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「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く(53)〜資本業務提携

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く(53)〜資本業務提携

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今やスタートアップにとっても、大企業にとっても欠かせない戦略となったオープンイノベーション。お互いのシナジーを求めて「業務提携」をするケースが増えていますが、より強い関係性を構築できるのが「資本業務提携」です。

TOMORUBAの【「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く】第53弾では、この「資本業務提携」について紹介します。M&Aとどう違うのか、どのようなメリットや注意点があるのか紹介するので参考にしてください。

資本業務提携とは?

資本業務提携とは、企業同士が資本関係を構築し同時に業務面でも提携することを指します。単なる業務提携とは異なり、資本参加することで、より強い関係性を構築できるのが特徴です。

一般的な業務提携が期間限定で、コスト削減や情報共有など経営に対する影響が部分的なのに対し、資本業務提携は長期的で、経営基盤の強化や事業拡大など経営に直結する目的で行います。また、経営に対するメリットが大きい分、経営権の喪失リスクや意思決定権の複雑化といったリスクを負うことになります。

資本業務提携が向いている企業

資本業務提携は様々な企業にとって有効な選択肢となりえますが、特に以下の特徴を持つ企業に向いていると言えます。

・新規事業を検討している企業

自社単独では参入が難しい市場や事業分野への進出も、資本業務提携を通じて実現できます。提携先企業のノウハウや顧客基盤を活用することで、スムーズな参入が可能となるでしょう。提携先のリソースを活用することで、スピーディーに事業展開できるのも魅力的です。

・既存事業を強化したい企業

提携先企業の技術や人材を活用することで、商品・サービスの開発や品質向上、コスト削減などを図れます。これまで参入できなかった市場に対しても、提携先の販路を活用することでスムーズな事業展開が可能です。

・リスクを分散したい企業

資本業務提携を通じて、事業リスクや市場リスクなどを共同で負うことになります。投資リスクの高い事業を始める際にも、パートナーと共同であればハイリスク・ハイリターンな投資ができるでしょう。

・情報共有を促進したい企業

資本業務提携を通じて、提携先企業と情報やノウハウを共有できます。通常の業務提携でも共同研究や新規事業を進めることはできますが、より密接に情報を共有しながら事業を進めるのであれば資本業務提携が得策でしょう。

・経営基盤を強化したい企業

資本業務提携で資本参加を受ける側にとっては、資金調達や経営の安定化につながります。資金を得ることで経営基盤を強化し、よりリスクの高いチャレンジも可能になるでしょう。資本参加を行う側にとっては、事業拡大やリスク分散という意味で経営基盤を安定することに繋がります。

・グローバル展開を目指す企業

海外市場への進出において、現地企業との資本業務提携は有効な手段です。提携先企業の現地でのネットワークやノウハウを活用することで、スムーズな進出が可能となるでしょう。一方で、国内よりも情報の少ない海外で資本業務提携をすることは、それだけリスクも高くなります。

・事業承継を検討している企業

後継者不足などの課題を抱える企業にとって、資本業務提携は事業承継の選択肢の一つとなります。提携先企業に事業の一部または全部を譲渡することで、事業を継続できるからです。経営権を譲渡せずに事業承継を実現でき、後継者が経営に慣れるまでの間、先代経営者が経営に携わることで円滑な事業承継のサポートも可能です。

資本業務提携とM&Aの違い

資本業務提携とM&Aは、どちらも企業同士が協力関係を構築する手法ですが、下記のような重要な違いがあります。

資本業務提携のメリット

資本業務提携によってどのようなメリットを得られるのか詳しく見ていきましょう。

・経営リソースの獲得

資本業務提携のメリットの一つは、経営資源を獲得できること。提携相手から資金や人材、技術ノウハウなど、自社が不足している経営資源を補えます。

特に中小企業の場合、単独では十分な資金や人材を確保するのが難しい場合があります。資本業務提携によって、これらの課題を克服し、事業の成長を加速させられるでしょう。具体的な例としては、以下のようなリソースを獲得できます。

資金調達:出資や融資を受けることで、設備投資や研究開発への投資などに必要な資金を調達できます。

人材獲得:優秀な人材を受け入れることで、自社の事業に必要な専門知識やスキルを持った人材を確保できます。

技術導入:提携先の最新技術を導入することで、新商品・サービスの開発や、生産性の向上を実現できます。

ノウハウの共有:提携相手と経営ノウハウを共有することで、経営の効率化や意思決定の迅速化を図れます。

・新規事業への参入

資本業務提携は、新規事業への参入を促進する効果もあります。自社単独では参入が難しい分野であっても、提携相手と協力することで参入障壁を克服できるでしょう。たとえば、新規事業への参入で以下のようなメリットを感じられます。

グローバル進出:提携相手の海外拠点や販路を活用することで、自社製品・サービスを海外市場に展開できます。

新分野への進出:提携相手の持つ技術やノウハウを活用することで、自社とは異なる分野の事業を展開できます。

・規模の経済の追求

資本業務提携によって、規模の経済を追求できます。規模の経済とは、生産量や販売量が 増加することで、平均単価が低下し、利益率が向上する経済効果です。具体的な例としては、以下のようなものがあります。

共同生産・共同販売:提携相手と共同で生産・販売を行うことで、生産コストや販売コストを削減できます。

研究開発の共同化:提携相手と共同で研究開発を行うことで、研究開発費を削減できます。

購買力の強化:共同で原材料や部品を調達することで、より有利な価格で調達できます。

・リスクの分散

資本業務提携は、リスクを分散する効果もあります。単独で事業を展開するよりも、複数企業でリスクを共有することで、経営を安定させられます。具体的には、以下のようなリスクを分散できます。

市場環境の変化:市場環境が変化しても、提携相手との協力関係によって、事業への影響を最小限に抑えられます。

技術開発のリスク:新商品・サービスの開発において、技術開発が失敗しても、提携相手と協力して新たな開発を進められます。

信用リスク:単独では取引が難しい相手であっても、提携相手と共同で取引を行うことで、信用リスクを低減できます。

・経営シナジーの創出

資本業務提携は、経営シナジーを生み出せます。提携によって、単純に双方の経営リソースを合算する以上のビジネス効果を期待できるのです。具体的な例としては、以下の効果が期待できます。

クロスセル・アップセル:自社の商品・サービスを提携相手の顧客に販売したり、提携相手の商品・サービスを自社の顧客に販売したりすることで、売上拡大を図れます。

共同マーケティング:提携相手と共同でマーケティング活動を行うことで、より多くのお客さまに自社の商品・サービスを知ってもらえます。

ブランディングの強化:提携相手と協力してブランディングを行うことで、企業価値を高められます。

資本業務提携のリスクと対策

様々なメリットのある資本業務提携ですが、当然デメリットも存在します。どのようなデメリットが存在するのか、どんな対策を講じればよいのか紹介していきます。

・経営権の喪失リスク

資本業務提携によっては、出資比率や議決権の割合によっては、経営権を喪失するリスクがあります。提携相手が経営に介入し、自社の意に反する経営判断が行われる可能性があるのです。経営権を維持したい場合は、以下の点に注意しましょう。

出資比率を制限する:提携相手が出資できる比率を制限することで、経営権を維持できます。

議決権の配分を工夫する:重要な議決事項について、自社が過半数の議決権を保有するようにすることで、経営権を維持できます。

ガバナンス体制を整備する:提携相手との間で、透明性のあるガバナンス体制を整備することで、経営権の濫用を防げます。

・意思決定の複雑化

資本業務提携により、意思決定の過程が複雑化する可能性があります。提携相手との間で合意形成を行う必要があり、迅速な意思決定が難しくなる場合があります。意思決定の迅速化を図るためには、以下の点に注意しましょう。

定期的に協議の場を設ける:提携相手と定期的に協議する場を設け、意思決定を円滑化します。

意思決定のルールを明確化する:重要な議決事項については、事前に意思決定のルールを明確にしておきます。

責任の所在を明確にする:各案件における責任の所在を明確にしておくことで、意思決定の迅速化を図れます。

・企業文化の違いによる摩擦

資本業務提携においては、異なる企業文化を持つ企業が協力することになるため、摩擦が生じる可能性があります。相互理解が深まらず、意思疎通がうまくいかない場合、協業関係を築けなくなります。企業文化の違いによる摩擦を回避するためには、以下の点に注意しましょう。

相互理解を深める:提携相手と積極的にコミュニケーションを図り、相互理解を深めることが重要です。

共通のビジョンを共有する:提携相手と共通のビジョンを共有し、協業関係の目的を明確にする必要があります。

コミュニケーションのルールを設ける:効果的なコミュニケーションを促進するために、コミュニケーションのルールを設けておくことも有効です。

・提携相手の財務状況悪化の影響

資本業務提携においては、提携相手が財務状況悪化に陥った場合、自社にも影響が及ぶ可能性があります。損失を被ったり、債務を負担させられたりするリスクがあるのです。提携相手の財務状況悪化のリスクを回避するためには、以下の点に注意しましょう。

デューデリジェンスを徹底する:提携前に、提携相手の財務状況を十分に調査する必要があります。

契約書にリスク分担条項を盛り込む:提携相手が財務状況悪化に陥った場合のリスク分担について、契約書に明確に定めておきます。

モニタリング体制を整備する:提携相手との関係を定期的にモニタリングし、リスクの兆候がないかどうかを確認する必要があります。

・文化統合の難しさ

異なる企業文化を持つ企業が合併した場合、文化統合に時間がかかり、業績に影響が出る可能性があります。社員のモチベーション低下や離職率増加に繋がるリスクもあるので気をつけましょう。文化統合を円滑に進めるためには、以下の点に注意する必要があります。

共通の価値観を共有する:合併後も存続する企業の共通の価値観を共有し、社員の理解を得ることが重要です。

コミュニケーションを活性化する:合併後の新しい組織におけるコミュニケーションを活性化し、社員同士の一体感を高める必要があります。

人事制度を統合する:合併後の新しい組織の人事制度を統合し、公平性のある人事制度を構築する必要があります。

資本業務提携先の探し方

資本業務提携先を探す方法は、大きく分けて3つあります。

・自力で探す

業界団体や商工会議所などの情報を利用する:多くの業界団体や商工会議所では、会員企業向けの情報提供や交流会などのイベントを開催しています。これらの情報やイベントを活用することで、自社の事業に合致する提携先候補を見つけられるでしょう。

また、インターネット上には、企業情報やM&A・提携情報などを掲載しているサイトが多数存在します。これらのサイトを活用することで、自社のニーズに合致する提携先候補を効率的に検索できます。

・仲介業者を利用する

M&A・提携に特化した仲介業者に依頼することで、自社のニーズに合致する提携先候補を効率的に見つけられます。仲介業者は、豊富な情報網と専門知識を活かして、非公開情報を入手したり、水面下での交渉も可能です。

・公的機関の支援を利用する

中小企業庁やジェトロなどの公的機関では、中小企業向けのM&A・提携支援事業を実施しています。これらの支援事業では、専門家による相談やアドバイスを受けられるほか、マッチングイベントやセミナーなども開催されています。

資本業務提携の事例

近年、様々な業界で資本業務提携が活発化しています。以下、3つの事例を紹介するので参考にしてください。

・株式会社ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス×株式会社WAKUWAKU

2023年、中古仲介とリノベーションのワンストップサービス「リノベ不動産」を運営する株式会社WAKUWAKU(ワクワク)は、ヤマハと資本業務提携を締結しました。「音楽×住宅」領域における新たな共創の可能性を継続的に探っていくのが狙いです。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000120339.html

・三井化学株式会社×デジタルグリッド株式会社

発電事業者と需要家間で直接、電力取引ができるプラットフォームサービスを提供しているデジタルグリッド株式会社は2021年に三井化学株式会社から出資を受け、日本の再生可能エネルギー導入推進に向けたデータソリューション型ビジネスの強化に乗り出しました。

三井化学が持つ、短時間での発電性能診断や期待発電量予測のノウハウをプラットフォームに活用していきます。

https://jp.mitsuichemicals.com/jp/release/2021/2021_1213/index.htm

・株式会社商船三井×メトロウェザー株式会社

株式会社商船三井はCVCの株式会社MOL PLUSを通して、風況観測・予測ソリューションを提供する、京大発ベンチャーのメトロウェザーに出資しました。商船三井による、風と水素で走るゼロエミッション船の実証実験で、海上における風況実測の共同研究に取り組んでいます。

https://www.mol.co.jp/pr/2024/24032.html

編集後記

資本業務提携は提携先企業とより深い関係を築ける一方で、大きなリスクを背負う両刃の剣となります。提携先のデューデリジェンスや、公平な契約を結ぶためにも、専門家が間に入って提携を進めるのが得策と言えるでしょう。

(TOMORUBA編集部)

■連載一覧

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  • 眞田 幸剛

    眞田 幸剛

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