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電力送電網とつながらない『オフグリッド』がカーボンニュートラルになぜ貢献するのか？一般家庭や事業者への導入事例を紹介

電力送電網とつながらない『オフグリッド』がカーボンニュートラルになぜ貢献するのか？一般家庭や事業者への導入事例を紹介

2023年07月30日
コラム

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パリ協定で定められた「世界の気温上昇を産業革命前に比べ1.5度までに抑える」を達成するための指標として、先進国では「2050年までにCO2排出量をゼロにする」ことが目標になっています。これがいわゆるカーボンニュートラルですが、日本でも段階的な目標として2030年までにCO2排出量を46％削減することを目指しています。TOMORUBAの連載「カーボンニュートラル達成への道」では、各業界がどのように脱炭素に向けた取り組みをしているのか追いかけていきます。

今回取り上げるテーマは『オフグリッド』です。電力の送電網を使わずに自給自足をしている状態をオフグリッドと呼びますが、この技術は夢物語ではなく社会実装が進みつつあります。

当連載では以前に次世代送電網の『スマートグリッド』を取り上げていますが、これは電力供給と電力消費を高度に管理することでネットワーク全体の電力効率が上がり、レジリエンスも高まるというものでした。スマートグリッドとは反対の考え方であるオフグリッドとはどのような技術なのか、どのように脱炭素に貢献するのか、解説していきます。

参照記事：次世代送電網『スマートグリッド』は再エネの弱点を補う？カーボンニュートラルの観点から解説

オフグリッドは自然エネルギーで電力を作り、蓄エネし、自給自足する技術

オフグリッドとは電力の送電網（グリッド）とつながっていない（オフ）状態のことを指す言葉です。オフグリッドは一般的に、電力送電網から切り離された環境で独立して「電力を作る」こと、そして発電した電力を「蓄電する」ことで電力の自給自足を実現する技術のことを意味します。立て付けによってはオフグリッドが導入されていても、一部の機能の補助や災害時の対策として送電網とつながっている場合もあります。

出典：オフグリッドとは｜トーラス株式会社

自然エネルギーには太陽光、地熱、風力などがありますが、オフグリッドには太陽光が採用されることが一般的です。地熱、風力などは条件が厳しいため、多くの場合でオフグリッドの活用には適さないのです。ただ、雨の日や夜になると太陽光がありませんので、日中に太陽光発電で蓄電池にエネルギーを貯めておいた分を使うことになります。

オフグリッドはカーボンニュートラル貢献はもちろん、緊急時に強いなどのメリット

オフグリッドが注目を集めている背景にはさまざまなメリットがあります。ひとつは、自然エネルギーで発電するため、CO2の排出がなくカーボンニュートラルに貢献できる点です。

他にも、太陽光発電がメインであるため電力利用料がゼロであること、停電などの緊急時でも電力の自給自足ができるため、事業者であれば営業活動が止まることもありませんし、セキュリティ対策もダウンタイムがなくなります。

一方で、新しい技術であるためデメリットも指摘されています。最も大きな課題は電力供給が安定しないことです。発電の基本は太陽光発電になりますから、冬季や梅雨など、日照時間が短い時期には電力が不足してしまうリスクがあります。

また、導入やメンテナンスにかかるコストが高いケースがあります。国や自治体からの補助金が支給される場合もあるので一概には言えませんが、導入する際には初期費用が回収できるかどうか慎重に検討する必要があるでしょう。

もうひとつ考えられるデメリットは、オフグリッドの設備が故障してしまうことです。電力会社からの送電網からまったく外れている場合は、設備が直るまでは電力が利用できなくなってしまいます。

民間・事業者ともにオフグリッドの導入事例多数

オフグリッドは民間・事業者とも既に有力な導入事例が多くあります。

旅行会社のHISでは、環境に配慮した商品を提供する取り組み『エコツアー』の一環としてオフグリッドの宿『Earthship MIMA』でのツアーを販売しています。Earthship MIMAは太陽光発電で電力を自給自足するゲストハウスで、生活用水は雨水でまかない、建築資材に廃材を再利用するなど、カーボンニュートラルを体感できる商品となっています。

出典：日本初の循環型オフグリッドハウス「アースシップミマ」に滞在徳島 2日間|HISスタディツアー

一般家庭にもオフグリッドの導入事例は広がっています。太陽光発電システムの販売をするインリーソーラーが紹介しているサトウチカさんの事例では、2014年に完全オフグリッド生活をスタートさせています。サトウさんの家では1日の消費電力が3kwhであるのに対し、導入したソーラーパネルは理論上1日あたり6.6kwhの発電ができる設計になっており、これまで電力不足になったことはないとのことです。

出典：サトウチカさんの楽しく健やかなオフグリッド生活 | Solar Energy Magazine | 太陽光発電のインリーソーラー

さらに、大規模な事業者での導入事例として、エネルギーソリューション企業のエネルエックスは、スポーツカーメーカーのフェラーリに対して、カーボンニュートラル戦略を支援しており、その中で完全オフグリッドのカーポートの建設をしています。

フェラーリの抱える「電力自給率を高め、CO2の排出量を削減したい」という課題に対して、工場の屋根に3800枚以上のソーラーパネルを設置しており、今後は太陽光発電と蓄電池を追加した完全オフグリッドのカーポートを建設する計画です。カーポートではフェラーリのハイブリッド車や電動自動車を充電できるとのことです。