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必ずCO2を排出してしまうコンクリート・セメントを代替する「カーボンネガティブコンクリート」とは?

必ずCO2を排出してしまうコンクリート・セメントを代替する「カーボンネガティブコンクリート」とは?

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パリ協定で定められた「世界の気温上昇を産業革命前に比べ1.5度までに抑える」を達成するための指標として、先進国では「2050年までにCO2排出量をゼロにする」ことが目標になっています。これがいわゆるカーボンニュートラルですが、日本でも段階的な目標として2030年までにCO2排出量を46%削減することを目指しています。TOMORUBAの連載「カーボンニュートラル達成への道」では、各業界がどのように脱炭素に向けた取り組みをしているのか追いかけていきます。

カーボンニュートラルに関連するカテゴリには電力・非電力・炭素除去の3つの分野があります。そのうち、非電力分野に関わる業界は民生・産業・運輸の3つに分類されます。

今回は非電力分野の産業の中でも深刻な課題となっているコンクリート・セメントのCO2排出を削減する新技術を紹介していきます。

コンクリート・セメントを作るには大量のCO2を排出する

一般的に、コンクリートを作るには大量のCO2が排出されてしまいます。コンクリートはセメント、砂利、砂、水を混ぜて作ります。セメントは石灰石といくつかの材料を混ぜて燃やして作るのですが、石灰石には炭素と酸素が含まれていますので、これを燃やすとCO2が排出されるのです。

セメントとCO2はほぼ1対1の関係になっていて、セメントを1トン作ったらCO2も1トン排出されることになります。

日本のCO2排出の約4%がセメント製造工程で生まれる

日本におけるコンクリート・セメントの状況を整理してみます。まず、セメントの生産量の推移は下図の通りで、1990年代後半をピークに、半分以下に激減しています。2020年には4000万トンを割る水準になっています。


出典:セメント業界におけるこれまでの 省エネの取組み並びに長期的展望 について

次に、セメント製造工程からのCO2排出量の推移を見てみます。セメントを製造する際には石灰石由来のCO2とエネルギー由来のCO2が排出されるのですが、それを合算した推移が下図です。


出典:セメント業界におけるこれまでの 省エネの取組み並びに長期的展望 について

2019年のセメント製造工程からのCO2排出は約4000万トンとなっています。前述したように、セメントとそのCO2排出がほぼ1対1になっていることがわかります。日本の2019年度のCO2排出量が約11億トンですから、セメント製造におけるCO2排出量は全体の約4%を占めることになります(世界全体では8%)。

セメントを代替する新技術

セメントを作るには石灰石を燃やす必要があるため、化学反応として必然的にCO2は排出されてしまいます。ですからカーボンニュートラルを達成するにはコンクリート・セメントを代替する新技術が必要なのは明確です。現在、実用化が進んでいるコンクリート・セメントの代替技術を紹介します。

CO2を固定化できる高炉スラグ

セメントの代替として注目が集まっているのが、製鋼から生じる産業副産物である高炉スラグです。高炉スラグはCO2を固定化して炭酸カルシウムを生成できる点が特徴で、要するにCO2のリサイクルにも使える利点があります。

セメント製造工程で排出されるCO2を回収・分離してカーボンリサイクル

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2020年6月、セメント工場のCO2を再資源化(カーボンリサイクル)する技術開発に着手したと発表しました。

この取り組みではセメント工場内にCO2分離・回収実証設備を設置して、排ガス中から1日当たり10トンのCO2を分離・回収する実証試験を実施します。

回収されたCO2は前述のセメント代替品である高炉スラグに閉じ込めることで、大気中にCO2を排出しなくて済むのです。

参照ページ:セメント工場のCO2を再資源化(カーボンリサイクル)する技術開発に着手

日本でも実用化されるカーボンネガティブコンクリート

セメント代替品の高炉スラグと、カーボンリサイクルの技術を組み合わせることで、コンクリートを作るほど実質CO2排出量をマイナスにできる「カーボンネガティブコンクリート」が実現します。

日本国内では大成建設、鹿島、竹中工務店、デンカの4社が2021年10月、「活炭素」のキャッチフレーズを掲げ、「カーボンネガティブコンクリート」の技術を共同研究することで合意しています。

参照ページ:脱炭素から「活炭素」へ 次世代コンクリート技術の共同研究を開始 | プレスリリース

【編集後記】すでにイノベーションが発生している貴重な領域

この連載では多くの場合「カーボンニュートラルを達成するためのソリューションには新たなイノベーションが必要です」と結論づけることがあります。しかしコンクリートの場合はすでにカーボンニュートラルをクリアするためのイノベーションが起きていると言えるでしょう。

カーボンネガティブコンクリートは実用化までのマイルストーンはすでに計画されているので、カーボンニュートラル達成の先駆けとして実績をアピールしてほしいものです。

(TOMORUBA編集部 久野太一)


■連載一覧

第1回:地球の持続可能性を占うカーボンニュートラル達成への道。各国の目標や関連分野などの基礎知識

第2回:カーボンニュートラルに「全力チャレンジ」する自動車業界のマイルストーンとイノベーションの種

第3回:もう改善余地がない?カーボンニュートラル達成のために産業部門に課された高いハードルとは

第4回:カーボンニュートラル実現のために、家庭や業務はどう変わる?キーワードは省エネ・エネルギー転換・データ駆動型社会

第5回:圧倒的なCO2排出量かつ電力構成比トップの火力発電。カーボンニュートラルに向けた戦略とは

第6回:カーボンニュートラルに向けた原子力をめぐる政策と、日本独自の事情を加味した落とし所とは

第7回:カーボンニュートラルに欠かせない再生可能エネルギー。国内で主軸になる二つの発電方法

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