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【Startup Culture Lab. 2024年度 #11レポート】ファストドクター、カウシェが取り組む組織カルチャー醸成の一手とは?サーベイ結果の利用方法、経営陣と従業員とのギャップの埋め方を聞く

【Startup Culture Lab. 2024年度 #11レポート】ファストドクター、カウシェが取り組む組織カルチャー醸成の一手とは?サーベイ結果の利用方法、経営陣と従業員とのギャップの埋め方を聞く

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イノベーションを起こし急成長するスタートアップならではの、人材・組織開発に関する学びと知見を広くシェアする研究プロジェクト「Startup Culture Lab.」。2024年度も56社の研究対象スタートアップが決定し、全12回に渡るセッションとワークショップを通じ、急成長するスタートアップの組織支援を進めていく。

2月18日に開催された第11回のセッションテーマは「組織カルチャー醸成のための、組織課題の抑え方と解消のコツ」。昨今のスタートアップにとって、組織カルチャーの浸透は事業の成否に関わる重要な要素となっている。組織カルチャーをどのように形成し、醸成させていくのか。ーー本記事では、登壇者たちが試行錯誤を重ねた生の声をレポートしていく。

<登壇者>

・上林 周平 氏 / 株式会社NEWONE 代表取締役

・鍵原 季宏 氏 / 株式会社カウシェ 執行役員 人事本部長 兼 管理本部長

・佐田 雅弥 氏 / ファストドクター株式会社 人事部長

・唐澤 俊輔 / Almoha共同創業者COO / Startup Culture Lab.所長 ※モデレーター

スタートアップの組織改革やエンゲージメントの伴走支援に携わってきた登壇者

セッションは登壇者の自己紹介から始まった。最初に自己紹介をしたのはNEWONEの代表取締役として企業のエンゲージメントの伴走支援を続けてきた上林氏。

「2017年に創業したNEWONEは設立当初からエンゲージメント向上を支援する会社として、大手企業の支援をずっとしていました。最近はベンチャーやスタートアップの支援の現場にも入って伴走することもあるので、具体的な観点からお話しできればと思います」

▲上林 周平 氏 / 株式会社NEWONE 代表取締役

続いて自己紹介したのはECプラットフォームを運営するカウシェで人事本部長を務める鍵原氏。「カウシェは創業5年目に入って、人数が増えたり減ったりという経験をしてきた」という鍵原氏に対して、モデレーターの唐澤氏は「カウシェはこの1年でスタートアップらしい組織の改革をしながら数字を伸ばしてきている」と付け加えた。

▲鍵原 季宏 氏 / 株式会社カウシェ 執行役員 人事本部長 兼 管理本部長

続いてマイクを取ったのはファストドクターの人事部長である佐田氏。同氏は2023年度のStartup Culture Lab.の研究メンバーでもあり、フェローも務めている。

「ファストドクターは2016年に創業したヘルステック企業でプライマリケアサービスの運営など多様な事業を展開しています。私たちは、医療専門職やエンジニアなど多様な人材が所属していること、複数の事業を運営していることなど、組織的にも多くの挑戦を抱えています。本日は今取り組んでいる事例などをお話ししたいです」

▲佐田 雅弥 氏 / ファストドクター株式会社 人事部長

最後に、モデレータを務める唐澤氏が自己紹介をした。

「私はStartup Culture Lab.所長であり、このあと紹介する組織カルチャー診断ツール『WEALL』を開発するAlmohaの共同創業者でもあります。本日はそのツールを使いながら、実際の課題がどこにあって、どういった解決策を提示できるのかといった具体的なお話をしていきたいと思っています」

▲唐澤 俊輔 / Almoha共同創業者COO / Startup Culture Lab.所長

スタートアップカルチャーのトレンドと、組織風土醸成

ここからはAlmohaの運営する組織カルチャーの診断ツール『WEALL』を使いながら、カウシェとファストドクターのカルチャー醸成の現場を客観的に見ていくセッションに移る。

▲『WEALL』は、従業員サーベイを通じて組織課題を分析・可視化し、課題に直結した組織施策を提示するプラットフォーム。

2社のカルチャー診断の結果を見る前に、唐澤氏から、本イベントで定義するスタートアップカルチャーについて解説があった。

「日本の伝統的な組織では、前例を踏襲しながら安定的に成長していくというのが強みでした。人材は新卒採用で一括採用して先輩の背中を見ながら成長していきます。『カイゼン』や『連続的な成長』といった良い部分があるものの、今後人口が減少し市場が縮小していくと同じことをしていてもマイナスになっていってしまいます」

伝統的な日本組織のカルチャーにはメリットもある一方で、唐澤氏は自律変革型であるスタートアップカルチャーの特徴にも言及した。

「最近の組織づくりのトレンドでは、ジョブ型で専門性を得ながらプロジェクトベースで協働し、多様な人材が化学反応を起こしながら非連続な成長を志向するものです。こうした急成長を前提とする組織をスタートアップカルチャーと定義しています」

また、Startup Culture Lab.では「スタートアップカルチャーを作る4Eモデル」を軸にしてセッションを展開しているという。4Eとは「組織への共感」「専門性の活用」「自律行動の促進」「能力発揮する環境」の4つだ。今回のセッションでは4Eモデルと12の人事施策のうち、「能力発揮する環境」を実現するための施策である「組織風土醸成」について、WEALLのサーベイ結果を見ながら、具体的な解決策を模索していく。

セッションは登壇者の実体験の深掘りに移り、まずはカウシェが組織風土醸成のために打った施策に話が及んだ。

鍵原氏は「昨年10月以降、カウシェでは、YOUTRUST社で発足されている『モメンタム局』(社内のモメンタムを上げることをミッションとする全社横断組織)の話を全社の社内勉強会で岩崎氏より直接聞き、翌日から同じ組織を立ち上げました」と振り返り、続けて「具体的には、経営陣が率先して組織の雰囲気を明るくすると宣言し、声を張る。Slackのリアクションを10個返そうとか、良いことがあれば賞賛しようとか、そういう小さなものを積み上げて空気感を作り出します」と具体策を語った。

この施策に対して上林氏は「モメンタムは重要です。組織フェーズによって打ち手も変わりますが、トップや経営陣が信頼されていれば上位陣が発信するのがいいですし、逆に経営陣の信頼が落ちているようならメンバの中から動いて賞賛しあえれば、ポジティブな雰囲気を作れます」と付け加えた。

この上林氏のコメントに、鍵原氏は深くうなずきながら、さらに具体的な取り組みを解説した。

「月に一度、開発進捗の共有会をしていたのですが、その時間をウィンセッションに変更しました。各部門がそれぞれ、今月の良かったことを紹介してそれを称賛し合う時間です。具体的にどんな取り組みがあったのかというエピソードを紹介してもらうんです。このウィンセッションの効果として、他部門とのコミュニケーションが生まれたり、次の行き先が明確になるといったメリットを実感しました」

縦ラインの障害にはヒアリングが重要だが「ある程度やむなし」

唐澤氏は、カウシェのサーベイ結果を見ながら鍵原氏に質問した。

「アンケート結果の1(全くそう思わない)から5(とてもそう思う)にバラつきがあるのが御社の特徴です。この結果についてなにか仮説をお持ちですか?」

この質問に対して鍵原氏は「部署によってアンケート結果の傾向に違いはある」と前置きしながら、「縦ラインのコミュニケーションに課題がありそうだ」と仮説を立てた。そのうえで「1on1なのか、チームや人事にヒアリングするのかはケースによるが、何より聞くことが大切だと思う」と語った。

唐澤氏はスタートアップならではの課題であるため、全てを解決することができないこともあるという。

「スタートアップには会社としての変革期や方針転換がありますが、その過程で会社の方向性についていけなくなる人が出るのは避けられません。会社とギャップを感じる従業員に対してなんとかモチベートして付いてきてもらうこともできるけど、そこに時間と労力を割くができないケースもあります」

上林氏、唐澤氏は「ついて来られないことが悪いことではない」と口を揃えた。スタートアップは航海に例えられるが、組織の成長とともに船を降りる仲間がいることも念頭に置いておく必要がありそうだ。

問題を認知するには「対話による違いの明確化」が必要

ファストドクターではこの1年は「変革期」だったという。そのため、組織カルチャーを醸成するための施策を打ち出すフレームワークとしてWEALLのサーベイ結果を参照している。

佐田氏はサーベイ結果を「概ね想定内だった」と語りながら、これまで肌感覚だった課題が可視化されたことで「問題の認知」の重要性を実感したという。

問題の認知をする方法にはどのようなものがあるか、と問われた上林氏は次のように答えた。

「問題の認知のためには対話が大事とよく言いますが、雑談すればいいわけではありません。対話は、違いの明確化が重要です。例えばファストドクターの場合、サーベイ結果の『多様性の尊重と活用』のスコアが3.6ですが、1と回答した人もいれば5と回答する人もいます。そこの違いを出し合って課題を見つけることが大切です」

上林氏いわく、こうした課題が見つかってもスピード重視で解決するのではなく、低く評価をつけた理由がどこにあるのかをすくいあげるアプローチが有効だという。

例えば、経営陣が施策を発信する時に、「Why」の部分を多く発信すれば従業員の納得感にもつながるとのこと。そのため佐田氏は「Why」の発信として、社内シンポジウムと題した対話の場を社内向けに実施しているという。

課題ではあるが「今じゃない」ものをどう扱うか

サーベイ結果では課題として浮き彫りになっているものでも、リソースの限られているスタートアップでは課題の解決は「今じゃない」と判断しなければならないケースもある。佐田氏はそういった場合に「ミッション・ビジョンに立ち返って判断する」という。

「スタートアップとして、従業員のみなさんに与えられるもののひとつは成長の機会だと思っています。ですから、伸ばしたい項目を決めて、そこは他社よりも突き抜けることを優先しています。突き抜けるところとそうでないところをしっかりと経営陣から発信して、従業員に理解してもらう必要があると考えています」

ここで唐澤氏から上林氏へ「従業員と経営陣で意識のギャップが生まれてしまう場合にはどうするべきか」と質問が投げかけられた。

「それぞれの項目に対してどんなスコアの会社にしたいかを従業員と認識をあわせておく必要があります。目標のスコアに対して足りていない部分があればそこを埋めるために進んでいくんです。一概にスコアが低いからなんとかするのではなく、目指すスコアを明文化するべきだと思います」

これに唐澤氏は同意しながらも「目標のスコアに足りていない場合、ピンポイントで特定の項目のスコアを伸ばすのは難しい。全体の影響を少なからず受けるので」と現実的な見解を述べた。

この課題に対して鍵原氏は「特定の項目のスコア自体を目標にするのではなく、打ち手を立てて、それを実行できたかを目標にしている」と目標設定のノウハウを明かした。

セッションの最後に上林氏はサーベイの活用方法について、次のように語った。

「サーベイは『氷山モデル』とも言われ、スコアは海面上に現れている一部分に過ぎません。水面下に隠れている本質を掘り下げることが大事です。スコアだけで仮説が立てられなければ定性コメントを読んだり、次回の診断で検証しなおしたりしていきます。また、サーベイ結果は経営だけのものではないので、組織にオープンであるべきですし、従業員も組織課題に参画できている実感を持ってもらうことが重要です」

取材後記

人材も時間も限られるスタートアップにとって、カルチャーは組織の共通認識を形成する重要なツールとなる。さらに、カルチャーが醸成されているほど、成長のスピードに影響するため、競合との差別化につながりやすい要素にもなってくる。WEALLのようなサーベイ診断を活用すれば、経営陣にとっても従業員にとっても企業カルチャーの可視化や改善に直結させることができるため、カウシェやファストドクターの実体験を伴う事例は貴重なノウハウ共有の機会となったはずだ。

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(編集:眞田幸剛、文:久野太一)

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