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再エネ資源の宝庫であるアフリカ。カーボンニュートラルの現状とポテンシャルは?

再エネ資源の宝庫であるアフリカ。カーボンニュートラルの現状とポテンシャルは?

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パリ協定で定められた「世界の気温上昇を産業革命前に比べ1.5度までに抑える」を達成するための指標として、先進国では「2050年までにCO2排出量をゼロにする」ことが目標になっています。これがいわゆるカーボンニュートラルですが、日本でも段階的な目標として2030年までにCO2排出量を46%削減することを目指しています。TOMORUBAの連載「カーボンニュートラル達成への道」では、各業界がどのように脱炭素に向けた取り組みをしているのか追いかけていきます。

今回はカーボンニュートラルをめぐるアフリカの現状について情報を整理していきます。カーボンニュートラルと聞くと、温室効果ガスの排出量の多い先進国に課題が集中していると思ってしまいがちですが、当然アフリカにもカーボンニュートラル達成に向けた課題は多くあります。

高成長率を維持してきたアフリカ経済の今後はパンデミックと戦争の行方に左右される

まず、アフリカの経済について簡単に触れておきます。国際通貨基金(IMF)が発表した2022年版のGDPランキングで、アフリカ地域で最も高い順位だったのは31位のナイジェリア、次いで35位エジプト、36位南アフリカと続きます。


出典:​​World Economic Outlook (October 2022) - GDP, current prices

アフリカの経済は長らく急成長を遂げてきました。サブサハラ・アフリカ地域(北アフリカを除くアフリカ地域)GDP成長率の推移を見てみると、2000年代は概ね6%前後の高い成長率を維持してきました。ただ2010年代にはナイジェリアや南アフリカなどの資源依存国が資源価格の下落などによって成長率を下げています。


出典:第7節 アフリカ:通商白書2020年版(METI/経済産業省)

追い打ちをかけるように2020年にはコロナ禍の影響を受けて成長率はマイナス1.6%という統計開始以来最低の数字となってしまいます。


出典:アフリカの経済とトレンド|アフリカ開発銀行グループ

ですが、アフリカは2021年に世界のどの地域よりも成長率を回復させ、6.9%の成長率となる見通しです。今後、パンデミックとロシア・ウクライナ紛争が長引けば、2022年には成長率は4.1%に減少し、2023年も横ばいとなると予測されています。

アフリカのカーボンニュートラル達成には4.8兆ドルの資金補償が必要な試算。実質的にイノベーションが必須

では、アフリカのカーボンニュートラルに対する基本的な姿勢はどのようになっているのでしょうか。アフリカ経済見通し2022年版(AEO 2022)では、「アフリカにおける気候レジリエンスと公正なエネルギー転換の支援」がテーマになっています。

そのためいくつかの地域のアフリカの指導者たちはSDGsの7つ目の目標である「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」へのコミットメントを示しており、この目標を実現する動きを牽引する必要があります。

特に大きな課題として、アフリカには電力にアクセスできない人口が5億8000万人いるとされており、これを早急に解決しなければなりません。さらに、アフリカの総人口は2021年には14億人だったのが2050年には24億人に増加すると言われています。つまりSDGsの7つ目の目標をクリアするには、2030年まで少なくとも年間7500万件の新規アクセスを目標とした上で、さらなる対策が必要ということになります。

さらに、アフリカは全ての人口に電力アクセスを確保したうえで2050年までに温室効果ガス排出ネットゼロを目指さなければなりません。アフリカ開発銀行は、このハードルの高さを以下のように表現しています。

アフリカ開発銀行の炭素負債とクレジットに関する最新の研究によれば、過去と将来の排出量を基にすると、2050年までにアフリカが受けるべき気候変動資金の補償総額は4兆7,600億ドル~4兆8,400億ドルとなり、これを2022年から2050年までの年換算にすると年間1,634億ドル~1,730億ドルとなります。これは2016年から2019年までにアフリカが毎年受け取った資金のほぼ10倍に相当するとされています。

引用:アフリカの経済とトレンド|アフリカ開発銀行グループ

要するに、資金補償だけでアフリカのカーボンニュートラルを達成することは実質不可能だということです。そのため、先進国と同じようにアフリカでもイノベーションによる課題解決が必須となっています。

アフリカは再生エネルギー資源の宝庫

アフリカは燃料資源だけでなく再生エネルギーに関連する資源も豊富です。国際エネルギー機関(IEA)は2022年6月20日にアフリカエネルギー見通し(AEO)を発表し、その中で「アフリカ大陸全域でより高い水準のエネルギー投資を実現することが重要だ」と述べています。

化石燃料については、短期的にはロシア・ウクライナ紛争の影響で脱ロシアを目指す欧州諸国がアフリカの経済成長を後押しする形になりそうですが、2030年までには化石燃料の生産量は減少していく見込みです。

また、新しいエネルギー源としてアフリカは水素製造のポテンシャルを多く持っているものの、十分に利用されていないため、水素が化石燃料の代替として大きな役割を果たすと見られます。

さらに、AEOに示されている「持続可能なアフリカシナリオ(SAS)」では、2030年までに水力発電が調整電源として供給能力の4分の1を提供する予定だとされています。他にも、太陽光、風力、水力、地熱を含む再生可能エネルギーは、2030年までに必要な新規発電容量の80%を提供するとも記されており、今後再生エネルギーの普及がスピードアップしていく見込みです。

参照ページ:IEAのアフリカのエネルギー見通し(“Africa Energy Outlook 2022”)

【編集後記】アフリカがイノベーションの中心に

アフリカは電力にアプローチできない人が多く、さらに人口も爆発的に増えています。先進国のようにインフラが整っていませんが、再生エネルギー資源が豊富なアフリカがクリーンな電力のインフラを整備できれば、それだけでインパクト十分なイノベーションになり得ます。途上国であるからこそ大胆な施策を打てますし、今後はアフリカがイノベーションの中心になっていく可能性は高そうです。

(TOMORUBA編集部 久野太一)


■連載一覧

第1回:地球の持続可能性を占うカーボンニュートラル達成への道。各国の目標や関連分野などの基礎知識

第2回:カーボンニュートラルに「全力チャレンジ」する自動車業界のマイルストーンとイノベーションの種

第3回:もう改善余地がない?カーボンニュートラル達成のために産業部門に課された高いハードルとは

第4回:カーボンニュートラル実現のために、家庭や業務はどう変わる?キーワードは省エネ・エネルギー転換・データ駆動型社会

第5回:圧倒的なCO2排出量かつ電力構成比トップの火力発電。カーボンニュートラルに向けた戦略とは

第6回:カーボンニュートラルに向けた原子力をめぐる政策と、日本独自の事情を加味した落とし所とは

第7回:カーボンニュートラルに欠かせない再生可能エネルギー。国内で主軸になる二つの発電方法

第8回:必ずCO2を排出してしまうコンクリート・セメントを代替する「カーボンネガティブコンクリート」とは?

第9回:ポテンシャルの高い洋上風力発電がヨーロッパで主流でも日本で出遅れている理由は?

第10回:成長スピードが課題。太陽光・風力発電の効果を最大化する「蓄電池」の現状とは

第11回:ロシアのエネルギー資源と経済制裁はカーボンニュートラルにどのような影響を与えるか?

第12回:水素燃料電池車(FCV)は“失敗”ではなく急成長中!水素バス・水素電車はどのように社会実装が進んでいる?

第13回:国内CO2排出量の14%を占める鉄鋼業。カーボンニュートラル実現に向けた課題と期待の新技術「COURSE50」とは

第14回:プラスチックのリサイクルで出遅れる日本。知られていない国内基準と国際基準の違いとは

第15回:カーボンニュートラルを実現したらガス業界はどうなる?ガス業界が描く3つのシナリオとは

第16回:実は世界3位の地熱発電資源を保有する日本!優秀なベースロード電源としてのポテンシャルとは

第17回:牛の“げっぷ”が畜産で最大の課題。CO2の28倍の温室効果を持つメタン削減の道筋は?

第18回:回収したCO2を資源にする「メタネーション」が火力発電やガス業界に与える影響は?

第19回:カーボンニュートラル達成に向け、なぜ「政策」が重要なのか?米・独・英の特徴的な政策とは【各国の政策:前編】

第20回:カーボンニュートラル達成に向け、なぜ「政策」が重要なのか?仏・中・ポーランドの特徴的な政策とは【各国の政策:後編】

第21回:海水をCO2回収タンクにする「海のカーボンニュートラル」の新技術とは?

第22回:ビル・ゲイツ氏が提唱する「グリーンプレミアム」とは?カーボンニュートラルを理解するための重要な指標

第23回:内閣府が初公表し注目される、環境対策を考慮した「グリーンGDP」はGDPに代わる指標となるか?

第24回:カーボンニュートラルの「知財」はなぜ重要か?日本が知財競争力1位となった4分野とは

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