「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㊻〜パーソナライゼーション
顧客ニーズに適切に対応するため、個人に合わせたサービスやコンテンツなどを提供するマーケティング手法「パーソナライゼーション」が注目を集めています。
――TOMORUBAの【「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く】第46弾では、「パーソナライゼーション」をピックアップ。この手法が必要とされている理由や実践するためのポイント、具体的な事例などを取り上げ、解説していきます。
個人ごとにカスタマイズして情報発信を行う
「パーソナライゼーション」とは、パーソナライズという動詞の名詞形であり”何かを個人向けにカスタマイズすること”を意味します。例えば、テレビのCMや新聞・雑誌の広告のように、不特定多数に向けてメッセージを配信するのではなく、個人ごとにカスタマイズしてメッセージを配信します。
代表的な例は、Amazonの「あなたへのおすすめ」機能です。好きな作家の本を紹介してくれたり、購入した商品の関連情報を提供してくれたりします。これは購入履歴や検索履歴や購入履歴などからユーザーの嗜好を解析。個人の特性に合わせた専用の商品情報を告知しています。
ユーザーにとっては、自分と親和性の高い商品や情報が提供されるので、利便性が高くなるというメリットがありますが、その一方で過度なパーソナライゼーションは「個人情報が抽出されすぎていて不愉快」という声も上がります。
パーソナライゼーションが必要とされる2つの理由
パーソナライゼーションが必要とされる理由には、インターネットの普及に伴った2つの要因があると考えられます。
ユーザー自らが情報収集し、商品・サービスを選択
インターネットが普及することにより、ユーザーの行動範囲が拡大。企業側からの発信を待つことなくユーザー自身が情報を収集して商品やサービスを選ぶようになりました。これによって、購入に至るまでの主導権が、ビジネス側からユーザー側に移行したと言えます。そのため、商品・サービスを提供する企業側は、ユーザーがアプローチする情報を想定し、その情報を個別最適化することで、商品・サービスへの興味関心を喚起する必要に迫られました。そこで、パーソナライゼーションが必要になったのです。
一方的・画一的なマーケティングが響かない
ユーザーが得られる情報が増加し、様々な情報を取得できるようになったことで価値観も多様化しました。その結果として、従来の一方的かつ画一的なマスマーケティングで心を動かされる層が減り、パーソナライズされた情報提供の重要性が高まったと考えられます。
パーソナライゼーションを実践することで得られるメリット
パーソナライゼーションの代表的なメリットや効果には、以下の4つがあります。それぞれ紹介していきます。
ユーザーのエンゲージメントを向上
一人ひとりの属性や行動履歴、ニーズを分析し、最適化した情報を提供することが、パーソナライゼーションでは可能となります。これによってユーザーは「自分を大切にしてくれている」といった特別感を得られ、上質な体験を通して企業へのエンゲージメントを高めて、信頼関係を構築していきます。
顧客単価を高める
パーソナライゼーションによってエンゲージメントが高まったユーザーは、企業との結びつきや信頼をより深めて、商品やサービスを継続的に使用します。また、さらなるエンゲージメントの向上に期待して、より単価の高い商品・サービスの購入につなぐことができるでしょう。
コンバージョン率の向上
ニーズに合わせた情報を、ユーザーへダイレクトに提示することで、コンバージョン率の向上が期待できます。コンバージョン率は測定可能な指標です。パーソナライゼーションの成果を可視化するためにも、目標を設定して数値を測定しましょう。
ユーザーの潜在的ニーズを掘り起こす
ユーザー一人ひとりを深く分析するパーソナライゼーションは、ユーザー自身が気づいていない潜在的なニーズの掘り起こしにもつながります。「実はこういうものが欲しかった」といった気づきを与えることができれば、さらにコンバージョン率を高めることができるはずです。
パーソナライゼーションを実践するためのポイント
パーソナライゼーションを実践するために必要なポイントを4つ取り上げ、紹介していきます。
タイミングにあわせた情報提供
ユーザーの行動データ履歴に注目して、それぞれのタイミングにあわせた情報提供などを実施しましょう。例えば、特定ジャンルの商品をよく検索している、買い物かごに商品を入れたが購入しないままになっているといったタイミングで、メルマガ配信したり割引券を配布したりするのが良い例です。
適切なコミュニケーション方法を選択する
ユーザーの購買行動や価値観だけでなく、コミュニケーション方法も多様化しています。近年では電話やメールだけでなく、SNSなどさまざまなコミュニケーション手段が一般化してきました。ユーザーによって電話はしたくない、メールは使っていないなど好みや利用状況が異なるため、それぞれの状況に応じた選択が大切です。
幅広いデータを取得
ユーザーは自分に合った商品やサービスを求める傾向が強いです。そのため、基本的な顧客情報だけでなく、閲覧履歴や購買履歴、背景情報などの幅広いデータを取得しましょう。これらをもとにユーザーのニーズを分析し、商品やサービス開発に活用します。
A/Bテストを活用
AとBの異なるパターンのコンテンツを同じ条件下で表示して、どちらの方が特定の顧客ジャンルに受け入れられるのかを検証する「A/Bテスト」を活用しましょう。1回だけ検証するのではなく、場合によっては複数回検証することもあります。A/Bテストによって属性ごとのパターンや好みなどを把握できるため、これらの情報をもとにしてより精度の高いパーソナライゼーションが可能です。
パーソナライゼーションを実践する上で重要となる「データ」
パーソナライゼーションを実践するためには、以下の3つのデータが重要となります。
コンテキスト<顧客の環境>
コンテキストは背景情報のこと。背景情報とは、顧客が使用しているデバイスの種類やサイトやアプリを利用する時間帯、住んでいる地域などの情報を指します。背景情報を把握することで、顧客行動に間接的な影響を与えられます。
デモグラフィック<顧客の属性>
人口統計学的属性を意味するデモグラフィックは、性別や年齢といった基本的な情報から、顧客の興味関心といった「顧客の属性」を指します。これらをもとに、顧客にあった情報を提供できます。
ビヘイビアー<顧客の行動データ履歴>
ビヘイビアーは、パーソナライゼーションの効果がもっとも高いポイントです。ECサイトでどのような商品を閲覧しているか、どのバナーをクリックしているか、購買履歴などが行動データ履歴に当たります。特定のジャンルの商品を多く閲覧している顧客には関連した商品をレコメンドしたり、購買履歴から関係するコンテンツを表示したりできるため、顧客にあった情報の提供が可能です。
パーソナライゼーションの事例
それでは最後に、パーソナライゼーションの具体例を紹介していきます。
Amazonのレコメンド機能
Amazonを開くと、検索したり、購入したりした商品の類似商品が「おすすめ」として表示されます。これは、レコメンド機能とよばれるパーソナライゼーションの手法。顧客の閲覧履歴や行動履歴に合った商品を示して興味を引くことによって、webサイトの滞在時間が長くなり、商品の購買率が高まります。
Netflixのレコメンド機能
ユーザーが好みの番組や映画のタイトルを見つけることができるよう、Netflixでは独自のレコメンド機能を提供しています。その基準になっているのは、ユーザーがNetflixで過去に視聴した番組やその評価、似た属性を持つユーザーの視聴傾向、よく視聴する時間帯と視聴時間、視聴しているデバイスなどの情報です。これらの情報をアルゴリズムで処理し、最適な提案をすることで、ユーザーのモチベーションをアップさせています。
ふるさと納税サイト「さとふる」
さとふるでは、サイト来訪者を「初回来訪者」、「非会員来訪者」、「寄付実績のある会員」、「寄付実績のない会員」の4つに分類し、Web上で表示する画面をパーソナライズ化しました。初めて来訪する人には人気のある商品を、何度も寄付実績のある会員には新着の返礼品を送るというパーソナライゼーション をWeb上でも導入。コンバージョン率が飛躍的に向上しました。
(TOMORUBA編集部)
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