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カーボンプライシングがもたらす行動変容とは?国によってことなるアプローチや大企業の導入事例を紹介

カーボンプライシングがもたらす行動変容とは?国によってことなるアプローチや大企業の導入事例を紹介

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パリ協定で定められた「世界の気温上昇を産業革命前に比べ1.5度までに抑える」を達成するための指標として、先進国では「2050年までにCO2排出量をゼロにする」ことが目標になっています。これがいわゆるカーボンニュートラルですが、日本でも段階的な目標として2030年までにCO2排出量を46%削減することを目指しています。TOMORUBAの連載「カーボンニュートラル達成への道」では、各業界がどのように脱炭素に向けた取り組みをしているのか追いかけていきます。

今回のテーマは『カーボンプライシング』です。その名の通り、CO2に価格をつけることを指す言葉ですが、CO2に価格がつくと企業や個人にどのような行動変容が生じるのでしょうか。解説していきます。

カーボンプライシングとは政府主導、民間主導などさまざまなアプローチがある

カーボンプライシングは、CO2に価格を付け、排出者の行動を変容させる手法です。政府によって行われるカーボンプライシングは大まかに「炭素税」と「国内排出量取引」そして「クレジット取引」の3パターンがあります。

  1. 企業などが燃料や電気を使用して排出したCO2に対して課税する「炭素税」

  2. 企業ごとに排出量の上限を決め、それを超過する企業と下回る企業との間でCO2の排出量を取引する「排出量取引制度(ETS=Emission Trading Scheme)」

  3. CO2の削減を「価値」と見なして証書化し、売買取引をおこなう「クレジット取引」

引用:脱炭素に向けて各国が取り組む「カーボンプライシング」とは?|環境省

また、法律による規制として「石油炭素税」など、エネルギーにかけられる諸税もカーボンプライシングに含まれます。政府主導のカーボンプライシング以外にも、企業が自社のCO2排出を抑えるために、炭素に対して独自に価格づけをして、投資判断などに活用する「インターナル(企業内)・カーボンプライシング」などの方法があります。地域ごとのカーボンプライシング実施にどのような特色があるかは後述します。

出典:脱炭素に向けて各国が取り組む「カーボンプライシング」とは?|環境省

カーボンプライシングのカバー率と地域ごとのアプローチの違い

カーボンプライシングはどの程度浸透しているのでしょうか。世界銀行の調査によると、2021年時点で、64のカーボンプライシングが導入されており、これは温室効果ガス(GHG)排出量の約21.5%をカバーしています。2010年時点での導入数は19であったことを考えると、近年急速にカーボンプライシングの浸透が加速していることがわかります。

64のカーボンプライシングの内訳を見てみると、炭素税が35で排出量取引制度(ETS)が29と拮抗しています。炭素税は、1990年にフィンランドとポーランドで導入され、主に欧州で広がりました。日本では2012年に地球温暖化対策税(温対税)として導入されました。一方、ETSを初めて導入したのはEUで、2005年のことです。中国では2021年7月から全国レベルでETSがスタートしました​​​​​​。

出典:世界で導入が進むカーボンプライシング(前編)炭素税、排出量取引制度の現状 | グリーン成長を巡る世界のビジネス動向 - 特集 - 地域・分析レポート - 海外ビジネス情報 - ジェトロ

上図からも見てとれますが、カーボンプライシングの実施には、地域ごとに異なるアプローチをしています。これは、各国の経済構造、エネルギー政策、環境目標などによって異なっていて、例えば、EUはETSを中心に展開しています。排出量の上限を定め、市場メカニズムを通じて排出を抑制する仕組みです。一方で、スウェーデンやフィンランドなどの北欧諸国は、炭素税の高いレベルを設定して、直接的な排出削減を目指しています。

アジア諸国では、中国が全国規模のETSを導入し、排出量の大幅な削減を図っています。日本では、地球温暖化対策税として炭素税が導入されており、東京都では独自の排出量取引制度を設けているのが特徴です。

これらの違いは、各国の環境政策や産業構造、エネルギー資源への依存度など、様々な要因によって形成されます。そのため、カーボンプライシングの効果は地域ごとに大きく異なるのです。

カーボンプライシングがもたらすビジネスの影響と導入事例

カーボンプライシングはビジネスにも影響をもたらします。企業はカーボンプライシングによるコスト増を避けるようになりますから、より環境に優しい製品の開発や省エネの技術へ投資するという行動変容が発生し、イノベーションの種としても期待を集めています。イノベーションとは具体的には、再エネ技術や再エネを活用した電気自動車などを指します。

世界でも大企業がカーボンプライシングを導入した事例が増えています。

例えば、Microsoftは2020年1月に、2030年までのカーボン・ネガティブ達成に向けた取り組みを発表しました。この中で、低炭素投資を推進するために、各排出部門からの排出量に応じた資金回収の仕組みとして15ドル/トン(CO2)のインターナルカーボンプライシングを設定しました。さらに、CO2除去テクノロジーへの10億ドルの投資を公表しており、カーボンニュートラルへの取り組みをイノベーションにつなげる動きを見せています。

参照ページ:2030 年までにカーボンネガティブを実現 - News Center Japan

編集後記

ひとことにカーボンプライシングといっても炭素税やETSなど、さまざまな種類があり、導入している国や地域の事情によってアプローチがことなることがわかりました。カーボンニュートラル達成へのマイルストーンを引いている大企業の中には、カーボンプライシングを導入する動きも出ていますし、脱炭素へのアクションをイノベーションに繋げているMicrosoftの事例などもあり、今後の拡大が期待されます。

(TOMORUBA編集部 久野太一)

■連載一覧

第1回:地球の持続可能性を占うカーボンニュートラル達成への道。各国の目標や関連分野などの基礎知識

第2回:カーボンニュートラルに「全力チャレンジ」する自動車業界のマイルストーンとイノベーションの種

第3回:もう改善余地がない?カーボンニュートラル達成のために産業部門に課された高いハードルとは

第4回:カーボンニュートラル実現のために、家庭や業務はどう変わる?キーワードは省エネ・エネルギー転換・データ駆動型社会

第5回:圧倒的なCO2排出量かつ電力構成比トップの火力発電。カーボンニュートラルに向けた戦略とは

第6回:カーボンニュートラルに向けた原子力をめぐる政策と、日本独自の事情を加味した落とし所とは

第7回:カーボンニュートラルに欠かせない再生可能エネルギー。国内で主軸になる二つの発電方法

第8回:必ずCO2を排出してしまうコンクリート・セメントを代替する「カーボンネガティブコンクリート」とは?

第9回:ポテンシャルの高い洋上風力発電がヨーロッパで主流でも日本で出遅れている理由は?

第10回:成長スピードが課題。太陽光・風力発電の効果を最大化する「蓄電池」の現状とは

第11回:ロシアのエネルギー資源と経済制裁はカーボンニュートラルにどのような影響を与えるか?

第12回:水素燃料電池車(FCV)は“失敗”ではなく急成長中!水素バス・水素電車はどのように社会実装が進んでいる?

第13回:国内CO2排出量の14%を占める鉄鋼業。カーボンニュートラル実現に向けた課題と期待の新技術「COURSE50」とは

第14回:プラスチックのリサイクルで出遅れる日本。知られていない国内基準と国際基準の違いとは

第15回:カーボンニュートラルを実現したらガス業界はどうなる?ガス業界が描く3つのシナリオとは

第16回:実は世界3位の地熱発電資源を保有する日本!優秀なベースロード電源としてのポテンシャルとは

第17回:牛の“げっぷ”が畜産で最大の課題。CO2の28倍の温室効果を持つメタン削減の道筋は?

第18回:回収したCO2を資源にする「メタネーション」が火力発電やガス業界に与える影響は?

第19回:カーボンニュートラル達成に向け、なぜ「政策」が重要なのか?米・独・英の特徴的な政策とは【各国の政策:前編】

第20回:カーボンニュートラル達成に向け、なぜ「政策」が重要なのか?仏・中・ポーランドの特徴的な政策とは【各国の政策:後編】

第21回:海水をCO2回収タンクにする「海のカーボンニュートラル」の新技術とは?

第22回:ビル・ゲイツ氏が提唱する「グリーンプレミアム」とは?カーボンニュートラルを理解するための重要な指標

第23回:内閣府が初公表し注目される、環境対策を考慮した「グリーンGDP」はGDPに代わる指標となるか?

第24回:カーボンニュートラルの「知財」はなぜ重要か?日本が知財競争力1位となった4分野とは

第25回:再エネ資源の宝庫であるアフリカ。カーボンニュートラルの現状とポテンシャルは?

第26回:「ゼロ・エミッション火力プラント」の巨大なインパクト。圧倒的なCO2排出を占める火力発電をどうやって“ゼロ”にするのか?

第27回:消費者の行動変容を促す「カーボンフットプリント」は、なぜカーボンニュートラル達成のために重要なのか

第28回:脱炭素ドミノを目指す「地域脱炭素ロードマップ」と「脱炭素先行地域」の戦略とは?

第29回:次世代原発の『小型原子炉』はなぜ低コストで非常時の安全性が高いのか?

第30回:『SAF』なら燃焼しても実質CO2排出ゼロ?廃食油をリサイクルして製造する次世代型航空燃料とは

第31回:日本は「海洋エネルギー」のポテンシャルが世界トップクラス。再エネの宝庫である海のパワーとは

第32回:80年代から途上国に輸出される『福岡方式』とは?温暖化防止にもつながる再現性の高いゴミ問題の解決策

第33回:カーボンニュートラル必達を掲げ『GI基金』に2兆円を造成。支援する分野や採択されたプロジェクトとは

第34回:排出されるCO2を捕捉して貯蔵する技術『CCS』はカーボンニュートラルの救世主となるか?

第35回:次世代送電網『スマートグリッド』は再エネの弱点を補う?カーボンニュートラルの観点から解説

第36回:間もなく普及が完了する次世代電力計『スマートメーター』が脱炭素に与える影響と、新たなビジネスチャンスとは

第37回:電力送電網とつながらない『オフグリッド』がカーボンニュートラルになぜ貢献するのか?一般家庭や事業者への導入事例を紹介

第38回:「GX基本方針」で示されたふたつの目標とは。「GX推進法」「GX推進戦略」との違いなど解説

第39回:「電力貯蔵技術」がなぜ脱化石燃料と再エネ活用の促進になるのか?脱炭素達成にはマストの重要な技術を解説

第40回:『脱炭素アプリ』でどうやって企業や自治体のカーボンニュートラルを実現するのか?仕組みと事例を解説

第41回:「米国インフレ抑制法(IRA)」がなぜカーボンニュートラルに貢献するのか?バイデン政権が3910億ドル投じる肝入りの政策を解説

第42回:GI基金も支援する水素サプライチェーン・プラットフォーム。化石燃料の代替として期待がかかる水素技術の未来とは

第43回:国土交通白書が掲げる「カーボンニュートラル貢献」と「生産性向上」の両輪を回す新技術とその事例とは

第44回:政府が本腰で取り組む「水素・アンモニア」の燃料としてのポテンシャルと、社会実装までの展望とは

第45回:『GX脱炭素電源法』が批判される理由とは?GX基本方針との関連や、60年超の原発稼働が可能になった背景など解説

第46回:2030年には全ての新築を『ZEB(ゼブ)』『ZEH(ゼッチ)』に。建物の消費エネルギーをネットゼロにする省エネと創エネのアプローチとは?

第47回:『バイオマスエネルギー』でゴミを再エネに変える!ジェット燃料や土壌改善にも活用できる未来の資源とは

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