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ポテンシャルの高い洋上風力発電がヨーロッパで主流でも日本で出遅れている理由は?

ポテンシャルの高い洋上風力発電がヨーロッパで主流でも日本で出遅れている理由は?

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パリ協定で定められた「世界の気温上昇を産業革命前に比べ1.5度までに抑える」を達成するための指標として、先進国では「2050年までにCO2排出量をゼロにする」ことが目標になっています。これがいわゆるカーボンニュートラルですが、日本でも段階的な目標として2030年までにCO2排出量を46%削減することを目指しています。TOMORUBAの連載「カーボンニュートラル達成への道」では、各業界がどのように脱炭素に向けた取り組みをしているのか追いかけていきます。

今回は、高いポテンシャルがありながらも、マイナーな電力に位置づけられている『洋上風力発電』にフォーカスします。洋上風力に寄せられている期待とイノベーションの種はどこにあるのか、何が普及に向けた壁になっているのかに迫ります。

洋上風力発電はクリーンでかつポテンシャルが高い電力

風力発電はその名の通り風の力で風車を回し電力を発生させるため、化石燃料を使わないクリーンなエネルギーです。そして、一般的に洋上は陸上よりも風の乱れが少なく風の状態が良いため、洋上風力発電は効率の良い風力発電として注目されています。

主要都市の多くは海岸の近くにあるため、使用される場所から近い場所で発電でき送電の問題がそれほどないことも洋上風力発電の特徴です。


出典:【速報】国内の2019年度の自然エネルギーの割合と導入状況

使い勝手の良い電力ではありますが、日本国内の電源構成(2019年度の年間発電電力量)を見ると風力はわずか0.8%にとどまっています。まだまだ普及の余地があるポテンシャルの高い電力といえます。

ヨーロッパはじめ世界では再エネの主力は風力に

良い電力でも、なぜ日本では洋上風力発電の普及が進まないのでしょうか?その原因のひとつは価格です。世界では風力発電のコストは劇的に下がり続けていて、1984年には70円/kWhだったのが、2014年には8.8円/kWhまで下がりました。それに対して国内の発電コストは13.9円/kWhで、世界の平均の1.6倍です。

参照ページ:これからの再エネとして期待される風力発電

ちなみに国内の主な発電コストは火力発電(天然ガス)が約10.7円以上、火力発電(石炭)が13.6円以上、太陽光発電が8.2円以上、原子力発電が11.7円以上となっています。多くの電力が風力発電よりもコスパが良いのです。

参照ページ:発電方法別のコストはどれくらいですか? | よくあるご質問 [関西電力]

ヨーロッパでは洋上風力発電の導入量が急増していて、2017年には累計導入量が15,780MWに達し、2012年の5,000MWから3倍以上に増加しています。これにはいくつか理由があります。まず、ヨーロッパの洋上は風況が良いだけでなく遠浅であり、風車の基礎を海底に固定する着床式の風車の設置が容易です。

また、政府が洋上風力発電に関するルールを整備したため、事業者の開発リスクが低減されたことも要因です。さらに電力は入札制で価格競争が起こっていることもコストダウンにつながっています。

参照ページ:日本でも、海の上の風力発電を拡大するために

国内で洋上風力発電を最大化するには国のルール整備が必要

日本は海に囲まれた島国なので、洋上風力発電に向いていると考えられがちですが、台風や地震が多いため、まだコストやリスクを見定めている段階です。現に、国内の洋上風力発電の導入量はすべて国の実証実験によるものです。

企業が事業参入する動きも出てきていますが、それには2つのハードルがあります。ひとつは統一的なルールがないことです。一般海域は長期間海域を独占して利用する「占有」に関するルールがありません。これでは企業が参入しようにも事業計画や資金調達の目処が立てられません。

もうひとつの問題が、海を利用する他の事業者との利害の調整ができていないことです。海運業や漁業の事業者にとっては、新たに洋上に風車が設置されると被害を被る可能性があります。その利害関係をどうコントロールするかのルールを定めなければいけません。

国は2017年12月に一般海域利用についての検討チームを立ち上げ、これらの課題を調整する「再エネ海域利用法」を定めました。事業者は最大で30年間、該当する海域を占用する権利を与えられます。

【編集後記】発電効率の最大化がイノベーションに

本文で述べてきたように、洋上風力発電は優秀な電力でありながら、まだまだ伸びしろの大きい領域です。つまり、洋上風力発電の発電効率を最大化して、価格が下がり、再エネ利用率が拡大すればカーボンニュートラル達成に向けてダイレクトに効果が出ます。

洋上風力発電は一基あたりの発電効率を上げることが目下の課題で、そのためにはよりタービンを大きくして、大きな金属を海上に設置する技術を向上しなくてはなりません。とてもわかりやすいイノベーションの種ではないでしょうか。

カーボンネガティブコンクリートは実用化までのマイルストーンはすでに計画されているので、カーボンニュートラル達成の先駆けとして実績をアピールしてほしいものです。

(TOMORUBA編集部 久野太一)


■連載一覧

第1回:地球の持続可能性を占うカーボンニュートラル達成への道。各国の目標や関連分野などの基礎知識

第2回:カーボンニュートラルに「全力チャレンジ」する自動車業界のマイルストーンとイノベーションの種

第3回:もう改善余地がない?カーボンニュートラル達成のために産業部門に課された高いハードルとは

第4回:カーボンニュートラル実現のために、家庭や業務はどう変わる?キーワードは省エネ・エネルギー転換・データ駆動型社会

第5回:圧倒的なCO2排出量かつ電力構成比トップの火力発電。カーボンニュートラルに向けた戦略とは

第6回:カーボンニュートラルに向けた原子力をめぐる政策と、日本独自の事情を加味した落とし所とは

第7回:カーボンニュートラルに欠かせない再生可能エネルギー。国内で主軸になる二つの発電方法

第8回:必ずCO2を排出してしまうコンクリート・セメントを代替する「カーボンネガティブコンクリート」とは?

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  • 富田 直

    富田 直

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  • 眞田 幸剛

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