TOMORUBA

事業を活性化させる情報を共有する
コミュニティに参加しませんか?

AUBA
  1. Tomorubaトップ
  2. ニュース
  3. 「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㊾〜タレントマネジメント
「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㊾〜タレントマネジメント

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㊾〜タレントマネジメント

  • 11299
  • 11292
  • 11252
7人がチェック!

少子高齢化の影響により、労働人口の減少が大きな課題になっている日本。厳しい採用市場で戦うことも重要ですが、それよりも重要なのは、メンバー一人ひとりのスキルを最大限活用すること。

TOMORUBAの【「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く】第49弾では、そのためには必要な「タレントマネジメント」を取り上げます。どのようなメリットが期待できるのか、どのような企業がタレントマネジメントによって成果を上げているのか紹介していきます。

タレントマネジメントとは

タレントマネジメントとは、従業員と組織のパフォーマンスの最大化を目指す人材マネジメントのこと。そのために、従業員が持つ能力やスキルといった情報を重要な経営資源として捉え、採用や配置、育成に活用していきます。

タレントマネジメントの主な目的は「企業の経営目標を達成させるための戦略的な人員配置」と「個々の能力を発揮するための人事戦略の実行」です。採用、配置、目標設定・評価、業績賞与といったさまざまな機能に対して、個別の施策として実施されているものを統合し、経営目標達成に向けて人材をマネジメントするのが基本的な考え方となります。

タレントマネジメントの重要性

タレントマネジメントが重要視されるのは、次のような要因があります。

組織の競争力強化

タレントマネジメントでは、従業員一人ひとりの情報を把握し、それを基に育成やマネジメントを進めます。従業員一人ひとりが持つスキルや能力を最大限に活用できる配置を行うため、個人のパフォーマンスが最大化され、結果的に組織の競争力が強化されるでしょう。

人材の確保と育成

タレントマネジメントでは、経営戦略に沿って適正人材を要件定義し、採用活動へ繋げるため、優秀な人材を確保しやすくなります。また、採用後も従業員一人ひとりの能力を見ながら、適切な育成を行うため持続的な成長を支えてくれます。

従業員満足度の向上

タレントマネジメントを行うことで、従業員のスキルや能力を十分に発揮できる環境を整備できるようになります。それによって会社へのエンゲージメントを高め、モチベーションも向上できるため、離職率を下げながらパフォーマンスを高められるでしょう。

リーダーシップの育成

成長が鈍化する企業では、リーダーの不足が問題になることもよくあります。一時的に大きな成果を上げても、継続的にリーダーを育てなければいずれ成長は止まってしまうでしょう。タレントマネジメントでは、将来のリーダーを見つけ出し、育成することで次々に新しいリーダーを生み出し、持続的な成長を実現してくれます。

タレントマネジメントの背景

なぜ近年、タレントマネジメントが重要視されているのでしょうか。その背景を説明します。

少子高齢化に伴う慢性的な人材不足

少子高齢化が進む日本では、慢性的な人材不足が起こっています。採用市場が縮小することで、企業は必要な人材を確保することが難しくなるのです。そのような中では、採用活動を続けると共に人的資源をより効率的に活用しなければなりません。

加えて、現在働いている人たちのエンゲージメントを高め、長く働いてもらう必要もあります。従業員一人ひとりが持つスキルや能力を理解し、それを最大限に活用するためのタレントマネジメントが求められているのです。

人材の多様化

近年は価値観やライフスタイルが多様化していることから、企業にも多様性のある組織づくりが求められています。しかし一方で、多様な人材をマネジメントするのは、同質な組織をマネジメントするよりも難しいもの。

そのため、メンバー一人ひとりにフォーカスを当てて、パフォーマンスを最大化できるタレントマネジメントの考えが重要になるのです。多様な人材が、それぞれ異なる視点とアイデアを持ち出すことで、新たなビジネスチャンスにも繋がるでしょう。

急速な市場変化

VUCAの時代とも呼ばれる現代は、市場も急速に変化しており、企業は自社のビジネスモデルや戦略を柔軟に変えていく必要があります。そのためには、組織内の人材が新しいスキルを学び、新たな役割を担っていかなければなりません。

タレントマネジメントは、このような状況に対応するための重要な戦略となります。従業員一人ひとりが持つスキルや能力を理解し、それを最大限に活用することで、組織全体の柔軟性と対応力を高められるでしょう。

タレントマネジメントを導入する際の注意点

タレントマネジメントの導入には、決まった手順があるわけではなく、企業によって進め方は様々です。しかし、一般的には専門家に相談したり、システムを導入しながら進めていきます。タレントマネジメントを導入する際の注意点も紹介するので参考にしてください。

明確な目的設定

タレントマネジメントは決まった形がないため、明確な目的意識がなければ何も意味がありません。様々なメリットを期待できるタレントマネジメントだからこそ、なぜ導入するのか、どのような効果を期待して導入するのかを明確にし、組織で共有しましょう。

目的を決める際には、経営戦略や組織運営の目標に合致している必要があります。タレントマネジメントを独自の取り組みにするのではなく、あくまで会社の目標を達成するための手段という意識を忘れずに行いましょう。

適切なベンダー選定

タレントマネジメントの実施にはシステムの導入が書かせませんが、その際にはベンダー選定を慎重に行ってください。システムの選定も重要ですが、ベンダーとの相性が悪ければ、様々なトラブルに繋がってしまいます。

どんなに使いやすいシステムを導入しても、何か問題があった時にレスポンスが遅かったり、納得できない提案をされるようでは、十分な効果を期待できないでしょう。本格的な導入を決める前に、レスポンスの速さは十分か、適切なサポートをしてくれるかなどをよく確認してください。

データの移行計画

タレントマネジメントシステムを導入する際には、既存の従業員データをシステムに移行する必要があります。その際にデータの間違いなどが起きると、適切なマネジメントができません。

正確かつスムーズにデータを移行できるよう、しっかりと計画を練ってからデータを移行していきます。

運用の改善

タレントマネジメントシステムは導入して終わりではありません。システムを導入しても、組織にタレントマネジメントを浸透させるには時間がかかりますし、何度も改善を繰り返していく必要があるでしょう。

経営層や従業員から定期的なフィードバックを収集し、改善していける仕組みも作るのがおすすめです。

人材データ管理を怠らない・全社で活用する

タレントマネジメントには、常に最新の人材データを活用する必要があります。データが古いままで適切なマネジメントができず、タレントマネジメントをしているつもりでも、メンバーの満足度は上げられません。

常に人材データを最新に更新するために、どのような仕組みが必要なのか考え実施しましょう。

継続する

タレントマネジメントは短期間でメリットを享受できるものではありません。試行錯誤を繰り返しながら、自社に合ったやり方を見つけていく必要があります。そのため、導入する際には、ある程度の期間継続する覚悟をもって始めましょう。

最初から時間がかかることを理解しておけば、すぐに効果が出なくとも諦めずに続けられるはずです。

タレントマネジメントの成功事例

タレントマネジメントは、決まった手法があるわけではないので、何をすればいいのかイメージが湧かない人もいるでしょう。ユニークな取り組みによってタレントマネジメントを成功させた事例を紹介するので参考にしてください。

サントリーホールディングス

サントリーホールディングスでは、定期的なグループレベルでのタレントレビューを実施しています。また、ユニークな取り組みとしては、社員が年に一回、希望する部署の申告ができる精度や、キャリアビジョンシートに基づいて、マネージャーとキャリアプランを話しあう機会を設けています。

2020年に行った調査では、自らの仕事にやりがいを感じている社員は78.1%、そのうち66.9%が満足している、という結果が出ています。サントリーに勤める社員のエンゲージメントが高いことがわかるでしょう。

日産自動車

日産自動車ではタレントマネジメントに特化した部門を置き、社内スカウトマンを導入しています。日本はもちろん海外で雇用している従業員のなかから優秀な人材を選定し、リーダー育成用のプログラムへの参加を促しているのです。

日本はもちろん海外で雇用している従業員のなかから優秀な人材を選定し、リーダー育成用のプログラムへの参加を促すことができ、「自分の頑張りが評価されている」という満足感が出やすいことなどのメリットがあるようです。

日清食品ホールディングス

日清食品ホールディングスでは、人材育成を目的とした企業内大学「NISSIN ACADEMY」を設立しました。全社員対象の研修・自己啓発支援・経営者候補の育成・各部門のリーダー候補選抜試験など、多彩な取り組みをしています。

その他、結婚・妊娠・出産・住宅購入・介護などプライベートな人生設計や海外赴任・異動・昇進などを含むキャリアプランなどをトータルで考えるライフデザインセミナーも行っています。また、リーダー層を対象としたアウトドア研修など社内独自の企画も。グルメ全体のビジョンである「EARTH FOOD CREATOR」を実現するための取り組みとして、現在も新たな企画が生まれ続けています。

タレントマネジメントを実践することで得られる長期的な影響

タレントマネジメントは短期的に効果を発揮する取り組みではありますが、長期的に実施することで、どのようなメリットを得られるのか紹介していきます。

企業成長の貢献

タレントマネジメントは、従業員が持つスキルや能力、経験を把握し、採用や育成・配置を戦略的に行うことで企業の成長につなげます。その結果、長期的な視点で企業成長に貢献することが期待されています。

人材の力の最大化

タレントマネジメントは、人材の力を高め、個々のパフォーマンスを経営に活かせる環境を作っていくことが大切です。これにより、従業員は自身の能力を最大限に発揮できる環境を提供できます。

後継者の育成

タレントマネジメントは、後継者を育てていくという視点でも運営できます。これにより、企業は将来的なリーダーシップの確保という重要な課題に対応することが可能となります。再現性高く、次世代のリーダーを育成することができれば、企業の持続的な成長を支えてくれることになります。

(TOMORUBA編集部)

■連載一覧

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く①〜ポーターの『5フォース分析』

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く②〜ランチェスター戦略

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く③〜アンゾフの成長マトリクス

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く④〜チャンドラーの「組織は戦略に従う」

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑤〜孫子の兵法

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑥〜VRIO分析

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑦〜学習する組織

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑧〜SWOT分析

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑨〜アドバンテージ・マトリクス

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑩〜ビジネスモデルキャンバス(BMC)

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑪〜PEST分析

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑫〜PMF(プロダクト・マーケット・フィット)

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑬〜ブルーオーシャン戦略

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑭〜組織の7S

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑮〜バリューチェーン

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑯〜ゲーム理論

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑰〜イノベーター理論

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑱〜STP分析

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑲〜規模の経済

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く⑳〜ドミナント戦略

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉑〜LTV

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉒〜IPO

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉓~MVP戦略

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉔〜プラットフォーム戦略

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉕〜ジレットモデル

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉖〜フリーミアムモデル

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉗~フリー戦略

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉘〜ダイナミックプライシング

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉙~ストックオプション

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉚~コア・コンピタンス経営

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉛~コストリーダーシップ戦略

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉜~マーケティング近視眼

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉝~ロングテール戦略

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉞~ファブレス経営

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㉟~マーケティングファネル

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㊱〜RFM分析

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㊲〜IPビジネス

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㊳~キャッシュマシン

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㊴〜D2C

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㊵〜PPM分析

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㊶〜コンテンツマーケティング

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㊷〜両利きの経営

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㊸〜バランススコアカード

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㊹〜BPO

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㊺〜ファンベースマーケティング

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㊻〜パーソナライゼーション

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㊼〜人的資本経営

「勝つための学び直し」ビジネス戦略論を読み解く㊽〜AISAS

新規事業創出・オープンイノベーションを実践するならAUBA(アウバ)

AUBA

eiicon companyの保有する日本最大級のオープンイノベーションプラットフォーム「AUBA(アウバ)」では、オープンイノベーション支援のプロフェッショナルが最適なプランをご提案します。

チェックする場合はログインしてください

コメント7件