄にいながら都市部の業務を担うことができ、沖縄で働く人たちの所得向上につなげられると思っています。

共創パートナーとしてイメージしているのは、ロボットなどのIoT機器を使って、遠隔でも働ける業務をお持ちの企業などです。遠隔で業務を行えるのであれば、沖縄にサテライトオフィスを立ち上げることもできると思います。

このほか、企業がeラーニング等で障がい者雇用について学べる教育コンテンツの企画・制作にも取り組みたいです。私が就労支援に携わっていて思うのは、「障がいに対する社会の理解がまだまだ進んでいない」ということ。そうした課題を解決するために、企業向け教育コンテンツを一緒に開発したいと考えています。

――パートナー企業と共創ビジネスを立ち上げるにあたり、御社から提供できるリソースやアセットについてお聞かせください。

SOONESS・銘苅氏: 当社は就労支援A型事業所で、現在35名の利用者が通っています。今後は、当社だけでなく沖縄県内の他の就労支援事業所とも連携して取り組みを進めていきたいと考えています。ですから、沖縄県内の就労支援事業者とのネットワークは、活用できるリソースのひとつとなるでしょう。また、当社には障がい者雇用分野のノウハウやナレッジも蓄積されているので、そうした知識も随時提供が可能です。

――最後に、応募企業に向けてメッセージをお願いします。

SOONESS・銘苅氏: 私たちの企業は、「Diversity(多様性)」「Inclusion(包摂)」、そして「Circulation(循環)」の3つの軸で事業活動を行っています。ハンディキャップがあっても、性別に関係なく誰もが活躍できる、そんな社会を目指しているので、この想いに共感いただける企業と、ぜひ一緒に取り組みたいです。私たちのようなベンチャー企業から大企業まで、企業規模は問いません。興味をお持ちいただけましたら、ぜひご応募ください。

取材後記

沖縄県内企業とデジタル技術・サービスを持つパートナーとの共創で、沖縄県の産業振興を目指す『OKINAWA Co-Creation Lab.2024』。本日公開した【前編】では、沖縄県庁とホスト企業2社(沖縄タイムス社/SOONESS)に、本プログラムにかける想いを聞いた。続く後編では、残る3社(琉球朝日放送/福地組/トータルライフサポート研究所)への取材内容をお届けする。5社の野心的な事業構想に、ぜひ注目してほしい。

(編集:眞田幸剛、文:林和歌子)

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